強くてニューゲーム   作:トモちゃん
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アインズ「そうだ、ドワーフの国に行こう」


12話

「今日はシャルティアか…」

 

アインズはふう、と溜息を吐く。

シャルティアのことは嫌いではない。

一心に自分を思ってくれることは素直に嬉しく思う。

しかし、どうにも体が幼すぎる。ぺったんこ過ぎるのは不味いんじゃないだろうか?

ぺロロンチーノの趣味はどうにかならなかったのか、いや、どうにもならないだろう。

 

「ごめんね。うちの弟、馬鹿なの」

 

心のぶくぶく茶釜が謝る。

 

「仕方ないですよ。ぺロロンチーノさんですからね」

 

アインズも心の中で返す。そう、仕方ないんだ。ぺロロンチーノだから。それに、シャルティアは胸が小さい大人の女性だから問題はない。フラットフットさんもそう言っていた。

シャルティアを作った時のぺロロンチーノを思い出す。嬉しそうにシャルティアの設定を語ってくれたものだ。

 

「まず、シャルティアは女性もイケます」

 

違う、そうじゃない。

 

「あと、右の乳首の方が感じやすいんです。縛ったりするのも喜びますよ。SもMも両方いけますからね、ハイブリッドですよ。エロゲーっぽく、お尻でも感じる設定ですから最初から全力で楽しめますよ。そうそう、何でシャルティアがアンデッドなのか知ってます?色素が沈着しないんですよ。ふふふ、どれだけやっても乳首とアソコがピンクなのは男のロマンですよね。いや~、この設定考えたとき、俺、自分のことが天才だって思いましたよ。モモンガさん、やっぱりゲームって最高ですね。あれ?どうしたんです? 後ろ? 後ろがどうかしたんですか? 」

 

ぺロロンチーノとの思い出を聞かせて上げようと思っていたが、今日は止めておこう。

それにしても、男の夢、ハーレムの筈なのにどうしてこう嬉しくないのか。

やがて、ノックの音が聞こえてくる。

さあ、今日最大の戦いがこれから始まる。覚悟を決める時だ。

 

アインズに腕枕されているシャルティアは頬を赤く染めてうっとりとした表情をしている。

 

「アインズ様、素敵でありんした」

 

アインズは、優しく髪をすく様に頭をなでる。まるで猫のように頭を擦り付けてくる。こうしていると本当に可愛い。

今日はたったの15回で済んだ、良かったとか思わされなければもっと良いのに。

 

「アインズ様?私、お願いがありんすの」

「ほう、お前がお願いとは珍しいな。どんなことだ? 聞かせてくれるか? 」

「ええ、次回の伽にユリも呼んで、3Pし「却下だ」

 

シャルティアといえば、前世でドワーフの国に供をさせたことを思い出した。

データクリスタルの入手が出来ない以上、それに代わる手段の入手は急務だ。

前世ではルーン文字がそれに相当したが、今回も活用させてもらおう。

前回の研究成果は大図書館においてある。ドワーフ達にも2周目無双を楽しんでもらうとしよう。

それに、上手くいけば更に進んだ技術の開発も出来るかもしれない。

そうと決まればドワーフの国に行こう。決して、夜のお勤めから逃げたい訳ではない。

アルベドはナザリックやエ・ランテルの管理があるし、シャルティアにはナザリックの警備をさせよう。

供はアウラとその魔獣だけで十分だろう。

 

 

―リザードマンの集落―

「魔導王陛下、ようこそお越し下さいました」

 

リザードマンの統一部族長シャースーリュー・シャシャを筆頭にリザードマンたちが跪く。

 

「面を上げよ」

 

一斉に顔を上げるリザードマンたちの目には忠誠と信仰の光がある。

今世でもコキュートスの統治は上手くいっているようだ。意外と、デミウルゴスよりも統治者としては優秀かもしれない。

 

「良い統治をしているようだな、コキュートス。やはりお前に任せて正解だった」

「勿体無イオ言葉。全テハアインズ様ノゴ指導ノ賜物デス」

「ふふふ、では、私の目が確かだったということにしておこう」

 

至高の主に褒められることは僕にとってこれ以上無い喜び。

表には出さないが、コキュートスは天にも昇る気分でいた。

 

「さて、連絡した通り、これより私はドワーフの国に行く。彼らの王都を奪還し、友好関係を築くためにな」

 

ドワーフと聞き、右腕だけが太いリザードマンの尻尾がピクリと揺れる。

 

「安心せよ、ゼンベル。友好関係を築くと言っただろう?不安に思うようなことはない」

「はっ。申し訳ございません」

 

