迷宮再走:もしくはTS幼女化■■■RTA   作:wind

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気付いたらお気に入りが114件突破してて、追加で11人に評価されてた(震え声)
評価10を入れてくれた人もいてとても嬉しい。感想も8件頂けました。
やはりホモは寛容…。有難み…。優しさ…。

読者さまの感想と評価が作者の燃料なんだよね、それ一番言われてるから(真理)

帰宅後急いで書いたので、誤字があっても許してください!なんでもしますから!


パワーレベリング:ケアフリィ・フラッグザフラッグ

 

 

 

 

 

いつもの酒場。

いつもの朝食。

いつも座る席。

 

探索者は、日々のルーチンワークを大事にする。

己だけのこだわりを持ち、それを維持するのだ。

 

たわいもない日常の繰り返し。

しかしそれは、生還せねば出来ぬこと。

明日をも知れぬ探索者にとって、それは何よりも得難い勲章である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはようございます!」

 

「はい、おはようございます。今朝ごはん持ってきますね。」

 

「頼むぜ、メイファ。あと果物の盛り合わせも一つ。」

 

「はーい!」

 

 

 

無事最初の迷宮を踏破した、翌日。

 

 

いつもの席に三人で座り、朝食を食べる。

今日のスープはトマトベース。なんだか甘い。

匙で掬うと、干しブドウが顔を出した。

ここの店主、腕は良いんだが時々挑戦的な料理を出してくる。

見慣れぬスパイスや果物やら、中々変なものも多い。

向上心や探究心があるのは結構だが、出来れば味を安定させてほしい。

まぁ食えないレベルは出てこないし、何やかんや飽きも来ないので嫌いではないけども。

 

 

「嬢ちゃん、その青い服似合ってるな。ヒューゴも中々良い趣味してる。」

 

「ザックさんもそう思います?これ、軽いし邪魔にならないし凄いんですよ!」

 

「はっはっは、服といいそのメイスといい、パーティの仲が良好みたいで良かったよ。」

 

「………なんだよ、ザック。」

 

 

ザックはなんだか生ぬるい目で俺を見てくる。

…なんだよ!

甘やかしてるってか!?

新人の教育に悪いってか!?

自覚はあるよ!

 

 

「いや、それだけじゃないってか…。

 そこで新人の今後を慮る辺りに、人の好さが滲んでるってか…。

 便利屋扱いもむべなるかなって感じだな。」

 

「いやぁヒューゴさんには良い服も良い武器も頂いちゃいまして…。」

 

「ま、昨日に関しちゃどっちも重要じゃなかったように思うがな。

 多分今ザックが思ってるより、嬢ちゃんは大分強いぞ。」

 

「この細腕前衛職が?」

 

 

ザックの訝しむような視線。

嬢ちゃんを上から下から、そしてもう一回上から視線を動かし、胸の辺りを眺め言う。

 

 

「とてもそうは見えんがなぁ…。

 まぁ、動き易そうな体はしてるがね。HAHAHAHA!」

 

「セクハラだぞお前…。」

 

 

嬢ちゃんの方に目をやると、気にした様子もなくパンを頬張っている。

もっと落ち着いて食べろよ…。

 

 

「んじゃ、そろそろ探索に行ってくるか。

 嬢ちゃんも、保護者の言うことは良く聞けよ~。」

 

「はい、ザックさん。また明日~。」

 

「誰が保護者だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ええい、調子の狂う…!

 まぁ、いい。嬢ちゃん、今日は一夜茸の迷宮に行こうと思う。」

 

「良いっすねぇ、キノコ!じゃけん夜行きましょうね!」

 

「まずは昼に行って下見してからだ。

 …というか、知ってるんだな夜迷宮。」

 

「そりゃ、ランク上昇の近道っすからね。サクサク行きましょう、サクサク!」

 

 

随分と気軽に言う。

夜迷宮ってのは、時間帯などの要件で魔物が顕著に狂暴化する迷宮のことだ。

昇級のための迷宮踏破実績において、狂暴化時間帯に踏破するとプラス査定が付く。

魔物や罠のラインナップも変わるため、情報収集の大事さを教える意味も込めて、滑石ランクの迷宮にもいくつか夜迷宮が含まれている。

一夜茸の迷宮はその中でも難易度上昇の幅が大きく、天狗になった新人をぶち込むには良い迷宮だった。

 

俺も昔は調子に乗って挑み、パーティメンバー共々キノコに追い回された。

くくく、今から慌てふためくであろう姿が楽しみだぜ。

このままの調子じゃ、自分一人でも迷宮探索が出来ると勘違いしかねない。

新人の鼻っ柱なぞ、早く折るに越したことはないのだ。

 

迷宮は夜12時になった瞬間変形を始め、中の探索者を追い出す。

一夜茸の迷宮を踏破するには、21時からのたった三時間しかない。

焦って進み、キノコに殴り倒されるのがオチだ。

もし仮に踏破できるなら石膏迷宮に連れて行くのもやぶさかじゃあないが、まず無理だろう。

 

