恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART 作:カスケード
―――午前9時。プラネタワーにて。
「おーい、プルルート~?」
柔らかな朝の日差しが入り込む中、コンコンと軽い音を響かせながらドアが叩かれる。
ドアを叩いているのは白斗。そして呼びかけているのは最近この世界にやってきた、神次元という別世界でのプラネテューヌの女神ことプルルート。
だが幾ら呼び掛けても返事は返ってこない。
「うーむ、これは……アレか……。 仕方ない、プルルート入るぞ~?」
どうして返事をしてくれないのか、理由は大体察しがついているのでため息を付きながらも仕方なくドアを開ける。
ここはプラネタワー内にある、プルルートのために設えた部屋。彼女の要望で日当たりも風通しもよい部屋になり、更には柔らかなベッドや彼女お手製らしいぬいぐるみが並べられた、まさに女の子の部屋といった仕上がりだ。
そんな部屋の中、安らかな寝息が聞こえてくる。
「くー……すや~……」
「……予想通り、寝てるな。 おーいプルルート、朝飯だぞ~?」
少しだけ掛け布団を剥がせば、そこにはくるまって寝ているプルルートがいた。
のんびり屋さんの彼女は大のお昼寝好き。気が付けばどこでも寝ているような、ちょっと抜けた女の子。
本来ならもう少し寝かせてあげてもいいと思うところだが朝飯が待っている。何とか彼女を起こそうちょっとだけ、強めに揺すった。
「んん~……くぴー………」
「ぜ、全然効きやしねぇ……。 なら最終手段発動! ぷ~ん………」
しかしプルルートの寝つきの良さは折り紙付きだ。そう簡単に起きるものではない。
かと言って叩き起こすようなことはしたくはない。あくまで彼女が自発的に起きるように仕向けるのがベストだ。
そこで白斗が採った手段、それは蚊の羽音のような声を耳元に囁くことだった。
「ん、んん~………!」
(クッククク、効いておる効いておる。 さぁ、眠りの淵から目覚めよ女神!)
人間が最も不快に感じる音の一つ、それが蚊が飛ぶ音。
あの不快感は全世界共通らしい。さすがのプルルートも少し顔を歪めてきた。やがて目覚める―――かと思われたその時。
「んん~……!! しずかにぃ~………してぇ~~~~~~~!!!」
「べぐアッッ!!?」
ガシッ! 近くにあったぬいぐるみに手を伸ばし。
グワッ! 音を立ててそれを勢いよく振り上げ。
ドゴン! ―――それを思い切り、白斗に叩きつけた。
「……ん、ふぁぁ~……あ、白くん~。 おはよ~」
「………オハ、ヨ……ゴザイ、マ……………ス………ガクッ」
「あれ~? 白くんも眠いの~? まだ朝早いし~、あたしも二度寝しよ~」
忘れてはならない。彼女は見た目はこうでも、立派な女神なのだ。
その細腕の一撃でクレーターを生み出されるのに、白斗が耐えきれる道理がない。挨拶を交わした後、白斗は気絶。
そしてプルルートは午前9時という早朝だったため、再び二度寝してしまったのだった。
☆
―――さて、何故白斗などと言う一般人風情が女の子、しかも女神様を起こしに掛かっているのか。
それは遡ること昨晩、夕食の席にて。
『プルルート! 何かして欲しいことは無いか?』
『ほぇ~? どうしたの白くん~?』
突然白斗がそんな言葉を掛けてきた。
当人であるプルルートは勿論、ネプテューヌやネプギア、ピーシェにイストワールもキョトンとしていて何が何だか分からない様子だ。
『いや、プルルートには世話になったしちゃんとしたお礼もしたいなって思ってたから、プルルートのして欲しいこととかないのかなーって』
『あー、出たよ白斗の悪い癖……』
嘆息しながらネプテューヌとネプギアが姉妹揃って肩を竦める。
この白斗と言う男、自分を助けてくれた相手に対してかなり義理堅い。ネプテューヌ達との交流も、元はそんな白斗の恩返しから始まったものだ。
今回はフリージアの花をわざわざ届けてくれたプルルートに対してのものらしい。
『別にいいよ~、あたしだってピーシェちゃん助けてもらったんだし~』
『そうか? でもなんかして欲しいことあったら何でも言ってくれよ』
やんわりと断られてしまったので、一応その場では引き下がっておく。
好意の押し付けも迷惑になると判断したので、プルルートが本当に困っていたら、或いは向こうから助けを求めてきたら快く応じるつもりだ。
『お兄ちゃん、尽くすのは良いことかもしれないけどちゃんと自分の時間も大切にしてくださいね。 というワケではい、あーん!』
『ちょっとネプギア! 何がと言うワケでナチュラルにあーんしてるの!? 白斗、私からもはい、あーん!』
『お、お前ら一変に迫るなっての!!』
『おにーちゃん! ぴぃのもー!!』
『ち、ちょっと待っ………もががが―――っ!!?』
『ああ、白斗さん!? ネプテューヌさん達も落ち着いてくださーいっ!!』
