恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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第二十七話 二十歳になってもお酒はダメです

―――どうも皆さん、黒原白斗です。

元は異世界からやってきたという俺もゲイムギョウ界に流れ着いてから早二ヶ月。もうこの生活にも慣れてきました。

俺を拾ってくれたネプテューヌら女神様に恩返しするためにと始めた書類仕事やモンスターの討伐クエストにも大分慣れています。

 

 

 

 

 

 

 

……ただ、未だに慣れないことがあります。それは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はくとぉ~~~♪ えへへ~~~♪」

 

 

……こんな風に蕩けきった表情と声で頬ずりして来るネプテューヌ様。

 

 

「白斗ぉ……ぐすっ。 私にも構ってよぉ~……うえぇ~……」

 

 

……すっかり泣き上戸になってしまったノワール様。

 

 

「白斗ぉ!! もっと注げ!! そんで飲めぇ!!!」

 

 

……怒り上戸のブラン様。

 

 

「白ちゃ~~~~ん! あはは~~~☆」

 

 

……狂ってしまわれたベール様。

 

 

 

 

 

……彼女達、女神様からの身体的接触です。

いや、いつもやってくることなんですけど今日は異常なんです。見りゃ分かるでしょ?ノワールさんとか明らかにキャラとしてあり得ない感じですし。

とにかく、本編に入る前に一言いいですか?

 

 

 

 

 

「………どうしてこうなったああああああああああああああああああああ!!?」

 

 

 

 

 

……いや、本当に。誰か助けてください……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――事の発端は数時間前の事。

 

 

「ふぅ……いい眺めってなモンだ」

 

 

バルコニーから一人、白斗は夜となったプラネテューヌの街並みを見下ろしていた。

プラネテューヌの夜景は美しい。

発展の象徴とも言える建物、そしてネオン。様々な光が色取り取りに輝き、街を彩っている。

そんな風景を眺めながら、白斗は琥珀色の液体が満たされたグラスを傾けていた。

 

 

「白斗ー! 何して……あー! またお酒飲んでるー!!」

 

「んぁ? いいじゃないかネプテューヌ、俺の数少ない趣味の一つだ」

 

 

するとそこへ声を掛ける少女。

この国の女神、ネプテューヌだ。だが飛んできたのはお叱りの声。

白斗は悪酔いしない体質とは言え、まだ18歳。幾ら本人が平気と言い張っても見過ごせはしなかった。

 

 

「もう、お酒ってそんなにいいの?」

 

「おっと、飲むんじゃねぇぞ。 お前みたいなお子様にゃキツすぎる」

 

「私子供じゃないもん!」

 

「そのナリで言われてもなぁ……で、どうしたよ?」

 

「もー……ご飯できたから呼びに来たの」

 

「悪いな。 んじゃ、頂きますか」

 

 

ネプテューヌからのお小言を退け、白斗はグラスとボトルをバルコニーのテーブルに置き、中へと戻っていく。

今回はアイエフとコンパもいないため、彼女とネプギア、イストワールと共に夕食をいただく光景―――になるはずだった。

 

 

「あ、白斗! 見て見て! このハンバーグ私が作ったのよ!」

 

「白斗……こっちのスープは私。 自信作よ」

 

「白ちゃん! こっちのサラダは私ですわ!」

 

「……で、なんで! 私の教会に皆が集まってるのかなぁーっ!!?」

 

 

そう、今このプラネテューヌの教会にはノワール、ブラン、ベールが集まっていた。

今日に限った話ではない。白斗が旅行を終えてからというものの、ほぼ毎日、入れ代わるようにして女神達が時間を作り、あの手この手で白斗に会っていたのだ。

そのため、こうして一堂に会することも然して珍しい話では無かった。だが白斗との一時を邪魔されたとあっては、ネプテューヌも黙ってはいられない。

 

 

「い、いいじゃない! 私はなんていうか、その……白斗に色々お礼したいなーって……」

 

「……私は純粋に白斗に会いたかった」

 

「あ、ブラン! 何一人だけいい子ぶってますの!? 私だって白ちゃんに……!」

 

「は、ハハハ………」

 

 

途端に騒がしくなる女神達。

当然、目的は白斗だ。何故彼女達が会いに来てくれるかは理解できていないが、純粋に会いに来てくれるのが嬉しく思っている白斗からしたら邪険に扱う理由など無い。

 

 

「んもーっ!! 皆ってば、白斗の胃袋は私が握ってるんだからね!!」

 

「白斗の胃袋は私のものよ!! だからこうやって実力を示してるの!!」

 

「ふ……貴女達は白斗の好みを全然分かっていない……白斗の胃袋は私のもの……」

 

「弟のものは姉のもの! 私こそ白ちゃんの胃袋を掴みますわ!」

 

「言葉だけ聞くとグロいんだけど!? 何、俺解剖されちゃうの!?」

 

 

皆、恋する白斗のためにアピールポイントを作ろうと必死だ。

それだけにとんでもない会話になっていることにすら気付かない。誰が言ったか、恋は盲目という言葉に偽りなし。

 

 

「ほら、お兄ちゃん! お姉ちゃん達は放っておいて、早くしないと冷めちゃうよ!」

 

「ですね。 白斗さん、こちらの席へ」

 

「お、おう……」

 

「「「「ああぁぁ―――っ!!?」」」」

 

 

尚も激しくなる議論を脇目に、ネプギアが白斗の手を引く。

イストワールにも誘導され、座った席はネプギアの隣。しかも白斗の席は角に位置するため、ネプギアが実質独占状態。

味ばかりに気を取られ、美味しい状況を許してしまったことに女神達は絶望の声を上げる。

 

 

「もういいですから。 美味しいご飯が冷める前に頂いちゃいましょう」

 

「だな。 それじゃ、頂きまーす!!」

 

「「「「いただきまーす!」」」」

 

 

