恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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第四十六話 女神様だ~れだっ!!

―――多くの棒が箱の中に突っ込まれる。

先に描かれているのは多くの数字。しかし一本だけ王冠マークが描かれた棒が存在する。

絶対の象徴たるこの棒を持つ者が、数字と言う名の刻印を刻まれた者に命令を下す権限を手に入れる。

それを狙うは棒と同じ数だけの少女達と一人の少年。その中で王冠が描かれた棒を手にできるのは一人だけ。

この世界では阿鼻叫喚のその遊戯の名を「女神様ゲーム」と言い―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――またの名を、「王様ゲーム」とも言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――始まりは、とあるプラネテューヌの一室からだった。

 

 

「白斗~! ゲームしよー!!」

 

「この辺にオススメの喫茶店があるらしいの! 一緒に行きましょ、白斗!」

 

「白斗……私と一緒に本屋巡りしましょう?」

 

「白ちゃん! 私と四女神オンラインですわよね!!」

 

「白く~ん。 お昼寝しようよ~」

 

(えぇい、聖徳太子ぃ……!!)

 

 

今日も今日とて、白斗は女神様に囲まれていた。

この国の女神であるネプテューヌは勿論のこと、白斗目当てで来訪してくるノワール、ブラン、ベールに加えて最近はプルルートも白斗の事が気になっているのか積極的に誘ってくる。

それだけならばまだマシ(?)だったのだが、今日は更に来訪者が舞い込む日でもあり。

 

 

「お、お邪魔します!! は、ははは……白斗君いらっしゃいますかっ!?」

 

「おお、5pb.もいらっしゃい」

 

 

自棄に緊張した様子で5pb.が現れた。

ただでさえ女神達には手を焼いている状態だったが、それでも5pb.の登場に笑顔を見せる。

リーンボックスの大人気アイドルとして多忙な中、わざわざ会いに来てくれた彼女の心遣いが純粋に嬉しいのだ。

一方の5pb.は好意を寄せる白斗の家に上がり込んだことで緊張でガタガタ震えていた。

 

 

「ヨメの匂いを嗅ぎつけてREDちゃん参上なのだー!!」

 

「ふっふっふ……狂気の魔術師たるこのMAGES.が、混沌を齎しにやってきたぞ!」

 

「ということでブロッコリーも参戦だにゅ。 感謝するといいにゅ」

 

「面倒組が来てしまったか(ああ、皆も良く来たな)」

 

「本音と建前が逆にゅ。 5pb.だけ依怙贔屓するなにゅ」

 

「ハッ!? しまった、ついウッカリ!?」

 

 

それだに留まらず、REDにブロッコリー、MAGES.という5pb.の仲間にして一癖も二癖もある少女達がぞろぞろと上がり込んできた。

彼女達は5pb.と違って白斗に男女としての好意は抱いていないものの、こうして遊びに来るくらいの中だ。

―――女神達としては当然、不満そうに頬を膨らませてしまう。

 

 

「むむむ……白斗ってばまーた女の子を増やしちゃって……」

 

「けれども追い返すような真似もしたくないし……」

 

「……仕方ないわ。 これも白斗に惚れてしまった者の運命ね」

 

「ですが、愚痴くらいは言わせてもらいたいですわね……はぁ」

 

 

恋に恋する四女神達は揃いも揃って溜息を付く。

白斗と過ごした日々が長くなるにつれ、白斗に寄り添う少女達が増え、その度に白斗への想いも募る。

何とも言えないジレンマに陥っていると、少し困った顔をしながらプルルートが話しかけてきた。

 

 

「まぁまぁ~。 ここはいっその事、皆と楽しく遊ぼうよ~」

 

「……だね。 ぷるるんの言う通り!」

 

「ウジウジしてても仕方ありませんしね。 5pb.ちゃんもそれでよろしくて?」

 

「はっ、はい! ボクも白斗君と過ごせるならそれで……」

 

 

遊びに来た5pb.からの同意も得て皆で遊ぶことになった。

ただ、この場に居る人数は白斗を含めてもなんと10人。これだけの人数と一度に遊べる方法などそうあるものではない。

 

 

「だったらブロッコリーにいい方法があるにゅ」

 

「おーぷち子! どんな遊びするのー?」

 

「ぷち子じゃないにゅ! ブロッコリーだにゅ! ……まぁ、恋多き乙女がたくさんいるならこれがいいにゅ」

 

 

そう言った彼女は小さな背中に手を回した。

やがて取り出したのは、明らかに横幅が彼女以上もある大きさの箱。そしてそこに突っ込まれた、この場の人数と同じ数の棒。

いち早く反応したのは知識豊富な白の女神、ブランであった。

 

 

「これって女神様ゲーム? 確かに面白そうね」

 

(女神様……ああ、なるほど。 俺の世界で言う王様ゲームね)

 

 

名前こそ違えど、すぐに白斗は要諦を理解した。

女の子も、男の子も楽しめる、大人数には打って付けのゲームだ。

 

 

「これなら場所も取らないし、皆で楽しめるわね。 私はいいわよ」

 

「REDちゃんも賛成なのだー!」

 

「ふむ……まぁ、こういった戯れに興じるのも悪くなかろう」

 

「俺もいいぜ。 実は興味あったんだよな~」

 

 

残りの面々からも同意が取れた。

こうなっては白斗も断る理由がないし、皆と楽しく遊びたいと思っていたところだ。何よりも青春を過ごしたことのない白斗にとっては初体験のゲーム。

実はかなり楽しみだったりする。

 

 

「あ、お姉ちゃん達……それ女神様ゲーム!? 私にもやらせてください!」

 

「ぴぃもまぜてーっ!」

 

「あ~。 ギアちゃんにピーシェちゃん~」

 

「おおう、このアダルティなゲームに迷い込む素直な子とちびっ子……果たして混ぜていいものか……」

 

「混ぜるな、危険」

 

 

そこへ、騒ぎを駆けつけてきたのかネプギアとピーシェも入ってきた。

特にネプギアの食らいつきが半端なものではなく、それに乗じて好奇心旺盛なピーシェまでもが乗っかっているというわけだ。

白斗とネプテューヌも難色を示すが、かと言ってここで拒み続けるほど意地悪でもない。

 

 

「まぁ、変な命令を出さなきゃいいだろう。 皆、節度を持ってな」

 

『『『はーい』』』

 

 

凄く、いい返事でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――だが白斗は後悔する。この濃ゆい面子相手に「変な命令を自重する」ということなど、到底無理であったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁ皆、準備いい~?」

 

