強くてニューゲーム   作:トモちゃん

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レメディオス「いよいよ私の出番だ! 正義の力を見せてやろう」
ケラルト「……頭痛くなってきた」


20話

魔導王との会談は、驚愕の一言だった。

謁見の後、ケラルト・カストディオは魔導王との会談に臨んだ。

結果として、聖王国と魔導国は同盟を結ぶことになった。

ケラルトのそれは、明らかに越権行為であるが、これが最善であると判断していた。

 

当初、ケラルトが恐れていたのは魔導王の力、魔導国の戦力だった。

だが、会談にて、その認識は間違いだったと確信した。

魔導王は、聖王国との交易と、友好な関係を望んでいると語った。

そこまでは想定内であったが、その内容は驚くべきことであった。

街道の敷設、途中の交易都市の建設、その時期やコスト、人員に至るまで、既に完璧に計画されていた。

それによる経済効果も、具体的な数字を交えて説明される。全く、異論をはさむ余地が無い。

エ・ランテルの現状を見た今なら分かる。これは計画ではない。既に確定された未来の予定だ。

 

経済においても魔導王の知識、見識は自分たちの遥か先を行っていた。

巨大な企業により、いずれ経済を通して政治の世界も牛耳られるであろう未来。

それを防ぐための法律など、まるで未来を見てきたかのように説明してくれた。

それは非常に分かりやすく、また、実際の数値を交えて話されるため、説得力もあった。

ケラルトの優秀な頭には、魔導王の言葉通りの世界が見えていた。

 

更に驚くべきことに、領土の概念についても、魔導王は自分たちのそれを超越していた。

魔導国はフロストドラゴンを配下に加えたことにより、空輸が可能になった。

そこで、領空権というものを定義したいと言ってきた。

ドラゴンを使えば、道の如何に関わらず、荷物を輸送することが出来るが、混雑や事故を防ぐため、魔導国の領空としたいと。

勿論、騒音などは聞こえないような上空だし、日照権を侵害するようなことは無いと主張している。

確かに、人間に影響のない、遥か上空の領空権を主張したところで、誰も気にも留めないだろう。

それを実際に目にする迄は。

空を支配されれば、それこそ、魔導国の軍勢をドラゴンによって輸送することすら可能になるのだ。

だからと言って、聖王国が領空権を主張するのは難しい。彼らのように、実際に空を飛ぶ戦力があるわけではないからだ。

一度受け入れてしまえば覆すことなど出来ない。

魔導王は実効支配の実績を基に、領空権を主張するだろう。恐らく、誰も止めることは出来ず、世界の空は魔導国が支配することになる。

 

この国と戦争などと息巻いている馬鹿どもは、粛正してでも止めなければならない。

最悪、属国になることも視野に入れなくてはならない。

あのカルカと、何よりレメディオスに、その決断が出来るだろうか?

出来なければ、王国より酷い目に会うのは目に見えている。

これからがケラルトの戦いだ。

 

 

 

 

 

―ローブル聖王国首都ホバンス、王城の一室―

「馬鹿か! 何をやっているんだ? お前は何を考えている? 」

 

レメディオス・カストディオの怒声が響き渡る。

勝手に魔導国と同盟を結んできたケラルトに対し、怒りが収まらない。

どう考えても許されない越権行為だ。

流石のレメディオスだって、国と国の同盟が個人の判断でして良いものでは無いこと位は分かる。

 

「落ち着きなさい、レメディオス。ケラルト、貴方の考えを聞かせて頂戴。何故、勝手に同盟を結ぶなんてことをしたの?」

「そうだ! お前たちも付いていながら何をしていたんだ! 」

「レメディオス、少し黙ってて」

 

聖王女、カルカ・ベサーレスには、ケラルトが何故独断専行したのかが全く分からない。

少なくとも、彼女はそんな浅慮な女性ではない筈だ。

 

「いや、俺らに政なんて分かるわけねえしな」

「おい、オルランド。ですが、レメディオス殿、私にも政は分かりません。また、我々は只の護衛、口を出して良いことでもありません」

 

護衛の二人も報告会に出席していた。いや、ケラルトの命令で強制的に連れてこられた。

 

「まずは、私の独断専行を謝罪します。それと、私の上げた報告書は読んだわね? 」

「これは冗談ではないのよね? 本当のことだと思うのだけど、貴方の口から聞かせて頂戴」

「間違いないわ。あの国と戦えば、いえ、敵対すれば亡国の未来しかないわ」

「何を馬鹿なことを言っている。私たちはアンデッドの天敵、聖騎士と神官だぞ? 負ける筈がない」

「あのな、レメディオスの嬢ちゃんよ。お前程度の力じゃ無理なんだよ。あの国は力の桁が違うんだ」

 

オルランドの無礼な言葉に、カッと頭に血が上る。

 

「何だと貴様! 私より弱いお前に何が分かる! 私では勝てないかどうか、知りたいなら表に出ろ! 」

 

英雄の領域に足を踏み入れているレメディオスの怒号も軽く聞き流し、オルランドは答える。

 

「あのな、嬢ちゃんよ。お前さんは俺より強い。それは事実だ。だがな、その程度じゃ話にならねえんだよ」

「まだ言うか、貴様!」

 

一触即発の雰囲気になったところで、慌ててパベルが止めに入る。

 