何だか釈然としない女神達だが、余り拘り過ぎて白斗の不興を買いたくない。

言い争いもここまでにして、白斗の音頭に合わせて夕食を楽しむ。

 

 

「ど、どう? 私のハンバーグ……」

 

「おう、肉汁がしっかり出てていい味してるよノワール」

 

「ホント!? 良かった……!」

 

 

味を褒めてくれたことでノワールは心底安心したように胸を撫で下ろす。

彼女は以前、デートの際に白斗の好物の一つがハンバーグであることを知った。それ故にチョイスだったがが故に白斗のお気に召したようで、彼からは満面の笑み。

愛する人に手料理を作る嬉しさを噛みしめているノワールに対し、白斗はスープを啜る。

 

 

「……ん。 いい出汁だ。 ブラン、色々勉強してくれたんだな」

 

「ええ。 貴方好みに合わせるの、結構苦労したのよ?」

 

「俺、そんなに口うるさく好み言ってたっけ?」

 

「食事の時の表情を観察したのよ。 最近の白斗、表情豊かだから分かりやすいの」

 

 

そんなことをブランに言われて、ハッと頬に手を当ててしまう。

この世界に来た当初は恐怖と虚無に支配されていた心。その時の表情も、殆ど作り笑いにすぎなかったと自覚している。

今となっては彼女達、女神の心に触れ、自分の表情を取り戻しつつあると白斗は認識せざるを得なかった。

 

 

「そうですわよ。 ですから白ちゃん、あーん♪」

 

「「「それは許さん」」」

 

 

ベールがさりげなく、ポテトサラダをスプーンで一掬いして白斗に「あーん」をしてあげようとするが、他の女神達のドスの利いた声に制された。

けれども一度口を付ければ料理の美味しさも相まって皆和やかな空気となる。何せシェアと白斗さえ絡まなければ、仲のいい親友同士なのだから。

 

 

「ふぅ、ご馳走様。 美味しかった! ………ん? どうしたブラン?」

 

 

腹も食欲も満たされ、白斗は満足する。

膨れたお腹をさすっていると、隣からくいくいと可愛らしく引っ張る感触。

振り返るとそこには、期待の籠った視線を差し向けてくるブランがいた。大変可愛らしいのだが、大変嫌な予感がしてならない。

 

 

「白斗……誰のが一番おいしかった?」

 

「これまた下手な答えで腹も角も死亡フラグも立つような質問が……!」

 

 

すると一斉に、ノワールとベールの目もギラリと光る。

折角和やかな空気になったと言うのに一触即発、白斗の汗はダラダラだ。

 

 

「と、当然私よね!?」

 

「お待ちくださいな! ポテトサラダ及びドレッシング担当の私こそ!」

 

「いいえ、数々の趣向を凝らした私のスープが一番……!」

 

 

またもや皆主張し合う。

ナンバーワンとオンリーワン。愛は一つだけ。悲しいものである。

当然今回料理していないネプテューヌは蚊帳の外だが、一人省かれては面白くないネプテューヌも頬に空気を、目尻に涙を溜めては吠えた。

 

 

「白斗! この間のデートで作った、私の愛妻弁当こそ至高でしょ!? 白斗だってサイコーって言ってくれたじゃない!」

 

「え!? 愛妻弁当!? ネプテューヌ、貴女そんなことを!?」

 

「そうだよ! 白斗だって初めての手作りで嬉しいって言ってくれたし!!」

 

「お、お姉ちゃん……! そんな、羨ましいことを……!!

 

 

ドヤァと言わんばかりに控えめな胸を張る。

大変可愛らしいのだが、こんな状況では角しか立たない。ネプギアまでもが悔しさで体が震えている。

 

 

「愛妻……弁当……! くっ、私としたことが何たる不覚……!」

 

「何故私はそんな発想に至らなかったというの……!?」

 

「ふっふーん! 因みにメニューのチョイスも白斗好みにしたもんねー!」

 

(そんなに悔しがることか!? そんなにドヤるところか!?)

 

 

ブランとベールも絶望の余り、机を盛大に叩く。心底悔しそうだ。

何故彼女達がこうなっているのか、白斗には皆目見当もつかない。因みにこの女の戦いを目の当たりにしているイストワールはため息を付いていた。

 

 

(また守護女神戦争が起きなければいいのですが……いや、ある意味起きてますか)

 

 

そんな懸念を他所に、女の戦いはヒートアップしていく。

あれやこれやと会話は留まることを知らず。

 

 

「全く、ネプテューヌさん達は……あら? お皿は?」

 

「俺とネプギアが片付けました」

 

「早!?」

 

「私とお兄ちゃんのコンビネーションは無敵ですから!」

 

 

どうやら会話の合間に白斗とネプギアが洗ってしまったらしい。

恐ろしい手際にイストワールも驚いた。会話に夢中になっている四女神はその事実に気づいていないようだ。

 

 

「す、すみません……。 本来なら料理した人が片付けるべきなのに……」

 

「いいんですよ。 美味しい料理を作ってもらったんですから、片付けくらいするのが筋ってモンですよ」

 

「白斗さんらしいですね」

 

 

白斗の優しさに、ここまでくると呆れすら感じてしまうイストワール。

本来なら怒ってもいいはずなのに。

 

 

「ところでイストワールさん、夜食何がいいですか?」

 

「夜食……ですか?」

 

「はい。 あの様子だとあいつら、結局いつもの通り夜通しゲーム大会に発展するだろうし、何か小腹でも埋められるものをと」

 

「白斗さんの気遣いに私、涙が出てきました……」

 

 

ハンカチを取り出して涙を拭うイストワール。

寧ろ彼が主夫のようにさえ感じてならない。

 

 

「私は大丈夫です。 お夜食は健康に悪いですから」

 

「そうですか? ……なら、適当にサンドイッチにでもしとくかなー……」

 

「お兄ちゃん、冷蔵庫の中身もう無いよ?」

 

「あらま」

 

 

