恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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恋次元編
プロローグ ゲイムギョウ界は突然と共に


プロローグ

 

 

 

 

 

―――ここはゲイムギョウ界。

4つの国と、それを治める守護女神によって統治されし世界。

異なる4人の女神は、人々からの信仰を力の源とし、強大な力を振るうことで人々を守り、また人々から崇められてきた。

だからこそ、女神たちは人々の信仰心―――シェアを奪い合い様々な戦いを仕掛けた。

 

 

 

 

直接的な戦闘から、ゲーム大会、運動会、果てはトランプ……ここまでくるとある意味で仲良しこよしである。

 

 

 

 

 

話は戻る。ここはゲイムギョウ界。そこには4つの大陸があった。

 

 

 

 

 

 

 

科学技術の粋を集めた紫の国、プラネテューヌ。

 

 

 

 

 

 

 

重工業盛んな鉄と黒の国、ラステイション。

 

 

 

 

 

 

 

魔法に長けた雪と幻想の白の国、ルウィー。

 

 

 

 

 

 

 

自然と技術が融和した緑の国、リーンボックス。

 

 

 

 

 

 

 

それらを収める4人の女神は今、悠久の時を経て一つの戦いを終えようとしている。

これは、調停が結ばれようとする数日前のことだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――プラネテューヌ。

時間は夜。場所はこの国を象徴する建物、プラネタワーの屋上。

既に一般人は閉め出される時間帯であっても、二人の少女がその展望台から夜の街を見渡していた。

技術と発展の象徴であるネオンの光が彩るこの街を、誇らしく眺めている紫色の少女。

少女はパーカーワンピを着込み、頭に二つの十字キーのような髪飾りを付けている。

 

 

「……いよいよ後少しかぁ。 こう、数日後に迫ったビッグイベントの間には予想だにしない大事件が予想できるよね!」

 

 

物騒なことでも明るく笑い飛ばせる少女。

そうは見えないだろうが、彼女こそがこのプラネテューヌを治める守護女神。パープルハートこと「ネプテューヌ」。

大雑把かつ飛びぬけた明るさで人々を導き、歩み寄らせる。子供っぽい言動が多いものの、人を思いやるその姿はまさに女神だった。

 

 

「お姉ちゃん……お願いだから変なフラグ立てないで……。 もし変なことが起こったら、お姉ちゃんが企画したこの友好条約もパーになっちゃうんだよ?」

 

「ネプギアったら~。 そういう言動こそフラグだってのに! もー、私の妹も一級フラグ建築士だなぁ~」

 

 

隣に佇む長髪の少女、その名は「ネプギア」。

次期プラネテューヌ女神候補生にして、ネプテューヌの妹である。

少し控えめであるものの、しっかり者で礼儀正しいため寧ろ姉の方が窘められる今日この頃。大丈夫なのか、プラネテューヌの明日は。

 

 

「大丈夫大丈夫! でなきゃ、シリーズがいくつも発売されてないし、二次創作だって世に出回ってないし!」

 

「お姉ちゃん、地の文を読んじゃダメだよ……」

 

 

メタ発言も彼女の特権らしい。

 

 

「……お姉ちゃんは、これからどうするの?」

 

「ん? どうするって?」

 

「友好条約が結ばれたら、表向きだけでも平和になるんだよね。 そうなったら、お姉ちゃんはどうするのかなって」

 

「あー、そういう系かぁ~。 そうだなぁ、色んなゲームをやりまくるとかあるけど……」

 

「けど?」

 

 

下からはネオンの光、上からは月光と星の光。

それらに照らされながら夜風に吹かれているネプテューヌの顔は、どこか美しい。

同性で、しかも妹であるネプギアですら息を呑んでしまいそうな綺麗な瞳、そして笑顔。

 

 

 

 

 

 

「……私ね、もし叶うなら―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――時を同じくして、ラステイション。