また白斗が女の子にコナを掛けようとしていると思い、看過できなくなったネプギアが晩御飯のオムライスをスプーンで一掬いし、口元へ近づけてくる。
それに対抗してネプテューヌ、更にはピーシェも加わり、全員が一斉に白斗の口へ突っ込ませてきた。大慌てでイストワールが助けに向かうが、それを見ていたプルルートは。
(……みんな、本当に白くんのことが大好きなんだね~)
輪の中心となっている白斗と言う少年に興味を持っていた。
元より家族であるピーシェを助けてくれた恩もあるが、それ以上に何かが気になる。
あのマジェコンヌとの戦いも女神化した姿に驚きも慄きもしたが、同時に啖呵も切って見せた。
そんな彼に興味を抱くと同時に、こうして彼に相手にされない一幕は―――なんだか寂しく感じた。
『んー……あ。 それじゃ白くん~、明日一日、あたしと遊ぼうよ~』
『へ?』
尚も取り囲んでくるネプテューヌ達をいなし続けていると、突然ぽんと手を叩いてプルルートがそんな提案をしてきた。
余りにも唐突で、突拍子もないお言葉に白斗だけでなくその場にいた誰もが抜けた声を上げてしまう。
『さっき言ってたでしょ~。 して欲しいことがあったら言ってって~』
『勿論だが……いや、そうだな。 分かった、んじゃ明日一日遊ぶとしますか!』
『うん! えへへ~』
一瞬「そんなことでいいのか」と言いかけた白斗だったが、すぐに止めた。プルルートが望んでいっていることなのだし、それにたった一回願いを聞いただけで終わってしまうような関係性でもない。
これからも、という意味を込めて白斗が笑顔でそれを受け入れ、プルルートも満足げに微笑んだ。
『『じ~………』』
『………はは、痛い……視線が痛いよ女神様………』
しかしこれ以降、女神姉妹から穴が開きそうなほど痛い視線をぶつけられるのだった。
それはもう、何の比喩でもなく一日中ずっと。
☆
―――そして現在に至る。
本日は街へ遊びに行く約束だったのだが約束の時間になってもプルルートが降りてこない。そこで白斗が起こしに行って―――冒頭のあの有様というわけである。
「あはは~、そ~だったんだ~。 ごめんね白くん~」
「いや、俺も起こし方がなってなかった……。 次からはお互いに優しい起こし方を考えてくるよ、うん」
遅めの朝食の席にて、プルルートが謝っていた。顔を盛大に赤くさせた白斗に。
もう少しプルルートにも白斗自身にも優しい起こし方を見つけねば、起こす側の命がない。
手作りの味噌汁を啜りながら、白斗が肩を落とした。
やがて朝食を食べ終え、互いに食器を洗いながら今日の予定を確認し合う。
「まぁ、過ぎた話はもういいや。 で、俺がコース決めていいんだよな?」
「そうだよ~。 あたし、まだ来たばかりだからこの国のことよく分からないんだ~。 だから色々案内してくれると嬉しいな~」
「OK。 俺流のコースを考えてきたぜ」
どうやら目的地そのものはないらしいが無理もない、プラネテューヌの女神と言っても彼女の世界とは勝手が違うのだ。
だから「この国がどういう感じなのか見て回りたい」という物見遊山の方がニュアンスとして近いだろう。昨日の内にある程度コースは決めて置いた。後は遊びに行くだけ。
「はいはーい! 白斗! 私もついていきたいなー!!」
「わ、私もお兄ちゃんと一緒に過ごしたい!!」
「ぴぃもいっしょにあそんでー!!」
「お、お前らなぁ………」
と、そこへ準備万端とでもいわんばかりに雪崩れ込んできたネプテューヌ達。
素直な好意は嬉しいし、確かに皆がついてきてくれた方が楽しくも心強くもなるかもしれない。
―――しかし、隣で腕を絡めているプルルートは不満気だ。その時、ウィイインという謎の起動音が響き渡り。
「はい、捕獲」
「「「わああああぁぁぁ!!?」」」
機械のアームが、ガッチリとネプテューヌ達を捕らえてしまった。
犯人は手元で端末を操作しているイストワールで間違いないだろう。
「い、いーすん!! これ邪魔者の強制排除装置だよね!? なんで私達がー!?」
「今は皆さんが邪魔ものだからですよ。 さ、こちらです。 ついでにネプテューヌさんには仕事が溜まっていますからね」
「「「いーやー!!!」」」
そのまま連行されてしまう三人。
ただ、侵入者迎撃用というよりも、仕事をさぼって脱走するネプテューヌ対策のように見えるのは気のせいだろうか。
ははは、と乾いた笑いしか出ない白斗だったが、一方のプルルートは憂い事が無くなったかのように上機嫌だ。
「それじゃ白くん~。 そろそろ行こうよ~」
「お、おう。 そうだな」
ネプテューヌ達には申し訳なく思いつつも、今はプルルートとの時間だ。
支度を整えて二人は外へと繰り出す。
プラネテューヌの気候は年中安定しており、外に出ただけで温かな日差しが入り込んでくる。
「ん~。 今日も絶好のお昼寝日和だね~」
「あー、確かに。 ネプテューヌもお前程じゃないけど、よくサボって昼寝してたりするんだよな」
「白くん失礼~。 あたしはサボってるワケじゃないんだよ~」