とりあえず冷蔵庫を覗いてみると、空であった。

これだけの料理を作ってくれたのだ、食材が無くなるのも無理はない。幸い、まだ夜の7時を回ったばかり。

まだ近くのスーパーなら開いているだろう。

 

 

「外で買ってきますね。 ついでに明日の朝食の分も」

 

「何から何まで本当にすみません……」

 

「いえいえ。 すぐに戻りますんで」

 

「分かりました。 お気をつけて」

 

 

白斗はいつものコートを身に纏い、颯爽とスーパーへと向かう。

食事当番では割とお鉢が回ってくることもある白斗からしたらこの程度、まさに朝飯前。それに加え、女神の皆に喜んでもらえることが何より嬉しかった。

 

 

「ネプギア、ついてきてくれるか?」

 

「うん! やったー! お兄ちゃんとお買い物ー♪」

 

「んな大袈裟な……うおっと、くっつくなって」

 

「だって、お姉ちゃんが羨ましかったんだもん♪ ああ、夢心地だよぉ……」

 

 

ただ一人、ネプギアは役得と言わんばかりに白斗の腕を取って買い物に同行する。

彼の腕に絡まったネプギアはまさに可愛さの塊。そんな美少女を侍らせて気分が悪い男がいるだろうか、いや無い。

そんな白斗は酒が入っていることもあってか、鼻歌を歌いながら意気揚々と夜の街へと歩いていく。

 

 

「さて、ネプテューヌさん達は当分あのままですし……私は部屋に戻りますか」

 

 

イストワールは今も尚、論争を繰り広げている女神達を尻目に、部屋へと退散していった。

彼女達が部屋を去ったことにも気づかず、女神達のガールズトークは尚も続いていく。

 

 

「……っていうかさー! 最近皆来すぎじゃない!? たまには静かな一日を過ごさせてよー!」

 

「ゲイムギョウ界一騒がしい選手権王者の貴女がそれを言う?」

 

 

ノワールのツッコミに誰もが頷く。

 

 

「でも来すぎなのは事実でしょ! そんなに私と白斗の一時を邪魔したいの!?」

 

「別にネプテューヌの邪魔をしにきたつもりはない……ただ、白斗と過ごしたいだけ」

 

「右に同じくですわ!」

 

 

女神達は時間を作っては積極的にここを訪れている。

目当ては言わずもがな白斗だ。

そんな日々に、さすがのネプテューヌも辟易としていた。

 

 

「むーっ!! 大体なんで皆、白斗目当てなのさー!?」

 

「べ、別に私の勝手でしょ!? ネプテューヌには関係ない話じゃない!」

 

「か、関係あるもん! だって……だって……!!」

 

 

噛みついたと思ったら噛みつかれる始末。

売り言葉に買い言葉とはこのことだ。ここまで焚きつけられてはネプテューヌも我慢ならない。

この上なく顔を赤くしながらも、決死の想いで叫ぶ。

 

 

 

 

 

「だ、だって………わ、私……白斗の事…………大好きなんだからぁーっ!!!」

 

 

 

 

 

―――盛大なカミングアウトに、静寂が訪れる。

ただ一人、ネプテューヌだけは息を荒げていた。誰かに自分の想いを伝えるのが、こんなにも勇気のいることだとは。

一瞬目をパチクリとさせていた女神達は。

 

 

「あ、やっぱりネプテューヌも?」

 

「ねぷぅぅううう―――っ!!? 何そのサラッと受け流す感じは!?」

 

「だって……ねぇ?」

 

「そうよね。 見ていてバレバレだったもの」

 

 

分かり切っていたかのように淡白な反応を返すだけだった。

 

 

「……ねぷぷ!? ちょっと待って!? “も”ってことは……まさか皆も!?」

 

「う………その、まぁ……」

 

「……そう、なるわね……」

 

「お、おほほ……」

 

 

今までの発言、そして態度、白斗への接し方と表情。ようやくネプテューヌが答えに辿り着いた。

言い当てられるや否や、女神達は揃いも揃って顔を赤くしてはもじもじしたり、俯いたり、何とか笑顔を保とうとし足りと様々な反応を見せる。

ただ分かることは―――誰もが白斗を想っている、ということだ。

 

 

「……ね、ネプテューヌは、どうしてその……白斗が好きになったの?」

 

 

顔を赤らめながら、ノワールが訊ねてくる。

真っ先にカミングアウトし、尚且つここに白斗が住んでいると言うこともあって一番距離が近いのはネプテューヌだからだろう。

うぅ、と恥ずかしがりながらも、ネプテューヌは答える。

 

 

「……その、ね? 初めて白斗とクエストに行った日の夜……殺し屋に狙われちゃったでしょ? でも、この世界に来たばかりなのに白斗は私を守ってくれた。 抱きしめられて、守ってやるって言ってくれて……嬉しくて……それからずっと、白斗の事ばかり考えるようになっちゃったの……」

 

 

その辺りは予想通りだった。

自覚はつい最近のことであったが、彼女の恋はその頃から始まっていたのだと誰もが改めて理解する。

眩しい笑顔が代名詞のネプテューヌだが、白斗への想いを語っている彼女は柔らかい笑顔。

 

 

「そういうノワールは……どう、なのさ……」

 

「わ、私は……あの狙撃から守ってくれた時から、白斗の事が気になって……それから、彼の優しさに触れて、支えて貰って、ユニとの関係も改善してくれて……無茶した時も、怒ってくれて……つまならいプライドで孤独だった私の心を救ってくれた……温かい人なの……」

 

 

ツンデレぼっち女神と揶揄され続けてきたノワールも、白斗の前では形無し。

すっかり恋する乙女となり、彼への想いを素直に語る。その時の彼女の姿は、誰もが認める可愛らしさだったと言う。

 

 

「ぶ、ブランは?」

 