『『『おう!』』』

 

 

改めてピーシェにも説明を終えて、諸々の準備が終わる。

準備と言っても遊びやすいよう少し広めの部屋に移ったのと、お菓子やジュース、その他罰ゲーム用のグッズなどを揃えたくらいである。

 

 

「それじゃ記念すべき一発目! せーのっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

ネプテューヌの掛け声に合わせて全員が棒に手を伸ばして引き上げる。

ドキドキと高鳴る鼓動が見守る中、栄えある一番槍を手にしたのは。

 

 

「ふふ、私ね♪」

 

「えぇ!? ノワールぅ!? そこは圧倒的主人公である私でしょー!?」

 

 

王冠マークの付いた棒を掲げたのはノワールだった。

ぶーぶーと文句を垂れるネプテューヌ達であったが、常識人のノワールならば最初のジャブには丁度いいと白斗は納得していた。

はてさて、気になる最初の命令は。

 

 

「まぁ、最初から過激になるのもあれだしね。 4番が8番のいい所を褒める、でどうかしら?」

 

 

ノワールらしい、無難な命令である。

これくらいならば大して反対意見が上がることも無い。後は気になる4番と8番なのだが。

 

 

「えーと、ぴぃのこれ……はちばん?」

 

「そうだよ~。 で、4番はあたしだね~」

 

 

プルルートとピーシェという、とてもほっこりする組み合わせだった。

 

 

「ピーシェちゃんのいい所はね~。 明るくて~、元気いっぱいな所だよ~」

 

「ぜんぶ、ぴぃのいいところ! わーい!」

 

『『『ほっこり……』』』

 

 

とても落ち着いてしまった面々だった。

 

 

「掴みとしては上々だな。 んじゃ次行くか」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

落ち着いた雰囲気で始まった女神様ゲーム。白斗の合図とともにまた棒が一斉に引かれる。

 

 

「ふっふっふ、ブロッコリーだにゅ」

 

「もうブロッコリー来ちゃうの!?」

 

 

ゲマに乗った幼じょ……もとい少女、ブロッコリー。

可愛らしい見た目とは裏腹にかなりの毒を持つ少女である。そんな少女が、周囲を見つめてニヤリとほくそ笑む。

 

 

「……ならこうするにゅ。 6番は2番を膝に乗せて1分間抱きかかえてあげるにゅ」

 

「あれ? ブロッコリーにしては比較的まともだ……」

 

「REDちゃんビックリ……ブロッコリーだからもっとえげつないのを出すものかと」

 

「お前達がブロッコリーのことをどう思っているのか、一度じっくり話し合う必要があるにゅ」

 

 

彼女をよく知る5pb.やREDから上がった意外そうな声に、不服全開のブロッコリーであった。

それはさておき肝心の2番と6番は。

 

 

「あらあら、私が6番ですわね♪ さぁ~誰を膝に乗せて差し上げましょうか♪」

 

「ベール姉さん張り切ってんな~。 ……ってどうしたブラン? そんなに顔ブルブル、汗ダラダラ、膝ガクガクさせて」

 

「………………………………」

 

「はーい、ブランが2番ね~。 そぉ~ら乗った乗ったぁ~!」

 

「や、やめろおおおおおおおおおおお!!! 離しやがれぇええええええ!!!」

 

 

今度はベールとブランが該当者らしい。

体型にコンプレックスを抱えるブランにとって、まさに理想の女性に体をしているベールは色んな意味で不俱戴天の敵なのだ。

しかし駄々を捏ねて暴れるその姿は、まるで反抗期真っただ中の妹。一方のベールはそれを甘やかす姉のようだった。

 

 

「捕まえましたわっ! ん~、ブランも抱き心地いいですわねぇ~」

 

(……なんだこの二の腕は……なんだこの太ももは……何なんだよこの胸はァ!!)

 

「こうしてみるとブランも可愛いですわね~♪ サイズもお手頃ですし」

 

(サイズ言いやがったよコンチクショウがあああああああああああああああああ!!!)

 

 

自分を包み込む腕の柔らかさに、自分を乗せる太ももの弾力に、そして自分の頭に乗っかる胸のボリュームに。

自分に女として足りないもの全てを突きつけられ、ブランはまさに殺意の波動に目覚めそうになっていた。

 

 

「……はい、1分経過にゅ。 お疲れ様だにゅ」

 

「次ダァ……次デ、アノ駄乳女神ヲ血祭リニアゲテヤルゥゥゥウウウ!!!」

 

「ピー子? あんな女の子になっちゃダメだからねー?」

 

「わかった! ぴぃ、ぶらんみたいにならないっ!」

 

 

悲喜こもごもな一幕であった。

 

 

「それじゃいくよー!! せーのっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

今度はピーシェの掛け声に合わせて棒が取られた。

徐々に殺気が混じるこの空気、女神様の称号を手にしたのは―――。

 

 

「おっしゃ! 俺だな!」

 

「えぇー!? 今度は白斗ぉー!? ってか男が女神様なんておかしいよーっ!!」

 

「んな身も蓋もないことを言われましても……」

 

 

ようやく白斗が王様……ではなく女神様となった。

相変わらず自分に番が回ってこないネプテューヌは頬を膨らませているが、白斗にとっては初めて命令を下せる権利を手に入れたのだ。大人げなくても譲るつもりは無い。

―――ただ、先程の一悶着で濁ったこの空気はリフレッシュもしたかった。

 

 

「………そうだな………」

 

 

白斗は静かに周りを見て、そして命令を下す。

 

 

「……10番は3番にマッサージ。 思いっきりやってくれ」

 

「あら、3番……また私ですの? それで10番は?」

 

「“また”私よ……ベール……。 ふっ、フフフフフ…………」

 

「   」

 

 

ベールは、絶句した。

無理もない。先程まで人形のようにして遊んでいたブランが10番。ということは、あの殺気の籠ったブランから、“思いっきり”のマッサージを受ける羽目に―――。

 

 

「ち、ちょっと白ちゃん!? こんなに絶対におかしいですわよ!!」

 

「こんなのぜったいおかしいよ!!」

 

「ピー子、キミは絶対にそれ真似しちゃダメだからね」

 

 

この後の展開が容易に想像できるだけに抗議の声を上げるベール。

そして彼女の真似をしてピーシェ(CV;悠木碧)も台詞を口にした。やたら成長した声色で。

余りにも危なく感じたのか、真面目な顔つきと声色でネプテューヌが静止に掛かる。けれども、こちらは止めない。

 

 

「お、およしなさいブラン!!」

 

