カードファイト!!ヴァンガードG 孤独の先の、愛の物語   作:リー・D

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願われる幸せ、共に歩む幸せ

4月の終盤、ジューンブライドには早いけど、結婚式が行われた。

新郎の名は新田新右ェ門、新婦の名は新導ミクル。

私、戸倉ミサキの叔父の結婚式だ。

今私は、その披露宴で、親族代表として、新婚夫婦にメッセージを呼んでいる。

幼いころ、両親を失った私を育てるために、シンさんは自分の青春をなげうって暮らしてきた。

一応、ヴァンガードの全国大会に出場して、優勝までしたけど、その世界大会の出場が叶う事はなく、シンさんは表舞台から姿を消した。

以降は、好きだったミクルさんとも連絡を取らず、両親が残したカードキャピタルの店長として一所懸命働いて、私を育ててくれた。

幼い私には想像もつかないほど、苦しんで選んだ道だと思う。

そんなシンさんが、やっと、自分の幸せを掴んでくれた。

それがとても嬉しい。

その想いを私は今、大勢の人の前で、2人に伝えている。

 

ミサキ「シンさん。こんなにも生意気で、シンさんにも辛く当たった私を、ここまで育ててくれて本当にありがとう。ミクルさん。シンさんは、ちょっと冴えないところがあるけど、本当に立派な人だよ。私やクロノとは、また違う辛い経験をしてきた2人なら、お互いを支え合っていける。だから、結婚おめでとう。絶対に幸せになってね」

 

自分の顔が見えないのが、こんなにも辛いことなんて始めて知ったなぁ。

私今、どんな顔して居るんだろう。

メッセージを読み終えた私は、新郎親族の席に戻った。

 

アイチ「ミサキさん。お疲れ様。凄く良いメッセージでしたよ」

 

戻った先で、アイチが声をかけてくれた。

アイチは私の恋人なんだから、この席に座って良いのでは、と言ってくれた三和に感謝しないとね。

 

ミサキ「アイチ。私、ちゃんと笑顔のまま言えてた?」

 

私は、今1番の不安をアイチにぶつけた。

そしたらアイチは笑って――

 

アイチ「はい。ミサキさん、ずっと笑顔のままですよ。だから、安心して泣いてください」

 

あっ……私の目から涙が零れてしまった。

アイチは優しいから、つい甘えてしまう。

新婦親族代表であるライブさんのメッセージを聞き流して、私は少しだけ泣いた。

 

披露宴も滞りなく進み、新郎新婦は、それぞれ離れて親しい仲の人と話している。

私は席を離れて、トイレで化粧を直してきた。

会場に戻ってきた私を迎えたのは、他でもない、シンさんだった。

 

シン「ミサキ、今日はありがとう。ミサキのメッセージ、嬉しかったですよ。思わず、泣きそうになってしまいました」

 

ミサキ「もう、シンさんは相変わらずだね。でも良いの? 奥さんの傍にいなくて」

 

シン「ミクルさんは社長ですから、社員たちや契約会社の人たちとの挨拶があるのですよ。僕はミサキと話したくて、抜けてきました」

 

良いのかな、それで。

でもシンさんはこれからもキャピタルで店長を続けると聞いてるし、社長の夫ってだけでミクルさんの会社には関わらないらしいから、これで良いのか。

 

シン「先ほどのブーケトス、すみませんでした。僕としては、ミサキに渡したかったのですが、ミクルさんが」

 

ミサキ「分かってるから良いよ。ミクルさんは誰よりもクロノの幸せを願ってるから」

 

結婚式の直後、恒例のブーケトスが行われた。

来ていた彼氏持ちの女性たちがこぞって参加するために階段の下に集まったけど、投げるよう支持があった瞬間にミルクさんがブーケを持ったまま階段を下り始めたのだ。

皆驚く中、ミルクさんは1人の女性に直接ブーケを渡した。

その子こそ、彼女の甥、クロノの彼女である安城トコハちゃんだった。

ブーケを手に入れる気が満々だったトコハちゃんも驚いた表情でミクルさんを見ていた。

そんなトコハちゃんにミクルさんは笑顔で言った。

 

ミクル「これからもクロノをよろしくね。2人の結婚式楽しみに待ってるから」

 

その言葉を聞いた瞬間にトコハちゃんは顔が真っ赤に染まってミクルさんに抱きついてお礼を言い続けたため、披露宴が少し押してしまうことになってしまった。

現在トコハちゃんは、渡されたブーケを大事そうに持ちながら、クロノやシオン、仲間たちと楽しそうに食事をしている。

 

シン「はい。でも、僕がミサキの幸せを願っていると言う事もミクルさんは知っています。だから――」

 

そう言って、シンさんは胸元もバッチを取って、私に差し出した。

 

ミサキ「シンさん? これ、どういうこと?」

 

シン「知ってますか、ミサキ。ブーケトスには男性が行うパターンもあるのですよ。本来は、ブロッコリートスやガータートスが主流ですけど」

 

