恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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第三十話 パワーパフ☆ピーシェ!

―――プラネテューヌ、バーチャフォレスト。

今、黒衣の少年が愛用のナイフを手に、一匹のリザードマンに向かって勇猛果敢に向かっていった。

 

 

「―――せいやっ!!」

 

「グゥェエエ………!!?」

 

 

白斗の裂帛の一声と共に繰り出された一閃。

白刃はリザードマンの喉元を切り裂き、絶命させた。力尽きたモンスターは死骸すら残すことなく消える。

 

 

「……ふぅ、これでリザードマン討伐完了っと。 大分モンスターにも慣れてきたかな」

 

 

刃を懐に仕舞い、白斗が安堵の息をつく。

今日彼は単身でリザードマン討伐に赴いていたのだ。モンスターとの正面戦闘は不得手だと語っていた白斗も、今ではそこそこ戦えるようになってきた。

当初はスライヌですら大苦戦だったものが、今では難易度の高いクエストにも挑めるまで成長している。

 

 

「さて連絡……げッ! ……あーあ、ケータイ壊されちまった。 保証利くかなぁ……」

 

 

仕事終わりの報告をしようと携帯電話を取り出した途端、顔色が濁った。

先程の戦闘で知らぬ間に攻撃を受けていたのか、携帯電話が損傷していたのだ。画面には何も映らず、ボタンを押しても反応が無い。

 

 

「仕方ない、仕事も果たしたし帰るか。 アイエフとコンパにパフェ作ってやらねーと……」

 

 

しかしモンスターを討伐し終えても今日という日が終わるわけではない。

やるべきこと、やりたいことは山ほどある。この世界に来たばかりの白斗からすれば、こんな風に考えが変わるなど思ってもみなかった。

あの時はやりたいことなど無かった。ただ女神の皆に恩返しがしたかっただけ。それが今では使命感を超えて、自分のしたいことを見つけ出しつつある。

 

 

「………ん?」

 

 

ふと、ゲイムギョウ界の空を見上げた時だ。

空から綺麗な光がバーチャフォレストの奥深くにまで落ちていくのが見えた。

 

 

「流れ星……こんな昼間から? ……気になるし、行ってみるか」

 

 

こんな昼下がりにはっきりと見える流星など聞いたことが無い。

敵の攻撃か何かか。幸い、その光の落下地点はここからそう遠くはないはず。

予定を変更し、白斗はバーチャフォレストの奥深くにまで歩を進めることにした。さすがにモンスターも手強くなりつつあったので、余計な戦闘を避けながら進んでいく。

 

 

「ふぅ……ふぅ……さ、さすがに一苦労……。 これで何もありませんでしたーと来たら骨折り損だぞ………ん?」

 

 

モンスターの視線を掻い潜り、茂みを掻き分けて突き進んでいく。

すると草が生い茂った場所に到達した。

だがそこで見つけたもの。それは―――。

 

 

「くー……すー……」

 

「……女の子?」

 

 

草の塊をまるでベッド代わりにして眠る、黄色く、まだ幼い少女だった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、プラネタワーの一室では二人の少女が心を躍らせていた。

 

 

「ふんふふーん♪」

 

「えへへ~」

 

「あれ? あいちゃんにこんぱ、随分機嫌良さそうだね。 どうしたの?」

 

 

アイエフとコンパ。まるでまだかと言わんばかりに何かを待ち望んでいる。

親友二人のいつもとは違う様子に首を傾げるのはこの国の女神、ネプテューヌ。どうやら遊びに出掛けていたようだが、つき先程帰宅したらしい。

手には新発売のゲームソフトやプリンの包みが入った袋を引っ提げている。

 

 

「いやね、白斗がパフェ作ってくれるのよ~」

 

「私達はまだ白斗さんのパフェ食べたことないので楽しみです!」

 

(……白斗、絶対この二人にもフラグ立ててる……っ!!)

 

 

親友二人まで恋に落としかけている少年に拳を震わせるネプテューヌ。

彼女もまた白斗に想いを寄せているのだ、親友相手と言えど譲る道理はない。ただ今はそこまで事を荒立てる必要もないと、何とか怒りを落ち着けた。

 

 

「ところで白斗は? いないの?」

 

「何でもクエストに出てるそうです。 もうすぐ帰ってくると思うですよ」

 

「おおー、働き者だねー」

 

「そもそもアンタが働かないから白斗が代わりに行ってるんでしょーが!」

 

「失礼な! 私だってこうやって国民の生活を調べるべく、日々見回りをだね……」

 

「その結果ゲームとかプリンとか買っていれば世話ないですよ、ねぷねぷ」

 

 

元は仕事をしないネプテューヌに代わって白斗が仕事をしているこの日常。

アイエフとコンパからも咎められ、ネプテューヌはばつの悪そうな顔を向ける。

だがこんな一面すら笑い話。すぐに笑顔で溢れ返るプラネテューヌの面々。これが彼女達の日常。

 

 

 

 

 

―――だがそこに、トラブルが巻き起こるのもプラネテューヌの日常だった。

 

 

「あ、皆さん!! 白斗さん帰ってきてませんか!?」

 