「女神様の命令は絶対よ……観念なさいベール……クッ、ククク……」

 

「白ちゃぁん!? 貴方、どうやって私たちの番号把握しましたの!?」

 

「イヤー、偶然ッテ恐ロシイネー」

 

「絶対嘘ですわああああああぁぁぁぁっ!! ちょ、ブラン待っ……きゃぁーっ!!?」

 

 

必死の弁明も糾弾も空しいことに白斗とブランには届かなかった。

そうこうしているうちにブランががっしりとベールの肩を掴んで床へと寝かせた。小柄とは言え、身の丈以上のハンマーを軽々と扱う女神だ。

腕力で叶うはずもなく、組み伏せられたベールの背後にずっしりと乗っかる白の女神。

 

 

「ほらほら……ここが、いいんでしょぉっ!?」

 

「あっ!? ひゃ……そ、そこ………あぁん!?」

 

「お客さん、凝ってますねェ……。 そりゃそうかァ……こんな無駄な脂肪ぶらさげてりゃぁ嫌でも凝るわなぁ!?」

 

「あ痛たたたたたたたっ!? こ、これマッサージじゃなくて拷も……ンンンンンン!!?」

 

「嫌でも……!? 嫌でもか!? 私に対する当てつけかテメェエエエエエエ!!!!!」

 

「か、完全に逆ギレ………ああああああぁぁあアアァァアアアアアアアア!!?」

 

 

―――ある晴れたプラネテューヌの午後。緑の女神の悲鳴が天高くまで響き渡ったという。

 

 

「ふぅ……! スッキリしたぁ!!」

 

「……それはようござんした」

 

 

数分後、とてもお肌をつやつやさせたブラン様がそこにいました。

 

 

「えぇい!! 次!! 次で他の人にも同じ目に遭ってもらいますわよ!!」

 

「うおわ!? 姉さん元気!?」

 

「激しくしたけれども命令通りマッサージだもの。 とても効くわ」

 

「な、なるほどね……それじゃ次行くぞー! せーのっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

ただ私怨だけではない、しっかりとやるべきことは果たす辺りさすがはブランと言ったところか。

けれども問題はそこではなく、ここからは少しバイオレンスな命令もありということだ。

出来るだけ痛い目を見ませんようにと少し祈りを込めながら棒を引くと。

 

 

「やったぁ! REDちゃんなのだー!!」

 

「ほう、ここでREDとは……。 どんな混沌の指令を下すというのか……見ものだな」

 

 

次に追うさまを引き当てたのは真っ赤な意匠と小さな体、それでいて出るところは出ている少女ことREDだった。

余り交流がないだけにどんな命令をするのか、興味が湧いてくる。

 

 

「勿論REDちゃんと言ったらコレ! 9番のヨメ! REDちゃんに胸を揉ませるのだー!!」

 

「俺か……仕方ねぇな。 RED、俺の胸で良ければ幾らでも揉みしだくが」

 

「男のはいらないのだー!!!」

 

「ダァッホォゥ!!?」

 

「ああ、白斗君ーっ!!?」

 

 

この機会に託けて女の子とスキンシップを計ろうとしたらしい、だが無情にも9番を引き当てたのは白斗だった。

引き締まったその胸を曝け出そうとした瞬間、怒りのREDちゃんキックが炸裂。白斗は床に沈んだ。

慌てて5pb.とネプテューヌが介抱する。

 

 

「白斗、大丈夫?」

 

「お、おおう……悪ふざけが過ぎたかな……ゲホッ」

 

「RED。 やりすぎだよ?」

 

「う……ご、ゴメン……」

 

「いや、こっちこそ悪かった。 だからもういいよ」

 

 

めっ、と言いながら5pb.が叱るといつもの天真爛漫さは鳴りを潜め、しゅんと頭を下げる。

けれども白斗は優しくそれを許しながら頭を撫でた。

まるで年下の妹をあやすが如く。というよりも、この手の子の宥め方はピーシェやロム、ラムで習得済みなのである。

 

 

「……うん! ならREDちゃんにお菓子をあーんすることで手打ちにするのだ!」

 

「それは光栄の至り。 はい、あーん」

 

「あーん……おお、これは中々の居心地! 白斗はヨメに出来ないけど、REDちゃんのお兄ちゃん扱いでも悪く―――」

 

「わ る い か ら ね ?」

 

「ひ、ヒイイィィィッ!? ふぁ、5pb.が怖いのだ――――!!!」

 

 

どうやら今の流れで兄的な扱いへと落ち着いたらしい。

ただ、これ以上ライバルを増やしたくないとばかり5pb.が迫力を伴って警告する。温厚で人見知り、しかし優しい彼女からは想像できない恐ろしさを醸し出していた。

恐怖の余りREDは白斗に抱き着き、白斗は頭を撫でながら必死に宥める。それが尚更5pb.の―――いや、他の乙女たちの嫉妬を煽るのだった。

 

 

「……はぁ、このままでは埒が明かん。 続けるぞ、せーのっ!!」

 

『『『………女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

MAGES.が空気を切り替えて続きを促す。こんな桃色空気に浸るためにも今度こそ女神様にならねばと乙女たちが手を伸ばした。

次に女神様の権利を手にしたのは。

 

 

「あーっ! ぴぃだー!!」

 

「わ~。 よかったね~、ピーシェちゃん~」

 

 

ピーシェになった。

まだ女神様になれていない面々からは悔しそうな唸り声が上がるが、さすがにピーシェほどの幼い子供相手にいきり立つほど愚かでも無かった。

 

 

「んーとね……よんばんはね、ぴぃをなでてー!」

 

「ピー子、手が3になってるよ。 4はこっち!」

 

「おぉー」

 

 

堂々と突き出されたのは三本の指。しかし4と宣言しておきながらそうやってしまうのはまだ幼いピーシェらしい。

苦笑しつつもネプテューヌが優しくピーシェの指を四本立てらせた。改めて四番は誰なのかと言うと。

 

 

「あ、私だね」

 

「ネプギアか……思えばピーシェとネプギアの絡みって少ないよな」

 

「これでもちゃんと遊んであげてるんだよ? ピーシェちゃん、今日もいい子だね」

 

「うんっ! ぴぃ、いいこ!」

 

 

凄く良い子の代表であるネプギアがちびっ子代表のピーシェを撫でてあげるという、とても平和な一場面だった。

 

 

「よーし、清涼剤入ったところで次だ次!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

もう何度目かになるかも分からないこの掛け声。手にしたのは―――。

 

 

