恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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初戦闘!
この物語の主人公は当然ネプテューヌ達でもあり、黒原白斗でもあります。
そんな彼の強さをどうするか、非常に悩みましたがここに落ち着きました。
余談ですがVⅡの戦闘システム大好き。エグゼドライブみんなカッコ良すぎやろ!うp主的に一番好きなのは「次元一閃」。アレもいずれ出す(確信



第二話 はじめてのクエスト

このゲイムギョウ界に飛び込み、そしてここで生きていく決意をした白斗。

まずはお世話になるこの建物、プラネタワーに住まう人に挨拶することにした。

女神の教会だけあって職員も何人かいたが、まずは事実上のトップである教祖へと挨拶することに。

 

 

「まずは紹介フェイズ! このちっこいのがいーすんことイストワールだよ!」

 

 

出てきたその先には、本に乗った可愛らしい小さな妖精がふわりふわりと浮かんでいた。

けれども、その少女は小さいながらも大人びた雰囲気を纏い、柔らかい微笑みを向けてくれている。

 

 

「初めまして。 私がこの教会の教祖をしています、イストワールです」

 

「ど、どうも……初めまして。 黒原白斗です」

 

 

いきなり妖精という唐突なエンカウントに面食らってしまう。

ネプテューヌ達の女神化もそうだが、本当に白斗の世界では見られないものがこの世界にはたくさんあった。

いーすん、という愛称がつけられている彼女はその見た目に違わない大人びた所作で白斗を迎えてくれる。

 

 

「これからお世話になります。 色々働いて、ネプテューヌやみんなに恩返し出来ればと……」

 

「無理に考えなくて結構ですよ。 まずは安全第一、それから身の振り方を決めてください。 人々のためにあること、それが女神とこの教会が存在する意味なのですから」

 

 

何と神聖かつ優しき言葉なのだろうか。

ここが教会であることを、益々実感させてくれる。可愛らしい見た目でも、教祖としての自覚と素養に思わず白斗は感激してしまった。

 

 

「で、こっちにいるのがネプギア! 私の妹だよ!」

 

「は、初めまして。 お姉ちゃんの妹で女神候補生のネプギアです」

 

 

そしてネプテューヌの隣に立つ、長い紫色の髪の少女。

妹と言われれば確かにどこか面影はある。だが礼儀正しさといい、控えめな印象といい、本当に“あの”ネプテューヌの妹なのかと一瞬疑ってしまう。

 

 

「初めまして、ネプギアさん。 ……それにしても女神にも妹がいるとは」

 

「ネプギアでいいですよ。 妹と言っても私達、シェアの力で生まれた存在なんです。 まだ女神化は出来ないんですけどね」

 

「ん? どういうことだ?」

 

 

思わず白斗が聞き返してしまう。

妹と言うからには血の繋がりがあるものだと思っていたのだが、どうやら少し違うらしい。

その辺りの仕組みを、イストワールが説明し始める。

 

 

「国に過剰なシェアが集まると、それが形となって女神や次の女神候補生が生まれるんです。 ネプテューヌさんとネプギアさんのように、それぞれの容姿や内面を反映している場合が多いですね」

 

「なるほど、だから妹にして女神候補生なんですね。 ということは、皆にも?」

 

 

この国においてのシェアと言う名の信仰心、それは女神をも生み出す力だということだ。

確かにそれが重要なものにして、嘗て女神間の間で奪い合いになるというのも理解できる。

そしてネプテューヌに妹がいるということは他国の女神にも存在するのではないか、という純粋な興味から、白斗がそんな質問を投げかけた。

 

 

「ええ、私にもユニっていう妹がいるの。 しっかり者のいい子よ」

 

「私にも二人。 ロムとラム……普段は悪戯ばかりで手を焼かされるけど、とてもいい子達よ」

 

 

ノワールとブランが、妹達を語っているその姿は誇らしげにも見えた。

ネプテューヌもそうだったが、姉として妹を愛しているのだと白斗は感心した。

 

 

「そっか。 いつか会ってみたいなぁ……って、ベールさん!? どうしたんですが明らかにどよーんとした空気を抱えて!?」

 

「どよーん、なのですわ……。 私には、妹がいませんもの……」

 

「お、おおぅ……」

 

 

どうやら地雷を踏んでしまったらしい、明らかにベールが落ち込んだ。

そしてこの落ち込みぶりを見るからに、どうやら彼女は姉妹関係に憧れているのだと瞬時に察した。

 

 

「と、とにかくシェアの力で女神が生まれるっていうことですね! シェアってすごいですねぇ! あははははは!」

 

 

空気を換えようと、とりあえず話題を振ってみる。

―――だが、それはよくあるお約束的展開。地雷を踏みぬいて、即話題を変えれば、また新しい地雷を踏みぬくと言うことに。

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「きゃああああああっ!? い、イストワールさぁあああああん!!?」

 

