恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART 作:カスケード
勿論女神のみならず、色んなキャラを色んなシチュエーションで絡ませますとも!
「……おはようございまーす、画面の前の皆様! ネプテューヌです!」
ふっふっふー、いつもの三人称視点の地の文じゃなくて今回は私がナレーションを担当するよ!
さて、あの式典から一週間が経過したある日の朝。現在時刻はなんと朝の五時!まだ朝日すら昇り切っていないよ!
え?なんでそんな時間ぐーすかしているはずの私が起きているかって?そんなの決まってるじゃん!
「ではこれより、白斗に朝一ドッキリを仕掛けたいと思います!」
白斗もこの世界に来てから早数週間が経過しました。
もう私達をオーバーに警護する必要も無くなったし、白斗もそろそろ安眠して欲しいと思い敢えて一週間くらい時間を空けた。
ついでにノワール達も式典が終わり、警護を解除されたことで自分の国に戻っている。つまり、邪魔者はナッシング!!
だからこそ今日、私は朝駆けを決行するっ!!
「いやぁ、普段隙を見せてくれない白斗の慌てふためく姿が楽しみで仕方ありません! では、部屋に潜入してみたいと思います!」
こんな楽しいイベントを思いついちゃったからには逆に寝ていられないってもんでしょ!
ということでカメラとマイクの準備もオーケー。
そろーり、抜き足差し足忍び足でお邪魔しま~す。
(おっ、寝ているな……うひひ……)
ベッドの膨らみ。白斗はぐっすりしているようです。
くくく、ごめんね白斗。でも恨むなら隙だらけな自分を恨むがいい!
「では早速……ねぷねぷだーいぶっ!!」
ピョインとカンガルーのように飛び上がり、そのまま白斗にダーイブ!
ボフンと羽毛特有の柔らかさが私を受け止め……あれ?
何だか柔らかすぎるよーな……まさか!?
「なっ!? 身代わり!?」
掛け布団をめくると、白斗の体と思っていた膨らみはただの毛布を筒状にくるんでいたものだった。
馬鹿な!?それじゃ白斗は一体どこに!?
「隙だらけだ、馬鹿娘」
「あいだっ!?」
後ろからチョップ!?意外に痛いんだけどコレー!?
涙目で振り向くと、そこには余裕の表情で立っている白斗がいた。
「白斗!? 馬鹿な……どうして起きてるの!?」
「扉の前で邪悪な気配を察知したんでな」
「私邪悪!?」
ねぷーっ!なんて酷いことを!女神様だよ私!?
ただ白斗に寝起きドッキリという粋なイタズラを敢行しようとしていた私のどこが邪悪だと言うんだ!!ムキーッ!!!
「はっはっは、俺に不意打ちなんて26年早い」
「うぐぐ……!」
今度は頭を優しく撫でられる……まさに子ども扱い!
悔しい悔しい悔しいーっ!!
あ、でも撫で撫では気持ちいいかも……じゃなくて!!
「白斗! 絶対にぎゃふんって言わせてやる!! ねっぷねぷにしてやんよ!!」
「ぎゃふん、ねっぷねぷー」
「あっさり言うなーっ!! うわーん!! 今日は戦略的撤退ー!!!」
「まだやるのかこのノリ」
ええい、まだだ!まだ終わらんよ!!
必ずや白斗に一本取ってやるんだからー!!!
……で、一本取れたら……白斗にいっぱい褒めてもらいたいなー……。
……あれ? ここ最近の私……どうして白斗の事ばかり考えるんだろ……?
