恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART 作:カスケード
彼女とその周り、そしてラステイションに関してどんどん掘り下げていければいいなと思っています。
では本編どうぞ!
―――これまでのお礼という形へゲイムギョウ界の各国へ旅行へ赴くことになった白斗。
まず辿り着いたラステイションで、ノワールの案内を受けつつ教会まで歩いていた。
以前は彼女の護衛という形でろくな観光も出来なかったのだが、今回は観光目的。彼女の案内や紹介で、ラステイションへの理解と興味を深めていく。
「この辺りはラステイションの歴史や技術を知ってもらうための博物館が多いの。 体験学習とか実施してくれる工場もあったりするのよ」
「へぇ、地域密着型なんだな」
「ええ。 みんなにラステイションをもっと好きになって欲しいもの」
改めて見るラステイションの国は、重工業の国というイメージに隠されがちなノワールの想いが詰め込まれていた。
工場や企業の多さから発展ぶりは勿論、そんな国を深く知り、愛してもらおうと娯楽にも注力している。
「あ、白斗。 ここのパン屋さんは私のお気に入りなの。 食べてかない?」
「いいね。 実は昼まだだったんだ」
「良かった。 オススメはカレーパンだけど白斗もそれでいい?」
「ノワールにお任せ」
「任されました♪ おばちゃん、カレーパンお願い!」
どうやら一緒に来たかった場所らしい、ノワールがとあるパン屋を指差した。
各国の食文化に興味があった白斗は二つ返事で承諾、早速ノワールが買ってきたパンとコーヒーで軽い昼食に。
ベンチに腰掛け、二人仲良くカレーパンにかぶりつく。
「もぐもぐ……ん!? なんじゃこの美味さ!? カレー自体のコク、辛さ、そしてそれに絡み合うパン……!」
「でしょう? 時々このパンを食べないと落ち着かないのよねー」
「ごっくん! ……ふぅ、一気に食っちまったぜ。 もう一個買ってくる!」
「そういうと思ってお代わり買ってきてあるわ。 はい、どーぞ」
「あ、悪ぃ……」
「じゃなくて?」
「……ありがとな」
カレーパンの美味さが想像の域を超えており、あっという間に食してしまった白斗。
当然パン一個で満たされず、もう一個を求めてしまう。
それを予期していたノワールがそれを差し出してくれた。白斗は照れ臭さを感じながらもそれを受け取って再びかぶりつく。
「って白斗、カスがついてるわよ」
「んぁ? どこだ?」
「もう、こういうところは子供っぽいわね。 動かないで、取ってあげるから」
一方、パンを食べ終えたノワールが振り向くとパンのカスが頬についているのが見えた。
白斗は全然気にせず食べていたため、このまま気付かずに人前に出てしまいそうだ。そうなる前に取ろうと彼女はハンカチを手に顔を近づける。
つまり、ノワールの顔が眼前に迫るわけで―――。
(……ちょ、近い近い……! 最近こんなの多くねぇか!?)
「よし、取れたわよ……ってご、ごめんなさい!」
謎の興奮で、作り物であるはずの心臓が急な稼働を始める。
それに伴い体中の血液の流れも速まり、顔が紅潮してきた。そんな彼の顔を見てようやく気付いたのか、ノワールが赤くなって離れてしまう。
「い、いや……こっちこそ、ありがと……」
「ド、ドウイタシマシテ……」
甘酸っぱい雰囲気が二人を支配する。
もう、先程のパンの味も吹き飛び、コーヒーを飲んでも苦みが全然感じられない。
「……そ、そろそろ教会に行こうか」
「そ、そうね……」
何とか話題を切り出した白斗は、教会へと促す。
同じくこの空気を脱したいノワールは即座に立ち上がり、ゴミを片付けてから教会へと案内するのだった。
☆
「―――着いたわ。 改めてようこそ、私の教会へ」
「おおー! 何ていうか……遊び心あるなぁ!」
あれから数十分ほど歩き、ようやくラステイションの教会へと到着した。
見た目としては様々な金属を寄せ集めて作った戦艦のようなイメージだ。無骨なデザインが寧ろ白斗の興味をそそっている。