 

突如、腹を抱えて悲鳴を上げるイストワール。

けたたましいその声に逆に白斗がとんでもない悲鳴を上げてしまう。良く見ると吐血すらしているではないか。

 

 

「……そう、シェアは大事なんです……。 大事……なのに、ネプテューヌさんったら毎日ゲーム三昧、サボり三昧、プリン三昧で全く仕事やクエストに手を付けないで……ッ!! 少しでも仕事をして国民の尊敬や感謝を集められたら、シェアは落ちないのにぃッ……!!! ここ最近のプラネテューヌのシェアは下降気味で……それ以前に仕事は私達やネプギアさんばっかりが処理しててッッッ………!!!」

 

 

―――どうやら、ネプテューヌはサボり魔らしい。

確かにあの普段の姿の言動からして、真面目に仕事をこなしている印象は一切なかった。

周りのノワール達もイストワールに同情の視線を送っていることから、これが彼女達の普段の光景であると嫌でも察してしまった。

 

 

「あー……なんかその、すいません……」

 

「いえ、白斗さん……。 こっちこそ、うちのお姉ちゃんがその……すみません……」

 

「いや、ネプギアよ。 君も苦労しているんだなぁ……本当に、すいません」

 

「白斗さんが謝ることないですよ! だから本当にその……すみません……」

 

「何回すみません言うのよ、あなた達は……」

 

 

気苦労を共有できた白斗とネプギア。

何故か初対面にして彼女との絆が深まってしまった。

 

 

「まぁまぁ! くよくよしてても仕方ないって! 明日がある~さ~♪」

 

 

当の本人は、超お気楽モードにして爆弾発言。当然、イストワールも我慢の限界が来て―――。

 

 

 

「―――誰の……誰の所為だと思ってるんだゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

「ねぷうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!?」

 

「オメェが働いていれば私ぁこんなことにならないんだよこの阿呆がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「ひいいぃぃぃぃいいいいいッ!!?」

 

「それとも何かァ!? 一旦消滅させなきゃ更生出来ねぇのかあああああ!!?

なら私が消滅サセテヤロウカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」

 

「やめてえええええええええええええええええええええええっ!!?」

 

 

 

イストワールが、吠えた。ネプテューヌは、震え上がった。

そのまま怒りに任せてどこから持ち出したハリセンでネプテューヌをしばく、しばく、しばく。

ドメスティックバイオレンスな光景が繰り広げられていたが、白斗も全く助けるどころかネプテューヌに対して冷たい視線を送っていた。

 

 

「……本当に女神なのか、あの娘は……」

 

 

自業自得にしてイストワールが可哀想だと白斗もため息を付いている。

先程までの女神だと思わせてくれた慈愛の心はどこに行ったのか。

異世界の人間なのに、プラネテューヌの存続が気になって仕方がない今日この頃だった。

 

 

「残念だけど、あれが現実なのよ。 全く、ネプ子ったら相変わらずね……」

 

「もう、ねぷねぷもいい加減にお仕事しましょうよ!」

 

 

諦めたかのように同じく深いため息を付きながら二人の少女が新しく入ってきた。

一人は、少し大きめの青いコートを身に纏った少女。冷静かつしっかり者のの印象を受ける。

もう一人は柔らかい雰囲気の、胸が大きい少女だった。

 

 

「あ、アイエフさんにコンパさん! いらっしゃい!」

 

 

ネプギアが入ってきた二人―――アイエフとコンパに挨拶した。

こんな殺伐とした状況でも挨拶を忘れない。いい子です。

 

 

「ネプギア、お邪魔してるわ。 で、あなたが件の……」

 

「黒原白斗だ。 この度、ここでお世話になることになった……んだが……」

 

「ちょっとぉ!! あいちゃん! こんぱぁ! 白斗ぉ!! 主人公がログアウトしちゃうよおおおおおおおおおおお!!」

 

「……ねぷねぷ、自業自得ですぅ」

 

 

どうやら少女達はネプテューヌの友人らしい。

仮にも一国の女神に愛称をつけて対等に接しているのだから。ただ、そんな親友二人でもネプテューヌの怠慢は見逃せないらしく、ネプテューヌを助けるつもりは皆目なかった。

 

 

「なら改めて自己紹介ね。 私はアイエフ、ゲイムギョウ界に吹く一陣の風よ」

 

「おう。 よろしく」

 

 

まず自己紹介されたのはアイエフという少女。

サバサバしているが、素直でいい子だと感じた。ただ、自己紹介文が若干「アレ」だったが、そこは大人としてスルーした。

 

 

「私はコンパって言います。 看護婦見習いですぅ」

 

「おお、なら世話にならないようにしないとな」

 

「ひょっとして白斗さん、病院が嫌いです?」

 

「ああ、大っ嫌いさ」

 

 