重工業の国という重々しい外見の国だが、最近は環境整備にも力を入れているため、夜景に関してはプラネテューヌに引けを取らない独特の美しさがある。

それらを打ち出したのは、女神の中でも最も真面目と言われる黒の女神だった。

 

 

「……ふぅ、今日の仕事はこんなところかしらね。 一旦休憩~……」

 

 

その名は「ノワール」。名前の通りの美しい黒髪にツインテールを施した少女だ。

書き留めていた書類をファイルに閉じ、ペンを置いて背を伸ばす。

夕方から始めていた書類仕事も、すっかり月が天辺にまで差し掛かってしまう時刻だった。

そんな彼女の執務室に、控えめなノックがされた。

 

 

「お姉ちゃん、仕事終わった?」

 

「ユニ? ええ、大丈夫よ」

 

 

ノワールの声に応じて、扉が明けられた。

キィ、と軋みながら開けられた扉。その先に居たノワールに似た少女、その名は「ユニ」。

彼女もまた、ネプギアと同じく女神候補生。ラステイションの次期女神にして、ノワールの妹だった。

 

 

「お疲れ様、コーヒー淹れてきたんだけど……飲む?」

 

「ありがとう。 頂くわ」

 

 

妹の登場に少しだけ顔を強張らせるノワール。

ユニが嫌いなどではなく、むしろその逆で彼女を家族として愛しているからこそ厳しくせねばという彼女なりの姿勢から来るものだった。

心地よい音を奏でながらカップにコーヒーが注がれ、美しい音を立てながら薫り高いコーヒーがノワールの前に置かれる。

 

 

「……あと数日、だね」

 

「……ええ、友好条約。 ネプテューヌらしい甘々な意見だけど……まぁ、暴力的な行動は控えた方が国民受けもいいしね」

 

 

表面上、素っ気ない感想を述べるノワール。

彼女からすればネプテューヌら、他の女神とはシェアを奪い合う敵同士。しかし傍から見たら喧嘩友達のようなもの。

争いごとを良しとしないネプテューヌからの意見は政治的に見れば甘いの一言だが、彼女を良く知る者としては「仕方ない」と満更でもない表情を浮かべていた。

 

 

「まぁ、あれでも戦いになれば一番厄介だし。そういう意味では歯応えある戦いが出来なくなってつまらないと感じちゃうかもだけど」

 

「そうなったら、お姉ちゃんは次はどうするの?」

 

「次? 新しい目標ってこと?」

 

「うん!」

 

 

ユニは、ノワールを尊敬していた。

姉として、女神として。日々シェア獲得のため、国民のため誠心誠意クエストや仕事に臨む姿は彼女にとって格好良く映っていた。

だからこそ聞きたい。彼女がこの後、どんなビジョンを描いているのか。

 

 

「そうね…………当面は技術交流や貿易も盛んになるから、まずはラステイションの売り上げを伸ばす方向で行くわ」

 

「経済を回すってこと?」

 

「ええ。 国が豊かになれば、それだけ国民の暮らしも良くなるから」

 

 

少し間を空けての回答だったが、しっかりとした意見にユニの尊敬は天元突破していく。

 

 

「それよりもう時間よ、ユニはもう寝てて」

 

「わ、私も……お姉ちゃんの手伝いを……」

 

「大丈夫だから。 ほら、姉としての命令よ。 しっかり休んで明日に備えなさい」

 

「……はい……」

 

 

尊敬する姉の助けになりたい、そんな一心で手伝いを申し出たユニだったがにべもなく一蹴される。

それが姉としての気遣いであることは分かっていたからこそ、退かざるを得なかった。

コーヒーを啜りながら、ノワールは誰もいなくなった執務室で一人呟いた。

 

 

「……美味しい。 やっぱりあの子も、成長してるのね」

 

 