「え? イストワール様?」

 

 

慌ただしい様子でイストワールが駆けつけてきた。

どうやらお目当ては白斗の様子。しかし、当然彼はまだ帰ってきてない。

 

 

「白斗ならまだ帰ってきてないけど……どうしたのいーすん?」

 

「いえ、白斗さんと連絡が取れなくて……」

 

「あれ? いつもならケータイも充電も忘れてないはずです」

 

「それに仕事終わったーって連絡くれるよね?」

 

 

コンパとネプテューヌが顔を見合わせる。

基本的に白斗は真面目で、準備に余念がない性分だ。連絡手段である携帯電話を持ち忘れたり、或いは充電を切らしたことなど一度もない。

それだけに音信不通となると、一気に不安が巻き起こる。

 

 

「……まさか、白斗に何かあったの……!?」

 

 

一気にネプテューヌの顔が青ざめる。

普段のしっかり者という印象に隠れがちだが、白斗は一般人の部類だ。戦闘能力も低くはないが、高すぎるという程でもない。

もしクエスト先で何かあったら―――。愛する人の無残な姿を想像しただけで、ネプテューヌ達の心が引き裂かれそうになる。

 

 

「それだけじゃないんです! 一般人から通報があったのですが、バーチャフォレストで赤黒い大きなモンスターを見たと……」

 

「赤黒い大きなモンスター……? それって、まさか!!?」

 

 

挙げられた特徴、ネプテューヌの脳内にある嫌な予感が過った。

彼女は一度だけ、その相手と戦ったことがある。

その赤黒さは体内に取り込んだアンチクリスタルの影響が表面化したもの。それ故能力も凶暴性も段違いのモンスター。

 

 

 

 

 

「はい……アンチモンスターがバーチャフォレストにいるかもしれません」

 

「―――――ッッッ!!? 白斗ぉッ!!!」

 

 

 

 

 

 

居ても立っても居られない。まさにそんな表情と声色になったネプテューヌは迷うことなく飛び出していった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、バーチャフォレストでは―――。

 

 

「くー……くー……ん、んんー………?」

 

「お、目ぇ覚ましたか」

 

 

白斗が草の上で眠る少女の目覚めを待っていた。

彼女の素性も、どうやってこんな森の奥深くまで来られたのかも分からなかったがこのままにしておけないとずっと見守っていたのである。

その甲斐あってか、少女は大欠伸をしながらも体を起こす。

 

 

「ふぁぁ~~~……あれ? おにーちゃん、だれー……?」

 

「俺? 黒原白斗って言うんだ、君は?」

 

「ぴぃのこと? ぴぃはぴーしぇだよ!」

 

 

幼さゆえに警戒心が低いらしく、白斗に対して敵意も何もなかった。寧ろ人懐っこささえ感じる。

白斗も穏やかに接してみたが、素直な少女であると好感が持てた。

その少女―――ピーシェはすっかり眠気も吹き飛んだらしく、元気よく挨拶してくれた。

 

 

「よろしくなピーシェ。 で、なんでこんな森のド真ん中で寝てたんだ?」

 

「もり? ぴぃ、おそとであそんでただけだよ? ってあれ、なんでもりのなか?」

 

「どうやって来たのか覚えてないのか?」

 

「しらないよ? きゅうにねむくなったとおもったら、ここにいたもん」

 

 

なるべく威圧させないように言葉と声色を選び話しかければピーシェも素直に話してくれる。

だが、やはりこの森に来た経緯は覚えていないらしい。いや、知らないというニュアンスの方が正しいようだ。

彼女の言葉を素直に受け取るなら、「急にここに飛ばされた」と言っているようなものだ。

 

 

(……まさか、俺と同じ……なワケないよな?)

 

「おにーちゃん?」

 

「ああ、ゴメンゴメン。 で、ピーシェの家はどこかな? 親の所に連れてってあげるぞ」

 

「ぴぃ、ぱぱとかままとかいないよ?」

 

「え? ご、ごめん……嫌なこと聞いちゃったな……」

 

 

普通、この齢の子供であれば親の存在が常に頭の中にあるはず。

けれどもピーシェはあっけらかんとした様子で親はいないとはっきり告げたのだ。

孤児の類だろうか、気まずいことを聞いてしまったと白斗の中で罪悪感が沸き上がるがピーシェは気にした様子もなく、明るい笑顔を向けてくれた。

 

 

「でもだいじょーぶ! ぷるるとがいるもん!」

 

「ぷるると……? 家族の名前かな?」

 

 

明るい笑顔と声色で、家族の名前を出してくれた。

彼女を愛してくれる家族がちゃんといることに白斗は安堵する。ピーシェの様子からしても、その「ぷるると」という人物との関係も良好なようだ。

 

 

「うん! あとね、あいえふやこんぱ、いすとわるともいっしょなの!」

 

「え!? アイエフにコンパ……それにいすとわるって、イストワールさん!?」

 

「おにーちゃん、みんなしってるの?」

 

「ぷるると、って人は知らないけど他は皆知り合いだぞ?」

 

「ほんとー!? わーい!!」

 

 