☆
―――そしてその日のお昼。
「仕事をせんかぁ! この駄女神ィ!!!」
「きゃいんッ!?」
白斗は鞭ならぬワイヤーを振るい、床を叩きつけていた。
あの式典が終わって以来、来る日も来る日もぐーたら遊びまくり、昼寝、サボり、ゲーム三昧とやりたい放題なネプテューヌ。
居候の身でありながら白斗の目に余る状況となり、イストワールの胃が痛みだしたことで鬼となった。
「ちょっと白斗ぉ!? フローリングに傷ついちゃうよ!?」
「オメーに仕事させられるなら喜んで弁償してやるわぁ!! さぁ仕事をしろこの駄女神………いや駄犬がァ!!」
「きゃいんッ!!?」
ピシィン、と鋭い音を立ててまたワイヤーが飛ぶ。
そんなバイオレンスな光景を、アイエフとコンパ、ネプギアは見つめていた。それぞれの視線は三者三様と言ったところだ。
「あいちゃーん! あいちゃんは助けてくれるよね!?」
「や」
「一文字!? あいちゃんは私と白斗、どっちの味方なの!?」
「白斗」
「お願い!? もう少し私の味方してー!!?」
全く取り合うことなく見捨てるようにコーヒーを啜るアイエフ。
しかしブラックに挑戦したはいいものの、結局受け付けられないのはどこか彼女らしい。
「あはは、白斗さんしっかりものです~」
「こんぱも見捨てないでー!!」
ふんわりした視線で二人を包み込むコンパ。
だが助けてくれない。ネプテューヌにとっては真綿で首を締められているような感覚だ。
唯一、見るに見かねて何とか止めようとしていたのはネプギアのみ。白斗に怯えつつも、愛する姉のためになけなしの勇気を振り絞って割り込んできた。
「あ、あの白斗さん……。 お姉ちゃんも、その……お疲れですし少しくらい大目に見てあげてもいいんじゃ……」
「ネプギア―!! やっぱり持つべきは優しい妹……」
「ネプギア。 後で一緒にバイクの調整してくれないか。 機械弄れるぞー」
「ですね。 お姉ちゃんを甘やかさないのも妹の役目ですよね!」
「釣られたー!? おのれネプギア!! 裏切ったな――――!!!!!」
あっさりと白斗側に寝返ったネプギア。ネプギアは寝返り属性手に入れました!
因みにここ最近の白斗は、アイエフのバイクに乗った影響からか自分のバイクを作ろうとしているとか。
「……ったく、ホラ」
「え? 何これ……プリン?」
しかし、白斗もただ厳しく躾けているだけではない。
項垂れる彼女の前に、取って置きのものを置いてみた。
ぷるるんと揺れる、黄金色の甘味―――その名はプリン。ネプテューヌの大好物だ。
「コンパに教わって作ってみたんだ」
「これ……白斗が作ってくれたの!? 私のために……?」
「……ま、まぁ。 不味かったら、ゴメン」
照れ臭さに耐えきれなくなり、視線を逸らしてしまう白斗。
一方のネプテューヌは胸の高鳴り、ときめき、熱さが止まらない状態だ。
「とにかく、頑張って仕事をするならそれ食べていいぞ」
「いただきまーす!!」
「せめて約束してから食べような!?」
あっという間に口にしてしまうネプテューヌ。
こうして完成形のプリンを出したわけであるが、実はこれ自体何十回も作り直ししてようやくコンパから及第点を貰えたもの。
その努力の結晶も、一気に食べられてしまうのだからどこか遣る瀬無い気持ちになる。
「―――美味しい~!! 白斗、ありがとね!!」
―――けれども、この眩しい笑顔がそれすらも吹き飛ばした。
(……この顔を見たかったからコンパに土下座までした、なんて言えないな)
またもや照れ隠しで視線を逸らしてしまう白斗。
この日、珍しく上機嫌でネプテューヌは書類仕事に手を付けた。その速度と来たら、まるでドーピングが入ったかのような張り切り具合だ。
イストワールは、呆れるでも喜ぶでもなく、ただ愛しいものを見るかのような目でネプテューヌを見守っていた。
「ふふ、凄い効果がありますね。 白斗さんのプリン」
「ドーピングなんか仕込んでないはずですけどねー」
「でも、ドーピング以上のものを仕込みましたよ」
「えぇ……? コンパ監修だから変なモン入れてないはずだけどなー……」
(白斗さんの愛情、ですよ)
今日も愛らしく宙に浮かんでいるイストワール。