明るい人物との触れ合いに余裕が出てきたのか、少しカラカラと笑ってみる。

しかし、見習いとは言え看護婦たる彼女からすれば見逃せないらしく、柔らかい雰囲気が少し鋭くなった。

 

 

「それはいけません。 私達がここに来た目的は白斗さんの治療のためでもあるんですから」

 

「えー……別にいいってこれくらい、ベールさんが手当てしてくれたし……」

 

「ダメですぅ! 小さな怪我、大事の元ですぅ!」

 

「は、はい」

 

 

頬を膨らませて迫るコンパには、先程のほんわかした空気が一転、凄まじい迫力を伴ってきた。

こういった胆力が無いと看護婦は務まらないのかもしれない。

とりあえず、酷かったという顔の方を見てもらった。

 

 

「……これならこの傷薬を塗ればすぐに治りますね。 HP30回復です!」

 

「……数値だけ聞くと微妙な回復値だな」

 

「でも効果はテキメンよ。 しっかり治療してもらいなさい」

 

 

自分より背が小さいはずなのに、しっかりとしたアイエフはどこかお姉さんを思わせた。

顔なら仕方ないと黙って治療を受け、白斗の顔は徐々に綺麗になっていく。

 

 

「おお! すげぇなゲイムギョウ界!」

 

「うんうん、いい顔になったじゃない」

 

「ほっとしたわ……正直、最初の方は酷かったから。 ベールの治療のおかげね」

 

「いえいえ、白斗君が元気になって良かったですわ」

 

 

綺麗になった顔に、ノワールやブラン、ベールも安心の表情を見せてくれた。

薬の効き目が良かったのも、ベールの応急手当のお蔭なのだろう。

 

 

「白斗の回復は嬉しいけどもおぉぉおおおお!! 私の事も助けてくれると嬉しいなああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

「逃ガスカァ!! コノ駄女神ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

一方のネプテューヌは、殺意の波動に狂ったイストワールに追われていた。

白斗もこの光景にはさすがに飽き飽きしていたらしく、はぁとまた一つ深いため息をつく。

 

 

「仕方ない。 これ以上はイストワールさんが可哀想だし、止めに入るか」

 

「白斗ォ!! 私の心配はあああああああああああああああああ!!?」

 

「原因はアンタでしょうがこの駄女神」

 

「白斗にまで言われたああああああああああああああああああああ!!?」

 

 

礼儀正しく、しかも来たばかりの白斗ですらこの始末。

尤も誰もが白斗の意見に賛同しているため、ネプテューヌを擁護することは一切なかった。

 

 

「まぁ、それはさておき」

 

「さておかれた!?」

 

「イストワールさん、俺にもその……仕事やクエスト、でしたっけ? お手伝いします」

 

「え? 白斗さん?」

 

 

そんな申し出が、白斗から飛び出してきた。

思いがけぬその一言に、初号機よろしく大暴れしていたイストワールも急停止。ネプテューヌは体中をボロボロにさせて、床に沈んだ。

 

 

「ここにお世話になる以上、何もしないってのは俺自身が嫌ですし。 これでもネプテューヌには助けられましたから……彼女の助けになりたいんです」

 

「う、うぅ~……白斗、ありがとぉ~~~」

 

 

何だかんだで、白斗もネプテューヌに深い感謝と恩義を抱いている。

ならばその恩はしっかりと返さなければならない。だからこそ、どんな仕事でも果たして見せるというその覚悟。

ネプテューヌは感激に咽び泣いていた。

 

 

「ですが、白斗さんは異世界から来た人……私達からすればお客様なのですから、そんなことをさせたくないのですが……」

 

「やらせてください。 でないと、勝手に出ていきますよ」

 

 

心配と優しさから、やんわりと断ろうとするイストワール。

彼女の心遣いは理解していたが、それでもやるのが筋だと白斗も曲げない。

そうなれば、折れるのはイストワールの方だ。

 

 

「あらあら、意外とやんちゃなお方でしたか。 勝手に出て行かれるのは困りますね。 ……私からもお願いします、白斗さん」

 

「はい。 ……ネプテューヌのためにも、頑張ります」

 

 

イストワールは深々と頭を下げる。

恩返しのため、自分のため、そしてネプテューヌのため。自分に出来る精一杯をしようと、黒原白斗は誓った。

 

 

「やったー! これで白斗ンニが一晩でやってくれるー!!」

 

「お前もやれ」

 

「あいだっ!? うう、わかったよう……」

 

 

まだ能天気なことを言う駄女神に拳骨一発。

これはネプテューヌのための仕事なのだから、当の本人にも来てもらう必要がある。

ネプテューヌも渋々と言った様子だが、やっと仕事に手を出してくれた。

 

 

「なら丁度いいわ。 さっきモンスター退治のクエストが入ったからそれに行きましょう」

 

「アイエフちゃん、それはいいのですけれど初回でいきなりモンスター討伐は白斗君には荷が重いのではなくて?」

 