だが驚くべきことに、アイエフやコンパ、イストワールとも知り合いだという。

これだけはっきりと名前を告げたのだ、何かの間違いということは無い。

ただ、白斗の中では解せないことだらけだった。

 

 

(アイエフもコンパも、イストワールさんもこんな子が家族だって話は一度もしていない……これだけ幼いんだ、教会に一度も顔を見せないのもおかしい……)

 

 

もしかしたら同姓同名の人物なのでは、と一瞬勘ぐったがだとしても三人とも一致するのもおかしい。

正直な所、頭がこんがらがってきたので一度思考を放棄することに。

何にしても、今はピーシェを保護するのが先決だ。

 

 

「まぁいいか。 ってことは家はプラネテューヌで間違いないかな?」

 

「ぷらね……うん! そこ、ぴぃのおうち!」

 

「そうか。 俺もそこが家だから、一緒に帰るか」

 

「うん! おにーちゃん、ありがとー!!」

 

 

こんな森の奥深くに、幼いピーシェをそのままにしておけるわけがない。

白斗は彼女の小さな手を優しく取り、一緒に歩きそうとした―――その時。

 

 

「……おっと、ゴメンなピーシェ。 地元の皆さんのお越しらしい」

 

「ふぇ? なになに?」

 

 

急に白斗の顔つきが変わった。

握った手を優しく離し、袖口から一本の刃を取り出す。さすがにのっぴきならない雰囲気を感じたピーシェも不安になりだした。

何故なら、すぐ近くの茂みから――――。

 

 

「グルァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「うわわわ!? もんすたー!!」

 

 

一匹のウルフが、鋭い牙を光らせながら飛びついてきたからだ。

どうやらピーシェが眠っていた場所はこのモンスターの住処だったらしい、住処を荒らしたピーシェに牙を突き立てようとこちらへ迫る。

だが、白斗はピーシェを守るために前に立ち。

 

 

「ピーシェを怖がらせるんじゃねぇぞ犬っころ!!」

 

「ギャゥンッ!!?」

 

 

突進を避け、擦れ違いざまに一閃。白刃の閃きはウルフの喉元を切り裂いた。

喉と言う急所を正確に切り裂かれたウルフに、最早命を繋ぎ止める力はなく、静かに横たわり、その死骸がデータのように霧散していった。

 

 

「お……おぉー!! おにーちゃん、つよい!! かっこいいー!!」

 

「ありがとな。 それより大丈夫か、ピーシェ?」

 

「だいじょーぶ! おにーちゃんのおかげでへーきだよ!!」

 

「なら良かった。 ここは危ないから、さっさと抜けような?」

 

「うん!!」

 

 

モンスターの襲撃はあったものの、今の一幕でピーシェもすっかり白斗に懐いてくれたようだ。

自分から手を繋いでらんらんと歌を歌っている。まるで遠足気分。

やれやれ、とため息を付きながらも白斗は父親のような優しい視線で彼女を見守る。

 

 

「ふー……もう少しだ。 ピーシェ、疲れてないか?」

 

「ぜんぜん!! らんらんらーん♪」

 

(子供の体力ってホント底無しだよなぁ……)

 

 

もう少しで森を抜けられると言ったところで白斗の息が上がってきた。

ここに来るまでにもかなりの距離を移動し、尚且つ戦闘も挟んできた。けれども同じくらい歩き回っているピーシェは元気溌剌である。

この体力差を見せつけられ、白斗は正直な所彼女が羨ましくなった。

 

 

「ホント、若さって失われる才能だよな……って年寄りくせーぞ俺……ッ!?」

 

 

そんな言葉を呟いているようでは注意力散漫だと気を引き締めたその時、また白斗の表情が鋭くなった。

また殺気を感じ取ったのだ。ただ、あのウルフ程度ではない、もっと得体の知れない、悍ましい何かだ。白斗の頬から汗が噴き出る。

 

 

「―――ピーシェ! 危ないッ!!」

 

「え? わぁっ!?」

 

 

半ば抱きかかえる形で白斗がピーシェと共に転がり込む。

すると今度は岩陰から巨大な何かが過った。

巨大な影は樹木を薙ぎ倒し、岩をも砕きながら“それ”は地を這い、こちらへと振り返る。

 

 

「フシュルルル………!!」

 

「チッ……リザードマン、ウルフと来て今度は大蛇かよ……!!」

 

 

赤黒い、巨大な大蛇だった。

息遣いは荒く、明らかにこちらに敵意を向けている。だが真に驚くべきことはこれほどのモンスターが、最近では全く報告されなかったことである。

こんなモンスターがいれば、間違いなく討伐クエストが出回るはずなのに。

 

 

(最近になって現れた……!? それにこの赤黒さと凶暴性……アンチモンスターか!?)

 

 

一瞥しただけだが、一度退治した事のある白斗にはすぐに分かった。

嘗てネプテューヌを襲ったあの忌々しき対女神用生物兵器、アンチモンスターであると。

幸いここにはネプテューヌら女神はいなかったが、かと言って一般人の手に負えるモンスターであるかと言われれば否である。

 

 

(クソッ!! ピーシェを守りつつプラネテューヌまで逃げ込みたいが……イケるか!? いや、やるしかねぇだろ!! ピーシェを守れるのは俺だけなんだぞ!!!)