けれども白斗も含めて皆を見守っているその姿は、どこか母親らしさを感じさせた。
「……ところで白斗さん、お聞きしたいのですが」
「はい?」
「……式典も終わり、もう女神の皆さんが狙われる危険性も減りました。 諸々が落ち着いてきたので……白斗さんを元の世界へ帰す方法を探そうと思うのですが」
少し申し訳なさそうに訊ねてきた。
そう、彼女達からしたら白斗は突然この世界にやってきた来訪者。帰る方法を見つけてあげるのも女神の役目だとネプテューヌは言っていた。
ただ、今までは式典などのゴタゴタでそこまで手が回らなかった。今なら違うとイストワールが言うのだが。
「白斗ぉ!! 帰っちゃヤダああああああああああああああああ!!!!!」
「きゃっ!? ちょっとネプテューヌさん!? お仕事は!?」
「終わらせたぁ!!」
「早!?」
書類仕事をしていたはずのネプテューヌが、白斗に抱き着いてきた。
しかも明るい彼女からかけ離れた、悲しみの涙で溢れさせている。
量も尋常ではなく、あっという間に白斗の服が涙で濡れてしまった。
「だ、ダメですよネプテューヌさん! 白斗さんにだって帰るべき世界があるんです!」
「でも……でもぉ……」
彼を元の世界へ帰すことが一番の幸せ。
そう考えていたイストワールが何とか宥めようとするのだが、ネプテューヌが駄々をこねるよりも前に。
「大丈夫だよネプテューヌ。 俺、帰るつもりなんかサラッサラねーから」
優しい声と手で、白斗が包み込んでくれたのだ。
「ホント……?」
「ホントにホントだ。 元の世界よりも、この世界の方が楽しいし幸せだ」
「……えへへー。 でしょー!?」
断言して見せた白斗に、ネプテューヌはすっかり涙を引っ込めてしまう。
だらしなく緩み切った頬で、嫌でも幸せな雰囲気が伝わってくる。
「その……よろしいのですか白斗さん? ご家族とかは……」
「……いません」
「あ………ご、ごめんなさい……」
少し、寂しそうに呟いた白斗。
これまで、詳細には語らないが白斗の過去は断片的ながらも見えてきた。嘗ては姉がいたこと、父親によって機械の心臓を埋め込まれてしまったこと、そして嫌なのに暗殺者にされてしまったこと。
彼にとって元の世界とは、きっと地獄に等しいのだろう。
「いいんですよ。 ……おかげで、皆と会えたから」
だから、今あるこの世界が天国だと思える。
苦しいことも、危険なことも、許せないこともあるが―――それ以上に大切な存在がこの世界にいてくれるから。
☆
それから、時間は経ち―――。
「……ふぁ~、疲れたぁ」
月が昇った時間帯、夕食も風呂も終えた白斗はベッドに寝転がった。
例の式典による宣言、それはどんな妨害を仕掛けようとも条約と言うものがないのだから無意味という女神としての宣言。
これにより暗殺の気配は全くと言っていいほど無くなった。故に白斗も警護する必要性を感じなくなり、こうして自室にこもる時間が出来た。
(ここ最近、楽しくて、幸せで仕方ねぇ……今でも夢かと疑いたくなる)
昼間のうちにネプギアと約束したバイクの組み立てはある程度進めた。楽しかった。
仕事を終えたネプテューヌと対戦ゲームで遊び倒した。楽しかった。
夜になるとみんなで会話しながら、テレビを見ながら夕飯。楽しかった。
―――楽しくて、幸せなことだらけだった。
「……さて、今後はどうしようかな……」
まだ見ぬ明日へ、思いを馳せていた。
明日は何して過ごすのか、これからどう生きていくのか、これからみんなと何をしていくのか。
今までの生活からでは考えられないことだった。
と、その時白斗の携帯電話が鳴らされる。
「はい、もしもし……」
『白斗、久しぶり! 元気にしてた!?』
「うん、昨日ぶりを久しぶりと呼べるくらいには元気だぞノワール」
ボタンを押せば、空中に画面が投影される。
そこに映っていたのはラステイションの女神、ノワールだ。今日も美しい黒髪とツインテールが良く似合っている。
『もー連れないわね』
「仕方ねーでしょー。 ここ毎晩電話してくれるんだから」
そう、毎晩暇を持て余しているであろうこのタイミングでノワールは電話をかけているのだ。
正直掛け過ぎだと白斗は思ったが、電話越しでも彼女との会話は楽しい。ついつい会話が弾んでしまうこともあった。