「それは私も思ったんですけど、スライヌ討伐ですしまずは後衛に回ってもらって立ち回りを覚えてもらうのがいいかと」

 

 

アイエフが早速クエストを持ってきてくれた。どうやらここに訪れた理由は白斗の様子を確認することと、ネプテューヌを仕事に引っ張りだすためだったようだ。

しかし内容がモンスター討伐、ベールの言う通り不安が無いと言えばウソになる。

 

 

「白斗、いきなり戦闘クエストになるけど大丈夫かしら? 戦闘経験とかあるの?」

 

「モンスターは当然初めてだが……戦闘の基礎は一応」

 

 

あまりいい顔はしないが、全く自信がないと言えば嘘にはなる。

何よりこの世界で、女神のために生きていくと決めたのだ。覚悟を固めた表情の前に、アイエフの不安も拭われる。

 

 

「でしたら女神の皆さんも来てもらっていいですか? その方が安心できます!」

 

「……そうね。 白斗がどの程度なのか、しっかり見極めないと」

 

「ふふ、期待されてるわね白斗。 頑張りなさい♪」

 

「うへぇーい………」

 

 

コンパの提案にブランやノワール、そしてベール達も乗っかった。

いざと言う時は女神に守ってもらえると考えれば、なんと心強いのだろう。しかし女に守られている構図を思い浮かべただけで、白斗は益々自分が情けなくなる。

と、実力とは別に、ネプギアが一つの心配を投げかけてきた。

 

 

「で、退治に行くのはいいんですけど白斗さんの武器はどうしますか? 何でしたら、私が作った武器お貸ししますけど」

 

「いや、自前のがあるから大丈夫。 っていうかネプギア、武器作れるの?」

 

「はい! こう見えて機械いじり大好きですから!」

 

 

そう言ってネプギアは一本のビームサーベルを取り出した。

スイッチを入れるとSFチックな音を立てながら光の刃が伸びる。これを作ったというのだから、驚かざるを得ない。

 

 

「じゃぁ決まりだね! さぁ勇者よ、銅の剣と10ゴールドを受け取るが良い!」

 

「……毎回思うけど、王様ってケチだよね」

 

「それがRPGのお約束ー! でも、いざと言う時は私も守ってあげるから安心してね!」

 

 

一度行くと決めたからには、ネプテューヌは元気溌剌としている。

そして惜しみない笑顔を向けてくれた。その笑顔に白斗は不安が吹き飛び、妙な高揚が沸き上がるのを感じた。

 

 

「……あ、ありがとう……」

 

「よーし! 皆の者ー! 勇者ネプテューヌについてくるのだー!」

 

 

元気よく拳を突き上げ、勇気か蛮勇か、勇者(仮)一同はクエストへと赴く。

目指すはプラネテューヌ郊外の森―――。

 

 

 

ぐうう~~~~っ

 

 

 

と、そこに水を差すような腹の音。音の出どころは、白斗からだった。

 

 

「……ご、ごめん。 昨日から何も食べてなくて……」

 

「いえいえ、でしたら朝ご飯にしましょうか。 折角ですからノワールさん達もどうぞ」

 

「ありがとうネプギア。 ご相伴に預かるわ」

 

 

皆さんも、朝ご飯はしっかりと食べましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――プラネテューヌ郊外の森。

科学技術が発展したこの街にも、自然は当然存在している。リーンボックスには及ばないが、来訪者を優しく包み込む森の匂いと澄み渡った空気。

どれも白斗が元居た世界では感じることのできないものばかりだ。

 

 

「さて、あいちゃん。 改めてクエスト確認していいかな?」

 

「ええ。 内容はスライヌの大群討伐。 雑魚連中だけど数も多いし、気を抜かずに行きましょう」

 

 

仕事嫌いと言えど、今までにこなしたクエストの質と量からネプテューヌの態度は堂々としたものだ。

恐れも全く感じさせない姿勢で改めてクエスト内容を確認する。

スライヌという、如何にも序盤の敵の様な名前でアイエフも雑魚だと表現するのだが。

 

 

「で、何だそのスライヌって……スライムなの? イヌなの?」

 

「両方合わさってスライヌなのよ」

 

「なんじゃそりゃ……」

 

 

ノワールのざっくりとした説明に、益々イメージが湧かない。

当の本人もそれ以外に表現のしようがないと言わんばかりに肩を竦めていた。

 

 

「百聞は一見に如かず。 あれですわ」

 

「……何ですかあれ」

 

 

ベールが指を差したその先には、青いゼリー状の何かが跳ねていた。

某RPGでよく見るスライムのフォルムに犬の顔のパーツを張り付けたようなデザイン。

―――確かにスライヌ、としか表現できない何かが跳ねている。

 

 

「あれがスライヌ……このゲイムギョウ界における雑魚モンスターよ」

 

「……確かにあれにやられたくはないなぁ……」

 