「ありがとう。 まずは貴方の部屋に案内してあげるから荷物を置いて」
「おう」
扉を開けると、内装は綺麗だった。
さすがに教会と言うからには内部だけでも神聖なイメージが必要なのだろう。仮にもノワールの住まいなのだから。
そして帰ってきたノワールに職員たちが一斉に挨拶する。彼女がそれだけ教会内で力と尊敬を集めていることを意味していた。
そんな彼女自ら案内されては、白斗も光栄に思うしかない。
「ここが貴方の部屋よ。 この教会内最高の客室を用意したわ」
「う、うへぇー……。 こんなところ使っちゃっていいのか?」
「いいのよ。 これでもまだ足りないくらいなんだから、私の気持ちは」
案内された部屋はお洒落かつ上品な部屋。高級ホテルとも勘違いしてしまうほどの一室。
ノワール自ら案内してくれたことと言い、上質な客室といい、今回の彼女の気合の入り様は半端なものでは無い。
「長旅で疲れたでしょ? 夕食までここで好きに過ごして頂戴。 何だったらまた外へ観光しに行ってもいいわよ」
「え? ノワールは?」
「私は女神よ。 本当は白斗の相手をしたいんだけど、他にも仕事があるのよ」
「仕事だったら手伝うぞ」
「だから貴方はお客様で、しかも今回は旅行で来てるのよ。 そんなことさせられないわ」
彼女一人に仕事をさせるのは忍びない、手伝うという申し出も却下されてしまう。
また以前のように一人で抱え込む癖も完全には抜けきっていないが、それ以前に白斗に仕事をさせるべきではないという考えの下だ。
確かに理屈としてはあっている。あっているのだが、理屈だけで納得できる白斗ではない。
「―――ノワール。 俺、お前の望みを叶えたい」
「え? な、何よ突然……それに望みって?」
突然、そんなことを言いだしてきた。全く理解が追い付かないでいると。
「……これから一週間だけだけど、女神ブラックハート様の秘書にさせてください!」
そんな事を言って、頭を下げてきた。
当然驚いたが、そのフレーズはノワールには聞き覚えがあった。何せ、彼女自身がそうなって欲しいと望んだのだから。
(あ……そうだ。 私……白斗に「秘書になって欲しい」って……)
初めてラステイションに訪れる際、ノワールに意見を出したところそれが彼女に琴線に触れ、能力を認められた。
その際に気分が高じて、そんなことを言った。あの時は少し冗談も混じっていたつもりだったのだが、やがてそれは冗談ではなくなっていた。
(本当は……白斗に来てほしくて、傍に居て欲しくて……その口実のつもりだったのに)
ネプテューヌへの恩義から、彼は彼女の下を離れないでいる。
それが羨まして、つい秘書になれなどと口走っていたが、彼はそれを真剣に考えてくれた。
そして、一週間限定だがノワールの願いを叶えようとしてくれる。それも戯れなどではない、全力で。
ならば、ノワールも全力でそれに応えるだけだ。
「……ええ、分かったわ。 そう言うことならしっかりこき使ってあげる! 女神の秘書なんて願ってもなれるものじゃないんだから感謝しなさいよね!」
「はい!」
持ち前の強情さゆえに素直になれず、つい憎まれ口を叩いてしまう。
けれども白斗はそれを理解した上で元気よく頷いてくれた。
それがノワールには何よりも嬉しくて、つい顔が緩んでしまう。
「だ・け・ど! 仕事を引き受けてもらうからには真剣にやってよね! それと、名目上は旅行、過度な仕事もさせないからそのつもりで」
「了解」
しっかりと線引きが出来るのもノワールの良いところである。
これから一週間、楽しみつつもノワールを支えていければと願う白斗だった。
「さて、では早速……と言いたいんだけど、これから来客が来るの。 だから正直白斗にお願いできる仕事は無いのよね」
「あら、そうなのか。 それは仕方ないな……」
「ええ、だからユニにこの教会内を案内してもらうわ。 その後は皆で晩御飯にしましょ」
そう言えば、まだここに来てからユニと会っていない。
久々に彼女に会うのも楽しみだと白斗も嬉しくなる。
ふと、ノワールがこの部屋の壁に掛けてある時計に目をやると。