コーヒーの味に舌鼓を打ちつつも、それを直接伝えられなかったことにコーヒー以上のほろ苦さを感じた。

表立って不仲などではないが、どこかぎこちない姉妹関係。それを憂いながらノワールは執務室の窓から夜空を見上げる。

今日も、星が綺麗だった。

 

 

「……どうする、か……」

 

 

これまで、女神としての使命や責務に明け暮れていた。

苦痛ではなかったと言えばウソになるが、国民の思いを実感できるこの立場にノワールは充実感を覚えていた。

だからこそ、これまでは必死に仕事やクエストをこなしてきた。

 

 

(……でも、これからは少し余裕が出来るのよね)

 

 

だが、多忙な日々も一旦ピリオドを打とうとしている。

口にこそ出さないが、ユニの仕事能力も上昇しており、彼女的には大助かりでもあった。

だからこそ、少し己のために生きる時間を作ってもいい。そんな気がしてきた。

自分のための時間、彼女が思うことは。

 

 

 

 

 

(……もし、出来るのなら。 私は―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――白の国、ルウィー。

普段は美しい雪がこんこんと降り積もるこの国も、今日は珍しく雲一つない。

そのため、月光や星光が積雪に吸い込まれ、よりファンタジックな景色を生み出していた。その中に存在する、一際大きな教会の中では。

 

 

「……むぅ、ここは何か違う……。 この文章を直さないと、整合性が取れない……」

 

 

一人の少女が、パソコンに向き合いながらキーボードを叩いていた。

幼い外見からは想像もつかないどうが、彼女こそがこのルウィーを治める守護女神。名前は「ブラン」。

今日も夜遅くまで、書類仕事を―――

 

 

「……まずい、このままだとラノベ新人賞に間に合わなくなる……!」

 

 

―――ではなく、ラノベを書いていました。

それでも傍に積み上げられた書類の山々が、彼女の有能さを物語っている。今は仕事がひと段落したので、趣味である創作活動に専念しているところだったのだ。

 

 

「お姉ちゃ~ん! 絵本読んで~!」

 

「読んで……欲しいな……(ちらちら)」

 

 

そんなある意味修羅場となりつつあるブランの執務室に突撃した二つの小さな影。

どちらもブランの面影を宿した、可愛らしい少女。

片や活発、片や恥ずかしがり屋。そんな彼女達に呆れつつも、どこか愛おしそうな眼差しを向けるブラン。

 

 

「ロム、ラム……。 ダメよ、お姉ちゃんはまだ手が離せないの」

 

「えー、つまんな~い! ずっと最近そんな感じじゃ~ん!」

 

「……私も、寂しい……(こくこく)」

 

 

元気な幼女、「ラム」。控えめな幼女、「ロム」。どちらもブランの妹にしてネプギア達と同じ、女神候補生。

正反対な性格ながらも、年相応の甘えん坊ぶりとやんちゃぶりで姉の手を焼かせているのはこの教会における日常風景だ。

 

 

「仕方ないわね……。 後で読んであげるから、少し待ってて」

 

「ホント!? わーい!」

 

「はーい……!(キラキラ)」

 

 

大好きな姉と一緒に過ごせるということで双子のテンションはマックス。

年相応の可愛らしさに、ブランの呆れもどこへやらである。

 

 

「で、何の絵本を読んで欲しいの?」

 

「これ!」

 

「……『もし、願いが叶うのなら』……ちょっと前に流行った奴ね」

 

「うん、このお話……大好き……(わくわく)」

 

 

ラムが差し出したのは、『もし、願い事が叶うのなら』。

願い事を叶えられるという、子供なら誰でも一度は思うことを絵本にしたもので少し前に大ヒットを記録した。

ロムとラムの琴線にしっかり触れたようで、今ではお気に入りの一冊らしい。

 

 

「分かったわ。 先に部屋で待ってて」

 

「はーい! 行こう、ロムちゃん!」

 

「うん! いい子にして待ってようね、ラムちゃん……(ぱたぱた)」

 

 