「でも油断はダメ。 初見の人には不規則な動きをするし、人々からの討伐依頼が来るほどだもの」

 

 

一件可愛らしいともシュールとも思えるその見た目。

あれにボコられたその日から百代までの恥になってしまうだろう。とは言え、大群討伐という依頼が来ているのだからそれだけ数も多い上に人々が困っているということ。

ブランからの忠告にしっかりと耳を傾けつつ、白斗はコートの裾から一本のナイフを取り出した。

 

 

「へぇ、それが白斗の武器なのね。 私と似たような戦闘スタイルかしら?」

 

「確かに白斗ってパワーキャラって感じじゃないよね。 お手並み拝見!」

 

「拝見はいいけどネプテューヌが奮闘しなきゃいけないんだぞ、これ」

 

「あいたっ!?」

 

 

また軽くネプテューヌの脳天に拳骨一発。

一方興味深そうに白斗のナイフを見ているのはアイエフだ。彼女もカタールという刃を手にしており、どことなく白斗と似た構えになる。

 

 

「じゃあ、最終確認ね。 主に討伐はプラネテューヌ組。 白斗は今回初クエストってことで少しだけ戦う。 危なくなったら私達がフォロー……でいいかしら?」

 

「うん! それでいいと思うよ! それじゃあ、Let's Party! Yeaaaaaaaaaaa!!」

 

 

ノワールの方針で問題ないと判断。

そしてネプテューヌは愛用の太刀を構えて敵陣に突っ込んでいく。

 

 

「ちょ、ネプテューヌ!? 危な……」

 

「大丈夫ですよ。 ねぷねぷも女神さまの一人ですから」

 

 

さすがに見ていられないと思わず白斗も飛び出してしまいそうになるが、心配ないと親友であるコンパに静止される。他の女神達も、呆れ混じりながら全く動じていない。

彼女の言う通り、少し成り行きを見守っていると。

 

 

「えいっ! やっ! たあああああああっ! そぉれえええええええ!!!」

 

 

スライヌ達を、圧倒していた。

美しいとは程遠い太刀筋だが、小柄な彼女からは想像できないほどの力強く、それでいて隙の無い太刀筋と立ち回り。

白斗も思わず見惚れてしまう程だった。

 

 

「め、めっちゃ強ぇ……! 意外だけど」

 

「あれくらいしてくれないと、女神なんてやってられない」

 

「さ、次は白斗君の番ですわ。 いざと言う時は私達がお守りしますから、存分に戦ってきてください」

 

「は、はい……」

 

 

ブランとベールに後押しされ、白斗は前に出る。

しかし相手にしているのは人間に害を齎すモンスターとは言え、命。それをこの手で奪うことになる。

白斗は、己の手を見つめる。少し震えていたが。

 

 

(……やるっきゃねぇな。 俺の覚悟って奴を、ちゃんと示さないと!)

 

 

今尚、戦っているのはネプテューヌなのだ。

そんな彼女達のために生きようと決心したのなら、後は行動で示さなければならない。一歩、一歩と戦線に近づく。

そして大群の内、一匹のスライヌが白斗の存在に気が付き、突撃してくる。

 

 

「せやっ!」

 

 

弾力を活かした体当たり。

白斗はそれを屈むようにして避け、すれ違いざまにナイフを突き出す。要はカウンターのようなものだ。勢いのまま、ゼリー状の体に鋭い切れ込みが入り、着地するや否やスライヌは形を保てなくなり、消滅した。

 

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ぬらっ!?」

「ぬぅ!」

「ららぁ!?」

 

 

今度はスライヌの群れに突っ込んでいく。

ネプテューヌとは違って派手かつ力強い攻撃では無いものの、それを補う素早いナイフの閃きが乱れる。

斜めに、縦に、右に、左に、下から上から真横からそして真正面から。

鋭いナイフの斬撃が、まるでダンスのように見舞われ、スライヌ達を次々と切り裂いていく。

 

 

「ぬららら!」

 

「はっ!」

 

 

今度は背後からの襲撃。だが気配を察知していた白斗はサマーソルトキックを繰り出してスライヌを蹴り上げ、吹き飛ばした。

 

 

「伸びろワイヤー!」

 

「ぬらっ!?」

 

 

それだけではなく、今度はコートの裾から一本のワイヤーが鋭く伸びた。

ワイヤーはあっという間にスライヌの体に巻き付き、自由を奪う。

 

 

「んで、巻き付けたお前を……ぶん投げるッ!」

 

「ぬらああああああ!?」

 

 

その態勢のまま、白斗はワイヤーを力の限り引っ張りスライヌを地面に叩きつけた。

弾力のある体と言っても衝撃を吸収できるわけではないらしく、そのままスライヌは体が崩れ、溶けて消える。

 

 

「ぬらっ!」

「ぬらら!」

「ぬらぬらぬらぁ!」

 