「あ、ボクだね! んー、何にしようかなー」

 

「ねーぷー!? 今度は5pb.ちゃん……いい加減私にも命令させてよー!!」

 

 

今度はリーンボックスの歌姫が女神様の権限を手にした。

喚くネプテューヌを他所に5pb.はあれこれ悩んでいる。

 

 

「……決めた! 5番と7番はこの衣装を来てボクのデビュー曲を歌ってもらおうかな♪」

 

 

可愛らしくウィンクをしながら取り出したは彼女のステージ用の衣装だった。

赤と青の、フリルをたっぷりと使ったふわふわ感溢れる可愛らしい衣装だ。

一体どこから取り出したのだろうか、などと言う野暮なツッコミは誰もしなかった。

 

 

「ふふ、アイドルの5pb.ちゃんらしいですわね。 では5番と7番の方は―――」

 

「すまんが俺はこれにして失礼いたすッ!!」

 

「わ、私も急用を思い出した! 狂気の魔術師に余暇など許されないッ!!」

 

「「逃がすかぁっ!!」」

 

「「ぐぇっ!!」」

 

 

白斗とMAGES.が逃げようとした。どうやら二人が該当者だったらしい。

だが咄嗟にネプテューヌとREDが組み伏せ、二人を捕らえた。

 

 

「は、離せっ!! そんなフリフリした衣装、私に似合うワケがないだろう!!」

 

「えー? MAGES.だったらいいセン行くと思うんだけどなー」

 

「待て、考え直せ5pb.! 俺男なんですけど!?」

 

「大丈夫!! 白斗君は素晴らしいって前の事件(※23話)で証明されてるから!!」

 

「「いやだああああああああああああああああああ!!!」」

 

 

そのままネプテューヌとREDによって別室へと引きずり込まれてしまった。

ドスンドスンと必死に抵抗を試みる音が聞こえるも、バコッと鈍い音が二つ響いてからは静かになる。

やがておずおずと開けられた扉から出た二人の美少女―――否、美少女と美女装少年がその姿を現した。

 

 

「う、うぅ……何なのだこれは……! 恥ずかしいィ……!!」

 

「何言ってるのMAGES.! 超かわいい!!」

 

「へぇ……いいじゃない。 どこかのお姫様かと思ったわ」

 

「~~~っ!!」

 

 

フリルたっぷりの衣装に身を包んだMAGES.。

恥じらうその姿が逆に可憐さを引き立たせており、冷静な女性から一転、可愛らしい女の子へと早変わりだ。

これには従姉である5pb.もご満悦で、ブランも率直な感想を繰り出すものだからMAGES.の羞恥はMAXだ。

 

 

―――そして、白斗はと言えば。

 

 

「きゃーっ!! 白斗可愛い~~~!!」

 

「また女装白ちゃんに出会えるなんて!! もういっそ白ちゃんが妹でもいいですわ!!」

 

「白くん可愛いね~。 衣装だったらあたしがいつでも作ってあげるからね~」

 

「これはハイレベルだにゅ。 白斗、その手のお店へ行ってしこたま儲けるにゅ」

 

 

女性陣が大盛り上がりするほどの可愛らしさだった。

その中でも特にノワールにベール、プルルート、ブロッコリーが色めき立って賞賛の嵐を送る。あっという間にパパラッチの連続。

カメラのフラッシュが鳴りやまない中、白斗は。

 

 

 

(…………死のう…………)

 

 

 

物凄く、生気を失った顔をしていた。

その後、二人して半ば自棄になって歌った一曲はそれはそれで盛り上がるものだったという。

 

 

「いやぁ、良いものが見れましたなー。 盛り上がったところで次行ってみよ-!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

ある者は期待に、ある者(約二名)は恨みを込めて運命を告げる棒を引き抜く。

固唾を飲んで見守る中、次なる女神様は。

 

 

「あ、私ですね」

 

 

ネプギアの手に渡った。

何度も言うようにネプギアはとても真面目で、とても素直で、とてもいい子だ。この面子の中で一番の常識人と言ってもいいかもしれない。

そんな彼女が過激な要求をしてくるなど到底―――。

 

 

「じ、じゃぁ……9番の人!  私をぎゅーって抱きしめてくださいっ!!」

 

「ね、ネプギアが割と過激なことを!?」

 

 

―――考えなければならなかったらしい。

その場の勢いに任せたようなこの命令。大好きな姉のネプテューヌならいざ知らず、万が一にもベールを引き当てようものなら一気に地獄絵図と化す。

一か八かとも言えるこの賭け、その結果は。

 

 

「ま、また俺かよ!?」

 

「やったー!! お兄ちゃんキター!!!」

 

「「「「「ッッッ!!?」」」」」

 

 

四女神が、そして5pb.が戦慄した。

彼に恋する者として、抱きしめられるなど決して見逃したくないイベント。

しかもこんな衆人環視の中でそれを見せつけられるのである。対する白斗は真っ赤に染まった頬を掻きながらネプギアに近づく。

 

 

「だ、抱きしめるだけでいいんだよな?」

 

「うん! でも、女の子が喜ぶような抱きしめ方をして欲しいな?」

 

「何じゃい喜ぶような抱きしめ方って……ええい、ままよ!!」

 

 

ぶっちゃけた話、落ち込んでいる少女を元気づけようと抱きしめたことは何度もある。

そんな切羽詰まった状況でもなく、女の子を抱きしめるというのは白斗にとっても気まずい話。

だが女神様の命令は絶対。特にシチュエーションなども想定せず、白斗はただひたすらネプギアを抱きしめた。

 

 

「あ……えへへ、お兄ちゃんあったかい……。 それに、何だか安心する……」

 

「そ、そうか? ところでネプギアさん、これいつまで続けるのでしょうか?」

 

「……ふぇ? え~と……5時間くらい?」

 

「長いわ!!」

 

「ネープーギーアー!! 独占禁止法違反により3000年以下の懲役、または5億円以下の罰金だよ!!」

 

「重いわ!!」

 

 

どうやらネプギアは白斗の心地よさにすっかり虜にされてしまったらしい。

色々骨抜きにされてしまった彼女の反応は遅く、それでいて逆に白斗を抱きしめては離さないと力だけは強い。

当然看過できるネプテューヌではなく、白斗のツッコミも無視して無理矢理引き剥がした。

 

 

「……そうなんだ……。 そんなウフフなイベントも解禁なんだね……だったら、ボクだって遠慮しないから!」

 

「お、おおう……5pb.が謎のやる気を……。 従妹としては不安だぞ……」

 