「ははは、ゴメンゴメン。 お詫びにオススメのクレープ屋行こうぜ。 奢るからさ」
「わ~い! なら許してあげる~」
「有難き幸せ。 んじゃ行きますか」
「うん! って、え………」
とりあえず、当初の目的は決まった。
クレープと聞いてプルルートも大喜び。彼女もやはり女の子で、甘いものには目がないらしい。
早速そこへ向かおうとした時、プルルートの手が力強く、尚且つ温かいものに包まれた。
一体どうしたのかと目を向けてみると白斗の手が、彼女の小さな手を握っている。
「………ん? あ、ゴメン!! つ、つい………」
「い、いいよ~。 ただ……あたし、男の子と手を繋ぐなんて……初めてだったから……」
「そ、そうか……」
どうやら白斗は無意識に手を握ってしまっていたらしい。
妙に気恥ずかしくなって、一旦手を離す。
ただ、白斗はプルルートの少しひんやりとして綺麗な感触を、プルルートは白斗の力強くて熱い手の感触を、それぞれ忘れることは無かった。
「ほ、ほら、あそこのクレープだ」
そんな気恥ずかしさを抱えたま速向かった公園。そこで屋台として売り出されていたクレープがあった。
以前、ネプテューヌとのデートの際に食べたもの。白斗が早速並び、二人分を買ってきた。
「はい、プルルートはチョコバナナクレープだ」
「わ~! ありがと~。 白くんは~?」
「俺はプリンクレープだ。 これネプテューヌおすすめで……あれ?」
「むむむ~……」
すると、何故かプルルートが渋面を作り始めた。何か手落ちでもあったのだろうか。
最初は渡したクレープが気に入らなかったのかと思ったが、渡した直後は満面の笑顔だったし、まだ食べてすらいないから味に関する問題でも無いはず。
「白くん~。 今は私との時間なんだから、他の女の子の名前を出すのはよくないと思うな~」
「え……? あ、ああ……ごめんなさい!!」
しかしナイフ捌きは器用でも、女の子の扱いは不器用な白斗はそこまで頭が回らなかった。
実を言うと今でもそれで何故プルルートがご不満なのか今市要領を得ないのだが、とにかく謝らなくては。
「……な~んてね。 あはは、白くん必死~!」
「あっ!? テメ、からかいやがったな!?」
「でも白くんが悪いのは事実だよ~? お詫びに白くんのクレープも頂戴ね~?」
「……へいへい。 でも間接キスになるが大丈夫か?」
「…………お、女の子に二言はないもん~~~!」
やはり女の子の扱いには長けていない白斗。そのままプルルートに振り回されてしまう。
けれども、そんな状況も楽しんでいる自分がいることに気づいて、柔らかく微笑んだ。
ベンチに腰掛け、互いにクレープを食べ、時には食べさせ合う。勿論間接キスの類ではあるが、プルルートは大分顔を赤くしながらそれでも何とか食べ、白斗に関しては二回目なので何とか平静を保てた。
「……さ、さて! 次はゲームセンターにでも行くか!!」
「そ、そうだね~。 あたし、興味あったんだ~!!」
否、保てて無かった。滅茶苦茶意識していた。声も裏がっており、汗は噴き出て、目の焦点は合っていない。
それはプルルートも同様で、二人で半ば自棄になりながらゲームセンターへと歩を進めていく。
「わぁ~! ここがねぷちゃんの国のゲームセンターなんだね~」
「やっぱプルルートもゲーム好きなんだな」
「ゲイムギョウ界の人なら当然だよ~。 それにあたしが女神になって最初に作ったのはゲームセンターなんだ~」
「なんつーか、さすがだな……」
苦笑いしながら二人してゲームセンターの扉を潜る。
娯楽好きなネプテューヌの国というだけあって様々な種類の筐体が置かれており、さすがのプルルートも目を輝かせていた。
「何するよ? 色んなゲーム置いてあるけど」
「ん~……じゃぁ、あれ~!」
そう言って指差した先には、落ちてくるスライム状の物体を連鎖させてスコアを競う所謂パズルゲームに近いものだった。
見た目通りのんびり屋さんな彼女からすれば、複雑な操作を要求されるものよりも落ち着いてプレイできるようなゲームが好みらしい。
「ほうほう、面白い。 対戦してみるか?」
「うん~。 それじゃ行くよ~」
白斗が二人分のコインを入れてゲームスタート。
落ちてくるスライムの位置を操作しながら、連鎖を繋げていく。そして連鎖が起こるにつれ、相手にダメージ代わりの邪魔なブロックが落ちてくる仕組みである。
シンプルな操作ゆえ、互いに手間取ることは無かったが。
「ほいほいほいっと!」
「わぁ~! 白くん強~い!」
「小賢しさで生き抜いてきた方なんで、なっ!」
「あたしも負けないよ~!」
元より、咄嗟の状況に対して頭が回る白斗。
純粋な技術では雑魚の部類だが、技術を必要としないパズルゲームなどでは割と戦える部類になった。
一方のプルルートも決して弱くはなく、拮抗した勝負になっていたが最終的には大連鎖を繋ぎ、白斗が勝利をもぎ取った。
「うぅ~。 負けちゃった~」
「でも結構接戦だったな」
「うん。 楽しかった~!」