これまた可愛らしい足音を立てながら、二人は元気よく部屋を出ていった。

すっかり興も削がれたので今日の執筆作業はお終いと言わんばかりにデータを上書き保存して、廊下に出る。

 

 

「……今日は月が綺麗ね……」

 

 

ふと、窓から空を見上げる。

確かこれから読み聞かせる絵本の冒頭は、こんな夜空から始まった。

何の変わり映えも無い、しかし美しい月夜で少女が願うところから始まる物語。

 

 

「……もし、願いが叶うのなら、か……」

 

 

柄にもなく、そんな事を思ってしまう。思えば叶えたい願いはたくさんある。

ロムとラムの成長と平穏、国の安泰、創作活動の成就などなど。

だが、彼女の頭にふと過る願い。それは今まで考えなかった―――考えないようにしてきたこと。

確か、あの絵本の主人公も、こんな願いを叶えようとしていたのだ。

 

 

 

 

 

(……私の、願い。 願うのは―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、緑の国。リーンボックス。

美しい森に、虫たちが美しい音色を奏でる夜。女神が住まう教会の一室、執務室では一人の少女が仕事に―――

 

 

「ふふ、ようやくボス戦ですわ! さぁ、勝ってヒロインを取り返しますわよ!」

 

 

―――やはり没頭することなく、寧ろゲームに没頭していた。

彼女は「ベール」、この緑の大地を司る守護女神グリーンハートその人。なのだが、三度の飯よりもゲーム好きという筋金入りのゲーマー……を超えたゲーム廃人。

新作ゲームが出れば隠し要素全てをコンプリートするまでやり込み、ネトゲでは勝つまで止めないという入れ込みようだった。

 

 

「む、攻撃のテンポが速いですわね。 なら、ここは秘奥義で決着をつけるまでですわ!」

 

 

落ち着いた雰囲気に反した、このゲームに対する情熱。

攻撃を当てたり、逆に喰らったり、そしてテンションが上がる度に体と豊かな胸が弾む。

 

 

「これで……フィニッシュ! やりましたわ~!」

 

 

どうやらボスを撃破し終えたらしい。

両手を上げてバンザイ、華々しいBGMが彼女の勝利を祝福する。リザルト画面を閉じると、ゲームの中で物語は進行していく。

 

 

『大丈夫かい!? 助けに来たよ!』

 

『ああ、きっと助けに来てくれると信じておりました……。 愛するあなたを……!』

 

「ふむふむ、愛しのヒロインを助ける主人公。 王道だからこそいいですわね~」

 

 

ゲーマーはシナリオにも徹底分析している。

今回は作り込みが良かったのが、ベールも満足な展開のようだ。ゲーム内では愛する者達が困難の末に再会、そして愛の証である口づけを交わそうとしていた。

 

 

「あ、あらあら。 最近のゲームは過激な表現をしますのね……。 見ているこっちが恥ずかしくなっちゃいますわ……」

 

 

濃厚なキスに思わず照れてしまうベール。

女神として悠久の時を生きながらも、恋愛経験のない彼女にとってはまだ耐性の無いシーンだった。

だからこそ、ふと考えることがある。

 

 

「……恋、ですか。 他人のはこうしてゲームで見るだけですが……」

 

 

彼女も、立派な女の子。

幾ら女神として年を取らず、外見も変わらない不老の体とは言え中身は乙女。

それを自覚したからこそ、窓から夜空を見上げて口に出してしまう。

 

 

 

 

 

「……私も、一度―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――四人の女神が願うこと、それは―――

 

 

 

 

 

「「「「―――素敵な恋を、してみたい」」」」

 

 

 

 

 

女神様も、女の子。寧ろ今まで恋愛経験のない女神だからこそ、願うことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――時は同じくして、世界は変わる。

女神も魔法モンスターも存在しない世界。例えるなら、今この物語を見ているあなたの世界に近い。

そんな世界に、ある組織に属する暗殺者の少年がいた。

 

 

 

(―――嫌だ、殺したくない……殺したくない……)

 

 

 

 

その少年は、優しい性格でありながら殺しの技術を無理矢理叩き込まれ―――結果、業界最高峰の腕を持っていた。

 

 

 

 

 

(お父さん……やめて……。 蹴らないで、殴らないで……やめてくれよぉ……!!)