「……あの日、ロムとラムを、そして私を命懸けで守ってくれて……それでこの前の旅行の時、私スルイウ病に掛かっちゃって……でも白斗は危険を省みずに雪山へ薬草を取りに行ってくれたの。 大怪我してでも私のためにやり遂げてくれた……そんな彼の優しさに、惚れてしまったの……」

 

 

いつもは無表情を通り越して無愛想にまで見えることがあるブラン。

そんな彼女ですら、白斗に対しては恋する乙女。顔を赤くして、彼の思い出を振り返っている彼女は、まさに可憐の一言に尽きる。

ほのかな想いを、まるで蝋燭に灯すかのように微笑むブラン。女神として長年の付き合いであるネプテューヌ達ですら、こんな顔のブランは見たことが無い。

 

 

「……ベールは?」

 

「私は……彼がみんなのために頑張る姿に惹かれて、そんな彼に甘えてみたくなりましたの。 白ちゃんは、そんな私の思いを全部受け止めて、真摯に向き合ってくれて、応えてくれて……。 あんな素敵な殿方、初めてで……気が付いたら、彼に骨抜きにされてましたわ」

 

 

うっとり、そんな表現が似合うベールの蕩けきった表情。

他の三人に比べて劇的シーンは無いかもしれない。だからこそ、彼と対話を重ねて、その末に白斗と言う人物に魅了されてしまった。

その様子は他の三人にも伝わる。何せ、彼女達も白斗に本気で惚れてしまったのだから。

 

 

「……まさか女神全員から惚れられるなんて。 もー、白斗ってば天性の女誑しね」

 

「自分の才能をひけらかさず、いつも他人の事ばかり……」

 

「……白ちゃんのような人を温かくて、優しくて……強い人と言うのでしょうね」

 

「うん。 そんな白斗だから一緒に居たい……一緒に居て欲しいな……」

 

 

尚も彼への思いを吐露する女神達。

この世界を守る神様ですら虜にしてしまった一人の少年。彼自身に特別な力があるわけではない。

戦闘力とて、一般人よりも上程度。それでも彼は大切な者のためなら命を懸けて、何もかもを成し遂げてしまう。例え傷だらけになろうとも、死に掛けようとも。

それを「強い」と言わずして何という。だからこそ女神達は恋した今でも、彼にどんどん惹かれている。

 

 

「……私、白斗を愛してるから! 絶対に諦めないよ!」

 

「その言葉、そっくりそのままお返しするわ! ……絶対に、白斗の心を射止めて見せるんだから!」

 

「いいえ。 ……絶対に、私が添い遂げて見せる……!」

 

「私も、本気の恋ですもの……負けるつもりはありませんわ!」

 

 

誰もが本気。本気の恋だから、絶対に譲らない。譲れない。

火花がバチバチと散らされる。けれども、不思議と不快感は無かった。誰もが認めた相手で、誰もが同じ少年に恋しているからだろうか。

今までにない本気の戦いは、けれども誰が見ても爽やかに火蓋が切って落とされた。

 

 

「……って、ちょっと待ちなさいよ! い、今までのやり取り……白斗に聞かれているんじゃ!?」

 

「「「あっ!!?」」」

 

 

ノワールの突然の発言に、誰もが一気に冷や汗を垂らす。

そうだ、先程まで彼と楽しく食事をしていたはずだ。なのに突然こんな話を聞かれてしまったら、今の関係がどうなってしまうのか。

恥ずかしさもあるがそれ以上に、下手に断られて今の関係を崩すのが怖い女の子たちは一斉に振り返るも、既に白斗は出掛けた後だった。

 

 

「あ、あれ? 白斗?」

 

「いない……部屋に戻ったのかしら?」

 

「と、とにかく探してみましょう! 万が一にも聞かれたら……!」

 

 

さぁーっ、と血の気が引く一同。

一斉に白斗を探し出そうと散開する。その中でネプテューヌは一人、心当たりがある場所へと向かっていった。

 

 

「白斗、よくバルコニーで黄昏てるんだよね……。 あそこだと室内の会話ギリギリ聞こえちゃう……お願い、聞かないで白斗~!」

 

 

一縷の望みをかけてバルコニーに恐る恐る顔を出してみるネプテューヌ。

しかし、彼はいなかった。

 

 

「……まずは一安心。 ホッ………ん?」

 

 

その代わり、あるものを見つけた。

バルコニーに設置されたテーブル。その上にポツンと置かれた、綺麗な色合いのボトル。

 

 

「……あ、白斗が飲んでたお酒だ。 もう、仕方ないなぁ」

 

 

そう、それは食事をする直前まで彼が飲んでいた酒。

繰り返しになるが彼は未成年であるにも関わらず酒を嗜むという悪い癖がある。さすがにネプテューヌも咎めているのだが、聞く耳持たず。

とりあえずこのままにしておけないのでボトルを掴み、部屋へと戻る。

 

 

「あ、ネプテューヌ! 安心して!」

 

「少し前に白斗は買い物に出かけたらしいわ……さっきの会話、聞かれてない」

 

「ホント!? あー、良かったぁ……」

 

 

そこへノワール達も戻ってきた。

白斗の行方をイストワールから聞いたらしく、先程の情報が漏洩されていないことに心底安心してしまう。

と、ここでベールが彼女の手に握られているものに気付く。

 

 

「って、あら? ネプテューヌ、何を持っていますの?」

 

「ああ、コレ? 白斗が飲んでたお酒。 しまっちゃおうと思って」

 

 

手にしていたボトルをこれ見よがしに見せつける。

その綺麗な色合いに一瞬目を奪われた女神達だが、その液体の正体を知って顔を顰めた。

 

 

「お酒ぇ? 白斗、そんなもの飲んでるの?」

 

「全く……しょうがないわね」

 

「未成年の飲酒はダメですわ。 帰ったら説教しませんと」

 

 

愛する人であっても、してはいけないことがある。いや愛する人だからこそ厳しくしてやらなければ。

女神として、人として、そして恋してしまった者として。

全員がベールの一言にうんうんと頷く。だがここで、ネプテューヌがふとした疑問に対峙する。

 