 

ならばと言わんばかりに今度は三匹が、三方向から一斉に攻撃してくる。

これには静観していた女神達も加勢に入ろうとするが、それよりも前に白斗はワイヤーを木に向かって巻き付け、自身を引き上げさせた。

 

 

「あらよっと!」

 

「「「ぬらっ!?」」」

 

 

白斗がワイヤーアクションによる跳躍で、一気に飛び上がったお蔭でスライヌ達の体当たりは当たらないどころか同士討ちの結果となった。

互いに体をぶつけあったスライヌは目を回し、無防備な姿を晒してしまう。

 

 

「ワイヤーアクションだー! カッコイイね、あいちゃん!」

 

「ええ、面白い戦い方ね。 それに、おかげで陣形が崩れた!」

 

「一気に叩くですぅ!」

 

 

隙だらけの三匹は、ネプテューヌ達が一斉に叩いた。

剣で、カタールで、注射器で。一斉攻撃を受けたスライヌ達は成す術も無く倒れる。

 

 

「……思ったよりはやるわね、白斗」

 

「確かに。 ナイフ、体術、ワイヤー……とても一般人とは思えない戦い方」

 

「ですわね。 ゲームでいうアサシン職っぽい戦い方、嫌いではありませんわ」

 

 

そして、それらを見守るノワール達は白斗の戦い方を評していた。

一般人では到底身に付けられない武器と戦法に息を撒いている。だが、それはあくまで一般人と比べればの話。

ややあって数自体は減っているものの、それと同時白斗の体力も減っていく。

 

 

「はぁっ、はぁっ……! け、結構しんどいな……」

 

「あ、あら……もうへばったのかしら白斗? ネプ子はまだ平気そうだけど?」

 

「こちとら正面戦闘は苦手なんでね……」

 

 

かくいうアイエフもさすがに疲れを見せてきたようだ。

いい加減、敵を蹴散らさなければ逆にこちらが全滅ということもあり得る自体。後ろには有事に備えてノワール達が控えてくれているものの、これはネプテューヌのシェアを回復させるための戦い。

出来るだけ、外部からの助けは借りたくない。

 

 

「ねぷねぷ! そろそろお願いしたいです!」

 

「おっけー! 女神の力、見せちゃうよ!」

 

 

ならば、今こそ女神の力の見せ所。

光を纏わせたネプテューヌが女神化を果たす。

 

 

「……さぁ、覚悟しなさい」

 

「ぬらっ……!」

 

 

その手には紫色の太刀が構えられ、能天気な空気は一切なくなる。発せられる威圧感とその力にスライヌ達は臆し、引き下がろうとした。

 

 

「逃がさないわよ! クロスコンビネーション!!」

 

「「「ぬぎゃあああああああ!!?」」」

 

 

華麗な剣技でスライヌ達の陣形を崩し、

 

 

「ぬぅぅらああああああ!!」

 

「あら、それで力比べのつもりかしら? せええええい!!」

 

 

常軌を逸した力でスライヌを押し返し、

 

 

「これで終わりよ! ネプテューンブレイクッッ!!!」

 

「「「ぬらああああああああああ!!!」」」

 

 

目にも止まらぬ速さでの斬撃。―――それらの全てを以て、スライヌ達を全て討ち果たした。

 

 

「……どうかしら、白斗。 これが女神の私よ」

 

「……凄ぇ……」

 

 

―――圧倒的だった。

華麗な太刀筋、翼を用いての空中戦、そして何よりパワー。全てが桁違いかつ、人知の及ばない領域。

その力と美しさは、白斗を魅了した。これこそが、女神の力。

 

 

「ふっふーん! 白斗をぎゃふんって言わせたー! 私の勝ちー!」

 

「はいはい、俺の負けでいいよ。 ぎゃふん」

 

 

そして女神化を即座に解除し、元の明るいネプテューヌに早変わり。

普段の彼女も、そして女神化した彼女も凄いと言わざるを得ない一幕だった。

 

 

「二人とも、お疲れ様です!」

 

「ええ、白斗の戦い方も面白かったわね。 今度参考にさせてもらえるかしら」

 

「俺の戦い方は正面戦闘向きじゃないんだって。 正面から戦ったらアイエフの方が強いよ」

 

「ありがと。 それじゃ私とコンパはクエスト完了の報告に行ってくるわね」

 

 

ほぼ、ネプテューヌの力あってこそのスライヌ討伐。これにより女神の力は証明され、プラネテューヌのシェアも少し回復したとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それからすっかり時間は経ち、夕方。

 

 

「それじゃ私はそろそろ帰るわね。 白斗、もしネプテューヌの所が嫌になったらラステイションに来なさい。 仕事なら紹介してあげるわよ」

 

「ルウィーも……」

 

「あらあら、リーンボックスも忘れないでくださいまし」

 

「ちょっとー! 何引き抜こうとしてるのー!?」

 