「あらヤダ、もうこんな時間! 白斗はユニが来るまでゆっくりしててね」
「おう。 ノワールも仕事頑張ってな」
「ありがと。 じゃ、また後で!」
白斗のために相当時間を割いたらしく、バタバタと走り出すノワール。
そんな彼女を見送り、白斗は荷物を置いてベッドに寝転がった。
「ふぅ~……ここで一週間生活するのかー……」
期待と不安が織り交ざった新しい生活。
まだ自分は氷山の一角すら見れていない。逆にこれから遭遇するものは未知の連続。
異世界に続き女神様、モンスターと現実離れした事態が多く続いたが故に耐性は出来ていると思っていたが、まだまだ見たことも無い、驚くべきものがここにはある。
「白斗さん、入っていいですか?」
「その声はユニちゃん? いいよー」
コンコンと控えめなノック音。扉の向こうから聞こえてきたのはユニの声。
許可を出せば、トレーにコーヒーを乗せているユニが来てくれた。
「いらっしゃい白斗さん、お姉ちゃんの国ラステイションへようこそ」
「ありがとう。 これから一週間お世話になります」
ちゃんと挨拶を忘れないいい子である。
白斗も礼儀に従い、挨拶した。微笑み返してくれたユニは近くのテーブルにコーヒーを置く。
香ばしい匂いで辺りは満たされた。
「はい、どうぞ。 ウェルカムドリンクとまでは行きませんが」
「ご丁寧にどうも。 …………うん、美味しい」
「ありがとうございます! お姉ちゃん好みにしたんですけど、白斗さんも気に入ってくれたみたいで」
どうやらユニが淹れてくれたものらしい。しかもその腕を磨き続けてきた理由が、姉のためだというのだから感心させられる。
数日間一緒に暮らしていて感じたことだが、彼女は本当にノワールの事が大好きで、尊敬していて、憧れになっていると白斗は感じていた。
「白斗さん、もしお時間良かったら教会内を案内しますよ。 紹介したい人もいるし」
「紹介したい人とな?」
「はい。 教祖なんですけど……」
「ああ、イストワールさんのような人か。 確かに挨拶しないわけにはいかないな」
イストワールやミナ、チカを見て薄々は感づいていたのだが、やはりラステイションの教会にも女神を補佐する役割の人物がいるらしい。
言わば教会におけるNo.2と言った人物。白斗も唯一挨拶していない教祖ということもあって、挨拶に向かうことにした。
案内された広間では、銀髪の人物が何やら機械の調整に取り掛かっている。
「ケイ、ちょっといい?」
「ん? 何だいユニ……って、そちらの御仁……ひょっとして黒原白斗かな?」
振り返った人物は、どことなく中性的な顔立ちだった。
例えるならビジネスウーマンとでもいうべき佇まいで、出来る人と白斗に直感させた。
「はい。 この度お世話になります、黒原白斗です」
「ようこそラステイションの教会へ。 僕は神宮寺ケイ、ラステイションの教祖を務めている。 一応これでも女性だが、変に考えないでくれ」
失礼な話だが、性別はどちらなのだろうと一瞬考えてしまった。
でも気遣いや声、肌などから見ても間違いなく女性であると確信できる。
今思えばちらりと見た程度だが、あの式典でラステイション陣営にて彼女を見たことがある。あの時はドレスだったから、今の姿と重ならなかったが。
「こちらへは旅行に来ているという話だったが、さっきノワールから聞いたよ。 秘書をすることになったんだって?」
「はい、俺からお願いしました」
「やれやれ、君も物好きだね……。 君も知っての通り、ノワールは素直じゃないところがある子だ、その辺も含めてサポートしてやってくれ」
どうやらケイは仕事云々ではなく、ノワールを支えてくれることに重きを置いているようだ。
他の国とは違い、彼女を神格化しているわけではないが、だからこそ彼女に近い目線で接することが出来る。
ただ、どうしても足りない部分があった。それを白斗に託されたのだ。
「了解です。 ところでケイさん、その機械はひょっとして……」
「ん? ああ、君はルウィーの一件で使ったことあったんだな。 そう、プラネテューヌから送られた転移装置だ。 今、細かな調整をしていたところなんだ」