 

 

 

 

 

逆らえば、父親に振るわれる暴力の日々。終わりのない恐怖が、彼を蝕み―――やがて人を殺めるに至った。

 

 

 

 

(……あ……ぁ………もう、ダメだ……)

 

 

 

 

だが―――その優しさ故に耐えられず、刃を置いた。

 

 

 

 

 

 

結果、それが裏切りと受け取られ、彼が所属していた組織に追い回され―――捕らえられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――重苦しい色合いの部屋。窓もなく、たった一つの出入り口である扉。

そこに数名の男、そして彼らに囚われた黒コートの少年が入り込んだ。

少年は殴られたような痕跡が幾つも顔に刻まれており、抵抗の意は見せない。

 

 

 

「博士、お連れしました」

 

「ご苦労。 ……さて、よくもワシを裏切ってくれたな……『息子』よ」

 

 

 

複数の黒服を着込んだ男達、そして博士と呼ばれた男は銃を握っている。

銃口を少年に向け、引き金に指を掛ける。

 

 

 

 

 

「……息子を犯罪組織に入れて、人まで殺させて、しかも殺そうとする父親がいるかよ」

 

 

 

 

 

対する少年は、全く動じていない。

全てを覚悟していた上で、父親に対し侮蔑の言葉を吐き捨てた。

 

 

「……貴様、どこまでワシに逆らえば気が済むのだッ!?」

 

「うぐっ!?」

 

 

息子の言動に苛立った男が爪先を顔面に蹴り込む。

容赦のないその一撃で少年の顔に痣が生じ、口から血が垂れ流れる。

 

 

「こうしてっ! 躾したよなぁ!? 教育したよなぁ!?」

 

「がッ! あ……! ぐぼぉ!?」

 

「だと言うのにこの恩知らずが!! 恥知らずが!! 親不孝者がぁあああああ!!!」

 

 

殴る、蹴る、殴る、蹴る、蹴る、蹴る、蹴る蹴る蹴る―――。

限りない暴力が、少年に降り注ぐ。

だが、少年の弱り切った心にはその痛みすらも、徐々に感じられなくなっていた。

 

 

「お前は本当に役に立たない……それでも生かしてやったというのに、そんな大恩忘れるようなクズは……ここで死ね!」

 

 

父親を称する男が懐から取り出したのは拳銃。怒りが指に込められ、今にも弾が発射されそうになる。

少年は最早抵抗しない、怒りも、恨みすらも無い。

ただ―――その瞳には、悲しみだけを湛えていた。

 

 

(俺……ここで終わっちまうのか……でも、このクソ親父の言う通りなんだよな……

 

 

 

 

 

 

結局、“姉さん”も助けられなくて……親父の言いなりになって……

 

 

 

 

 

 

 

暗殺者にされて……人まで殺したんだ。 殺されても、仕方ないよな……)

 

 

 

 

少年は、己の罪を自覚していた。

自覚していたからこそ、抗いたかった。だが、それもここで潰える。

 

 

(……姉さん……ごめん……)

 

 

少年は思い浮かべる、ずっと自分を気遣ってくれた姉の事を。

そんな姉が、今も彼の心の中で優しく微笑んでくれる。

 

 

 

―――我慢しないで、白斗……貴方は優しくて、良い子なの。

 

 

 

―――だから、ちょっとくらいお願い事しても、バチなんて当たらないのよ。

 

 

 

 

(……お願い事、か……。 そうだな、最後に一つだけ……)

 

 

 

 

今にも引き金は引かれる。父親である博士は既に怒り最高潮。周りには彼の部下、閉ざされた部屋、そして縛り上げられたこの体。

最早助かる見込みなど、万に一つもない。

ならばとその少年―――“白斗”は、心の中でただ願った。

 

 

 

 

(―――………)

 

 

 

 

今にも消えそうな心で唱えた願い、叶うはずなんてないと諦めていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――いいじゃないですか。 貴方のその願い……叶えて差し上げますよ?