 

 

今、彼の脳内はモンスターに勝つという選択肢はない。

ただ不安そうに自分の裾を掴んでくれているこの小さな少女を守り抜くこと、そしてそのための方法を必死に考えていた。

 

 

「ピーシェ、安心しろ。 絶対に守るから」

 

「おにーちゃん……」

 

 

精一杯の痩せ我慢で笑顔を浮かべる。

今、一番不安なのはこのピーシェなのだ。そんな彼女を元気づけるには笑顔しかない。

そして唯一守れる人間である白斗が不安そうな表情を浮かべるわけにはいかないのだ。

 

 

「シュルルル………キシャアアアアアアアアアア!!!」

 

「うおっとォ!! ピーシェ、しっかり掴まってろよ!!」

 

「ひゃぁ!?」

 

 

大口を開け、鋭い牙を向けながら大蛇が突っ込んでくる。

それを跳躍で回避した白斗はピーシェを抱え、ワイヤーを使って木から木へと飛び移っていく。

応戦よりも逃げの一手を打ったのだ。

 

 

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「チィッ! しつこいな……」

 

 

猿の如く、次から次へと木へ飛び移る白斗。

だが大蛇は一向に諦める気配を見せてくれない。樹木を薙ぎ倒すパワーも相当だが、何より向かってくるスピードも段違いなのだ。

 

 

「キシャシャ………ブシュウウウウウウウウウッ!!!」

 

 

だが、ここで大蛇が牙から毒液を吐きかけてきた。

白斗の居た世界でも、コブラの一種に毒液そのものを噴出してくる種類がいるのだがこのモンスターも同様の事が出来たらしい。

その毒液は、着地しようとした枝木に掛かってしまった。

 

 

「う、おぉぉぉぉっ!!?」

 

「うわー!!?」

 

 

毒液の溶解度は枝木をも容易く溶かしてしまう。

飛び移った衝撃と合わせ、枝は折れてしまい、二人して地面に落下した。

 

 

「ぐ、ウッ……!! ぴ、ピーシェ……無事か……!?」

 

「う、うん……おにーちゃんが抱えてくれたから……」

 

「なら、良かった……と言いたいが奴さんは逃がしてくれないか……」

 

 

白斗が抱きかかえながら自分をクッションにするように落ちたので、ピーシェには怪我も衝撃も無かったようだ。

不幸中の幸いではあったが、とうとう大蛇に追いつかれてしまう。

 

 

「フシュルルルル…………」

 

「……仕方ねぇ。 覚悟を決めますか」

 

 

ナイフを取り出し、臨戦態勢に入る。

先程の追走劇でも、追いつかれそうになってしまったのだ。ここまで接近されてはもう逃げることも出来ない。

ならばピーシェを守るためにも、戦うしかない。

 

 

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「チィッ――――――!!」

 

 

ピーシェごと丸呑みにしようとしたのか、大蛇が大口を開けて突進してくる。

ならば真正面から立ち向かうしかない―――白斗が特攻を仕掛けようとした、その時。

 

 

「チェストおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「ギシャア!!?」

 

 

突然、横槍が―――いや横蹴りが炸裂した。

何者かに痛撃を打ち込まれた大蛇は倒れ込んでしまう。

これだけの一撃を打ち込める人物、そして声の主。白斗はすぐに思い当たった。

 

 

「ね、ネプテューヌ!?」

 

「白斗!! 良かった、無事で………!!」

 

 

紫の髪を持つ少女、そしてプラネテューヌの女神ことネプテューヌだった。

いつもの明るい笑顔ではなく、白斗の無事を心から喜んでくれる優しい笑顔。相当心配していたらしく、大量の汗と乱れに乱れた息、そして目尻には涙が浮かんでいる。

 

 

「ねぷ……てぬ……?」

 

 

そんな彼女の姿が、ピーシェには強烈に焼き付いた。

こんな状況であっても、誰よりも眩しい笑顔を持つネプテューヌの姿に魅入っている。

 

 

「この国の女神様。 そして……俺の大切な人だよ、ピーシェ」

 

「ね、ねぷぅ……白斗ってば大切な人って……! そ、それよりどうしたのその子?」

 

「森の奥で保護したんだ。 で、帰ろうとしたらあいつに襲われたってワケ」

 

「なるほどね……。 それじゃ、私も本気を出さないと!!」

 

 

ネプテューヌは怒っていた。白斗を傷つけようとしたこの大蛇に。

迷うことなくシェアエネルギーを身に纏い、女神化させる。

 

 

「―――白斗を傷つけた報い、その身で償ってもらうわ!!」

 

「へ、へんしんしたー!! ぷるるとみたい!!」

 

 

女神パープルハートの降臨だ。

あの可愛らしい少女ではなく、怜悧な雰囲気を纏う美女。大太刀を構え、その視線は刃の如き鋭さと怒りによる烈火を感じさせる。

アンチモンスターである大蛇すら、一瞬だけ怯んでしまう程だった。

 

 

「待てネプテューヌ!! アンチモンスターだ、危険すぎる!!」

 