 

 

 

 

 

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「ふーむ、罠もたいしたことなさそうっすね。

 ヒューゴさんの『罠解除』で一発っす。」

 

「まぁ、言っても滑石迷宮だからな。魔物も嬢ちゃんなら問題なさそうだ。」

 

 

わざと油断させるような言葉を言っておく。

俺は支援魔術の他にも鑑定や罠解除・回復魔術も使用できるが、即死されてはどうしようもない。

結局本人の防衛意識や気構えが、探索者には必要不可欠だ。

ミスっても即死しない低ランク迷宮の内に、そうした意識を養わなければならない。

 

 

「ここで半分、マッピングも粗々終わったな。そろそろ帰るか。」

 

「えー?このままとりあえず最後まで行きましょうよ。」

 

「本命は夜だからな、今の疲れ残したってしょうがねぇだろ。」

 

「まぁヒューゴさんがそういうなら…。」

 

 

巻物(スクロール)を起動し、迷宮から脱出する。

迷宮から出る分にはこれで一発だ。

再突入時にはまた最初からだが、今日はマッピングで道順を確かめたので手早く進めるだろう。

 

迷っても巻物一発で帰還できるし、一日経てば無駄になるマッピングを軽視する探索者も多い。

しかし階段や宝物を見逃さずに済むのはでかい。

それにマッピングを続けていると、なんだか迷宮の変形に対する当て勘が生まれる気がするのだ。

…気のせいかもしれんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼過ぎ、鴉の止まり木亭に戻り昼飯を食べる。

ここのは比較的美味いが、やはり携帯食料より普通の飯の方が良い。

 

ランチは既に終わっている時間帯だったが、余っているからとメイファがランチを持ってきてくれた。

 

 

「ヒューゴさんの仕事を疑う訳じゃないけど、流石にキノコ相手はまだ早くない?」

 

「まぁ軽く戦わせて帰るだけだ。駄目そうなら早めに連れ帰る。」

 

「もっしゃもっしゃもっしゃもっしゃ。」

 

 

相変わらずせわしなく飯を食べる嬢ちゃんをよそに、メイファに事情説明。

押し付けられたとはいえ、依頼主には変わりがない。

途中経過を報告する必要がある。

ついでに一夜茸の迷宮への突入時間を伝え、夜食と携帯食料の準備を依頼。

このくらいは依頼の必要経費としてロハで出してもらう。

 

 

「むー…。分かりました。でもその分、あの子に怪我とかさせたらダメですからね!」

 

「はいはい、依頼はしっかりやりますからよ…。」

 

「キノコなんざ余裕っすよ、よゆー!」

 

 

ちょっと調子乗りすぎじゃない?

こいつ、まだ一個迷宮踏破しただけだよな?

 

こっちが仕向けた面もあるといえ、大丈夫なのかこいつ…。

 

 

 

 

 

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不安になってきたので、中央広場の自由市に向かう。

まだ服しか装備品のない嬢ちゃんのために、アクセサリの一つも買っておこうと思ったためだ。

流石にあの慢心っぷりはヤバイ。

 

 

「何か良いの、ありますかね~。」

 

「それを探すのが、自由市の醍醐味だ。」

 

「それもそうっす。じゃ、俺向こう行くから…。」

 

「おい、待て!」

 

 

いきなりフラフラ路地裏に行こうとした嬢ちゃんを引き留める。

嬢ちゃんは体力回復のために寝かせといて、その間に買ってこようとしていたが、本人がついてきた。

正直こう人の多い自由市なんかに嬢ちゃんをつれてきたら、拉致られそうで嫌だったのだが。

案の定、本人の防衛意識が低すぎる。

 

 

「いや、こういうのはちょっと路地入った所とかに、良い店があるもんなんす。

 もう昼過ぎっすよ?中心部の店からは、もう良いものは無くなってます。」

 

「(意外にも)一理あるな。」

 

「でしょー?」

 

「だが、一人で行くのは危険すぎる。俺から離れるなよ。」

 

「押っ忍お願いしまーす。」

 

 

本当に危険性分かってんのかこいつ…。不安だ、不安しかない。

 

中央広場の自由市では、簡単な登録だけで個人が商店を開くことが出来る。

迷宮産の宝物の売買や装備品の購入、消耗品のまとめ買いなど探索者とは縁深い。

もちろん売られている品は玉石混交だが、個人認証カードと獅子心騎士団の取り締まりにより露骨な悪性商人は少ない。

そういうのは地下に潜っていると聞くが、まぁそのうちに獅子心騎士団が潰すだろう。

彼らの治安維持にかける情熱は並大抵ではなく、探索者だろうが蹴散らす武力もある。

 

 

 

 

 

だから、この露骨に怪しい商店も実際には問題ない、はずだ。

…多分。

 

 

「ヤスイヨ、ヤスイヨー。」

「お嬢さん、お目が高いネ。」

「あーソレいいよ、いいものだヨー。」

 

「ほー、装備品もあるみたいっす。寄ってきましょう!」

 

「いやいやいや、怪しすぎるだろ…。」

 

「えー…。」

 

「装備品、ありますあります。お兄さん、プレゼントも男の甲斐性ヨー。」

 

「余計なお世話だよ!」

 

 

疲れる。

怪しい上に、変に押しが強い。

 

掛けられる声に追い立てられ、路地の奥へ奥へと進んでしまう。

路地裏には妙に怪しい店が多かった。

しかも後ろ暗い商品とかヤバイ人ではなく、胡散臭い系の商人。

正直こんなところで、探索に使う装備品を買う気にはならない!