 

 

 

(……え?)

 

 

 

突如、脳内で飄々とした声が響いた。

その次の瞬間―――白斗の体が光に包まれた。

 

 

「ぬぅッ!?」

 

「な、何だ!? 閃光弾!?」

 

 

博士も、男達も目を瞑ってしまう。

そして光が収まった時には、白斗は―――どこにもいなかった。

 

 

「ま、まさか逃げたのか!? おい、監視カメラは!?」

 

「い、今チェックしてますが……扉を通った形跡無し! まるで……“瞬間移動”したかのような消え方です……!」

 

「ば、馬鹿な……奴は一体、どこに行ったのだ……!? 何が起こっているのだぁ!?」

 

 

男達の焦燥、そして博士の激昂。

それらが密閉空間の部屋に響き渡るも、決して少年が姿を現すことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――場所は戻り、ゲイムギョウ界、プラネテューヌ。

女神たち四人の願いが空に溶けたその時、ネプテューヌは天頂に不自然に輝く一つの星を見つけた。

 

 

「……あれ? 何だろ、あの星……」

 

「お姉ちゃん? ……あ、本当だ」

 

 

プラネテューヌからも見えた、その星は周りとは比べ物にならないほど力強く、しかしどこか心惹かれる輝き。

―――あそこに行かなくては。そんな気がしてならない。

 

 

「……ネプギア、先に帰ってて。 私、ちょっと行ってくる!」

 

「え!? お、お姉ちゃん!?」

 

 

何故か、あの光がとても気になる。

居ても立っても居られないネプテューヌは一歩前に立つと目を閉じ、深呼吸しながら光を己に纏わせた。

 

 

「―――さぁ、行くわよ!」

 

 

そこに、あの愛らしい少女はいない。

いたのは凛とした紫の美女、大きく伸びた背丈、大きくなった胸。これこそが女神パープルハートの真の姿。

機械の様な翼を震わせ、夜空へと舞い上がる。全ては、あの光に辿り着くために。

 

 

 

 

 

 

―――ラステイションでも。

 

 

「あら? 何かしら、あの光……」

 

 

ノワールはコーヒーブレイクを止めて、その光に魅入っていた。

普段であればモンスターか、誰かの悪戯か。そう思うのが関の山。

だが、何故か心がざわつく。悪い方向ではない、何故か不思議と気持ちが高ぶってくる。

 

 

「……行ってみるか。 書置きを残してっと」

 

 

仕事も放りだして、ノワールは一枚のメモに殴り書きしていく。

そして精神を統一し、眩い光を放った。

 

 

「……変身完了! ブラックハート、出る!」

 

 

ノワールは、女神化を果たした。

黒かった髪は美しい銀へと変わり、服装は可愛らしいドレスから黒のレオタードへと変貌する。

彼女もまた機械の翼を広げ、夜空へ飛ぶ。

 

 

「お、お姉ちゃん? 何か凄い音したけど……あれ? 書置き?」

 

 

高出力による飛翔は凄まじい風圧と音を発生させる。

驚いて部屋に飛び込んできたユニの元に、一枚の書置きが飛んできた。それに目を通すと。

 

 

『ユニへ 

ごめんなさい、ちょっと用事が出来ちゃった。すぐに戻るから

P.S コーヒー美味しかったわよ ノワール』

 

 

そんなシンプルな書置きだけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ルウィーでも。

 

 

「…………」

 

 

ブランは、食い入るようにその光を見つめていた。

何かがあると確信していた。それが何なのかは確信できないが。

まるで、そこに導かれるかのように。

 