一手でも間違えていれば勝敗はひっくり返っていただろう。
それくらいにギリギリの勝負でお互いに楽しめたようだ。だが、まだ満足してはいない。
次なるゲームを求めてあちこちを彷徨う。と、ここでプルルートがある機体に目を向けた。
UFOキャッチャーで、そこにある紫色の人間とも、動物ともつかない謎のぬいぐるみが詰められている。
「あ~。 このぬいぐるみ柔らかそ~」
「ん? ああ、今流行りのぬいぐるみ枕か」
「枕にもなるんだ~。 でもこれなんてキャラクターなの~?」
「プラネテューヌのゆるキャラらしい。 ねっぷーたん……だっけ? ネプテューヌのぐーたらさをイメージした生命体だとか」
「あはは~。 ねぷちゃん、人として扱われてない~」
確かにゆるキャラならば彼女以上の適任はいないだろう。
それをデフォルメしたキャラクターを生み出したらしいが、結果この有様らしい。因みにネプテューヌ自身もこの出来に納得がいっていないとか。
「……欲しいのか?」
「え……興味はあるけど~……」
「ほい来た。 任せとけ」
興味があるのならば、取ってあげない理由など無い。
白斗は意気揚々とUFOキャッチャーの前に立ち、コインを一枚投入。華やかな音楽と共にゲームスタートだ。
(さて、出来りゃ一発クリア狙いたい。 ……よし、引っ掛けて落とす方向で行くか)
鍛え抜かれた眼力で獲物の“急所”を見つける。
そして頭の中で作戦を組み立て、ボタンを押してアームを操る。プルルートが固唾を飲んで見守る中、アームは白斗の思い通りの位置へと移動し、下ろされた。
やがてそれがぬいぐるみの足に引っかかり、一瞬直立の状態になる。バランスを保てなくなった人形はそのままでんぐり返しのように転がり―――。
「落ちてきた~! わぁ~! 白くんありがと~~~!」
「どういたしまして」
とうとうぬいぐるみをゲット。一発クリアというエンターテインメントもあってプルルートは嬉しそうにそれを抱きしめた。
正直言えばぬいぐるみの出来が出来なので若干絵面としては微妙だったが、それでも彼女の可愛らしい笑顔が見られたので良しとしておく。
「ふ、ぁ~……」
「お、もうお眠か?」
「む~……あたし、子供じゃないも………ぐぅ………」
「いや寝るんかい!? しかも立ったままで!?」
更にはこんな騒がしいゲームセンターの中でと来たものだ。
出来ることなら寝かせてあげたくもあるが、さすがにこんなゲームセンターの中で寝かせるのは他の客の迷惑にもなる。
何とか彼女を起こしてゲームセンターを後にして、少しだけ歩く。
「ん~……おんぶ~……」
「おいおい、子供じゃないんだろ? 甘えちゃいけません」
「ぷる~ん………」
「……いや、あのね? そんな目で見ても」
「ぷる~ん………」
「…………………」
「ぷる~ん………」
「………………どうぞ、女神様」
「やったぁ~~~!」
やれやれと溜め息を付きながら、負けを認めて白斗は背中を差し出した。
あの疲れたような声はどこへやら、プルルートは嬉々として飛びついてくる。女の子特有の甘い香りと柔らかさについクラッときてしまいそうになったが、そこは鉄壁の理性でねじ伏せて堪える。据え膳でも食っちゃダメな時があるのです。
「お~。 あったか~い。 ねぷちゃんやピーシェちゃんが気に入るのも分かるよ~」
「……お気に召していただけたようで何よりでございます、女神様」
街中の往来でおんぶ抱っこというのは中々に目立つものだ。
しかも美少女を背負っているのだから、白斗には嫉妬も含めた視線が突き刺さるのなんの。
居心地の悪さと―――しかしながら、少しの役得を感じていた。
だから、だろうか。人混みの中を、ぬっと出てくる男に気付くのが遅れてしまい。
「ひゃ!?」
「痛ってぇな! 気を付けろや!!」
男と背負ったプルルートがぶつかってしまった。
苛立ちを隠さないまま、しかし男がズケズケとその場を去ろうとした―――その時。
「―――テメェが気をつけろや、クソ野郎がッ!!!」
「がッ!?」
白斗がプルルートを抱えたまま屈みこみ、足を伸ばして鋭く払う。
突然の下段攻撃に男は倒れ込んでしまう。そして倒れ込んで勢いで手放してしまっていた。
―――可愛らしい、がま口の財布を。
「ほいよっと。 悪いプルルート、油断した」
「あ~! あたしの財布~!」
放り投げられたそれをおんぶしたまま、後ろ手でキャッチして見せる白斗。
お手玉の要領でプルルートに投げ渡せば、それは確かに彼女の下だった。どうやらあのぶつかった一瞬で掏られたらしい。
「テッメェ!!」
「ほっと」
「うおっとっとっと………!? がぶっ!!?」
逆上して殴り掛かってくるスリ。
だがここで撤退を選ばないなど失策、下の下、愚の骨頂。
白斗が拳を避けると同時にまた僅かに足を出すだけで男はそれに引っかかる。またバランスを失い、電柱にキス。熱い接吻に耐え切れなかったらしく、そのまま崩れ落ちた。
「……プルルートに手を出したんだ、お似合いの末路だよ。 誰か警察に突き出しておいてくださーい」