 

「未成年……そう言えば、私達女神はどうなのかな?」

 

「え? そ、そりゃ生まれて20年以上は経ってるし、成人していると言えばしてる……のかしら?」

 

「……今までお酒なんて興味持ったこともないから、分からないわ……」

 

 

今まで酒というものから縁が無かったネプテューヌとノワール、ブランが首を傾げる。年数そのもので言えば、常人など及ぶべくもない途方もない時間を過ごしてきた。

しかし、女神として生まれたために肉体の成長はしないままだ。故に体としては少女のまま。

酒自体は勧められたこともあったが、興味も無かったのでやんわりと断ってきたのだ。

一方のベールは余裕そうに鼻を鳴らし、胸を突き出す。

 

 

「うふふ、お子様ですわねぇ。 私はワイン程度なら嗜みますわよ。 まぁ、飲み過ぎないようにしていますが」

 

「……やっぱりベールの年齢は……もう……」

 

「ブラン? ……潰しますわよ?」

 

 

普段幼女扱いされていることへのお返しか、突き刺さるような一言。

さすがのベールも看過できず、黒い雰囲気を纏う。

 

 

「……お子様……」

 

 

そのフレーズに、ピクリと反応する者が一人。

いつもならばブラン、と言いたいところだが今回はネプテューヌだ。何故かと言えば、あの食事が始まる直前の事。

白斗がこの酒を飲んでいる最中、「お子様だからネプテューヌにはまだ早い」と言われてしまったのだ。

 

 

「……私だって……」

 

「……? ね、ネプテューヌ……?」

 

 

お子様扱い、だからこそ女として見てもらえないのではないか。

そんな焦燥がネプテューヌの中で巻き起こる。

グッと手にしたボトルを握り締め、震えだした。いつもとは違う彼女の雰囲気に、ノワールも何か得体の知れないものを感じつつ彼女に訊ねてみるが。

 

 

「私だって……立派なレディーだもん!! えいっ!!!」

 

「「「あっ!!?」」」

 

 

それよりも早く、ネプテューヌはボトルに口をつけ、一気に飲んでしまった。

飲んでしまったと言っても一口、ゴクリと。だが明らかに度数の高そうな酒だ、ノワール達も思わず悲鳴に近い声を上げてしまう。

一口飲んだネプテューヌはやがて静止する。そして―――。

 

 

 

「…………アハッ」

 

 

 

不敵な笑い声が、その口から漏れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……ただいまーっと。 買い物に付き合ってもらって悪かったなネプギア」

 

「いいんだよ。 寧ろお兄ちゃんと一緒にお買い物出来て役得♪」

 

 

それから少しして、白斗とネプギアが帰ってきた。

両手にした買い物袋はパンパンにまで膨れ上がっており、かなりの量であることが伺える。

ネプギアの袋は少なめだが、無論これは白斗の意向である。

 

 

「ははは、なら良かった。 んじゃチャッチャと夜食作るかね。 ネプギアもいるか?」

 

「んー、どうせなら甘いものが欲しいなー」

 

「太るぞー」

 

「し、失礼だよ! 大丈夫だもん!」

 

 

と、まさに兄妹のような会話を繰り出しつつネプギアは部屋へと戻った。

彼女にはブルーベリージャムとピーナッツバターを塗ったお菓子用のサンドイッチでも作ってあげようかと白斗は考えた。(因みにカロリーめっちゃ高い)

そんな企みを胸に秘め、白斗はキッチンへと向かう。その途中のリビングでゲームに興じているであろう女神達に声を掛けようとした。

 

 

「おーい。 今帰った……ぞ……」

 

 

だが、そこで見た狂態を目の当たりにした瞬間。

手にしていた買い物袋を落としてしまった。幸いにも卵のような取り扱いに注意がいるようなものは無かったが、最早そんなことは気にならなかった。

何故ならば―――。

 

 

「あ~~~白斗ぉ~~~♪ も~、遅かったじゃ~~~ん」

 

 

蕩けきった表情と、鈴の音を転がしたような声のネプテューヌがいた。

彼女の明らかにいつもとは違う態度、火照った顔、慌て切ったノワール達の様子、そして傍に置かれたボトル。

ここで一体何があったのか、白斗は全てを察した。

 

 

「ではあっしはこれにて」

 

「「「待たんかい」」」

 

 

グワシッ、と鈍い音を立てて女神達の手が白斗の肩を掴む。

恐ろしいまでの握力だ、下手に逆らえば比喩表現などではなく握り潰されてしまうだろう。

 

 

「白斗の所為よ! アンタがお酒置きっぱなしにしちゃったからネプテューヌが飲んじゃったんじゃないの!」

 

「やっぱりか……! 確かに俺にも責任あるわな……」

 

「だったら、ネプテューヌを何とかして」

 

「白ちゃん。 ちゃんと後始末できないと大人とは言えませんわよ」

 

「仰る通りです……」

 

 

女神達からの非難轟々。だが反論できない。

お酒は未成年が飲まないだけではなく、未成年に飲ませない配慮も必要なのだ。

これも己が蒔いた種と白斗は溜め息一つにネプテューヌに近づく。

 

 

「でもご安心を。 こんなこともあろうかと酔い覚ましの薬を持っているのです」

 

「凄くご都合主義な薬をありがとう。 早く飲ませて」

 

 

とりあえず解決する手段があるなら何でもいいと、ノワールはツッコミ放棄状態。

さすがにこれ以上ふざけている余裕はないと判断し、白斗も改めてネプテューヌと向き直る。

 

 

「ネプテューヌ、ほれ。 酔い覚ましの薬」

 

「ん~………? くすり……キライ~……」

 

「子供みたいなこというんじゃありません」

 

 