ゼンベルと呼ばれたリザードマンが頭を下げる。

アインズは長年多種族を支配してきた。

その経験から、ほぼどんな種族であっても、その表情や感情を読み取ることが出来るようになっていた。

 

「まあ、力で侵略してきた我らを不安に思う気持ちは分からんではないがな」

「そのようなことはございません!」

 

驚くほど大きな声を上げたのは白いリザードマン、クルシュ・ルールー。

 

「魔導王陛下の試練があったればこそ、こうして私たちは一つの部族となれたのです。感謝こそあれ、不満や不安などあろうはずがありません」

 

 

リザードマンへの侵攻の流れは、前世と大体同じだ。

リザードマンの全戦力を集めさせ、アンデッドの軍勢と戦わせた。

但し、デミウルゴスのアドバイスもあり、前世と異なり、コキュートスは当然のように勝利した。

リザードマンの長達は、自分たちの命と引き換えに民の安全を懇願した。

 

「ならば、その命の輝きを身をもって示せ」

 

アインズの言葉によって、コキュートスと長達との戦いが始まり、前世同様、コキュートスの勝利によって終わった。

その後、全ての死者を生き返らせたアインズはリザードマンたちにこう告げた。

 

「お前たちの命の輝きは見届けた。これより、私こそがお前たちのただ一人の主である。祖先への感謝と同様、私への忠誠を忘れることが無ければ、お前たちリザードマンは繁栄の時を迎えるであろう」

 

全てのリザードマンたちは大いに驚いた。まさか祖霊の信仰を認めてくれるとは。

自分たちを庇護してくれる神は、強く、寛容さに満ちていた。

それからのリザードマンの集落はあっという間に発展していった。

アインズから齎された魚の養殖方法は、ザリュースのそれよりも遥かに優れたもので、数年もしないうちにリザードマン全員を食わせても余りある程の収穫が期待出来るだろう。

ここで技術を覚えたリザードマンの一部は、カッツェ平原の穀倉地帯に作られた湖で魚の養殖をしている。

エ・ランテルで新鮮な魚が食卓に上るようになるのも、もうすぐだろう。

また、族長などの一部の強者たちはナザリックで修業させたりもしている。この辺りは前世と同じだ。

内政面では、コキュートスの下に元族長のシャースーリューとキュクー・ズーズーを付け、リザードマン独自の文化にも配慮するよう、気を付けている。

近いうちに学校を作り、子供たちに教育を施そうとも考えている。害にならない程度に、ではあるが。

 

「さて、ゼンベルよ。お前は今のドワーフの国の状況を知っているか?」

「いえ、俺がドワーフの国にいたのはもう何年も前のことなんで、今のことは分かりません」

「そうだろうな。現在、ドワーフの国は滅亡の危機にある。クアゴアとかいう種族の侵略によってな」

「クアゴアってのは聞いたことがありますぜ。だったら俺も連れて行って下さい。ドワーフには恩義がある」

「良いだろう。リザードマンからはお前と、ザリュース、お前もこい」

「畏まりました。陛下の為、全力を尽くします」

「私の為でもあるが、これはリザードマンの為でもある。共通の敵と戦うことで、ドワーフの、リザードマンという亜人種に対する偏見を減らすことが目的だ」

 

亜人に偏見を持たないドワーフの姿を見れば、エ・ランテルの人間たちにも影響があるだろう。

亜人種への偏見を取り払うのは前世でも苦労したものだ。

 

「では、両名には必要なアイテムを貸与する。すぐに出発する。戦闘になる可能性は非常に高い。気を引き締めろ」

 

ナザリックでの地獄の特訓の成果を見せる時がきた。

二人のリザードマンはニヤリ、と不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

―ドワーフの国、大裂け目の砦―

「オラぁ!」

 

気合と共に繰り出した剛腕にクアゴアが吹き飛ばされる。

 

「おう!助けに来たぜ!」

 

牙をむくリザードマン―恐らく、笑顔を見せてくれたのだろう―は意外な言葉と共に加勢してくれた。

右腕が太いこのリザードマンのことは聞いたことがある。数年前、あるドワーフの下で修業していた奴だ。

どちらのリザードマンも素晴らしいとしか言えない装備を身に着けている。あの鎧に刻まれた文字は、ルーンだろうか?