「行くよぉっ!! せぇーのぉーっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

目の前でこんな羨ましいイベントを見せられて平然とできる恋する乙女がいるだろうか、いやいない。

憤りに身を任せた彼女の声に動かされ、全員が棒に手を伸ばした。

 

 

「うっふふふ! 私ですわ!」

 

「げ! 今度はベールか……!」

 

「げ、とはご挨拶ですわねノワール。 さて、命令ですけれど……」

 

 

じっ、と真剣な眼差しで戦況を確認する。

勿論狙うは白斗とイチャイチャできるような命令だ。だが参加人数はベールを除いても10人以上。ピンポイントで白斗を当てられる確率は、10%も無い。

ならば色恋に絡まず、自分に奉仕させるような命令の方がリスクが少なく、リターンも大きい。

何よりお子様であるピーシェもいるのだ。彼女の教育に悪影響を及ぼすような命令も出来ない。

 

 

「……でしたら、11番の方!! 思い切り私に甘えてくださいな!!」

 

「あ、ぴぃだー!!」

 

「   」

 

 

ベールは、また絶句した。ピーシェだったからだ。

確かに可愛らしい少女だが、ピーシェが普段どのようにネプテューヌにじゃれついているのかを想像すれば、彼女の身震いの訳が分かるだろう。

対するネプテューヌは、とてもいい笑顔を浮かべていた。「頑張ってネ☆」と目で語っている。

 

 

「それじゃーべるべる! いっくよー!!」

 

「ぴ、ピーシェちゃん!? ち、ちょっとお待ち……!!!」

 

「ぴぃ……ぱーんちっ!!!」

 

「ゴフゥッ!!?」

 

 

決して女神としても、淑女としても出してはいけないダメージボイスだった。

あの胸という弾力を以てしてもピーシェの一撃を受け止めることは出来ず、ベールは床に沈んだ。

カンカンカーンとゴングの音が心地よく鳴り響き、ピーシェがチャンピオンの如く両手を掲げる。

 

 

「いい右ね。 世界を狙えるわ」

 

「ベール……キミの犠牲は、無駄にしないから……!」

 

「し、しんで……おり、ません……わ……ゲフッ……!!」

 

 

ブランとネプテューヌが虚空に向かって敬礼する。

が、ベールはまだ息絶えておらず辛うじて床を這いずり回っていた。何とも言えない光景である。

 

 

「くー……すー……」

 

「あれ? ピー子寝ちゃった?」

 

「みたいだね~。 あたし、お布団に運んでくる~」

 

 

一方のピーシェは遊び疲れて眠ってしまったらしい。

仕方がないと言わんばかりにプルルートは彼女を優しく背負い、ピーシェの寝室まで運んで寝かせた。

 

 

「お待たせ~。 それじゃ、再開しよ~」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

プルルートが戻ってくるなり、ゲーム再開。

だがここからはちびっ子であったピーシェが不参加となる。つまり、公序良俗に遠慮する必要も無くなるのだ。

そんな不安が過る中、女神様の座を射止めたのは。

 

 

「またまたブロッコリーだにゅ」

 

「んもーっ!! いい加減主人公たる私だって命令したいのにー!!」

 

「ネプテューヌ……私だってまだなんだから我儘言わないで……」

 

 

と、言いつつもブランも青筋が浮かんでいる。相当ストレスが溜まっているらしい。

 

 

「そうだにゅ……2番が」

 

「ん?」

 

(白斗? 白斗が2番なのかな?)

 

 

白斗の眉がピクリと反応する。それに気づいたネプテューヌだったが。

 

 

「4番の」

 

「ねぷっ!?」

 

 

ネプテューヌが反応した。どうやら4番らしい。

 

 

「ほっぺにチューするにゅ」

 

「主人公補生キタァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

ネプテューヌは、ガッツポーズをとった。心の底から吠えた。

何せ、愛しの人からキスをして貰えるのだから興奮するなと言う方が無理だ。ブランらが今にも血涙しそうな目でこちらを睨んでいるが気にしない。

 

 

「は、白斗……白斗は、2番だよね……?」

 

「……ネプテューヌ……」

 

 

そういって、彼が見せた棒は―――3番だった。

 

 

「……へ? サンバン……? じ、じゃぁ2番は……?」

 

 

あの嬉しそうな空気が一気に冷え、汗が滝のように溢れ出る。

その時、つんつんとネプテューヌの肩を突く感触が。恐る恐る振り返ると、そこには2番の棒を手にしていた少女―――ノワールが。

 

 

「イラッシャイ、ネプテューヌ」

 

「ねぇ~ぷぅ~!!?」

 

 

―――因みに、これはこれで興奮する状況でした。 by白斗

 

 

「う、うぅ……私の純潔がノワールにぃ……」

 

「誤解を招くようなこと言わないでくれる!? もうっ、次行くわよ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

もう何度目になるかも分からないこの掛け声。次なる女神様は。

 

 

「ふっふっふ……やっと私の春が来たわね……」

 

「う、うわー……ブラン来ちゃったー……。 そこはかとなく嫌な予感しかしないなぁ……」

 

 

満を持して登場、ブランだった。

今まで女神の権利を手にいられなかった分、黒いオーラが増しており空気が歪んでいる。

爆発したら手が付けられない女神ホワイトハート様は、一体何をお下知なさるのか。

 

 

「そうね……7番は4番の恥ずかしいエピソードを一つ暴露してもらおうかしらね。 ふっふっふ」

 

「うぇっ!? 4番……ぼ、ボク!!?」

 

(5pb.か、メチャクチャ興味あるぞ……)

 

 

どうやら暴露されるのはアイドルたる5pb.らしい。

普段の彼女はライブ中や番組に出演する際は(周りが見知っている人物であれば)明るいごく普通のアイドルと言った感じだが、裏では極度の人見知りである。

だからこそ努力を重ね、歌姫とまで称されるようになった努力の天才に果たしてどんなエピソードがあるのやら。

 

 

「そして従妹たる私が7番か……クックック、何を暴露してやろうかなぁ?」

 

「うぇえええええっ!!? め、MAGES.やめてー!! 白斗君もいるんだよー!!?」

 

「だが断る!! お前には恥ずかしい命令を下されたことだしな!!」

 

「そ、そんなぁー!!?」

 

 

先程の仕返しと言わんばかりに張り切っているMAGES.。

5pb.を知る者として、何より従妹として彼女の傍に誰よりも長くいた人物といっても過言ではない。つまりそれだけ彼女に関するあれこれを知っているということだ。

そんな彼女から齎される情報に、誰もが目を輝かせている。やはり女の子はゴシップが大好きらしい。

 