 

「お姉ちゃーん! 何やってるのー?」

 

「……早く、絵本読んで……(おずおず)」

 

「……え? あ、ご、ごめんなさい……」

 

 

痺れを切らしたらしい、ロムとラムが出てきた。

あれからどれくらい見つめていたのだろうか、数分か、数秒か、ひょっとしたら一時間くらいなのか。

分からなかったが、ブランは首を横に振る。

 

 

「でも……ホントにごめんね。 ちょっと用事が出来ちゃったから、外に出てくるわ」

 

「えー!? そんなぁ……」

 

「一緒に、いてくれないの……?(うるうる)」

 

 

ロムとラムからしてみれば、絵本の読み聞かせなど単なる口実に過ぎない。

大好きな姉と、一緒に過ごせればそれでよかったのだ。

その寂しさを理解しているからこそ、ブランも少しだけ悲しそうに目を伏せながら二人の頭を撫でる。

 

 

「大丈夫、すぐ戻ってくる。 ……いい子にしていたら、またどこかへ遊びに行きましょ?」

 

「ホント!? やったー!」

 

「いい子で、待ってるね……!(きらきら)」

 

「ふふ、二人とも。 十分いい子よ。 ……それじゃ……」

 

 

ブランも、光を纏わせる。

この光は人々の信仰の証―――この世界ではシェアと呼ばれるエネルギー。

このエネルギーが、女神を女神たらしめる力にさせているのだ。

 

 

「……よっしゃぁ! 待ってろよ、どこかの何よ!」

 

 

現れたのは、白を基調とした少女。しかし純白のその姿は、言動こそ荒々しいが美しい。

ホワイトハート、それこそがこのルウィーを守護する女神の姿。

―――因みに公式隠れ設定では、守護女神の姿は国民の希望が反映されているという。

ルウィー国民の業は、深い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、リーンボックスでも。

 

 

「……何でしょうか、あの光は……」

 

 

見るだけで、温かい。見るだけで、心が安らぐ。

そんな魅力が、あの光にはあった。

どうしても気になり、どうしても目が離せず、どうしても心がざわつく。

 

 

「……セーブ完了。 では、参りますか」

 

 

シェアエナジーを身に纏い、覚醒する。

美しい金髪は緑色の髪となり、ポニーテールに纏められる。

体を包むは銀箔のビキニを思わせる、露出の高いプロセッサ。手には愛槍を携えた、美しき緑の女神。

 

 

「ち、ちょっとお姉様!? どこへ行くんですかーっ!?」

 

「ごめんなさい、チカ。 どうしても行かなきゃならない気がするんですの!」

 

 

同じ頃、ベールもまた女神化して大空に飛び出していた。

リーンボックスの守護女神、グリーンハート。

教祖であるチカの声をも振り切って、あの光の下へと羽ばたく。

 

 

(……どうしてでしょうか。 大好きなゲームすらも放って行ってしまうなんて)

 

 

ベール自身も、この行動の意味が分からなかった。

ただ、あの光の中に自分が求めている何かがあるかもしれない。それだけは分かった。

理由にならない理由かもしれないが、そんな衝動にも似た直感が彼女を―――女神たちを突き動かしているのだ。

そうして辿り着いた時、そこには他の三女神たちもそこに集っていた。

 

 

「……あら? ネプテューヌにノワール……それにブランまで?」

 

「ベール? なんで貴女までここに……」

 

「全く、あなた達ってばこんな遅くまで夜のフライトだなんて……随分暇人なのね」

 

「ノワール、その言葉そっくりそのままお前にブーメランするけどな」

 

 

偶然か、それとも必然か。

何の打ち合わせも無しに、四大陸を司る守護女神が一堂に会した。そもそも、何の気なしに会うというのはこの四人にとってそれほど珍しいことでは無かった。

だが、どうやら今回は誰もが目的を同じにしているのだ。

 