 

さすがに長居し過ぎたと感じたらしい、ノワール達は自分たちの国に帰ることになった。

因みにそれまでの間はネプテューヌ主催のゲーム大会。

白斗も付き合わされ、熱中してしまったものだから意外と楽しんでしまっていた。

 

 

「あはは、それはネプテューヌ次第かなぁ」

 

「ちょーっ! 白斗までー!」

 

 

白斗もすっかり打ち解け、最初の頃に見せた固さと余所余所しさはどこへやら。飄々とした物言いでネプテューヌをからかっていた。

 

 

「その様子なら大丈夫そうね。 じゃ、ちゃんと仕事しなさいよネプテューヌ」

 

「ネプギアとイストワール、白斗に迷惑をかけないように」

 

「サボりは厳禁、ですわよ」

 

「去り際の一言がそれ!? ってかベールにだけは言われたくなーい!!」

 

 

言いたいことだけを言って、女神たちは飛び去って行った。

後に残されたネプテューヌはガクリと肩を落としてしまう。

 

 

「まぁまぁ、ノワールさん達の言う通り今度からはちゃんと」

 

「ゲームに逃避しよう!」

 

「そうそう、ゲームを……ってうおい!? 今まで何を学んでたのアンタ!?」

 

 

懲りてなかった。

結局、この後夕食を食べてからはまたゲーム三昧。ネプギアと白斗も付き合わされることになり、三人纏めてイストワールのお説教を食らう羽目になったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それからさらに時間は経ち、夜。

 

 

「ふーっ……。 やっと夜、かぁ……」

 

 

黒原白斗は、与えられた自室のベッドで静かに寝転がっていた。まだ家具も殆ど揃っていない殺風景な部屋だが、文句など何一つない。

食事に住まい、そして―――楽しい時間をくれたネプテューヌ達には、もう感謝と恩義でいっぱいだ。

 

 

(……ロクでもない人生だと思ってたけど、こんな俺でも……暗殺者だった俺でも、居場所が出来て、仲間が出来て……女神様の助けになれるんだな)

 

 

腕を組ませて枕にし、ただ天井をぼうっと眺める。

今日は色々な出来事があった。目が覚めてみたら異世界で、しかも女神様が自分を取り囲んで、その女神様と一緒に初めてのモンスター退治に行って、先程まではみんなで楽しく夕食まで頂いた。

 

 

(……これからどうなるか、俺にもわからない。 でも、どうなったとしても……)

 

 

疲れが脳内を支配し、瞼が重くなる。

目を閉じる直前、今日一日の出来事、出会った人々の顔。そして自分を導いてくれた女神達―――特にネプテューヌの笑顔。

それらが、鮮明に浮かび上がる。

 

 

(……みんなを、ネプテューヌを……守りたいな…………)

 

 

柄にもない、そんなことを思いながらも白斗は目を閉じた。

その顔は、どこまでも嬉しそうだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さらに時間は経った。

もう時間は12時を過ぎ、誰もが寝静まる時間。ネプテューヌやネプギア、イストワールも業務を終え、就寝している。

当然、白斗もいつもより安眠していたのだが。

 

 

(………ん?)

 

 

ふと、目が覚めた。何か、違和感を感じたのだ。

何が、と言われれば断定はまだ出来ないが、平穏を脅かすようなものであると心が告げている。

暗殺者として、平穏な夜を過ごせないことから沁みついてしまった習性だった。

 

 

(チッ、あんな仕事を今までやってきたから体が勝手に……こういうのも徐々に克服していかないとな……さて、何だ……?)

 

 

難儀な体質になってしまったものだと思う。

しかし、起きてしまったからには何かある。じっと息を潜め、神経を張り巡らせ、五感を研ぎ澄ます。

目で、耳で、肌で。ありとあらゆるものを使って違和感の正体を探っていると。

 

 

(……天井に、誰かいる?)

 

 

音はしない。だが、気配はする。

それも殺気が感じられる、怪しい気配。

 

 

(……まさか、俺を殺しに……こんな世界にまで!?)

 

 

殺される、そう思った瞬間先程までの安らぎが一瞬にして吹き飛んだ。

咄嗟にコートを着込み、ナイフを取り出す。

音も立てずに天井を移動し、尚且つ殺気が感じられる。つまり暗殺者の可能性が高い。

 

 

(……来るなら来い。 だが、今の俺は……殺されてやるつもりは無い!)

 

 

爆発しそうな心臓を必死に抑え、ナイフを静かに構える。

どんな敵が、どんな態勢で、どんな人数で来ようとも返り討ちにして見せる。

白斗に一瞬にしてそんな覚悟を固めさせた天井裏の気配は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――白斗の部屋を、何事も無く過ぎ去っていく。

 

 

(……え? 俺を……狙ってたんじゃないのか?)