「分かってるわ!! だから……今回は一人じゃない!!」

 

 

ネプテューヌの声を皮切りに、更に三つの流星が飛んできた。

黒、白、緑の輝きを持つそれは白斗を守るように降り立つ。

 

 

「の、ノワール!? それにブラン……ベール姉さんまで!?」

 

 

言うまでもない、このゲイムギョウ界を守る女神達だった。

ブラックハートことノワール、ホワイトハートであるブラン、そしてグリーンハートのベール。

ネプテューヌとも合わせ、全ての女神達がここに集結した。

 

 

「白斗!! もう安心して!!」

 

「ああ、今度は私達が白斗を守る番だ。 ……覚悟しやがれ、モンスター風情が!!」

 

「アンチモンスターだろうが何であろうが……白ちゃんを傷つけたこと、許しはしませんわ!!」

 

 

どうやらネプテューヌが招集を掛けたらしい。

しかし、何より驚くべきことはたった一人の少年のために全ての女神が集まったことだ。

誰もが彼に恋し、彼を愛しているから。

 

 

「キシャアアアアアアア!!」

 

「黙りなさいモンスター風情が!! レイシーズダンス!!」

 

 

ブラックハートによる華麗な剣舞が、大蛇の顔面を削り取る。

美しく、隙の無い剣筋に図体がでかいだけのモンスターにはどうすることも出来ず、一方的に切り付けられた。

 

 

「ギヒャアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「うお……!?」

 

 

だが、やられてばかりのアンチモンスターでもなかった。

激痛に怒りを覚え、巨大な尻尾を振り回してきたのだ。

プロセッサウィングを常時展開している女神達にはそんなものは当たりはしない。が、白斗はそうもいかない。

凄まじい勢いで向かってくる尻尾に、どうすることも出来ず―――。

 

 

「言ったろ!? 今度は私達が―――白斗を守るってなぁ!!」

 

「ブラン!?」

 

 

そこへ割り込んできたのは、巨大なアックスを構えたホワイトハートだった。

アックスを盾代わりにして大蛇の一撃を受け止める。

あれだけの大きさとパワーに加え、アンチモンスターとしての特性もある。ブランにもダメージがあるはずだが、それを全く感じさせないほどに揺らがなかった。

 

 

「へっ、防御は私の役目だ。 ……私の守りは、白斗を守るためにあるんだよぉっ!!」

 

「ギッ!!?」

 

 

持ち前のパワーで攻撃を受け止め、そして弾き返した。

さすがのアンチモンスターも面食らったらしく、大いに体勢が崩される。

何とか持ち直そうと体を大きく振るが、そこが隙となった。

 

 

「―――遅いですわ。 キネストラダンス!!」

 

「ギギギギィィィイイイイイッ!!?」

 

 

グリーンハートが一瞬にして斬り込んだのだ。

目にも止まらなぬ槍の舞はアンチモンスターの牙を幾重にも切り付けた。幾ら対女神用生物兵器と言えど、「効きづらい」のであって「効かない」わけではない。

何度も攻撃を受ければ、大蛇の牙もついに切れてしまった。

 

 

「フィニッシュよ!! 覚悟なさい!!」

 

「ギッ………ギシャ………!!」

 

 

大太刀を構えたパープルハートが肉迫する。

敵が固いなら、それを上回る攻撃を擦ればいいだけの事。持てる全ての力を注ぎ込み、凄まじい輝きを伴って突進する。

その輝きに、強さにアンチモンスターも恐れ、目を晦まし―――。

 

 

 

 

 

「―――――ビクトリィースラッシュッッッ!!!」

 

「ぎ、ギヒィィィイイイイイイイイイイイ…………!!!」

 

 

 

 

 

勝利を告げるVの斬撃が、大蛇の首を斬り飛ばした。

時間を掛けて溜め込んだ一撃だからこそ、アンチモンスターの耐性も打ち破るほどの威力が出たのだ。

頭と胴が離れれば、どんな生物も絶命するしかない。凄まじい音と衝撃を立てて、大蛇は横たわり、消え失せた。

 

 

「―――終わった終わったぁ!! 白斗、もう大丈夫だよ!!」

 

「ありがとうな、ネプテューヌ。 それに皆も……無事で良かった!!」

 

 

女神化を解除したネプテューヌが駆け寄り、白斗の無事を確かめる。

白斗もまたネプテューヌ達の怪我がないことに安堵した。

 

 

「それはこっちの台詞よ。 感謝しなさいよね」

 

「……私は白斗が心配で心配で心が張り裂けそうだったわ」

 

「ってブラン!! だから貴女だけいい子ぶらないでよ!!」

 

「そうですわ!! あの手この手でポイント稼ぎなんて卑怯でしてよ!!」

 

「け、喧嘩するなって!! 皆のお蔭で助かったんだから、いやホントに!!」

 

 

同じく女神化を解除したノワール達だが、すぐに白斗を巡って熾烈な戦いが繰り広げられる。

何故こうなってしまうのか解せない白斗だったが、止めずにはいられない。

涙目になりながらも、ヒートアップする舌戦を宥める白斗にネプテューヌは深くため息を付く。

 

 