以前、友好条約の一環としてネプテューヌが各国に供与すると言っていた転移装置だった。
あの時点で試運転可能な機械はルウィーのみだったが、今後の事を考えての実用化に向けて調整中というところらしい。
「さて、僕の話はもういいだろう。 ユニ、引き続き案内してやってくれないか?」
「おっけー。 それじゃ白斗さん、こっちです!」
「おう」
再び機械の調整に取り掛かったケイを後にし、白斗はユニの案内の下、教会とその周辺を回っていった。
正式な教会の職員ではない白斗が入ってはいけない部屋などもあるため、ユニの話は一言一句逃さない。
「……と、ここで一通り案内は終わりました! 他、何かリクエストがあれば聞きますけど」
「案内終わり、ねぇ……まだ案内してもらってない箇所が2つあるんじゃないかな?」
「あれ? どこか抜けてたかなアタシ……」
ユニが脳内を必死に探しても案内し忘れている部屋が思い浮かばなかった。
白斗がここで生活する上で必要な設備は紹介しきったはず、メモにも書き記してあるのだから。
しかし、ここで白斗の暗黒の笑顔が炸裂する。
「あるじゃないか……ノワールとユニちゃんの部屋が」
「ぅえええええええ!? だ、ダメですよ! そんなのー!!」
「デスヨネー、ハッハッハー…………チッ」
「舌打ち!? 今露骨に舌打ちした!? もー白斗さんってばー!!」
涙目になりながらもピシピシと白斗を叩く。
随分と白斗もいい性格になったものだとユニは内心呆れた。
「ゴメンゴメン。 でも折角だからユニちゃんと何か遊びたいな。 晩飯まで少し時間あるだろ? そうだ、銃で撃ちあうゲームとかあったら紹介してくれよ」
「そうですね! それじゃ、アタシの部屋にゲームあるからそれで……ハッ!?」
と言って、ユニは自分の部屋を指差してしまった。
気付いた時にはもう遅い、白斗の目が怪しく光っている。
「言質取ったり、ふっふっふー」
「くッ……何という巧妙な誘導尋問……! あ、アタシの負けね……」
「まぁ遊びたいのは本音だが、無理して見せなくてもいいぞ」
「い、いいえ! ただその……恥ずかしくて……」
もじもじと恥ずかしがるユニの姿は実に女の子らしかった。
―――だが、案内された部屋は女の子らしくなかった。
何せ彼女の趣味であるミリタリー系グッズで絡められていたのだから。武器となる銃は勿論、関連パーツやメンテ用ツール、本棚の雑誌まで銃関連と彼女の好きなものが詰め込まれていた。
「おお、銃関連のグッズが所狭しと……!」
「う、ううう……女の子らしく、無いですよね……」
「まぁ、そうかもしれんが俺は好きだぜ。 お、シングルアクションアーミーじゃん!」
元々の経歴からか、白斗は拒絶するどころかユニの趣味に理解を示していた。そもそもプラネテューヌで暮らしていた時も銃関連のトークで盛り上がることがあった。
と、その最中に壁に掛けられている銃を見つけた。リボルバーのようなタイプの銃だ。
「分かりますか!? 世界一高貴なる銃! アタシ、とあるゲームやっててすっかり嵌っちゃって」
「俺も、漫画で見てついつい真似ちゃうんだよな~。 ほいよっと」
慣れた手付きでガンスピンをこなす白斗。
さながら西部劇に出てくる凄腕ガンマンのようだった。その美しさはユニの目を虜に刺せている。
「凄いです白斗さん! では、銃で盛り上がったところでゲームやりましょうか!」
「おう。 ……ほうほう、これまたコアなゲームを」
「リーンボックスでは結構人気のタイトルなんですよ!」
「ベール姉さんらしいっちゃらしいなぁ……」
ユニが差し出したのは銃で互いを狙撃し合うFPSのゲーム。
聞いた話によると、こういったコアなガチ勢に受けているのは主にリーンボックスらしい。
二人はコントローラーを手に、ゲームに熱中していく。
(今までこんな風にゲームを遊んだの……ネプギア以来……。 お姉ちゃんは忙しくて中々相手してくれないし、他の女の子には受けが悪いし……)
ゲームを楽しく遊んでる最中、ユニがふと思うこと。