ミサキ「それは、知ってるけど。関係有るの?」

 

シン「もちろん。最初の予定では、僕はこれを投げるつもりだったのですよ。でも、ミクルさんがブーケを手渡しすると聞いて、キャンセルしたのです。ミサキ、貴方に直接渡したくて」

 

シンさんからの贈り物、すっごく久しぶりで、嬉しいけど。

 

ミサキ「渡されても、私これつける意味無いよ」

 

シン「誰もミサキに着けて欲しいと頼んでいませんよ。ミサキ、ブーケは通常、花嫁から別の女性に受け継がれます。でも、男性も持つ意味があるのですよ。それはですね」

 

シンさんが私の耳元に顔を持ってきて小さくささやいた。

その言葉を聞いた私は顔が熱くなるのを感じてしまった。

 

シン「後は、分かりますね。全てはミサキ次第です。応援してますよ」

 

そう言われた時、もう私は止まれなくなった。

シンさんにお礼を言って、すぐに足を翻して走り出した。

向かう先は、私の1番好きな人。

 

ミサキ「アイチ!」

 

彼は石田と小茂井と一緒に居た。

私の声に気づいて、振り返ってくれた。

私は乱れた息を整えながら、緊張を振り払いながら。

 

ミサキ「アイチ、あのね、これを」

 

そう言って、私はシンさんから渡されたバッチを差し出した。

それを見て、アイチは唯微笑んで、受け取ってくれた。

 

 

半年後

 

今日、私はアイチと結婚する。

 

アカリ「ミサキ綺麗だよ。もうあの頃のミサキは何処にも居ないね。アイチ君、手放しちゃダメだよ」

 

ミサキ「ありがとうアカリ。こんな私と親友で居てくれて」

 

本当に感謝してる。

その名の通り、明るい性格のアカリが傍に居てくれたから、私は私でいられたんだ。

アカリは私の、再興の親友だよ。

 

シン「ミサキ。おめでとう。これで本当の意味で、保護者としての役割は終わりですね」

 

ミサキ「シンさん。もう、早速泣かせないでよ。後で言うつもりだったけど、今言うね」

 

そう言って、私はアカリに抱きついた。

 

ミサキ「私、シンさんとアカリには、本当に、これ以上無いぐらい感謝してる。2人が居なかったら、私は今、此処に居ない。きっと、アイチと、ヴァンガードと出会う前にダメになってた。本当にありがとう」

 

感謝してたら、シンさんが私の肩に手を置いていた。

 

シン「ミサキ。貴方は本当に綺麗になりました。兄さんと義姉さんも喜んでます。でもね、今あなたが1番綺麗なところを見せたいのは、僕たちじゃ無いですよね」

 

あっ、そうだ。

私がこの姿を見せたいのは。

 

シン「だから、泣いてはいけません。前を向いて、貴方の愛する人の前に堂々と立ちなさい。それが僕たちの望みですし、兄さんと義姉さんも、その方が喜びます」

 

ミサキ「シンさん。うん。分かった。じゃあ、行ってきます」

 

そう言って私は式場に向かった。

 

アカリ「シンさんって、普段は抜けてて、情けないように見えたけど、やっぱり大人だね。今日のシンさんは、前の結婚式よりもカッコ良く見えるよ」

 

シン「アカリちゃんは手厳しいですね。僕だって、ミサキの保護者ですから。それに、もうすぐ父親になるのですから、責任を持つ者として覚悟は決めてますよ」

 

アカリとシンさんが話しているのを聞き流して、私は歩く。

式が行われる礼拝堂に向かう道は、花嫁用に長く作ってある。

ここで思いを馳せて、扉の前に立つ、保護者に迎えて貰うために。

でも、私は可能な限り急ぎ足で歩く。

少しでも早く、あの人に会いたいから。

扉の前に着いた時には、シンさんとアカリが先回りして迎えてくれた。

そして、扉が開かれた。

その向こうには、私が今1番会いたい人が、私の愛する人、これから夫となる人。

先導アイチが立っている。

お父さん。

お母さん。

私、今日この人と結婚します。

 

アイチ「ミサキさん。綺麗ですよ。ありがとうございます。こんな僕と結婚してくれて」

 

ミサキ「ううん。私こそ、ありがとう。私を愛してくれて。私の愛に応えてくれて」

 

シン(兄さん、義姉さん。あの小さかったミサキがこんなにも綺麗になりましたよ。今から家族となる2人を、これからも見守っていてあげてください)

 

ミクルさんがシンさんの子どもを授かったように、私もアイチの子どもを産むだろう。

そしたら、目一杯愛をあげよう。

私を愛して、育ててくれた、両親と叔父さんの愛に応えるために。

 

ミサキ「アイチ」

 

アイチ「はい?」

 

ミサキ「私は、貴方を、愛してます」




今回で本当に番外編が終了です。
続く5話をお楽しみください。
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