駄々っ子みたいなことを言いだすネプテューヌ。

元々子供っぽいところがある彼女だったが、酒の影響かよりストレートに、というよりも幼児退行に近くなっている。

これはこれで可愛らしいのだが、だからと言ってこれ以上は見過ごせない。無理矢理にでも口を開かせ、薬を放り込もうかと思案していた時だ。

 

 

「だからぁ~……白斗が、口移しで飲ませてぇ~~~」

 

「「「「ぶ――――――っ!!?」」」」

 

 

とんでもない爆弾発言に、誰もが吹いた。

 

 

「ちょ、待っ!? 何言ってんだお前!!?」

 

「えー、恥ずかしがることないじゃ~~~ん! 私達ぃ、もうチューまでしたんだしぃ~~~」

 

「「「何ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!?」」」

 

 

だが、驚きはそこでは止まらなかった。

更にとんでもないことをカミングアウトしてきたのである。愛しい人の唇が既に奪われていた、その事実にノワール達は絶望にも近い声を上げる。

それを知った女神達は、それはもう凄まじい剣幕で白斗に詰め寄った。

 

 

「白斗ォオオオオオオオオ!!! どういうことなのおおおおおおおおお!!?」

 

「あ、あれは事故というか不可抗力と言うか!! この間のアンチモンスターの一件で俺が溺れかけたからネプテューヌが、その……人工呼吸を、ですね……」

 

「それでもチューに代わりねぇじゃねぇかああああああああああああああああ!!!」

 

「あんなんチューに入るかぁ!!! 第一俺にとってもファーストだったんだぞ!!!」

 

「そんな………!!? レモンの味!!?」

 

「だから一々覚えてられっかあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

女神達からの尋問に、白斗は最早泣きそうになっている。

既に角しか立たないこの状況で、彼に切り抜ける術などあるはずもない。すると、そんな彼に抱き着く温もりが一つ。

ネプテューヌだった。

 

 

「みんな白斗をイジメちゃダメ~~~~~!!」

 

「ほぼほぼお前の所為だからな!?」

 

「もー、白斗も酷ぉ~い! ……それとも、私とのチュー……イヤだったの……?」

 

「う………!?」

 

 

抱き着きながら、涙目での上目遣い。

酒の香りと女の子特有の甘い香りが混ぜ合わさり、どんな酒よりも白斗の理性を溶かそうとしている。

正直、その可愛らしさだけで白斗はクラッと脳内が揺れ動いた。

 

 

「……イヤなワケないって言ったろ。 お前みたいな綺麗で、可愛い子にしてもらえて……」

 

「「「ッッッ!!?」」」

 

 

素直な気持ちを、白斗はぶつけた。

それだけに他の女神の動揺は他を凌駕するものとなる。同時に何かの理性が切れた、そんな音すら脳内に響いた気がしたが最早聞こえない。

 

 

「んふー! でしょでしょー!?」

 

「だああああウソ泣きかぁ!? とにかくこの薬を……って、ノワール?」

 

「…………………」

 

 

するとそこに、ノワールがふらふらと現れた。

暴走しているネプテューヌを押さえてくれるのかと思って白斗も期待していたのだが、どうも様子がおかしい。

何か吹っ切れたような表情で、彼女はネプテューヌが持っていたボトルを奪い取り―――。

 

 

「ぐびっ、ぐびっ……!!」

 

「うおおおおおおい!? 何でお前まで飲んでるのおおおおおおお!!?」

 

 

あろうことかノワールまでもが飲みだした。

慌ててボトルを奪い取った白斗だが、時既に遅し。酒は熱き液体となってノワールの喉を駆け抜け、彼女の体内に入り込む。

熱が体の奥底から湧きあがり、彼女の脳内を心地よく溶かしていく。

 

 

「……ふにゃぁ~……はくとぉ………」

 

「こっちまで酔っちゃったよ!? テンプレだなオイ!?」

 

「ネプテューヌばかり見ないでよぉ……私のことも見てよぉ……ぐすっ」

 

「しかも泣き上戸!!?」

 

 

蕩けたのは脳内だけでなく、涙腺にも及んだらしい。

恐らく理性が緩んだことで彼女の押さえられていた一面が浮き上がったのだろう。女の涙に弱い白斗は、とにかく彼女を宥めるべく駆け寄る。

 

 

「お、落ち着けって! 何のことか分からんが蔑ろにしてるわけじゃなくてだな……」

 

「じゃぁ、ネプテューヌがしてくれたこと……私にもしてくれる……?」

 

「はぁ!?」

 

 

ノワールの言葉の意味が分からなかった。

いや、本当は理解している。一体彼女が何を求めているのか。

ただその理由が分からなかった。だから聞き返してしまう。するとノワールはまたもや涙を浮かべて。

 

 

「だから……チュー……」

 

「どいつもこいつもぉ!! 女の子なんだから自分の体を安売りするんじゃありません!!」

 

「安くないわよぉ……白斗だから許してるのよぉ……」

 

「へ?」

 

 

消えそうな声で、語り掛けるノワール。

その可憐さはネプテューヌにも勝るとも劣らない破壊力があった。思わず彼女の瞳に吸い込まれ、呆けてしまう白斗。

―――それに危機感を抱く、白の女神は居ても立っても居られず。

 

 

「………ッ!!! 私だってぇっ!!!」

 

「ああ!? ぶ、ブランまで!!?」

 

 

またボトルがひったくられ、口を付けてしまう。

何とか阻止したかったがこちらに抱き着いてくるネプテューヌやノワールに阻まれ、取り上げることが出来なかった。

結果、彼女もアルコールを一口。ただでさえこの二人ですら無理だったのだ。見た目的にも幼いブランが口にして平気なはずもなく―――。

 

 

「コルァ白斗ぉ!! ちったぁ私にも美味しい思いさせろぉ!!!」

 

「だああああああああ!!! 当り前のように怒り上戸!! どないすんねんコレ!!?」

 

 