 

 

 

 

 

「何なんだここ…。」

 

「なんだ?人の店の前で、随分な物言いだな。」

 

「おっと、こりゃ失礼。…あんたは?」

 

「見りゃ分かんだろ。」

 

 

突然の渋い声に驚く。

そこには簡易な椅子と茣蓙でいくつか装飾品を売る、中折帽子の男がいた。

見りゃ分かるとは言うが、体格といい筋肉といい熟練の戦士のソレである。

 

 

「こんな奥で店開いて、客は来るのか?」

 

「現にお前が来たじゃねぇか。それとも何か?冷やかしか?」

 

「いや…イヤリングとか、あるか?」

 

「あるよ。装備品と装飾品、どっちだ。」

 

「装備品の方を頼む。…出来れば、穴開けるタイプじゃない方が良いんだが。」

 

「ふん、そういう用途か。ちょっと待ってろ。」

 

 

帽子の男はがさごそと横に置いていた袋を漁りだす。

容量拡張の魔法が付与された、大きな袋。

このサイズだと、中々の高級品のはずだ。

 

 

…さっきの似非商人との対比もあってか、なんだかこの渋い男なら期待できる気がしてくる。

嬢ちゃんじゃないが、こういう路地で良い店を発掘するってのはなんだかロマンがあるしな。

そして帽子の男が取り出したのは、期待に違わぬ洒落た代物だった。

 

 

「これは、水晶っすかね?」

 

「ああ。魔法吸着の挟み込み式だ。これならお嬢さんの体に傷を残すこともあるまい。」

 

「ヒューゴさん、そこ気にしてたんすか?」

 

「…まぁな。さっきの店でピアス見てたけどよ、あそこのは穴開けるタイプだったからよ…。」

 

「ちなみに、効果は一回限りの状態異常無効だ。お守りとしちゃあ丁度良いだろう。」

 

 

しっかりお嬢さんを守ってやんな…。

人生の酸いも甘いも噛み分けたであろう、渋い声で帽子の男は言う。

中々格好いいじゃねーか。

対価を支払い、イヤリングを受け取る。

 

 

「へへ、ヒューゴさん、付けてみても良いですか?」

 

「おう。」

 

「どう、ですか。似合います?」

 

「まったく見せつけやがって。邪魔者は退散するとしよう。」

 

 

そんな色っぽい関係じゃない。

俺はそう言おうとしたが、嬢ちゃんの輝く笑顔に台詞を飲み込んだ。

まぁ、これだけ喜んでくれることに悪い気はしないのも事実だしな。

 

 

「ありがとうございます、ヒューゴさん!プレゼント、大事にしま「パキンッ」」

 

 

パキン?

見ると、嬢ちゃんの右の耳元。

先ほど買った水晶のイヤリング。

その角ばったハートが、真ん中で真っ二つに割れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野郎!粗悪品掴ませやがった!!!

 

 

そそくさと立ち去る、帽子野郎の腰元にタックル。

ふざけんじゃねぇよお前これどうしてくれんだよ!

 

 

「はなせコラ!一回状態異常防いだら壊れんだよ!仕様だ仕様!」

 

「ざけんな、今なんの状態異常が発生したってんだ適当言ってんじゃねぇ!」

 

「ヒューゴさん、大丈夫っす。大事なのは機能じゃなく、プレゼントに籠った気持ちっすから…!」

 

「大事なのは機能だよ!お前それ探索用の装備品だからね!?帽子、てめぇもせめて代替品置いていきやがれ!」

 

「ちっ、じゃあもう一個同じのやるよ。」

 

 

手渡されたのは、見る限りさっきと同じ水晶のハート。

帽子男を拘束しながら、嬢ちゃんの左耳に付けてやる。

 

 

…パキンッ。

やっぱり壊れてるじゃないか(憤怒)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局全然別の品を買って、鴉の止まり木亭に帰ることになった。

正直迷宮探索より疲れた…。

 

 

 

 

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(露骨な伏線)

(帽子の製品は粗悪品では)ないです。

 

いやぁ、ちょっとプレゼント贈られて付けてもらっただけで進行する状態異常とか怖いな~戸締りしとこ。

 

 

次回、「パワーレベリング:キノコ・イン・フレイム」は明日です(クロックアップ)

 

 

 


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