苦もなくあしらうと、白斗はそのまま目的地へ向かって歩き出した。
今はプルルートとの時間、あんな小物に割いていい時間など一秒たりともない。
「は、白くん……ごめ「ごめんな、プルルート」
プルルートが責任を感じて謝ろうとした時、被せるようにして白斗が謝ってきた。
謝る側はこっちだと思っていたプルルートは面食らってパチクリと目を瞬かせる。
「俺が油断したばっかりに迷惑をかけた。 ……もう、あんな事態にはさせないから」
そう言って責任を感じつつも、どこか柔らかく微笑んでくれた。
これ以上彼女を不安にさせないという強い意志を感じさせる。いや、そんな細かい理屈を抜きにしてそれは―――優しさと言うのだろう。
プルルートはそんな彼の優しさが嬉しくなって、抱き着く力を強くした。
「……ふふっ! じゃ~、お願いね~」
「お願いされました。 ……っと、そろそろつくぞ」
辛気臭い話はこれ以上するべきではないとお互いに感じ取り、以降の時間を楽しむことにした。
やがて辿り着いたのは緑溢れ、日当たりも風通しもよい、開放感に溢れた公園。
―――初めてのネプテューヌとのデートで昼食を取った、あの公園だ。
「んん~! 気持ちいい~」
「だろ? ちょっと早いがここでご飯食ってお昼寝しようぜ」
「さんせ~! で、白くん~」
「はいはい。 ご希望通りにご用意させていただいておりますよっと!」
そう言って白斗はどこからともなく、青色の風呂敷に包まれた弁当箱を取り出した。
彼女の昼食のリクエスト、それは白斗の手作り弁当である。
あの時とは違い、今度は白斗が作る側だ。お蔭で尚更気合が入ってしまった。
カパッ、と良い音を立てて開けられると色とりどりのラインナップがプルルートを出迎える。
「わぁ~! おにぎりに焼き魚、唐揚げにサラダ……美味しそ~!」
「因みに低カロリーで作ってあるぜ。 だから遠慮せず食ってくれ」
「ありがと~! じゃぁ、この唐揚げから……んん~! 美味しい~!」
早速自信作である唐揚げを口へ持っていく。
すると蕩け落ちそうな頬を押さえながらプルルートが大絶賛してくれた。
のんびり屋さんな彼女が手足をパタパタとさせて、可愛らしい笑顔を見せてくれている。白斗にとっては、それだけでお腹いっぱいになりそうだ。
「ふぅ~、ご馳走様~!」
「お粗末様でした、っと。 そんじゃ昼寝しますか」
「うん~。 ぐー……すや~……」
「早っ!!?」
横になった途端、すぐに可愛らしい寝息を立て始めた。
ゲームセンターの辺りから眠気が溜まっていたことに加え、満腹補正もあったのだろうか。
しかしこの安らかで、どこまでも幸せそうな寝顔を見ていたらどうでもよくなってしまった。
「……俺も寝るかな。 ふぁぁ~……」
またあの時と同じように眠気に誘われ、白斗は彼女の隣で寝転がった。
不用意に近づく輩がいればすぐに起きれるだろう。
瞼を閉じる前に自分のコートを毛布代わりにプルルートに掛けて、白斗も微睡の中へと落ちるのだった。
☆
「ん……ふぁ………結構寝ちまってたのか……ってもう夕方!!?」
妙に赤くなった光と、カラスの泣き声を認識した途端、白斗の意識は覚醒した。半ば焦りで。
プルルートを案内してあげるはずだったのに、気が付けばもう帰らなければいけない時間帯。これ以上の失態はない。
慌てて体を起こそうとした時、左側に妙な重量感が。
「すやや~……すぴ~……」
「ぷ、プルルート……」
いつの間にかプルルートが白斗の左腕を抱き枕にしていたのである。
本日手に入れたぬいぐるみを枕にしていたはずなのに。
心なしか、その寝顔は今日一番の幸せそうな表情だったとか。
「プルルート! お、起きてくれ!」
「……んぅ~……ふぁあぁあぁ~~~………あ~、白くん……おはよ~」
今朝より強めに、けれども乱暴までは行かないように揺らす。
すると今回はすぐにプルルートが目を覚ましてくれた。さすがに十分な睡眠が得られたらしく、彼女はスッキリしたようなお目覚めのようだ。
「す、すまん! 寝過ごしてもう夕方に……」
「あ~、そうなんだ~。 それじゃ帰ろうか~」
「あ、ああ……本当にゴメンな。 案内するって約束だったのに……」
今回ばかりは白斗も落ち込み気味だ。
彼女からのリクエストに張り切って応えるつもりが、ついつい寝過ごしてもうタイムアップ。
笑えないオチだと暗くしていると、そんな白斗の両手を綺麗な感触が包み込んでくる。
「そんなことないよ~。 あたし、白くんと遊んで、ご飯食べて、お昼寝して……すっごく楽しかったんだ~」
「ぷ、プルルート……」
プルルートの手だった。
少しひんやりとしていて、でも柔らかくて、綺麗な感触が白斗の意識を覚醒させた。
次いで見せてくれたその幸せそうな顔が今日一日の感想を雄弁に語ってくれる。
「それに、今日出来なかったことはまた今度やればいいだけだよ~。 だから……また一緒に遊ぼうね~」
―――その優しさに、その柔らかさに、その笑顔に。
