強くてニューゲーム   作:トモちゃん
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オルランド「俺より強い奴に会いに来た」


18話

ケラルト・カストディオは、数名の従者に二人の戦士を加え、エ・ランテルの門を潜った。

入門時の講習で知ってはいたが、本当に都市の中をアンデッドや亜人共が闊歩している。

そのアンデッドもただのスケルトンやゾンビなどの低級なものでは無い。

デスナイトやソウルイーターなど、一体で国を堕とせるという伝説の化け物ぞろいだ。

こんなものを完全にコントロールするなど、俄かには信じがたいが、目の前に存在する以上、幻では無いと認めざるを得ない。

 

建国祭の招待は断った。アンデッドの国など、認められるはずがないからだ。

だが、法国を併呑し、評議国と同盟を結んだ。

そして、王国も併呑したとなれば、見過ごすわけにはいかない。

帝国とも友好関係を築いていると聞く。

下手をすれば、人類国家で聖王国だけが孤立することになりかねない。

何より、アベリオン丘陵の亜人たちを支配下に置き、魔導国の版図に組み込んだという。

今回の目的はエ・ランテルの、魔導国の視察であるが、魔導王の力を見極めることが最重要課題だ。

ついて早々、心が折れかけているが。

 

目の前を亜人の一団が通り過ぎていく。

 

「嘘だろ? おい、ちょっと待て! 」

 

突然叫んだのは九色の一人、オルランド・カンパーノ。

 

「ん? 何だ? 人間か、何か用か? 」

 

バフォルクと呼ばれる亜人が振り返る。

 

「お前、まさか、バザーか? あの、あの豪王バザーか! 」

 

オルランドが超えるべき目標としているライバルの一人。

亜人を代表する強者が、何故ここにいるのか。

 

「ああ、そう言われたこともあるな。だが、今その名で呼ぶのは勘弁してくれ」

 

亜人の表情は良く分からないが、何となく気恥ずかしそうな、照れくさそうな感じに見える。

 

「お前は聖王国の戦士だな? …あ、あれか、お前、武器を壊す奴か! そっちの奴も知ってるぞ、狂眼の射手だな。ああ、お前らも魔導国に降ったのか」

「え? お前らが魔導国に降ったってマジな話なのか? おう、ちょっと話聞かせてくれや。ああ旦那、俺、ちょっとこいつと話してくるわ」

「ちょっと、オルランド何言ってんの? あんた私の護衛でしょ? 馬鹿なの? 」

 

呆気に取られていたケラルトがヒステリックに叫ぶ。

 

「あのな、嬢ちゃん、この国のアンデッド見たろ? ここで狼藉を働ける奴なんざいねえよ。行こうぜ、バザー」

「あ、おい、俺はまだ何も言って無いだろが。大体、俺は今から行くところがあるんだよ」

「ふーん、お前、雰囲気変わったか? 前はもっとこう、偉そうな喋り方だったろ? 」

「…うるせえな、こっちが素だよ。前は、これでも王様だったからな。今の方が気楽っちゃあ気楽だな、っておい、お前ら置いてくな」

 

一緒に歩いていた亜人たちはバザーを放ってスタスタと先に進んでいた。

 

「バザー、今日はコキュートス様が手ずからご指導下さるというのに、遅刻するつもりかえ? 」

 

氷炎雷と呼ばれる亜人、ナスレネが呆れたように溜息を吐く。

 

「そんな怖いことが出来るかよ、おい、オーランド、お前も来るなら来い」

「オルランドだ! 手前、旦那の二つ名覚えてて、何で俺の名前知らねえんだよ? 」

「良いから、来るならとっとと来い! 遅れたらマジでヤバいんだよ。あそこだ、あの建物。冒険者組合の訓練場」

 

訓練場と聞いて、思わずオルランドの顔がにやける。

 

「へへっ訓練場か、良いじゃねえか」

 

訓練だとしてもバザーと戦えるかもしれない。いや、この様子だと、もっと強者がいるかも知れない。

オルランドはワクワクしながら着いていった。行かなければ良かったと後悔するのは、このすぐ後だった。

 

 

 

 

―エ・ランテル内、とある酒場―

「クッソがー! 何だよあれ? 反則だろ? 木剣で鉄の鎧切るっておかしいだろ? 」

「まあ、コキュートス様だしな」

「仕方ねえよ、コキュートス様だしな」

「はっはっはっ、どうだ? 俺が豪王なんて名乗れると思うか? 」

 

オルランドは、訓練場で意気投合したリザードマン二人とバザーを加えて飲んでいた。

 

「お前が言ってたことが良く分かったよ、畜生。相手の攻撃受けたら剣が壊されるし、こっちの攻撃は指で優しく摘ままれるし」

「自信なくしたか? 今日はコキュートス様だったから、まだマシだぞ? っていうか、多分、一番優しいぞ? 」

「…嘘だろ? 」

「いやマジ、シャルティア様が相手だと心が折れる。ヴィジャーの奴がマジ泣きしてたな」

「マーレ様だと別の意味で心が折れるな。っと、おう姉ちゃん、酒と魚追加だ」

 