「レメディオス殿、少し落ち着け。それと、オルランドの言ってることは事実だ。正直、私たち程度ではあの国の強者とは戦えん」

「何を言ってるんだ? 一対一で勝てないなら、戦力を集中させれば良いだろう」

 

何を当たり前のことを言っているのだと馬鹿を見る目で二人を見るが、彼らはレメディオスを哀れんだ目で見返してくる。

 

「だからよ、俺たち程度じゃ、エ・ランテルで巡回してるアンデッドにすら勝てねえんだよ。この国で言ったら只の一兵卒だぞ? まして、将軍なんて化け物なんてレベルじゃねえ。俺たちじゃあ、時間稼ぎすら出来ねえよ。実際、俺も一太刀受け止めることすら出来なかったんだからな」

 

レメディオスもオルランドの気性は良く知っている。彼は自信家で、自分の力を誇りに思っている。決してこんな発言をするような男ではない。

 

「ケラルト、本当のことを言え。本当に私たちでは勝てないと思っているのか」

 

聖王女の片腕、自分の半身ともいうべき妹に問いかける。

 

「オルランドの言ってることは事実よ。私たちとは力の桁が違うの。もう一度言うわよ。あの国に敵対すれば滅亡が待っているわ」

 

レメディオスは歯を食いしばり、何も言わない。

 

「ケラルト、魔導王はどのような方なの? 聖王国でははっきりしたことは分からないの。直接お会いした貴方の印象を聞かせて」

「カルカ様、アンデッドのことなんて知る必要はない」

「レメディオス、黙りなさい」

 

いつもより少し低い声。カルカが本当に怒っているときの声だ。

 

「ケラルト、お願い」

「ええ、まず、街の治安は非常に良いわ。オルランドが言った通り、強力なアンデッドが巡回しているおかげで、狼藉を働くものというか、狼藉を働けるものはいないわね」

 

オルランドとパベルはエ・ランテルの美しい街並みを巡回するアンデッドを思い出す。

あの国で狼藉を働けるものが居れば見てみたいものだ。

 

「それから、人々の表情はとても明るいわ。誰もが口をそろえて魔導王の治世を讃えているわね。恐怖によって支配しているのではなく、民からも慕われているみたいね」

「あの国で魔導王の悪口を言ったら袋叩きにあうだろうぜ」

「というか、死者を生き返らせる奇跡を目にした連中からすれば、魔導王は神様だからな」

「ふん、死者の復活位、ケラルトだって出来るじゃないか」

「だから、レメディオスは黙ってて」

 

面白く無さそうに口を挟んでくるレメディオスを黙らせ、続きを促す。

 

「直接会った感想としては、非常に賢明な方だという印象を受けたわね。それと、魔導王は魔法だけに長けているわけではないわ。政にも、経済にも長けている」

「悠久の時を生きる賢者ということね。それにしても、政や経済にも詳しいって、元々王様なのかしら? 」

「そうみたいね。法国も、元々は魔導王が建国したって話だし」

「そんなもの、証拠も何もないじゃないか。どうせ只のでっち上げだろう」

「レメディオス! 」

 

レメディオスは、どうしても口を挟まずにはいられないのか、仏頂面で膨れている。

 

「ビーストマンたちに侵攻されている竜王国の窮状を救うため、兵を派遣しているし、武力を笠に侵略するつもりも無さそうよ」

「竜王国って、カッツェ平野を超えた先ね。エ・ランテルからだと結構遠回りになるわね」

「いや、カッツェ平野を真っ直ぐ突っ切ったでしょうね。今のカッツェ平野は一大穀倉地帯よ」

「あのアンデッド多発地帯で農業? そんなこと出来るの? 」

「そのアンデッドを使った大規模農場をやってるわ。一度見た方が良いわね。自分の認識が根っこから覆るわ」

「竜王国に向かった軍隊ってのはどんなのだ? 」

「ああ、それは俺をボコボコにした将軍が総大将でな、亜人の王とか部族長とかを纏め上げた軍だったな」

 

ボコボコにされたと言っているのに何故嬉しそうに話すんだ。レメディオスは思った。

 

「ええ、アベリオン丘陵の亜人が主力らしいわよ。亜人と人間の共存を目指す為、良い機会だとか」

「負けることとか考えてねえんじゃねえ。全く考える必要がねえんだ。そういう連中だぜ」

「……アベリオン丘陵の亜人たちか」

 

その後の報告会は、レメディオスが突然静かになったため、スムーズに進んだ。

ケラルトは同盟を結ぶために魔導国に向かったこととし、彼女の行動は不問とすることにした。

問題は、聖王国の南部側の貴族たちが魔導国に敵対する可能性だ。

最悪の場合は、南部を切り捨てることで決定した。

 

カルカがそれを決断するとは思いもよらなかったが、ケラルトにとっては都合がいい。

この際、南部の屑どもを一掃するのに、魔導国の力を借りるのも良いかも知れない。

 

ケラルトとカルカは、交易などについても考えなくてはならない。

これから、頭の痛くなるデスクワークが待っている。

 

その翌日だった。

レメディオスが聖騎士団を率いてアベリオン丘陵に隣接する砦に向かったという報が入ったのは。

聖王国の悲劇は、一人の聖騎士の暴走によって幕を開ける。

 




レメディオス「どうせ、魔導王の言ってることなんて只のでっち上げだ!」
アインズ「ドキッ」

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