 

「フッ……5pb.はその昔、歯ギターをしていたことがあったのだ」

 

「グフッ!!」

 

 

吐血しかねない勢いと声で5pb.が倒れた。

表では明るく、裏では人見知りとして暗い彼女が歯ギターというこれまたクレイジーな趣味をしていた事実に場の盛り上がりは最高潮だ。

 

 

「歯ギター!? 5pb.ちゃんが!?」

 

「動画もあるぞ。 これだ」

 

「ギャァッ!!?」

 

 

とうとう気絶してしまった。無理もない、黒歴史そのものが動画として皆の目の前で晒されたのだから。

食い入るようにして皆が見つめる動画、そこには歯ギターを華麗にこなす5pb.がいた。普段の大人しさが嘘のようなワイルドさであるが、これはこれで素敵である。

 

 

「……ふぅ、良いものを見たわね。 私は満足よ。 ほくほく」

 

「……絶対、恥かかせてあげますね……ふ、負負負……」

 

「ふぁ、5pb.が黒くなっちゃったのだー……。 と、とにかく続きしよ!! せーのっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

命令したブランはとても満足そうだったが、黒歴史を暴露された5pb.の不機嫌は最高潮だった。

何せ、寄りにもよって好きな人の目の前でそれを見せつけられたのだから。

そんな5pb.に危険な雰囲気を感じつつ、REDに促されて仕切り直す。

 

 

「あ~。 あたしだ~」

 

「こ、今度はぷるるんか……。 でもこの状態なら過激な命令はとんでこないかな」

 

 

ネプテューヌの一言に、他の女神達は首を傾げた。

無理もない、ノワール達はまだプルルートの女神化した姿を見ていないのだから。

普段はぽやぽやとした緩くて優しい女の子だが、一度女神化するとそれはもう美しくて、それはもう凛々しくて、それはもう過激な―――。

 

 

「なら―――ここからはあたしも盛り上がっていこうかしらねぇ!?」

 

「って女神化したぁーっ!!?」

 

「「「どちら様!!?」」」

 

 

フラグは回収されるもの、盛り上がった空気に当てられてかプルルートが女神化してしまった。

素敵な女王様―――もとい女神様、アイリスハートの降臨である。

ネプテューヌクラスの変貌ぶりに初めて目の当たりにするノワール達は度肝を抜いていた。

 

 

「みんなぁ。 改めてアイリスハートよぉ、ヨ・ロ・シ・ク♪」

 

 

艶めかしい声色と仕草、だが変身前とは180度も違うそのどこか危険な雰囲気に女神達も一斉に固唾を飲んだ。

何せ、こんな性格のアイリスハートとちょっと過激な命令が盛り上がりを見せる女神様ゲームは相性が良すぎるのだ。悪い意味で。

 

 

「それじゃぁ、命令だけどぉ……そぉねぇ。 あたしが9番の子を可愛がってあげるってのはどぉかしらぁ?」

 

「ビクッ!? 」

 

 

思いっ切り肩を震わせる少女が一人。REDだ。

天真爛漫そのものと言うべき顔が恐怖に歪み、目に涙を溜めて顔を青ざめている。平行世界でネプテューヌらと出会ったというからには、別世界のプルルートとも出会ったのだろう。

故にその恐怖も、しっかりと刻み込まれているようで。

 

 

「あらぁ、REDちゃんったらぁ。 もうこんなにビショビショにしちゃってぇ……」

 

「汗と涙ね」

 

「ほら、遠慮しないで。 あたしだって貴女の可愛いヨメじゃないの」

 

「ち、違っ……! い、嫌っ……! た、助っ……!!」

 

 

恐怖でガタガタと震える口に、正確に言葉を紡ぐことは出来ない。

そのままズルズルと引きずられ、ドナドナされるREDを、皆はガタガタと震えながら見守ることしか出来なかった。

―――結局その後、二人が戻ることは無かった。

 

 

「……えー……お二人が戻らないようなので……次行きましょうか」

 

「まだやるのか!? 犠牲者出ているのにまだやるのか!?」

 

「白斗。 こうなったらいけるところまで行くしなないにゅ」

 

「どこまで行くの!? 地獄の底までか!?」

 

 

まだこのゲームを続けるつもりらしい、

あの惨状を目の当たりにして尚続けたいとは、物好きを超えて最早意地である。

ひょっとしたら、全員が死ぬまで終わらないのではないのか―――そんな不安を抱えつつ、白斗も棒に手を伸ばした。

 

 

「よし!! 今度は俺だ!!」

 

「今度は白斗か……まぁ、白斗なら大分マシね」

 

「お兄ちゃんなら無茶な命令はしてきませんしね」

 

 

ノワールとネプギアが安心したように息を付いた。まるでボーナスステージと言わんばかりのリラックスした雰囲気だ。

 

 

「そうだな、じゃぁ緩い命令で行くか。 1番は6番にくすぐりの刑、30秒な」

 

「って、思ったよりもヤバイ命令だったー!? まぁ、私が1番だからいいけど」

 

 

くすぐりの刑は一見すれば可愛らしいかもしれない。

だが、防御不能のくすぐったさが襲い掛かるこの苦しみは味わった者にしか理解できない。

今回くすぐりを担当するのはネプテューヌ。対する不幸な6番とは。

 

 

「ち、ちょっと待つにゅ! なんでブロッコリーだにゅ!!?」

 

「おおう、ぷち子だったかー。 こりゃぁ、張り切っちゃいますなー」

 

「ね、ネプ子! 手をワキワキさせながらこっちに来るなにゅ! それにぷち子じゃなくてブロッコ―――にゅはははははははははははははははははは!!!」

 

 

修正させる暇などなく、ネプテューヌがブロッコリーの体を盛大にくすぐり始めた。

とても小柄なブロッコリーにとっては全身をくすぐられるのと同義で、中々奇妙な笑い声を上げていた。

こうなると本人にとって30秒とは長すぎるもので。

 

 

「はひゅー……ひゅー……も、もうダメ……にゅ………バタリ」

 

「あらら、今度はぷち子がダウンかー」

 

「言ってた傍から地獄の淵へGO、だな」

 

 

笑いつかれて気絶してしまったブロッコリーに対し、手を合わせる白斗とネプテューヌ。

何とも失礼な光景である。

 

 

「死屍累々、ぼちぼちお開きも見えてきたな」

 

「そうね。 後二、三回で終わりにしましょ」

 