「やれやれだね……あ、そうだ! 君、大丈夫?」

 

 

残されたピーシェの心配をしたネプテューヌ。

白斗の奮闘もあって、彼女には傷一つ付いていなかった。それでも優しい瞳と明るい笑顔を向けてくれるネプテューヌに。

 

 

 

 

「――――うん! ぴぃはへいきだよ、ねぷてぬーっ!!!」

 

 

 

 

―――思いっきり、飛びついた。「ねぷてぬ」という愛称と共に。

 

 

「―――ぐほぉ!? こ、この胃袋をえぐるようなタックル……この子、出来る……グフッ」

 

「ね、ネプテューヌ――――ッ!!?」

 

 

存外威力があったらしい、ピーシェのタックルを受けネプテューヌが卒倒した。

でも、倒れた彼女にピーシェは頬を擦り寄せている。

「ねぷてぬ」という愛称と言い、相当懐いたらしい。倒れた彼女を抱え込みつつ、白斗らはプラネタワーへと大急ぎで戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ホントにピー子のこと知らないの? あいちゃんもこんぱも、それにいーすんも……」

 

 

それからしばらくして、ようやくプラネタワーへと戻ってきた一同。

あの後、どうやらピーシェとネプテューヌは仲良くなったらしく彼女もピーシェのことを「ピー子」という愛称で呼ぶようになった。

そんな彼女が抱えるピーシェ、問いかけた先にはアイエフとコンパ、そしてイストワールが困ったような表情をしていた。

 

 

「ごめんなさい、ネプ子。 私、この子に会ったことすらないわ」

 

「右に同じですぅ。 診察の時にお会いした患者さんでもないですし……」

 

「私もです。 教会関係でもこの子にお会いしたことは……」

 

 

本人曰く、家族と呼べる人物は「ぷるると」、そしてアイエフとコンパ、それにイストワールとのことだった。

だが当の本人たちは皆覚えがないらしく、首を傾げたり、横に振ったり、俯いたりするばかり。

 

 

「みんな……ぴぃのこと、おぼえてないの……?」

 

「こら、皆さん! ピーシェちゃんをイジメちゃダメですわ!!」

 

「なんでベールが怒ってるのよ……」

 

「私をべるべると呼んでくれた、将来の妹ですもの!! ねー、ピーシェちゃーん♪」

 

「……白斗やネプギアじゃ飽き足りないとは、なんという魔性の女」

 

 

どうやら彼女の家族はやはり目の前にいる三人だと言い張るピーシェ。次第に涙目になってしまう。

一方それに怒っているのはベール。どうやらその可愛らしさ、そして「べるべる」という愛称を貰ったことでまた妹候補にしようとしているらしい。

ノワールとブランも呆れ気味だった。

 

 

「……これは推測ですが、恐らくピーシェさんは別次元の住人ではないでしょうか?」

 

「別次元……?」

 

「はい、所謂平行世界です。 そこに存在する別の私達やアイエフさんとコンパさんと一緒に暮らしていたから、このような食い違いが起こっているものと思われます」

 

「普通なら何をそんな馬鹿な……と言いたいけど、白斗やマベちゃんという前例もある以上、否定できない……」

 

 

するとイストワールがある仮説を立てた。

別次元から来た存在、確かにそれならば辻褄は合う。ブランも頷き、その仮説を支持する姿勢を採った。

他の皆も同様らしい。

 

 

「ピー子、どうなの?」

 

「んー……よくみればいすとわる、なんかちがう……。 いつもよりおおきい……へんなキノコでもたべたの?」

 

「いえ、そんなアイテムを使ったわけではないのですが……でもピーシェさんの様子から察するにその線が濃厚ですね」

 

「でもどうするんですかいーすんさん? 別の次元なんて……」

 

 

同時刻に帰宅していたネプギアも、心配そうな声を上げる。

別次元から来たなど説明だけなら簡単だが、簡単に世界を行き帰り出来るはずがない。当の本人も、どうやって来たのか分からないらしい。

 

 

「別世界の私がいるのであれば、そちらと交信することが可能かもしれません。 該当する世界が無いか、連絡を取ってみます」

 

「出来るんですか!?」

 

「確証はありませんが、やれるだけやってみます。 ただ三か月ほどかかりますよ?」

 

「いつにもまして長すぎ!?」

 

 

一時期はオーバーテクノロジーに興奮していたネプギアだったが、余りにも長い準備期間にツッコミを入れてしまった。

このイストワールは優秀なのだが、とにかく何をやらせても時間がかかるのが難点なのだ。

だが希望が無いよりかはずっといい、少なくとも三か月以内でピーシェを元の世界に戻せるのならば。

 

 

「なら、それまでピーシェの面倒は俺らで見ないとな」

 

「それがいいわね。 ピーシェも、白斗やネプテューヌには相当懐いているみたいだし」

 

「うぅ……お二人が羨ましいですわ……」

 

 

そこへ何やらエプロンを着けた白斗も現れた。

彼の言う通り、ピーシェはまだ幼く、誰かが傍に居てやらなければならない。

ならばネプテューヌや白斗に懐いている以上、プラネテューヌで預かるのが妥当だとノワールも納得した。ベールはお持ち帰りしたかったらしく、涙目だったが。

 