素のブラン様降臨。

白斗の胸倉を掴み、ぐらぐらと揺らしてきた。暴走に次ぐ暴走でさすがの白斗もどうすることも出来ない。

 

 

「……それとも、私が嫌いなのか……?」

 

「へっ?」

 

 

と、思いきや急にしおらしい声色になったブラン。語気も弱々しい。

どうしたものかと顔を覗き込もうとしたその時、胸倉を掴んでいた手を離し、そして抱き着いてきた。

 

 

「……ぐすっ。 こんな、怒りっぽい奴……やっぱり、イヤ……だよな……。 私だって分かってるんだ……分かってるんだよぉ……」

 

 

怒気から反転、弱々しい雰囲気になってしまった。

それだけではない。ノワールのように泣き始めたのだ。いつも怒りっぱなしな自分に自己嫌悪を抱いての涙。

 

 

(い、怒り上戸かと思ったら泣き上戸……。 正直な所可愛くもあるけど……泣いている女の子は見過ごせないよな)

 

 

またもや見せられる涙に、白斗は驚くものの「泣いている女の子は見過ごせない」という信念から寧ろ冷静になることが出来た。

彼女もノワールほどではないが素直ではない。そして、こうして怒りをぶつけている時は本気で相手を許せない時か、或いは天邪鬼でしか自分の気持ちを伝えられない時か。

そんな彼女の見分け方、白斗にはもう心得ている。すぐに抱きしめ、頭を撫でた。

 

 

「あ……」

 

「前にも言ったろ? 嫌いな女の子にこんなことしない、って」

 

 

それはルウィーでの、あのデートのこと。

今みたいにブランは感情を剥き出しにして白斗を追いかけてきた。その際に吐露された彼女の本音、それに対して白斗は彼女を抱きしめることで自分の気持ちを伝えたのだ。

 

 

「静かなブランも、キレているブランも、本を読んでいるブランも、笑っているブランも……俺には魅力的な女の子なんだ。 ……嫌いになる要素が、どこにあるよ?」

 

「……うん……」

 

 

抱きしめて、温もりを伝えて、頭を撫でて優しさを伝える。

するとあれだけ荒れていたブランが、まるで借りてきた猫のように大人しくなる。いや、恋する乙女だからこそ、愛しい人の腕の中で抱かれる喜びを味わっていたのだ。

ブランは尚更、甘えるように顔を埋める。

 

 

(ふぅ、落ち着いてくれたな。 ……さて、この流れからすると……)

 

 

嫌な予感がしたので振り返ってみる。

そう、ここまでネプテューヌ、ノワール、そしてブランが酒の勢いに任せ、普段は理性によって抑えられている甘えたがりな一面を爆発させていたのだ。

そしてそれを白斗は一つ一つ、真摯に受け止めている。ともなれば、彼女も黙っているはずがなく。

 

 

「白ちゃ~~~~ん! 私にも構ってぇ~~~~~!!」

 

「やっぱりな!! そんな気はしてましたとも!!!」

 

 

ベールだ。やはりその顔は赤く、手にしていたボトルの酒はもう既に空になっている。

やはり彼女達が羨ましくなったらしい。いつもは白斗に甘えてくるベールだが、酒の力でリミッターが解除され、その勢いは留まることを知らない。

ここから先は、未知数だ。

 

 

「ほら、こういうのがいいのでしょ~~~?」

 

「むにゅっ!?」

 

「「「ああぁぁ~~~~ッ!!?」」」

 

 

すると今度は白斗がひったくられるようにしてベールの胸元へと引き寄せられる。

引き寄せられれば待っているのは彼女の豊満な双丘。そこに押し当てられれば、まさに天国がそこにあった。

これには酔いが覚める勢いでネプテューヌ達も絶叫する。

 

 

「あはは~、白ちゃんってばカワイイ~♪」

 

「む……むぎゅ………ぷはっ!?」

 

 

今まで何とか冷静さを保ってきた白斗も、これには昇天しそうな勢いである。

ベールの匂いと胸の柔らかさで別天地へとトリップしそうになってしまう。何とか抜け出さなくては、でもこの心地よさに溺れていたい。

二律背反、白斗はどうすることも出来ずただ包まれているのみ―――かと思いきや、急に解放された。

 

 

「……白ちゃん。 ちゃんと私の事も見てくださいな……。 私だって、貴方の事が大好きなんですもの……」

 

「……姉さん……」

 

 

まだまだ女心に疎い白斗には、「大好き」の意味が正確に伝わっていない。

それでも彼女に大切にされているということは、嫌でも伝わってくる。だからこそ白斗もまた、彼女を抱きしめ返した。

負けないくらいに、寧ろ自分の方が大切にしていると言うくらいの力強さで。

 

 

「分かってるよ。 ……俺だって、姉さんの事大切だからな」

 

「……約束、ですわよ?」

 

「勿論。 破ったらエクスブレイドやらが飛んでくるからな」

 

「ええ、ニーベンヴァレ………」

 

「ダメぇー!! それ以上はダメェー!!!」

 

 

何やら危ない必殺技名が飛んできそうだったが、そこは遮った。

 

 

「……ずっと、一緒ですわよ……」

 

「……ああ、勿論だよ。 “ベール”」

 

「……ふふ」

 

 

白斗は力強く、ベールはどこまでも包み込むように互いを抱きしめ合う。

そして白斗は彼女の名前を囁いた。シンプルな呼び捨て、けれどもそれは彼女だには伝わる特別な意味。

顔を赤くしたベールはそのまま、白斗に甘え、溺れていく。

 

 

「コラぁー! 白斗ぉ!! そろそろ私にも構ってよぉ~~~~!!」

 

「そうよぉ……泣いちゃうわよぉ……えぐっ、うぅ……」

 

「オラオラァ!! 責任取りやがれぇ!!」

 

(……ああ、この狂乱の宴……どうすりゃええのん……?)