「二、三回って辺りに未練タラタラだな……せーのっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

まだまだ遊び足りない女神達。まさに暇を持て余した女神たちの遊びだ。

スッと手にした棒、王冠マークが刻まれたそれを手に取ったのは―――ノワールだった。

 

 

「ふふん、また私ね。 日頃の行いかしら♪」

 

「ぐぬぬ……! ノワールめ、カスケードに幾ら払った!!?」

 

「買収なんてしてないわよ!! それとカスケードって誰!?」

 

 

危険なネタはさておき、ノワールが命令を考え始める。

既にここまで4人が離脱している状況で人数も少なくなってきている。故に白斗をピンポイントで当てられる確率も高くなってはいるのだが、それでも低い方だ。

ならば、ここは視覚的に楽しめるものがいいだろう。ノワールはスマホを取り出して、そこに映し出されたとある魔女っ娘アニメを見せる。

 

 

「なら……2番と3番で、今流行りの、この魔女っ娘アニメの真似してもらおうかしら♪」

 

「「えぇっ!!?」」

 

 

選ばれたのは、ネプギアとブランでした。

 

 

「ふっざけんなよテメェ!? 白斗もいる中でそんな恥ずかしい真似が出来るかぁ!!!」

 

「女神様の命令は絶対よ。 マジカル☆ブラリンとマジカル☆ギアリン」

 

「もう早くも命名されちゃった!!? う、うぅ……」

 

 

あからさまに嫌な表情と声色で拒絶するブランとネプギア。

そう、魔女っ娘アニメにも色々あるが今回は如何にもロムやラム辺りが喜びそうな、少し年を重ねた人であれば「恥ずかしい」と感じるレベルだ。

ネプギアとブランは互いに顔を見合わせるが、顔を羞恥で真っ赤にさせた後。

 

 

「み、みんな~! 魔法少女、マジカル☆ブラリンと!!」

 

「マジカル☆ギアリン、だよ~!! お願いだからパパラッチはやめてねー!!?」

 

「「「パシャパシャパッシャー」」」

 

「「うわぁーん!!」」

 

 

二人の願いも空しく、撮影会が始まってしまった。

ネプテューヌに至っては動画に撮っているという徹底ぶりである。二人ともこんな衆人環視の場で、特に想いを寄せる白斗の目の前でこんな恥ずかしい真似をするなど、もう死にたいくらいの気分なのだ。

因みに件の白斗はと言うと。

 

 

(……可愛い)

 

 

であった。だが口には出さなかったので、その気持ちが二人に伝わるわけもなく。

 

 

「ドチクショオオオオオオオオオ!!! 次だ次ィ!!!」

 

「私ガ女神様ニナッタラ……ドンナ命令ヲシヨウカナ? フ、フフフ……」

 

「ねぷぅーっ!? 二人が怖いよ!? 特にネプギア!! 今ならゲハバーン持ってもおかしくないくらいの黒さだよ!?」

 

 

怒りと悔しさで、女の子にあるまじきオーラを発していた。

このギスり具合こそ王様ゲームの醍醐味。これで過激な命令がエスカレートしていくのだ。

しかし、このゲームも残すところあと二回。つまりここから先は過激の極みになることが予測可能、回避不可能。

 

 

「行くぞオルァ!! せーのぉーッッッ!!!」

 

『『『め、女神様だ~れだ……』』』

 

 

凄まじい剣幕のブランに気圧されつつ、全員がくじを手に取る。

さて、今回の女神様は。

 

 

「クックック……やっと、狂気の魔術師たる私の番だ……!!」

 

「うっげ、MAGES.かよ!?」

 

「うっげ、とはご挨拶だな白斗。 さて、命令だが……」

 

 

自らを狂気の魔術師と呼んで憚らない少女、MAGES.だ。

中二病な言動ではあるが、発明と魔法に関する才能は本物である。それ故に、危険な発明などを押し付けてくる可能性が高い。いや、十中八九そうだ。

一体何をさせられるのか、戦慄が満ちる。

 

 

「では……5番の者よ、この小瓶を飲み干すが良い!!」

 

「如何にも怪しげな色合いの液体が!?」

 

 

どうやら発明の産物らしい、緑色の液体で満たされた小瓶が置かれた。

身体に悪い色合いの薬品などロクなものではない。生命を脅かすようなものではないだけまだマシ―――ではないだろう。こんな状況で出してくるのだから。

こんなものを飲まなければいけない5番という名の生け贄は。

 

 

「…………………」

 

「5pb.大丈夫か!!? 今にも心臓が止まりそうな顔色してるけど!!?」

 

 

あのやる気は何処へやら。

MAGES.が作ったものの実験台にならなければならない恐怖に煽られて、みるみる内に5pb.の顔が青ざめる。

どうやら彼女が5番だったらしい。

 

 

「……MAGES.、これ……何……?」

 

「飲んでからのお楽しみだ。 ……命に関わるものではないことだけは保証する」

 

「命以外には関わるんだ!? うぅ……ヤダよぉ……」

 

 

今にも泣き出しそうな雰囲気な5pb.。

その気持ちは誰もが良く分かる。飲め、と言われて首を縦に振る者などまずいない。

けれども、こんな小動物の如く震える彼女が余りにも可哀想に感じたのか、白斗が近づいてくる。

 

 

「ふぁ、5pb.? あれだったら俺が代わりに飲んでも―――」

 

「っ!? は、白斗君にそんなことさせるわけにはいかないっ!! ごっきゅん!!!」

 

「あぁーっ!? 何で飲んじゃうのぉーっ!!?」

 

 

彼女の身代わりを申し出たのだが、それが逆効果だった。

白斗に迷惑をかけたくない一心で腹を括ってしまい、勢いよく飲み干してしまったのだ。

飲み干すや否や、カクンと頭が垂れ下がってしまう5pb.。意識があるのかも分からない。

 

 

「め、MAGES.! お前一体何を飲ませた!?」

 

「何、ただ理性をゆるーくさせるだけのつまらないものだ」

 

「この場において一番キケンなアイテムじゃねーかぁ!!」

 

 

理性を緩くさせる、とはつまり普段押さえているものが出てくるということだろう。

人見知りであること以外はごく普通の少女である5pb.だが、ステージでは一転して明るいアイドルとなる。

つまりそれは、彼女が「己の押さえ方、解放のさせ方」を心得ているということでもあり、逆を言えば常に自分を押さえているということでもあり―――。

 

 

「はにゃ~~~♪ 白斗く~~~ん♪」

 