この危機に助けに来てくれるとは、リザードマンというのは義理堅い種族だな。

総司令官は、現実離れした光景を見ながらそんなことを考えていた。

 

「よそ見するなよ、ゼンベル!」

 

もう一人のリザードマンは三叉の短剣のような武器を奮っている。

魔法の武器らしく、冷気と斬撃に対して耐性を持つクアゴアの体を易々と切り裂いている。

彼ら二人だけだったら良かった。種族を超えた熱い友情。英雄譚にでも語られそうな良い話だ。酒の肴に持って来いだ。

現実逃避を始めた総司令官の目の前で“それ”が魔法を放つ。

大量のクアゴアの丸焼きが出来上がり、戦闘と、総司令官の現実逃避の時間は終わった。

 

「皆、無事かね?」

 

先ほど魔法を放ったアンデッドは会話ができるようだ。

高位のアンデッドは人間と取引する知能があるものもいると聞いたことがある。

 

「危ないところを救っていただき、感謝の念に堪えません」

「何、実はこのアイテムでアゼルリシア山脈を調査していたところ、今回の戦闘が目に入ってね。助けに来たという訳だ」

 

虚空から遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を取り出し、操作してみせる。

 

「こ、このようなアイテムがあるのですか!」

 

軍事を担当している総司令官からすれば、相手の情報が手に取るように分かるこのアイテムは、恐るべき情報兵器といえた。

 

「アインズ様、敵は撤退したようです」

 

従者だろうか?闇妖精の少年が報告を上げる。

 

「うむ、一旦は落ち着いたかな?総司令官殿、この国は摂政会によって成っているのだったな。案内してくれるか?」

 

アインズ・ウール・ゴウン魔導王と名乗るこのアンデッドは人間の国の王だという。

先日建国したばかりだと言うが、法国を併呑し、アンデッド多発地帯のカッツェ平原、トブの大森林を領土に持つとか。

評議国や帝国とも友好関係を築いているらしいが、この王の力なら容易いのだろう。そう思わせるだけの力と威厳が魔導王にはあった。

 

―摂政会にて―

「私が、今紹介に預かった魔導国の王、アインズ・ウール・ゴウンである」

 

その声だけで、威厳と魅力を感じさせる魔導王と名乗るアンデッド。

総司令官以外の摂政会メンバーが総司令官を睨みつける。

目が語っている。「何というものを連れてきたんじゃ」と。

確かにクアゴア程度は軽く倒せるほど強いのだろうが、ヤバいにもほどがある相手だろう。

まだドラゴンの方がマシだとさえ言える。

摂政会の紹介と国を救ってもらったことへの礼の後、本題に入ることにする。

このアンデッドがクアゴアをけしかけた可能性だってあるのだから。

 

「陛下がお力を貸して下さるのであれば、非常に心強いですが、我々に何を望まれるのですか?見ての通り、私たちには陛下にとって価値のあるものなど何もありません」

「そのようなことは無い。君たちの国のルーン工匠を我が国に招聘したいのだよ」

「え?ですが、今時、ルーンなど。通常の魔化の方がよっぽど優れておりますぞ。陛下の国であれば、そのような者はいくらでも居られるのでは?」

 

アインズは虚空から一振りの剣を取り出す。

 

「これを見給え。かつて、我が国で作らせたルーンの逸品だ」

 

その剣は12のルーンが刻まれている。ユグドラシルのそれとは違い、この世界のルーン技術で作られたものだ。

最初に招聘したルーン工匠たちが最後に作った、アインズにとっても思い出深い一品。

 

「こ、これ程の剣を作れるのか?」

 

鍛冶工房長が口から唾を飛ばしながら立ち上がる。

 

「なんちゅう逸品じゃ…」

 

ドワーフ達は口々に感嘆の声を上げる。

 

「この剣は、今、この国にいるドワーフ達だけでは作れないだろう。だが、私の知識と協力があればこの技術を蘇らせることが出来る」

 

これ程のものが作れるのなら、魔導王の提案も納得だ。いや、それ以外に報酬になるものなど無いだろう。

一部に反対の声があったが、交渉は問題無く纏まった。

 

―ドワーフの国、会議場の一室―

「お前たちがこの国のルーン工匠だな?」

 

アインズの前には、この国のルーン工匠が集められていた。

恐るべき力を持ったアンデッドを前に、皆、蒼白な顔をしている。

 

「(総司令官の奴、儂等を騙したのか?何が恐ろしいアンデッドじゃ。超恐ろしいの間違いじゃろが)そ、そうで、す」

 

恐怖のせいか、舌が上手く回らない。

 

「恐れるのも無理はないが、君たちにとっては、話を聞いて損はないと思うぞ?」

 

何を言われるのだろうか、ゴクリの喉をならす。

 