それがノワールだけ、ならばまだ良かったのだが―――。
「ん? キャッチホン……ってことは……」
『ちょっ!? 白斗、出なくていいから……』
『出なくていいとは随分なご挨拶じゃねーかノワール!』
無理矢理回線に割り込み、新しい画面が展開される。
そこに映っていたのは、現在ルウィーに戻り政務をこなしているはずのブランだった。夜ということで幾分か楽な格好をしている。
『……と、ごめんなさい白斗。 こんばんは』
「うーす。 あ、ブラン。 この間オススメしてくれた小説、ありがとな。 面白かった!」
『本当!? 白斗と私の好みが合って、嬉しい……!』
キレても冷静さを取り戻し、きちんと挨拶する。
白斗も挨拶した後、一冊の小説を取り出した。それは彼女がルウィーに帰る前に勧めてくれた小説。
こうして小説を読むことが出来たのも、白斗が個人の時間を持てているからだ。
自分の趣向と合致していたという事実に、ブランは天使の様な微笑みを返してくれる。
それが面白くないと感じたノワールも、一手講じることに。
『あ、白斗! 私もね、本読んだりするのよー。 今度オススメの本があるから……』
『おいノワール! テメェ、何人の真似事してんだ!』
『いいじゃない! ひょっとしたらこっちの方が白斗の好みかもしれないし!』
『ハッ、ツンデレぼっちなテメェの趣向が白斗に合うワケが……』
「うるさくするなら切るぞ」
『『しーん………』』
大人しくなった。鶴の一声である。
『白ちゃ~ん! さぁ、ネトゲしましょう!』
「うおわ!? ベール姉さんまで……どうしてアンタらは当たり前のように回線に割り込んでくるんだ……」
『女神の力ですわ!!』
「女神すげぇ」
どーんという効果音と共に派手に割り込んできたのはベール。
今日も相変わらず胸が凄く揺れている。
彼女が国に帰ってからも、こうして通話だけでなく彼女が進めるオンラインゲームこと「四女神オンライン」を時々プレイしている。
ゲーム初心者である白斗はまだまだ不慣れだが、徐々にゲームというものに興じつつある。
『白ちゃんはどこまで進めました?』
「ようやく魔王の名前でたところかなー」
『まだまだ序盤ですわね。 いいですわ、今日は朝までたっぷりお教えして差し上げますわ』
「ぐ、うう……貫徹コース結局脱退しきれてねぇな……」
ネトゲ廃人であるベールにとって貫徹は当たり前。しかも彼女はそれでいてたまに仕事やクエスト、そしてまたゲームへという凄まじい生活を送っている。
さすがの白斗も戦慄を感じてしまう程だった。
『こらベール! 白斗は貴女のじゃないのよ!?』
『白ちゃんは私の弟ですもの!』
『独占禁止法ってのを知らねぇのかテメェは!』
何故か毎回鉢合わせてしまう女神達。
姦しいと言えばそれまでだが、さすがに騒がしくなってくるのは目に見えているので。
「切るぞ」
『『『しーん………』』』
鶴の一声、発動。
「電話してくれるのは嬉しいが、あんまり騒がないでくれ……ふぁぁ~……」
『少しお疲れ? またネプテューヌがサボったりしたの?』
「そんなトコかな。 今回は秘策でバリバリ働かせたが」
思わず欠伸をしてしまう。
最近まで欠伸をすることすらなかったのに。白斗の実際の生活だけではない、精神的にもゆとりが出てきたことの証だ。
『もう、ホントにネプテューヌのところなんてやめて私の秘書になったら? 衣食住提供、福利厚生付きで―――』
『白斗、ノワールだけにブラック企業よ。 その点、ルウィーは穏やかだからホワイト企業。 ロムとラムも会いたがってるわ』
『リーンボックスだって目に優しい緑ですわ! それ以前に白ちゃんは私の弟ですから!』
「最早最後の方の理論が意味☆不明なんだけど!?」
とにかくあの手この手で白斗を引き込もうとする女神達。
引く手数多なのは嬉しいし、白斗としても困りはすれど実際迷うこともあるのだ。
『まぁ、冗談じゃないことはさておき』
「冗談じゃないのね……」
『ええ。 それよりも私達、ちゃんとした用事で電話をお掛けしましたのよ?』
どうやら今回の回線割込みはちゃんと示し合わせてのものらしい。
それでも少しでも白斗を独占しようとする乙女心は止められないようだが。