例え世界が違っても、彼女は女神様なのだと思い知らされる。ネプテューヌといい、プルルートといい、どうしてプラネテューヌの女神様はふと、何気ない一幕でそれを見せつけてくれるのだろうか。
彼女の全てに魅せられ、白斗も微笑みを取り戻した。
「……そうだな。 んじゃその代わり、今日の晩飯は張り切るとしますか!」
「わぁ~! 楽しみ~!」
「乞うご期待ってね。 ………ん?」
埋め合わせ、というよりももっとプルルートの笑顔が見たい。
そのためにも今日の夕食は腕によりをかけることにした。
昼食のお弁当の出来もあってプルルートは早速期待してくれているようだ。そんな彼女のご期待に応えたいとプラネタワーへと向かっている途中―――白斗の足が止まった。
「? 白くん……?」
「……何だよ、大の大人が雁首揃えてきやがって」
その声は、プルルートに向けられたものでは無かった。
誰もいないはずの公園―――かと思われたが、木陰や物陰から怪しげな風貌の男達がそれこそ十人以上、ぞろぞろと現れる。
「よぉ、兄ちゃん。 昼間はよくもやってくれたなぁ?」
「……ああ、あのケチなスリ野郎か。 警察のご厄介になってねーのか」
「何とか逃げ出してきたぜ。 んで、そのお礼参りに来たってワケよ」
ハァ、と溜息を付きつつも白斗はプルルートを守るように立つ。
横目で確認しながら人数、逃走経路、周りに誰かいないか、そして男達の身のこなしなど入念に確認する。
「……身のこなしがなってない、ただのチンピラか。 ただ来ている服はどれもラステイションの服……大方、規制が厳しいラステイションで暮らしにくくなってこっちに流れてきた……ってところか? ネプテューヌも大変だなコリャ」
「………テメェ………ッ!」
呆れ果ててこれ見よがしに悪態を付く。
本気でチンピラを憐れむと同時にネプテューヌに対し同情したくなった。このプラネテューヌという国はとにかく緩い。
故に住みやすい街ではあるのだが、こういった無法者を抱え込みやすいという問題点も有している。後でイストワールと相談しなければ。
「………むむむ~………っ!」
「……ぷ、プルルート……?」
それよりも心配なのは、プルルートのこの様子だ。
明らかに不機嫌、明らかに膨れっ面、明らかに怒っている。
楽しい時間を過ごし、これから白斗お手製の晩御飯が待っているというところでこの空気の読めない連中とのエンカウント、確かに怒りたくもなるだろう。
「何だぁ? チンチクリンが一丁前に睨んできやがって」
「……テメェら。 プルルートがどれだけイイ女か知らねぇのか。 女を見る目がねぇな」
「ふぇっ? は、白くん~!? 恥ずかしいよぉ~!」
唐突に照れるようなことを言ってきたのでさすがのプルルートも怒りを忘れて照れてしまった。
ただ白斗は照れている余裕はない。
―――プルルートを侮辱した男達に、殺意にも近い怒りで滾っていたのだから。
「クソガキが生意気言ってんじゃねぇぞ!! オルァ!!」
「チッ!」
一人が殴りかかってくる。
拳を受け流して後方へと投げ飛ばし、次いで迫り来る男の手を払い除けてそのどてっ腹にボディブロー、更には背後から襲い掛かってくる男には肘鉄一発の後に回し蹴り。
―――しかし、対応しきれるのはそこまで。更に背後からのナイフに、顔を浅く切られてしまう。
それでも直撃は避け、顎を蹴り飛ばして昏倒させた。
「クソッ!! こいつ………!!!」
「ハッ、どうしたどうした! 大の大人がクソガキ相手に薄皮一枚だけか………ッ!!?」
その時。ドゴォンというすさまじい破壊音と衝撃波が辺りに轟いた。
振り返るとそこには―――先日のナス畑の時と同じ。ぬいぐるみを地面に叩きつけてクレーターを生み出しているプルルートの姿があった。
「……ねぇ~? あなたたち~………」
「「「ヒィッ!!?」」」
ズン、ズン、ズン! ぬいぐるみを踏みつけながら、振動で辺りが揺れる。
「……白くんを寄ってたかって……傷つけて……もぉ~……容赦しなくていいよねぇ……?」
あの穏やかさも、柔らかさも、優しさも一切消えた冷たい瞳。
男達はすっかり腰が引け、或いは尻込みし、プルルートに対して逆らう気も、虚勢を張る勇気すらなかった。
「……プルルート。 思いっきりやっちまえ!!」
「あはは~。 さっすが白くん、話が分かる~。 じゃぁ~………!!」
一方のプルルートはもう、我慢の限界だった。
ならば我慢させる必要などない。白斗は笑顔で思い切り―――女神化するように告げる。
とびっきりの笑顔でそれに応えたプルルートはシェアエネルギーをその身に纏い―――。
「……さぁ、貴方達……。 いい声で鳴いて見せなさぁい!!!」
嗜虐心溢れる素敵なお姉様―――アイリスハートへと変貌を遂げるのだった。
「ひっ、ヒイイィィィッ!!? め、女神ィ!!?」
「違うわねぇ……あたしのことは……女神様とお呼びッ!!!」
「プギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