 

 

しかし、一人一人に時間を割き過ぎるとこのように他にまで手が回らない。

構ってちゃんに泣き上戸、怒り上戸と泣き上戸の合わせ技に甘えん坊などもう手が付けられないレベル。

白斗は心の中で泣いた。それでも立ち向かわなくてはならない。この事態を引き起こしたのは自分なのだから―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして冒頭へと戻る。

そう、白斗は「どうしてこうなった」と叫んでいたが元を辿れば自分の所為である。

 

 

「くぅ……一体どうしたら……」

 

 

けれども内心では悪い気はしていない。

何せ囲まれているのが美少女四人なのだから。他の男達に見られたら、嫉妬を理由に殺意を向けられても恨むことなど出来ない。

だからこそ、早くこの状況を何とかしなければと見出すも彼女達を撫でる手を止めることが出来ない。

 

 

「うにゃー……白斗の手……気持ちいい~♪」

 

「ホント~……癒されるわぁ~」

 

「全く……こんな幸せを手放すなんて我ながら情けないぜ~……」

 

「やっぱり白ちゃんは最高ですわ~……」

 

 

ネプテューヌは頬を擦り寄せ、ノワールは腕に絡みつき、ブランは白斗の膝の上、そしてベールは白斗の上から覆い被さるように抱き着いている。

まさに酒池肉林。このままではわいせつ罪で逮捕されてしまう。

 

 

「ねぇ……白斗ぉ……」

 

「な、何だよネプテューヌ……」

 

 

頬ずりをしながら甘えた声を出してくるネプテューヌ。

今の彼女は正直な所色っぽい。普段は全くない色気が見事に引き出され、白斗に否が応でも彼女が「女性」であることを意識させてしまう。

 

 

「白斗……私の事、どう思ってるの……?」

 

「え……」

 

 

何故か、この質問がとても白斗の心に響いてきた。

ネプテューヌの顔がとても切なく感じたからだろうか。

 

 

「……俺にとって、命よりも大切な人だよ」

 

「……嬉しいんだけどさ。 そーいうんじゃなくてね~……」

 

 

なら、どういう意味なのだろうか。その答えを必死に模索していると、更に手が伸びてきた。

言うまでもない、ノワール達だ。

 

 

「ズルいわよネプテューヌぅ……私だって……私だってぇ~……」

 

「白斗ぉ……ちゃんとこっちも見てくれよぉ……」

 

「私だって負けませんわよ~!」

 

「あばばばば!!?」

 

 

更に絡みついてくる。

するとそれに対抗するかのようにネプテューヌも負けじと絡みつきを強める。そろそろ白斗も理性が崩壊しそうで、呂律すら回っていない。

 

 

「白斗……貴方の気持ち、聞きたいの……」

 

「もう……こっちだって、我慢できそうにねぇんだ……」

 

「これ以上焦らさないでくださいまし……」

 

 

ネプテューヌだけではない。

ノワールも、ブランも、ベールも。平時は一切見せない色気で攻め立ててくる。いや、白斗が今まで見ようとしていなかっただけかもしれない。

彼女達は、まだまだ自分の知らない魅力があったことを。そしてその魅力に酔いしれようとしていることに。

 

 

 

「白斗………お願い………」

 

 

 

―――あ、なんかもうダメだ。

ネプテューヌの潤んだ視線に白斗の“何か”がノックアウト。もう頭で考えることなど出来ない。

本能が口を動かし、何かを告げようとしている。

 

 

「お、俺……俺、は―――」

 

 

言葉の先を紡ごうとした―――その時。

 

 

「ていっ! やぁっ! とぅっ!!」

 

「それっ!」

 

「「「「はごっ!?」」」」

 

 

四女神の後頭部に謎の衝撃。

無防備な所に強烈な一撃を受けた女神達は即気絶する。そのまま酔いも相まってぐぅと安らかな寝息を立て始めた。

突然のことで白斗も呆ける中、その一撃を与えた人物とは。

 

 

「ね、ネプギア……イストワールさん……?」

 

「全く、お兄ちゃんってば全然差し入れ持ってきてくれる気配しないし……」

 

「何やら悲鳴交じりでおかしいと思い、来てみれば……」

 

 

ハリセンを携えたネプギアとイストワールだった。

二人とも呆れ混じりに溜め息を吐いている。どうやら状況は察してくれているようだ。

 

 

「あ……ああ。 二人とも、助かった……マジでありがとう……」

 

 

ここで白斗もようやく正気に戻った。

二人に止めてもらわなければ、一体何をしていたのか最早想像がつかない。

所謂最後の一線を超える事態にすらなっていたのでは、と思うと白斗は心臓が冷たくなる。だがそれも回避されたのだ。

 

 

「と、とにかく俺は皆を部屋に寝かせてくるよ。 それじゃー……」

 

「「待て」」

 

「ハイ」

 

 

そそくさ、と退散しようとしたが無理だった。

低い声色となったネプギアとイストワールに止められ、白斗は正座する。今まで顔を見ないようにしていたが、二人とも怒っていた。

それも怒り心頭、という表現が実によく合う。

 

 

「原因は分かっています。 お兄ちゃん、禁酒です」

 

「それからしばらくの間、お仕事の量を三倍にしますのでお覚悟を」

 

「………はひ………」

 

 

恐怖に怯え、気の抜けた返事しかできない白斗。

この日以来、白斗は教会内に酒を持ち込むときはイストワールの許可を得てからというルールが設けられることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――因みに女神達はというと、記憶が少し残っていたのかしばらくの間白斗とまともに顔を合わせることが出来なかったそうな。




と言うことで一度はやってみたかった酒ネタでした。
女神様ってベールさん以外はお酒に弱いイメージしか湧きません。女神化したらどうなるのかな……いや、やっぱり弱そう;
白斗の飲酒設定は全てこの話に持っていきたかったからである。が、まだまだ酒ネタのお話は考えてありますのでご安心を。(何に?)
次回のメインは我らが妹、ネプギア!お楽しみに!
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