「さて、君たちには、我が国でルーンの技術開発と生産をしてもらいたい」

「じゃが、ルーンなど、もう時代遅れのもんじゃぞ?生産性も性能も魔化には敵わん」

「君たちの持っている技術ではそうだろう。これを見給え」

 

アインズが取り出したのは、先ほど摂政会で見せた剣。

前世では、今、目の前にいる彼らが努力の果てに作り上げたものだ。

この剣を作った時のドワーフたちの表情が思い出される。皆、やり遂げた男の顔をしていた。

アインズも嬉しくて、精神の沈静化が起きるほどだった。

 

「お前たちが作ったものだ。この技術を再現して欲しいのだ」

 

ドワーフたちの目の色が変わる。

自分たちがこれを作ることが出来るのか?これ以上腕が上がったとして、これを作れるのか?いや、無理だ。

 

しかし、魔導王は今、何と言った? お前たちが作ったと言ったのだ。

悠久を生きる魔導王にとって、これを作ったドワーフも、今の時代を生きるドワーフも同じなのだ。

過去のドワーフに出来てお前たちに出来ないのか? 魔導王は、そう言っているのだ。

これは魔導王からの挑戦状であり、激励の言葉だ。お前たちなら出来るだろう? という。

ならば、返す言葉は決まっている。

 

「作りたいぞ。いや、作ってみせる」

「お前さんでは無理じゃ。儂が作るんじゃ」

 

いや、儂が。儂が。というドワーフたちの姿を見てアインズは破顔する。

やはり、このドワーフたちの暑苦しさは心地好い。

 

「この国のルーン技術が衰退したのは個人で工房を持つようになったからなのだよ」

「ん?工匠が自分の工房を持つのは当たり前のことじゃろ?」

 

何を当たり前のことを、と言わんばかりのドワーフにアインズが説明する。

 

「ふむ、良いかな?この剣を作ったのは一人ではない。3名のルーン工匠が同時に文字を刻んだのだ」

「え?じゃが、ルーンは工匠の能力を超えた分は歪んでしまうものじゃぞ?」

「ルーンは魔力を持った文字、つまり、魔法の儀式と同様だよ。複数の工匠が力を合わせることでより高度なルーンを刻むことが出来るようになるのだ」

 

アインズは、これが研究成果の一部だと一冊の本を取り出した。

 

「これは、我が国の国家機密といって良い、極めて重要なものだ。受け取ったなら、引き返すことは出来ない。どうするね? 高みを目指さず、家族と共に、生まれ故郷で過ごすという生き方も否定はしない」

 

自分たちルーン工匠はこのまま腐っていくだけだった。過去の栄光にしがみ付いてルーン工匠を名乗ってはいるが、実態は殆どない。

だが再び、今再び、ルーンは輝きを取り戻すチャンスを得たのだ。今までのルーン工匠の苦難の日々は、今、この時の為にあったのだ。

 

「儂の人生は魔導王陛下に捧げる。頼む、儂を連れて行ってくれ」

 

一人を皮切りに、儂も儂もと騒ぎ始める。非常に煩いが、今日はそれも楽しいと思える。

 

「良かろう。皆、来てくれるということで良いのだな? それと、分かると思うが、これは国家事業になる。技術を持って独立するようなことも出来ん。それでも良いのか? 」

 

ドワーフたちは皆、燃える瞳で首肯する。

 

「ふむ、では、これを渡しておこう」

 

剣と、技術書をドワーフの一人に手渡す。

 

「お預り致します。魔導王陛下」

「それと、ついでにこれも渡しておこう。我が国の酒だ。後で感想を聞かせてくれると助かる。値段もラベルに書いてあるのでそれも含めて頼む」

 

虚空からいくつかの瓶を取り出し、手渡していく。

 

「おう、ゴン坊!今日は付き合えよ?飲み明かすぞ」

「儂は、余り酒は好きではないんじゃが、今日は別じゃな。おう、潰れるまで付き合うわい」

「うむ、私は明日から旧王都へ向かう。明後日か、その翌日位には帰ってくるので、後の話はその時にな」

「王都?あそこはドラゴンに奪われたところじゃぞ? 」

「ああ、だから、それを取り戻しに行くのだよ。何、すぐに帰ってくる」

 

忘れ物を取りに帰るような感じで軽く言ってのける。

魔導王が失敗する可能性を考えるものなど、いる筈も無かった。

 




ぺロロンチーノ「姉ちゃん、もう足が痺れてきたんだけど・・・」
ぶくぶく茶釜「あぁん? (低音)」
ぺロロンチーノ「ごめんなさい。何でもないです」




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