一体何事かと耳を傾けていると。
『『『私達の国に、旅行に来ない?』』』
「……ほ? リョコウ?」
旅行のお誘いだった。
『そうよ。 ようやく落ち着いたし、白斗って各国をロクに観光も出来なかったでしょ?』
「あー……確かにほぼ日帰りで、そんな余裕も無かったもんなぁ」
思い返してみても、各国に訪れたのは一度ずつだがハッキリ言って観光目的では無かった上に滞在時間も短い。
ラステイションはノワールの護衛で付き添い、その際に大事件に巻き込まれた。
ルウィーの場合、行きは転移装置で向かい、そこでロムとラムを守って気絶。
リーンボックスはベールの付き添いで、ただゲームをしに行ったという感じだ。
『そこで、守ってくれたお礼も兼ねて私達の国に招待したいの。 勿論、旅費などはこちら持ちだから安心して』
「いや、それくらい自分で出すから」
『だーめ、ですわ。 以前も言った通り、これもお礼なのですからしっかり受け取ってくださいまし』
ブランとベールも中々強情だ。
そして白斗は考えてみても、断る理由など何一つ無かった。ネプテューヌのことも守りたいが、彼女達のことも大切なのだ。
それに、彼女達の国をよく知っておくのもこれから先必要なことになると頭では理解している。
「……分かった。 一応ネプテューヌに許可を貰ってからにはなるけど、俺個人はオーケーだよ」
『『『やったぁ!!!』』』
この三人の喜びよう、まるで今日のネプテューヌのようだ。
女神様と呼ばれ、国民からは神格化されているとしてもやはり内心は女の子。
気になる少年から返事を貰えることは、何よりも嬉しいようだ。
「あ、そうだ。 日程ってどんな感じになってるかな?」
『まずはラステイション、ルウィー、そしてリーンボックスの順よ。 各国一週間』
「一週間もいていいのか、太っ腹。 因みにこの順番は何か意図が?』
『ただのジャンケンよ……。 くっ、何故あそこで私はパーを出したの……!?』
『私が一番最後……いえ、トリを飾ると思えば……!!』
心底悔しそうなブランとベール。対するノワールは一番槍を務めることもあって上機嫌だ。
皆がこの旅行で白斗と触れ合うことを楽しみにして仕方がない、そんな表情である。
尤も白斗は理解が追い付いていないが故に若干苦笑いだったが。
その後、白斗は結局夜通しでベールとのオンラインゲームに興じるのだった。
☆
―――三日後。
「ノワール達からもらったチケットよーし、荷物よーし、財布よーし、ケータイよーし」
プラネテューヌの定期船発着場。
白斗の世界で言う空港では今日も多くの人で入り乱れていた。
そんな中、白斗はキャリーバッグを片手に電光掲示板を確認し、これから乗る便を照らし合わせていた。
「白斗さん、問題ないですね?」
「大丈夫です。 でもすみませんイストワールさん、大変な時にその……旅行なんて」
「いいんですよ。 白斗さんには寧ろこの世界を楽しんでもらいたいんですから」
珍しく教会の外から出てきてまで見送りに来てくれるイストワール。
その気づかいと微笑みはまるで聖母のようだ。
あの晩、皆に旅行を提案されたことを話すと二つ返事で許可を貰えた。イストワール達も白斗にはそろそろ羽を伸ばしてもらいたいと願っていたところなのだ。
「アイエフ、コンパ、ネプギア。 ネプテューヌのこと、よろしくな。 俺も何かあったらすぐに戻るから」
「そうならないように何とかするから安心しなさい」
「です! 白斗さんはしっかり楽しんで休養してくるのがお仕事です!」
「白斗さんも何かあったらすぐに連絡くださいね!」
旅行するにあたって気掛かりだったのはネプテューヌだった。
仕事をしない彼女が、事実上のお目付け役である自分がいなくなったらどうなってしまうのか。
いや、仕事とは関係なく、ネプテューヌのことが心配だった。
だがここには彼女との付き合いが長い親友二人と妹一人がいる。問題はないと白斗も信頼していた。
「にしてもネプ子ったら何してるのかしら?」
「はい、ちょっと準備があるから遅れると言ってましたけど、もう白斗さんが行かなきゃいけない時間ですぅ……」
アイエフとコンパは腕時計を見ながらそわそわしている。今、この場にネプテューヌだけがいないのだ。