 

「ピーシェ、少し時間は掛かると思うけどしばらくの間はここがお前の家だ」

 

「ぴぃ、ここでねぷてぬやおにーちゃんたちとあそんでいいの?」

 

「うん! 必ずピー子の家族に会わせてあげるから、それまでいい子に出来る?」

 

「わーい!! ぴぃ、いいこにするー!!」

 

 

どうやらしばらくの間、ここで暮らすことを了承してくれたようだ。

家族に会えない寂しさもあるというのに、明るく笑ってくれる。

白斗とネプテューヌも嬉しくなってつい頭を撫でてしまった。まるで愛しい我が子のように。

 

 

「それじゃ、いい子のピーシェにはご褒美だ。 ノワール達もこっちへ」

 

「こっちって……そう言えば白斗、エプロン着けてたけど何か作ってたの?」

 

「ああ、これさ。 皆の分、追加で作るの苦労したぜ」

 

 

白斗に案内された先はいつも食事を食べているテーブル。

そこには人数分揃えられたパフェがあった。

ふんだんに使われた生クリーム、チョコ、フルーツ、アイスクリーム、そしてプリン。それが絶妙なバランスかつ豪勢に盛り付けられ、女の子の視線を虜にした。

 

 

「す、凄い!! ホントにこれ白斗が作ったの!?」

 

「いやホントに色んな意味で死ぬほど苦労したぜ……あれやこれや皆がリクエストするモンだから、調整や味付け、何より盛り付けが難しいのなんの……」

 

「でも本当に凄いです!! 白斗さん、ありがとうです~~~!!」

 

「私のリクエスト通りプリンもあるー!! さっすが白斗、サイコー!!」

 

 

リクエストした本人であるアイエフとコンパ、そしてネプテューヌも目を輝かせていた。

女の子の弱点の一つ、甘いもの。全てのスイーツを集結させたパフェは、彼女達だけでなく女神達をも夢中にさせた。

 

 

「ほ、本当に私達も頂いちゃってよろしいんですの!?」

 

「よろしいのですよ。 皆には助けられたし、もう作っちまったし」

 

「……これは、食べないと神罰が下るわね。 ふふっ♪」

 

 

ベールやブランも大興奮だ。女神様も女の子である。

 

 

「……おにーちゃん、ねぷてぬ。 これ、なにー?」

 

 

ピーシェも興味津々だったが、その中でも一際注目していたもの。

それはぷるるんと揺れる黄金の甘味。

 

 

「これはね、プリンっていうんだよ! 私の一番の大好物ー!!」

 

「ぷりん……! ねぷの、ぷりん!」

 

 

すっかりプリンに釘付けのピーシェ。

美味しそうというだけでなく、懐いているネプテューヌの大好物という点もあるのだろう。

同じプリン好きが生まれたことで、ネプテューヌも嬉しそうだ。

 

 

「でもお兄ちゃん、この量はピーシェちゃんが食べるにはキツくないかな?」

 

「大丈夫、ちゃんとピーシェ用のもあるから。 勿論、イストワールさんのも」

 

「ありがとうございます。 ああ、また白斗さんのパフェが食べられるなんて……!」

 

 

勿論、抜かりなく体格の小さな人でも十分完食できるサイズを用意していた。

その気遣いに、そしてまたあのパフェが食べられることにイストワールもうっとりしてしまう。

 

 

「さ、そろそろ食べないとパフェが溶けちまうぜ」

 

「そうだね! それじゃ、いただきまーす!!」

 

「「「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」」」

 

 

ネプテューヌの音頭で、皆が一斉にパフェにありついた。

生クリームの上品な甘みと触感、更に時折加わるフルーツの酸味が飽きさせないようにし、そこに絡みつくチョコとプリンのコラボレーション。

乙女たちはまさに天にも昇る心地だったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、ご馳走様ー……」

 

「甘いものは別腹って言うけど、さすがのボリュームだったわね」

 

「ええ。 でも幸せ……白斗、また作ってね」

 

「お気に召したようで何よりでございます、女神様」

 

 

それからしばらくして、ネプテューヌ達が膨れたお腹をさすっていた。

量こそあったものの、味はまさに一級品。誰もが満足してくれたので白斗も嬉しくなった。

因みに白斗は今、パフェに使用したグラスなどを片付けている。

 

 

「白ちゃん! いっその事、リーンボックスでお店出しましょう!!」

 

「あ、ズルいよベール!! さりげなく白斗を引き込もうだなんて!!」

 

「は、ハハハ……俺は店とか興味ねーんだ。 こうやって皆に出してあげるのが好きだから」

 

「むぅ……残念無念ですわ……」

 

 

ベールも気に入ったようで、リーンボックスへと勧誘してきた。

こうすれば美味しいパフェだけでなく、白斗も必然的にリーンボックスで暮らすことになるという打算だったが、合えなく却下された。

 

 

「ピーシェも美味しかったか?」

 

「うん! おにーちゃん、ありがとー!!」

 

「そうか、なら良かった。 って口に生クリームついてるぞ」

 

 