―――防戦一方などとは生温い。それは、調教だった。
一方的で、圧倒的で、絶対的な、調教だった。
容赦なく攻めつつ、それでいてトドメまでには至らないという無駄に高い技術。当然白斗のような危機的シーンは一切存在しない。
やがて夕空に星か少し瞬き始めるころ。
「―――はぁっ!! さっぱりしたわぁ~」
「……それはようござんした」
お肌テカテカのアイリスハート様でございました。
因みに男達は皆、意味不明な言葉を口にしてはアイリスハートにひれ伏している。完璧な調教が施されたらしい。
彼女が犬を追い払うように掌を振ると男達は蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。
「……それにしても白くん、大丈夫かしらぁ? ナイフで切られちゃったけど……」
「あ、ああ、もう血は止まってるし。 絆創膏ならいつもコンパに持たされてるから」
傷口を覗き込まれる白斗。
少々過激な性格をお持ちだが、アイリスハートは女神様だけあって紛れもない美人。それでいて露出も高い。
そんなお方に顔を近づけられて顔を赤くしない男がいようか。誤魔化すようにポケットから絆創膏を取り出すや否や。
「頂きっ。 ……あたしが張ってあげるわ。 騎士様の勲章、ね」
「………っ!」
アイリスハートが絆創膏をひったくり、代わりに張ってあげた。
手袋越しの筈なのに綺麗な感触が頬を伝う。尚更顔が赤くなった。
「さぁ~て、悪いコはみんなオシオキしてあげたしぃ。 あたしはそろそろ……」
「あ、待った。 ……折角だ、プラネタワーに着くまで少し話しないか?」
「え……? この、姿で?」
「おう。 女神化した姿で話する機会って貴重だしな」
「……い、いいけど……」
白斗からの提案に、思わず戸惑ってしまった。
プルルートの知人や友人は皆、この女神化した姿を恐れている節がある。それは最近友達になったネプテューヌも例外ではない。
にも拘わらず、この少年は恐れを抱いていない―――わけではないが、話がしたいといってきたのだ。だから、どう対応したらいいのか一瞬分からなかった。
「言っておくけど白くん、あたしはねぇ……」
「分かってる。 どっちもプルルート、だろ? だったら女神化した姿ともちゃんと話しておかなきゃ、“今日一日プルルートを案内する”って約束、果たせないじゃん」
「……………変わった人」
驚きつつも、アイリスハートは―――いやプルルートは、どこか嬉しそうな顔で応えてくれる。
この姿でだと与太話も出来なかったのだろうか、それはもう嬉しそうに。
その嬉しさのまま、プルルートは腕を絡めて、その豊かな胸を押し当ててきた。
「それじゃぁ……えいっ」
「うおわぁ!? な、何だよ急に腕を絡めてきて!? 当たってる当たってる!!」
「当ててんのよ♪」
「ひゃいいいいいいいいいいい!?」
「うっふふふ! カワイイわねぇ!」
相変わらず女性の扱いは不器用なこの男。
少しサービスしただけでこの慌てようである。そんな彼の反応が面白くて、プルルートはつい意地悪をしたくなってしまう。
「ど、どうしたよ!? 男と手ぇ繋いだこともないんだろ!?」
「今日のお・れ・い。 正直嫌いじゃないでしょぉ?」
「………………………ハイ」
素直に頷いた。男は欲望に素直な生き物である。
そんな彼の反応を一頻り楽しんだらしい、プルルートが腕を離した。離れた腕に、少しだけ冷たさが舞い込む。
「あっははは! ごめんなさぁい、白くんがイイ男だったからつい」
「お前なぁ……。 ……だったらこうしてやらぁ!!」
「え? ひゃっ!?」
しかし、やられてばかりの白斗でもなかった。
からかっているプルルートの隙を突き、その肩を抱き寄せてきた。先程以上の密着と接近にプルルートの顔は赤く染まり、ついつい可愛らしい悲鳴を上げてしまう。
「おやぁ? 女神様もカワイイお声とお顔なさるんですねぇ?」
「…………は、白くんだって赤いじゃない………」
「そ、そりゃ……こんな可愛い女の子が近くにいるんだから当然ってもんでしょーよ」
これでも、白斗にとっては精一杯の仕返しである。
だが効果はテキメンだったようで、アイリスハートの顔はすっかりトマトのように真っ赤っか。高圧的な女神様はどこへやら、白斗の腕の中にすっぽりと納まり、大人しくなっている。
まるでそれこそ女の子のように。
「……も、もうっ! からかうんじゃないの!」
「あでっ! ははは、ゴメンゴメン。 そんじゃ、ここからは適当に駄弁るとしますか」
「そうねぇ。 ……ふふっ」
互いにからかいあって、それが楽しくて、嬉しくて。
プルルートはついついはしゃいでしまう。それは親友か、兄妹なのか、はたまた違う関係性のようにも見えた。
「そういやプルルートって苦手なモンとかあるのか? ナスは平気っぽいけど」
「何よぉ、急に」
「いやぁ、慌てふためくアイリスハート様が見たいな~とかこれっぽっちも思っておりません」