公共交通機関は時間厳守、一人の都合だけで発着を遅らせてはくれない。
故に時間が来たら白斗は行かなくてはならないのだ。
「おーい、白斗ー! 待たせてごめんねー!!」
「あ、やっと来たか。 何してたんだネプ……テュー……ヌ?」
そこへ聞こえた、明るく元気な声。
この声を聞くといつも安心できて、いつも元気を貰えて、いつも明るくなれる。ネプテューヌの声だ。
彼女の声を聞けたことで白斗も笑顔で返すのだが、次第に言葉が窄んでいく。ネプテューヌの手に可笑しなものが握られていたからだ。
「いやぁ、旅行と言えば宿でゲーム! 色んなゲームを詰め込み過ぎて荷物が重くてねー」
「その前にネプテューヌさん、一ついいでしょうか。 その荷物は何だ?」
ネプテューヌの手には、キャリーバッグが握られていた。
少しピンク色の掛かったバッグは女の子らしさあふれるデザイン。しかし問題はデザインなどではなく、何故彼女がそんなものを手にしているかである。
「え? 私のだよ?」
「どこへ行くんだ?」
「まずはラステイション、その後にルウィーときて、最後にリーンボックスって聞いてる」
「誰と行くんだ?」
「白斗」
「滞在期間は?」
「各国一週間! いやー、白斗と旅行なんて楽しみでもうウッキウキ♪」
―――どうやら白斗についていくつもりらしい。
嬉しくないと言えば嘘にはなるが、だからと言って怒りがこみ上げてこないはずもない。
「猿以下の脳ミソでウキウキ言ってんじゃねぇこの阿呆がああああああああ!!!」
「ねぷぎゃああああああああああああああああああッ!!?」
グリグリと拳と拳でネプテューヌの頭を挟み込み、万力。
傍から見ても痛々しい光景だが、ご尤もだとイストワールにアイエフとコンパ、ネプギアは呆れ気味である。
「うう~酷いよ白斗ぉ~!」
「黙らっしゃい! 百歩譲って旅行についてくるにしても各国一週間! 合計三週間! お前、仕事どうするつもりだ!?」
「それ以前に白斗が私を置いて三週間も離れちゃうのがヤダ~!」
「ヤダじゃありません! 大体そんなことをしたら大好きなプリンやゲームともおサラバだぞ!」
「いいもん!」
「何ですと!!?」
耳を疑う衝撃発言。
ゲーム大好き、プリン大好きのネプテューヌがそれらをどうでもいいと後回しにしたのだ。
そこまで求められると白斗もさすがに強く言えなくなってしまう。
「……白斗と、離れたくない。 何でか分からないけど……白斗と一緒がいいの」
涙と共に出された声に、白斗は一瞬言葉を失ってしまった。
彼女はいつだって自分の気持ちをストレートにぶつけてきている。だから響くのだ。
そんな彼女が可愛らしくて、白斗も離れたくなくなってしまう。
でも白斗はここから旅立たなければならない、そしてネプテューヌを連れていくことは出来ない。それを理解してもらうには、自分の気持ちを真正面からぶつけるしかない。
「……正直、俺はネプテューヌに着いてきてもらえたら嬉しいし三週間も離れるのは寂しいさ。 でもそのせいでプラネテューヌの、お前のシェアが減っちまうのも正直悲しい」
「うう~……」
白斗も、何だかんだの付き合いでネプテューヌを嫌ってはいない。寧ろその逆、大切で、どこまでも一緒に居たい人。
だからもし一緒に旅行に行けるなら、本当はそれでもいいのだ。でも、そうは許されない状況なのも十分理解している。
「出来れば離れたくもない……でも、ノワール達の事だって、俺には大切なんだ。 ここまでは理解……してくれるか?」
「……うん……」
変に着飾る必要もない。白斗自身が感じていることを言葉に乗せて、ネプテューヌに聞かせる。
頭を撫でながら、語気を強めず、ゆっくりと。ネプテューヌもその一つ一つを理解し、共感している。だから、ふてくされながらも肯定の言葉が出てしまうのだ。
「それにケータイだってあるんだから、ちゃんと連絡するって」
「……毎晩」
「へ?」
「毎晩……お話してくれたら、いいよ……。 メールだけでもいいから……」
ネプテューヌにとって、一番怖いこと。それは白斗との繋がりが失われてしまうことだったのだ。
だから、彼との繋がりが保てるなら何でもいい。それこそゲームでも、他愛のない会話だけでもいい。