ピーシェも喜んでくれた。だが存外食べ方が凄かったらしく、あちこちに生クリームをつけていた。

ハンカチで優しく口を拭いてあげるが、それだけでは落ちそうになかった。

 

 

「お兄ちゃん、お風呂沸かしてあるからそこで洗ってきてもらったらどうかな?」

 

「用意がいいなネプギア」

 

「お兄ちゃんがクエストに向かってるって聞いたから、汗かいてるだろうなーって思って」

 

「ありがとな。 それじゃネプテューヌ、ピーシェだけだと危ないだろうから同伴頼む」

 

「ほいキタ! おっ風呂、おっ風呂ー♪」

 

 

一緒にお風呂に入ろうとするネプテューヌとピーシェ。

出会ってまだ数時間も経っていないというのに、本当の家族のようだ。

陽気に鼻歌を歌うネプテューヌを穏やかな瞳で見つめていた白斗だが、ピーシェは寂しそうに人差し指を唇に押し当てて。

 

 

「……ぴぃ、おにーちゃんともはいりたい」

 

「「なんですと?」」

 

 

なんとピーシェが白斗と一緒に入浴したいと言い出したのだ。

まだ幼い少女であるためその手の羞恥心も警戒心も薄いのだろうが、対する白斗とネプテューヌは固まった。

 

 

「も、もー!! しょーがないなピー子ってば!!」

 

「しょーがないって……まさかネプテューヌ!?」

 

「いいじゃん、一回一緒に入ってるんだし今更減るものでも……ねぷ? 何だろう、このどこまでも冷たくて心臓を鷲掴みにするような視線……」

 

 

どうやらネプテューヌは一緒に入る気満々のようだ。

だがそこへ殺気そのものと呼べる視線が幾重にも絡みついてくる。恐る恐る振り返れば、そこには白斗に好意を寄せる乙女たちのどこまでも鋭く、どこまでも恐ろしい視線が。

 

 

「ネ~プ~テュ~ヌ~?」

 

「まだ懲りてねぇのかテメェはよぉ……」

 

「白ちゃんも……まさか一緒に入ろうなんて思っちゃいませんわよね? ……ねぇ?」

 

「「滅相もございませんッ!!!」」

 

 

特に三女神達が恐ろしい。

彼女達はまだ混浴経験が無いことに嫉妬しているためである。危うくピーシェに流されて、白斗は危ない一線を超えるところだった。

因みにアイエフとコンパ、ネプギアは未遂とは言え突撃したことはあるためばつが悪そうな顔を浮かべていた。

 

 

「仕方がありませんわね。 ピーシェちゃん、一緒に入りましょう?」

 

「えー。 ぴぃ、ねぷてぬやおにーちゃんといっしょがいいのに……」

 

「ダメよ。 全く、この子にはまずは常識ってものを教えてあげないと」

 

「ノワールの言う通りね。 ……この子にまでフラグを立てられたら困るし」

 

「ね、ねぷーっ!! 私と白斗とのアツい一時がー!! うわーん!!!」

 

 

結局、ピーシェとネプテューヌは三女神によって連行されてしまった。

これで安心したような、ホッとしたような。そんな複雑に駆られる白斗。彼もまた年頃の少年である。

事件に、ドタバタに、ラブコメに。プラネテューヌの日常に、更に声が加わることになり益々静寂とは無縁の国になっていく。

 

 

「やれやれ……ただで騒がしいのに、あんなパワフルな子まで加わるとは……賑やかを通り越してうるさくなりそうですね」

 

「でもいいと思いますよ。 寂しいよりかは、ずっといい」

 

「……それもそうですね」

 

 

疲れたようなため息を吐くイストワールだが、白斗は嬉しそうな表情だった。

騒動に、トラブルに、そして笑顔に溢れた日常が彼にとっては何よりも嬉しかったから。

 

 

『ねぷてぬーっ!!』

 

『グホァ!! ぴ、ピー子……落ち着いて……ぐふっ』

 

『ぴ、ピーシェちゃん!! そんなネプテューヌやブランみたいなまな板ではなく、包容力溢れる私に……!!』

 

『おいゴルァ!! そこで何で私まで引き合いに出しやがるんだテメェはぁ!!!』

 

『あーもーっ!! 貴女達、風呂の時くらい静かにしなさーい!!!』

 

 

その後風呂場から聞こえたあらゆる大声でプラネタワーの一室にまた笑顔が溢れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――今日から、プラネテューヌに新しい家族が加わりました。




サブタイの元ネタ「パワーパフガールズ」

ピーシェちゃん登場のお話でした。
読んでもらえれば分かる通り、今回のピーシェはあの女神様と一緒に暮らしていた設定です。
そんな彼女が何故この次元に来てしまったのか、そしてネプテューヌ達とどんな日常を繰り広げていくのか。
ピーシェは可愛らしくて人懐っこいのが魅力的なので、書いていて楽しい。あれ?ロムちゃんやラムちゃん、ブランといい……まさか私にロリコン疑惑が掛かっている?そ、そんなバナナ。
さて、次回ですが新ヒロイン登場!ズバリ、「激震ブラックハート」より私の大好きなキャラを登場させます。お楽しみに!


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