これまで銃関連のゲームを遊ぶ人と言えば大抵は男だけだった。しかし自分の周りにはいない。
唯一の例外はネプギアくらいのものだが、彼女はプラネテューヌにいる関係上、こうして面と向かって遊べる機会は少ない。
けれども、この少年―――白斗は違った。自分の趣味を理解して、そして遊んでくれている。
(……ネプギアが言ってたお兄ちゃんみたいって意味……分かっちゃうなぁ)
どこか嬉しさを感じながら、ユニと白斗はどっぷりとゲームに浸る。
その姿は本当の兄妹のようだった―――。
☆
「もぐもぐ……ん、美味しいな」
「でしょう? ここのシェフの腕前はラステイション一なんだから」
待ちに待った夕食の時間、白斗はテーブルに座り、ステーキを食していた。
言うなればフランス料理の様な上品な料理が並べられている。
肉の美味さに舌鼓を打ちながらバクバクと食べる白斗に、ノワールはどこか嬉しそうだ。一方のユニは、距離自体は近いのだが切り出す話題と勇気がないのか、どこか距離を置いている。
「そうだ白斗、早速あなたに明日から仕事を一つ頼みたいんだけど」
「ほいきた、合点承知の助。 何をすれば?」
「明日一日、ラステイションの街を見回って欲しいの。 この街で何があるのか、何が無いのか、何が問題なのか。 貴方なりの視点で纏めてくれる?」
そう来たか、と白斗はノワールの意図を一瞬で理解した。
仕事に関してはストイックな彼女が、今更街の実情や陳情を知らないはずがない。そういう名目で街を観光してきて欲しいというノワールの気遣いだろう。
「……了解した」
「ふふ、楽しみにしてるわね。 でもごめんなさい、明日も着いていけなくて」
「大丈夫。 その分仕事でご一緒するから」
「そ、そうね……フフフ♪」
本来、ノワールからすれば白斗がこの国に来てもらうだけでも十分嬉しかった。
ひとつ屋根の下で暮らせば、こうして話す機会が生まれるから。元々仕事が忙しく、白斗を一人にさせてしまう時間が多くなることを懸念していたが、こうして白斗の申し出により彼と接する時間が多くなる。
ノワールは自分でも知らぬうちに上機嫌だ。
「あ、あの……お姉ちゃん、あの書類の件なんだけど……」
余り会話に加われないのも寂しかったのか、ユニが声をかけてきた。
だがどこかぎこちない。そんな空気を察知してしまったのか、ノワールも少し体をビクつかせて振り返る。
「え……? は、はいはい。 出してくれたあれね。 うん、問題なかったわ」
「よ、良かった……私役に立てた……!」
「でもそれだけでは駄目よ。 仕事というのは、私の役に立てるだけが目的ではないのだから」
「う……」
ノワールも、問題は無いと評してはいるがだからと言って手放しで褒めるまでには至らない。
彼女にとってはそれがユニのためになるからと思っての事だ、決して悪意があるわけではない。
それを互いに分かっているからこそ、余計にかける言葉が見つからないのだ。
(あぁ~……私の馬鹿馬鹿馬鹿! もっとユニを褒めてあげたいのに……どうしてこんな言葉しか出てこないのかしら、もう……)
(うう……お姉ちゃんにもっと褒めてもらいたい。 でもお姉ちゃんの言う通り、これだけじゃお姉ちゃんには追い付けない……でも……)
互いが互いを思いやるが故に手を出せない。
互いが互いに理想を求めているが故に語りだせない。
互いが互いを理解しあえていないが故に―――届かない。
(……ふむ、もう一つ……仕事が出来たな)
デザートであるアイスクリームを口にしながら、溜め息をつく姉妹を見ていた白斗。
彼は新たな決意を胸に宿す。
―――そして夕食を食べ終えてその夜、白斗は自室で寝転がっていた。
「ふぅ……食った食った。 ……しかし、バスルームまで完備していたとは」
白斗が部屋から戻ると、薫り高い湯気が漂っていた。
よく見て見るとバスタブにお湯が張られていたのである。恐らくこの教会の職員が白斗が留守の間に用意してくれたのだろう。
まるで一流ホテルの様な行き届いたサービスに白斗は大満足である。
「……っと、ネプテューヌに連絡しないとな」
白斗は携帯電話を取り出してとある番号に掛ける。