それを知った白斗は、ネプテューヌの小さな頭を撫でて、ちゃんと彼女の目を見て。
「……約束する」
約束した。
こうすれば、白斗は必ずそれを果たしてくれる。そういう人だと知っているから、ネプテューヌは頷くしかなかった。
「……指切り」
「はいはい。 また懐かしいものを持ち出してきおって」
短い言葉で、でも微笑みながらネプテューヌは小指を出してきた。
でも、悪い感じはしない。白斗とネプテューヌは互いの小指を絡め合う。
指切り、それは些細ながらも互いが交わす約束の証。
「指切りげんまん、嘘ついたら三十二式エクスブレイド飲まーす。 指切った」
「ヤベェ!? 何が何でも守らなくちゃヤベェよコレ!!?」
いつものように向けてくれる笑顔が、逆に怖かった。
白斗は戦慄しながらも絶対に約束を破らないことを心の中で誓うのだった。
「……お土産、よろしくね」
「おう。 それに、帰ってきたらその分たっぷり遊ぼうな」
「……!! うん!!」
そしてお土産だけではない、三週間分の埋め合わせも白斗自ら約束する。
ネプテューヌと来たら、まるで子供の用に顔を輝かせて頷いてくれた。
こんな顔をされては、益々約束を守るしかない。
ようやく女神様も納得し、白斗から離れてくれた。それと同時に白斗がこれから乗る便の搭乗を告げるアナウンスが流れる。
「んじゃ、改めて……行ってきます!」
「「「「「行ってらっしゃい!!」」」」」
皆の声を一身に受け、白斗は歩き出す。
不安もあるが、期待も大きい。まだ彼はゲイムギョウ界の全てを知らない。だからこそ知りに行く。
この世界で生きていくと決めたから、この世界で生きていきたいから、この世界に―――何よりも大切なものが出来たから。
☆
「―――と言うわけでラステイションへやってきたワケですが」
それから約二時間かけて、白斗を乗せた定期船はラステイションへと着陸した。
入国手続きを済ませて白斗は発着場から外に出る。
以前と同じ発着場を利用していたので、外へ出ると見覚えのある景色が飛び込んできた。それに活気ある人々の声も聞き覚えがある。
(でも……ネプテューヌ達から離れただけで、でこんなにも静かに感じられるなんてな)
プラネテューヌでの生活はいい意味で騒がしかった。
常にネプテューヌが遊び、ネプギアがそれに加わる。それに怒ったイストワールとアイエフが説教して、コンパが宥める。
そんな日常とも、ここから変わる。ここからは新しい生活が待っているのだから。
「いらっしゃい、白斗。 待ってたわ」
「ん? あれ、ノワール!?」
そこへ声をかけてきた女性。何とノワールだった。
周りの人に配慮してか、いつもの服装ではなく茶色いコートを羽織り、サングラスをかけて誤魔化している。
ただ、特徴的なツインテールと声からすぐに分かった。
「まさかノワール直々にお出迎えしてくれるなんてな」
「形式としては私が直接招いているのよ。 無礼があってはいけないわ」
だったら変装などしなくても良いのではないか、と野暮なツッコミは心に留めた白斗であった。
「それに白斗、教会までの道のり知らないでしょ?」
「確かに。 前回は行きそびれちゃったからな」
数日前の訪問ではノルス奇襲の所為で白斗は病院送り、教会に寄る暇も無かった。
道のりも知らなかったし、このガイドは心強い。
「……それに、白斗と一緒に行きたかったし……」
「何か言った?」
「い、いいや別にナニモ!? さ、さぁそれより行きましょ!!」
「お、おい!? ひ、引っ張るなって!」
照れ隠しの余り、ノワールは白斗の手を引いて走り出してしまう。
その姿は女神らしいとは言えなかったが、とても可愛らしく、まさしく女の子だった。そんな彼女の姿と手の柔らかさを感じつつ、白斗は教会へと走っていく。
これから起こる、楽しい日々に思いを馳せて―――。
次回からはラステイション編になります。
ノワールは書いていて楽しいキャラなので、あれやこれやとシチュエーションが浮かんで仕方がない。インスピレーションを刺激してくれるキャラです。
勿論この旅行編だけでは収まりきらないので、今後も長い目で見ていただければ幸いです。
次回はイチャイチャというよりも足場固め的なお話です。ではお楽しみに!