ウェイトレスに注文を追加する。慰めてくれるリザードマンの二人は良い奴らだ。

亜人にも良い奴がいるじゃねえか。そんなことを考えながら浴びるように酒を流し込む。

それにしても、この国の飯と酒は実に旨い。もうこの国に引っ越しても良いんじゃねえかな。

酔いつぶれたオルランドを担いで宿に運ぶことになるとは、この時のバザーは知らなかった。

 

 

 

 

 

―宿屋、黄金の輝き亭―

「そ・れ・で? 自分の仕事ほっぽり出して潰れるまで飲んでたの? しかも、亜人に運んでもらうなんて」

 

無理やり笑顔を作っているが、ケラルトの顔には血管が浮き出ている。

 

「ちょ、声でけえ。頭痛えからちょっと静かにしてくれや。あ、魔法かけてくれるか? 」

「ふざけんな! 」

 

宿中に響き渡ったのではないか、と思うほどの声を上げてケラルトは出て行った。

 

「クッソ、マジで痛え、旦那、薬持ってねえか? 」

「こんなことにポーション使えるわけないだろ。自業自得だ、諦めろ」

「あ~。…なあ、旦那。魔導国と戦争しようとか考えてるってマジか? 」

 

オルランドは、突然、低い声で、真剣な雰囲気で話し始めた。

 

「ああ、上はそんな考えらしいな。王国軍10万は、魔法一つで皆殺しにされたらしいが、信じてないようだな」

「軍隊の数が10万だったら10万、100万だったら100万人が死ぬぜ。もちろん聖王国の兵がな」

 

昨日、自分のことを、指導という名で叩きのめしたライトブルーの武人、いや、武神を思い出す。

 

「それ程か、魔導王と会ったわけではないのだろ? 」

「ああ、昨日のあれが仕えてるんだろ? 人間程度がどうこうできる相手な訳ねえよ」

「あれ? どれだよ? 」

「ん? ああ、昨日、バザーと一緒に訓練場に行ってな。ボコボコにされたわ、畜生」

 

こいつをボコボコに出来るっていうのはどれだけの化け物だ?

 

「どの位だ? 」

 

難度にしてどの位か、と聞いている。

 

「最低でも200以上。300って言われてもおかしかねえな」

「おい」

 

真面目に答えろ、そう続けることは出来なかった。オルランドの目が語っている。事実だと。

 

「実際に、戦争になるとしたらどうする? 」

「聖王女を殺るしかねえだろ。そんで白旗上げて全面降伏だ」

「お前、それでケラルトを追い出したのか」

「俺に政なんざ分かるわけねえだろ。だが、喧嘩は分かる。魔導国は絶対に喧嘩を売ったら不味い相手だ」

 

二人の溜息が重なる。思いは同じ、来なければ良かった。

 

 

 

 

 

―エ・ランテル城門―

城門前には、数多くの亜人、アンデッドが整然と並んでいる。

誰もが、立派な装備に身を包み、胸を張っている。

総大将はコキュートス、副官にマーレ。そしてもう一人、人間のノワールと名乗る少年。

 

「デハ、アインズ様、行ッテマイリマス。必ズヤ、勝利ヲ収メテゴ覧ニ入レマス」

「うむ、吉報を楽しみにしているぞ。お前たちの活躍、期待している。人と亜人の、新たなる関係をお前たちが築くのだ」

 

ビーストマンによって侵略を受けている竜王国を救うため、亜人の混成部隊がこれから出発する。

 

城壁の上では、市民たちが歓声を上げている。

エ・ランテルの市民は、驚くほどの速さで亜人を受け入れた。

或いは、アンデッドを受け入れることに比べれば、生者である亜人を受け入れることなど、大したことではないのかもしれない。

市民たちに交じって、ケラルト一行が魔導国の軍隊を眺めている。

 

「あれもあれも、あれもそうね、名のある亜人たちよ。まあ、あの総大将に比べれば大したことは無いんでしょうけど」

「聖王国の民を全て徴兵したところで、どれだけ対抗できるか」

「無理だろ旦那。大体、これは亜人と人間の友好関係を築くためのデモンストレーションだって話じゃねえか。本気の戦力じゃねえんだろ? 」

「はったりだと思いたいけど、この国を見る限り、本当でしょうね」

「一人でも聖王国を亡ぼせるのが何人も居やがる。戦争なんて考えるな。聖王女様を殴ってでも止めろよ、姉ちゃん」

「私だって馬鹿じゃないわよ。はあ、姉さんを説得するのに骨が折れるわ」

「この国を見せたらどうだ? レメディオスなら一発で分かるだろ」

 

レメディオスは脳筋と呼ばれるが、戦闘に関してだけは勘が鋭い。この国の戦力を見れば理解できる筈だ。

 

「そうね、帰ったらカルカに進言してみるわ」

 

明日には魔導王との謁見だ。今日は早めに休むとしよう。

 

「オルランド、貴方も明日、魔導王との謁見に来てもらうんだから、絶対二日酔いとかやめてよ」

「分かってるよ、俺だってそこまで馬鹿じゃねえ」

「任せろ、俺が見張ってる」

「頼むわね、パベル」

 

ケラルトは、出立していく軍勢を見ながら、不安に駆られていた。

姉が言うことを聞いてくれないのではないかという、漠然とした不安を。

 




コキュートス「国ヘ帰ルンダナ、オマエニモ家族ガイルダロウ」

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