 

 

念のため、辺りを察知し直すがやはり気配はない。

自分を狙ったのではなかった―――そう知った途端、体中から力が抜け、荒い息が漏れ出す。

 

 

(はは……よくよく考えりゃこの世界に来たばかりの俺を殺したがる奴なんていないわな。 ネプテューヌ達が俺を殺そうなんて考えるはずもないし……)

 

 

まだ僅かな付き合いだが、それでも彼女達がそんな手を使う人ではないと知ることができた。

状況から考えても、自分を殺す動機もメリットも無い。

そう、良く考えれば分かることなのだ―――

 

 

(……ちょっと待て。 じゃあ、あいつらは誰を狙って……?)

 

 

だが、次なる問題。それは彼らのターゲットだ。

この教会にいる、暗殺者を仕向けるに値する人物。暗殺者の標的になるのは大抵、国のトップ。

白斗の居た世界ならば総理大臣や大統領、このゲイムギョウ界ならば―――。

 

 

 

 

(……女神……! まさか、ネプテューヌを!!?)

 

 

 

 

また、嫌な感覚が溢れ出した。

しかもそれは、自分が殺される時よりも遥かに気持ち悪く、血の気が引く感覚だった。

あの笑顔が失われる―――それを想像しただけで、白斗の心が引き裂かれそうになる。

 

 

 

 

 

 

そして白斗の目は―――刃のように鋭く、冷たくなった。

 

 

 

 

 

(―――やるしか、ねぇな)

 

 

居ても立っても居られない。

かと言って無理に天井裏に登れば察知されてしまい、余計にネプテューヌを危険に晒すことになる。

ならばと言わんばかりに白斗は部屋を飛び出した。―――“音も立てずに”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ここが女神の部屋か。 女の子した部屋だな……)

 

(ああ。 見ろ、無防備に寝てやがるぜ……)

 

 

―――赤いフードを被った、二人の怪しげな男達は、とうとう天井裏からネプテューヌの部屋へと到達した。

板を外し、少しだけ覗き込んでみれば安らかな寝息を立てているネプテューヌがいる。

幸せな夢を見ているのか、ベッドの上で枕を抱きしめながら、笑顔で。

 

 

「……えへへ~……」

 

(へっ、なんて無防備な……これが女神様だとはねぇ。 まぁいい、俺ら殺し屋の仕事、相手が一般人だろうが女神様だろうが関係ねぇってね)

 

 

何と可愛らしい寝顔なのだろうか。

普通の人から見れば、こんな笑顔を奪うことは出来ない。だが、暗殺者はその普通の人では無かった。

仕事なのだからと一切罪悪感を抱かず、命を奪うために部屋に降り立つ。右手には月光を受けて怪しく光る白刃を握っていた。

 

 

「んがっ!」

 

(なっ!? お、起きた……! バレてしまったのか!?)

 

 

突然、ネプテューヌが跳ね上がるようにした上半身を起こした。

これには暗殺者も当然驚き、ナイフを構えて飛びのく。

最悪の場合は任務失敗、窓を突き破っての逃走ルートという算段を立てていたところで―――。

 

「……ふふふ~……プリンがいっぱ~い……むにゃむにゃ」

 

(寝言かよ!? 紛らわしいなオイ!?)

 

 

ただの寝言だったらしく、そのまま顔を緩ませて再びベッドイン。

思わず心の中でツッコミを入れてしまう暗殺者。だがこれで、ネプテューヌは紛れもなく寝ていると確信してしまう。

 

 

(まぁいい……夢の続きはあの世でやってくれよ、ネプテューヌ様……!)

 

 

無防備な彼女の前に立つ。これだけの殺気に当てられても、ネプテューヌはまだ幸せそうに寝ている。

その眠りを永遠の者とするべく、振り上げられた凶刃が、彼女の柔肌へと―――。

 

 

 

 

 

 

「誰に手を出してんだ?」

 

 

 

 

 

 

突き刺さることは、無かった。

振り上げられた手は、背後から伸びた誰かの手に掴まれてしまったのだ。

手の力は強く、そして同時に後ろから聞こえるドス黒い声。その声だけで、男の心臓が握り締められるような感覚に襲われた。

 

 

(なッ……!? だ、誰だ……!?)

 

 

暗殺者が振り返ったその先には―――

 

 

 

 

 

 

 

「誰に手を出してんだ、って聞いてんだよ……クソ野郎が」

 

 

 

 

 

 

―――暗殺者は自分の筈なのに、それを超える暗殺者がそこにいると感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのはただの少年―――黒原白斗のはずなのに。




サブタイの元ネタ「はじめてのおつかい」

誰が戦闘はもう終わりだと言った?ここからが本番でございます。
改めて黒原白斗の戦闘力は、一般人よりは出来る程度。でもモンスターよりも下という位置づけにしております。
そんな彼が、この世界でどう強さを振るうか。黒原白斗の真骨頂を次回からお伝えできればと思います。
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