「……ふふ、面白いじゃない。 でぇもぉ……そんな白くんをあたしのモノにできたら……そっちの方が面白そうよねぇ?」
「……やってみるかい?」
「「…………ぷっ、あはははっ!」」
出会って間もないのに、しかも身分的には女神様と一般人風情という格差があるのに。
まるで親友のように二人で楽しく笑いあう。
サディズム溢れるお顔も素敵だが、屈託のない話で笑っているこの楽しそうな顔もまた美しかった。
「んじゃ逆に、好きなモンとかあるか? 何だったらリクエスト承るけど」
「そぉねぇ……それじゃ、あたしの好きそうなもの作って欲しいわぁ!」
「言ってくれるじゃねーの……面白ぇ、受けて立つ!!」
「期待してるわよぉ。 あ、デザートもよろしく~」
「はいはい」
―――その後も一人の女神様と少年は、プラネタワーに帰宅するまで話し続けた。
お互いの趣味趣向から過去、そして他愛もない話まで。
一言一句漏らさず、それでいて余すことなく楽しんだ。
「あ! 二人ともお帰り……ってうおわぁ!? なんでぷるるん女神化しちゃってるの!?」
帰ってきた二人を早速出迎えたのはネプテューヌ。
なのだが女神化したプルルートの姿に驚いている。無理もないといえば無理もないが、二人は何でも無かったかのように笑顔だ。
「ただいま。 いいじゃないの別に。 ねぇ、白くん」
「だよなー。 さて、早速プルルートのためにオムライス作りますか!」
「あらぁ、ストライクゾーン心得ているじゃなぁい」
「因みにふわっふわでとろっとろの奴な」
「ふふ……楽しみねぇ。 白くんのとろとろしたモノがあたしにぃ……♪」
「卑猥な言い方にするのやめてくれませんかねぇ!?」
前々から宣言していた通り、今日の夕食当番である白斗が帰宅するなり早速キッチンへと上がり込む。
その間もプルルートは女神化を解かず、それでいて二人で楽しそうな会話を繰り広げるのだった。
そんな誰もが想像しえなかった光景に、ネプテューヌ達は唖然となる。
「お、お姉ちゃん……あれ何? どういうこと……!?」
「わ、分かんない……なんで女神化したぷるるんと……しかも、あんな仲がよさそうに……!?」
「……実に深きは白斗さんの業……でしょうか」
ネプギアやイストワールが加わっても、その謎は解けなかった。
ただ、それは所謂「二人だけの秘密」。聞き出そうとしても二人揃って「秘密~♪」とだけ、しかも楽しそうに言いながらも決して教えてはくれなかった。
けれども話してみると案外全員がアイリスハートと楽しく会話出来たという。
―――因みにその夜、白斗が作ってくれたオムライスは最高の出来栄えであり、その美味しさにネプテューヌ達は勿論、プルルートも笑顔になるのだった。
☆
―――次の日の朝。
「ふぁあぁ~……おはよ~……」
「あ、おはよーぷるるん! って今日は自分から起きたんだね」
「うん~。 いつも白くんに起こしてもらってばかりじゃ悪いから~」
「って言ってももう10時なんだけどね……」
寧ろ昼食が近くなってきた時間帯、プルルートはようやく目を覚ました。
しかしながら一人だといつまでも寝てしまうような彼女が、自分自身で起きてきたことは凄まじい進歩と言えよう。
「おはよう、プルルート。 朝飯の用意できてるぜ」
「わ~い。 ありがと白くん~」
そしてキッチンにはやはり朝食の準備をしてくれる白斗の姿が。
プルルートもすっかり彼の事を気に入ったらしく、白斗の食事に、そして白斗の姿に笑顔を向けてくれる。
「……ん? また新しいぬいぐるみ引っ提げてんなー」
「あ、ホントだ。 ぷるるん、今度は誰のを作ったの?」
このプルルートと言う少女は見た目に反して相当器用で趣味は裁縫。
親しくなった人物のぬいぐるみを作っては、こうして連れているのだという。
待ってましたと言わんばかりに満面の笑顔で見せたそれは。
「うん! あたしの、今までで一番の自信作~! 白くんぬいぐるみで~す!」
―――デフォルメされた白斗の人形。
しかしそれを抱えるプルルートは、とても幸せそうだった。
因みにこの後、白斗のぬいぐるみが大量発注されたとかなんとか。
サブタイの元ネタ「世界ウルルン滞在記」
お待たせしました。令和初投稿記念!ということで今回はプルルート主役のお話でした。
可愛いですよね~。あの通常時の緩さと女神化した時のギャップを意識して書きました。
でもね、こういったドSな人ほど攻められると弱いはずなんですよ……! で、そんな姿がまた可愛いんですよ……!(ぇ
白斗とプルルートの関係は、そんな仲良しこよしを目指していければと思っています。
さて、次回のお話はプラネテューヌを離れてひと騒動!
最近女神視点のお話が続いていたので次回はそうじゃない子に焦点を当てたお話にしようかと思っています。お楽しみに!
元号が令和になってもこのシリーズはいつも通りゆるーくやっていきますので今後ともよろしくお願いします!
感想ご意見お待ちしております!