それはプラネテューヌの女神、ネプテューヌに繋がる番号。本来であれば女神と直接連絡が出来るだけでこのゲイムギョウ界から嫉妬による袋叩きにあってもおかしくないほどの特権。
そんな彼女と連絡を取ることは、義務ではない。彼自身が望んでいるのだ。
『白斗白斗白斗―――――!!!』
「どぉぅわぁ!? ね、ネプテューヌ近ぇよ!!」
連絡が付くなり、出迎えたのはドアップにされたネプテューヌの顔。
さすがの白斗も驚いてベッドから転げ落ちてしまう。
痛む頭をさすりながら、何とか体を起こして彼女と向き合った。
『ゴメンゴメン! もう、白斗の声を聞けると思ったら待ちきれなくてー!』
「ったく……やっぱりネプテューヌだなぁ」
『あー! 今馬鹿にしたでしょ!!』
「してないしてない……(バレなくてよかった)」
実を言うと旅行に行くにあたって一番の心残りはやはりネプテューヌのことだった。
無邪気で興味のないことにはどこまでも無頓着で、不真面目で遊び呆けてて、でも明るく優しい彼女を残していくことが。
でも、こうして話すだけで白斗の心残りも吹き飛んでしまうと言うもの。
『……えー!? それじゃ折角の旅行なのに結局仕事するのー!? ノワールめ、マジブラック企業ー!!』
「いや、俺の申し出だから気にしないでやってくれ。 こうでもしないとノワールとの時間が十分に取れそうに無いしな」
『むー! 白斗は人が良すぎるのが欠点だよ!』
今日何があったのかを掻い摘んで話した。
やはり特筆するべきは滞在中だけ彼女の秘書になるということ。結局羽を伸ばせていないということにネプテューヌはお冠である。
彼女も白斗が離れることは嫌だったのだが、白斗に休養を取ってもらいたい気持ちもあったからだ。
「まぁまぁ。 それにちょっとお節介焼いてやらないとノワールとユニちゃんが……ね」
『あー、あの二人かー。 ノワールは白斗に対しては素直になったけど、ユニちゃんとは距離が近すぎた余り逆に線引きしようとし過ぎているし、ユニちゃんはそんなノワールを神格化し過ぎちゃっているからねー』
「なるほど……」
一見ふざけているだけのネプテューヌだが、その分析は正確だった。
互いのイメージ像と言うものを崩したくない余り、大切にしすぎて手が出せないでいるという雰囲気なのだ。
ネプテューヌもそんな二人が心配らしく、困ったような表情をしている。
「つまりは一気にではなく、徐々に距離を詰めていく必要があるわけか」
『でも白斗、大丈夫なの?』
「俺は切っ掛けを作るだけ。 モノにできるかはあの二人次第さ」
とは言えこればかりは当人次第でもある。
ならば、白斗は深く干渉せずあくまで間接的に動くことを重点に置こうとしている。既に彼の頭では姉妹間の問題解決に向けて作戦組み立て始めていた。
『そっか……でも、何かあったら私も協力するからね!』
「おう、サンキュ。 んじゃ、報告はこれくらいにして……」
『え? それって……ゲーム機?』
白斗はバッグからあるものを取り出した。
それは、彼が初めて買ったゲーム機。クエストの報酬などで貰った金を元にこの世界で初めて購入したかったもの。
この世界にくるまで、全くゲームには関心を寄せることすら出来なかったのだがネプテューヌがやっているのを見て、彼もしたくなったのだ。
「これで対戦してくれないか? ……勿論、負けないぜ」
『……! うん!!』
彼の思いに、ネプテューヌは満面の笑みで応えた。
こうしてラステイションの一日目が終わろうとしていた―――。
サブタイの元ネタ「超次元ゲイムネプテューヌ(無印)」よりラステイションのキャッチコピー。
ということでラステイション初日終了。
今回の旅行編はそろぞれの国の特色を出しつつ、同じような過ごし方ではなく、それぞれの国ならではの過ごし方をしつつ女神様達との仲を深めていく構成を目指しています。
なので真面目なノワールらしく、旅行しつつ仕事を手伝うというシチュエーションにしてみました。
そんな白斗とノワール、そしてユニや色んなキャラとの交流。まだまだ続きます。お楽しみに!