 

「……ここに来た、ということは……」

 

「ええ、アレね」

 

「……何なんだ、あの光は……」

 

「分かりませんわ。 ですが……何故か、危険だと感じないのです」

 

 

四人は、真上を見上げた。

それはゆっくりと降りてくる光の玉。まるで四人に迎えに来てもらったかのか、それともこの光が四人を導いたのか。

誰もが、眩いその光に魅入っている。

 

 

「……誰か、いる……?」

 

 

最初に気づいたのは、ネプテューヌだった。

光の中に、僅かながら人影らしきものを確認した。ノワールたちも良く目を凝らせば、確かに人影が輪郭として浮かび上がってくる。

 

 

「確かに、誰かいるみたいだけど……」

 

「何者だ……? 敵……増してやモンスターじゃねぇよな……」

 

「ええ……。 警戒すべきなのでしょうが……って、ネプテューヌ?」

 

 

光の中の人物、当然心当たりなど無い。

誰もが警戒心を抱く中、ネプテューヌはその光に手を伸ばした。それが好奇心か、それとも何かを感じ取っての事なのか。

ベールの静止も間に合わず指先で触れると、光の玉は弾けて消える。

その中から現れたのは―――。

 

 

「……男の、人……?」

 

 

黒いコートを羽織った、少年だった。

気を失っているのか、その瞳は閉じられており、その体はネプテューヌの腕に収まる。

少年は自分と同じくらいの外見年齢と背丈。どこか大人っぽい雰囲気を醸し出しながらも、優しげな雰囲気も感じられた。

だが、それ以上に目についたのは、顔中につけられた痣の数々である。

 

 

「ちょ! け、怪我してるじゃない!」

 

「な、何だこりゃ……! 一つや二つじゃねぇ! 酷い……」

 

「と、とにかく運びましょう! ここから一番近いのは、プラネテューヌですわね!」

 

 

余りにも無残な姿に、女神たちは警戒心を忘れて口元を抑えた。

息があることだけは確認し、最寄の施設へ運ぶことになった。

向かう先は、ネプテューヌの拠点であるプラネテューヌの教会でもあり、国のシンボルでもあるプラネタワー。

 

 

「う、うう………ここは……?」

 

 

その時、少年が目覚めた。

ぼんやりとした、おぼろげな視界が徐々に覚醒してくる。その瞳に映ったのは。

 

 

 

「……安心して。 もうすぐ私の教会よ。 そこで治療してあげるから」

 

 

 

美しき、紫色の女性の顔。

凛とした佇まいの中にある美しさと可愛らしさ。そして自分に掛けられる、力強くも優しき声。

その姿に、声に、そして心に。少年は、彼女をこう称した。

 

 

「……女神、様……?」

 

「え……?」

 

 

思わず、そう呟いてしまった途端にまた気を失う。

一方のネプテューヌは少年から発せられた、表裏の無い言葉に胸を打たれた。

 

 

「ネプテューヌ? どうしたのよ、顔を赤くして」

 

「っ! な、何でもないわ! とにかく急ぎましょう!」

 

 

ノワールが心配そうにのぞき込むことでようやく我に返る。

必死で頭を振り、雑念を消して四女神はプラネタワーへと跳んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――この少年との出会いが、彼女達の運命を左右することになるとは知らずに。




サブタイの元ネタ「異世界はスマートフォンとともに」

初めまして、カスケードと申します。
ネプテューヌシリーズは本当に大好きで、もうみんな可愛くて、そんな皆が可愛らしくて幸せなラブコメをしていけたらというコンセプトの元、今回のお話を作ることにしました。
目標、読者様の部屋の壁を破壊させること!一日何枚壊せるかな~?
さて、世界観としてはゲームとアニメ、両方の世界観やストーリーを踏襲しつつ、オリジナル展開を主軸にしていこうと思います。
では今後とも、新しい次元の物語を是非お楽しみください!
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