「うおわ!? ひ、引っ付くな5pb.!! スキャンダルものですよコレ!?」

 

「言いたい人には言わせちゃえばいいんだよーん! 寧ろこれを機にボクと白斗君の仲も公認にしてもらっちゃう? アハハハハハ☆」

 

「完全に理性ブレイクだよコレ!? どうすんだよコレ!!?」

 

 

大人しい少女から一転、ボディタッチ余裕のハジけた少女へと変貌してしまった5pb.。

一瞬の内に白斗に抱き着いては胸に顔を埋めて、顔をこすりつける。

まるで甘えるように、まるで彼の魅力を全身に浴びるかのように、まるで自らの匂いを白斗を擦り付けるかのように。

―――因みに他の女神達は皆、5pb.の普段とのギャップと衝撃的な光景の余り、言葉を失っていた。

 

 

「だーもーっ!! 落ち着けよ5pb.!! 仲のいい友達でもここまでするもんじゃねーぞ!? 女の子なんだからもっと自分を大切に……」

 

「……女の子、だからだもん。 友達じゃないもん。 白斗君だから……したいんだよ?」

 

「え……?」

 

 

とにかく年頃の娘にこれ以上、こんなことをさせるわけにはいかないと白斗が必死に引き剥がしに掛かる。

だが彼女の潤んだ瞳に、表情に、言葉に。一瞬にして心が奪われそうになった。

 

 

(……ん? 待てよ、これは理性を緩くさせるだけであって、人格自体を弄ってるわけじゃないんだよな? え? じゃぁ、5pb.がこんなに引っ付くのって―――)

 

 

すると、白斗が“何か”に気付き始める。

このまま彼女の心に寄り添えば、“それ”が手に入るような―――。

 

 

「…………ふぇ? はくと、くん……? ……き、きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ―――――っ!!?」

 

「ぐおわっ!? ど、どうした5pb.!?」

 

 

すると、引っ付いていた5pb.の顔色が徐々に変わってくる。

色で例えるなら、赤から白へ、そして白から青色へ。更に青色から羞恥の赤へ。

一人百面相を見せた5pb.は急に白斗を突き飛ばして叫びながら気絶してしまった。突き飛ばされても咄嗟に抱きかかえる辺り、白斗と言う男である。

 

 

「ふむ、どうやら効果の持続時間が短かったようだな。 ……今度はもう少し持続時間を長くする方向で作ってみるか?」

 

「その前に二度と薬品作るな、マジで」

 

 

白斗の忠告は誰もが頷いた。

こんな大騒ぎがあったものだから、白斗も先程の溶けかかった疑問が、一瞬にして消し飛んでしまう。

 

 

「と、とにかく! 5pb.も倒れちゃったし、次でラストにしましょ?」

 

「ノワールの言う通りね。 それじゃ、最後の……せーのっ!!」

 

『『『女神様だ~れだっ!!』』』

 

 

ノワールの言を受けて全員が最後のゲームに臨む。

緊張も、焦燥も、疲労も、何もかもが込められた最後の一戦。栄えある最後の女神様の座を手にしたのは―――。

 

 

「ねっぷぅーっ!! ラストは主人公たる私がキターッ!!!」

 

「く……最後の最後でネプテューヌだったか……!」

 

 

ブランが悔しそうに歯嚙みし、対するネプテューヌは本日初にしてラストを飾ることになったことでとても嬉しそうだ。

ここまで女神の座を手にできなかったことがさすがに白斗にも可哀想に想えていたので、これで一安心である。

 

 

「それじゃぁね……今から結婚式の予行演習をしたいので……2番の人が神父役!」

 

「ん? 私か?」

 

「んで、い、1番の人が………私の新郎役に、なってくださいッ!!」

 

「ふっ、甘いわねネプテューヌ。 こんな状況で白斗がピンポイントで当たるわけが……」

 

 

なんと女神様でありながら結婚式の真似事がしたいと言い出したのだ。

狙いは見えている、白斗とそんな雰囲気に浸りたいのだろう。

司会進行役でもある神父はMAGES.が担当することになった。問題は相手役こと新郎の役割となる1番だ。

だが、そう簡単に白斗が選ばれるはずが―――。

 

 

「い、1番……俺なんですけど……」

 

「「「「え!!?」」」」

 

「やったぁ―――――――――!!! 白斗だぁ―――――――――!!!!!」

 

 

―――あった。今まで恵まれなかった分、最後の最後に幸運が訪れるというもの。

見事、白斗が新郎役を射止め、ネプテューヌが願った通りの展開になった。

白くなる女神達及びネプギアを他所に簡易的に結婚式の準備が徒と得られる。といっても机などを用意して何となく雰囲気を出しているだけだ。

 

 

「さて、私はこういうのはあまり得意ではないのだが……まぁ、女神様の命令は絶対だしな。 では……新郎、白斗よ」

 

「はっ、ハイイィィ!?」

 

 

緊張の余り声が裏返っている。

無理もない、フリとは言え、隣に立つ美少女―――しかも女神様であるネプテューヌが、花嫁になるというのだ。

しかもネプテューヌは激しく喜びを見せているのではなく、それこそ女神のような静かさで、しかし幸せそうな顔でそれを受けようとしているのがまた、固唾を飲ませる。

 

 

「汝、ネプテューヌを妻として娶ろうとしている。 汝、悩める時も、困難な時も、悲しい時も、嬉しい時も、幸せな時も。 夫婦としてこれを支え、守り、愛することを―――誓うか?」

 

 

―――不思議なもので、その言葉が出た瞬間。体の震えが止まった。

否、心は緊張で満たされており、ガッチガチに震えている。でも、ネプテューヌを支え、守ること―――それ自体の覚悟は、とうの昔に完了しているから。

 

 

 

 

 

「―――誓います」

 

 

 

 

 

その時の白斗の凛々しさは―――周りにも、ネプテューヌにも、息を飲ませるほどだった。

 

 

「……では新婦、ネプテューヌよ。 汝、白斗を夫として受け入れようとしている。 汝、彼が傷ついた時も、苦しい時も、辛い時も、幸福な時も。 夫婦としてこれを支え、守り、愛することを―――誓うか?」

 

「―――誓います」

 

 

ネプテューヌもまた、迷いがなかった。

彼の事を愛した時から、決めていたことだから。その美しさもまた、隣に立つ白斗の視線を惹きつけてやまないほどだった。

 

 

「では、誓いのキスを―――」

 

(え? 誓いのキス? ちょっと待て、予行演習だよな? え? そこまですんの!?)

 

 

すると、結婚式はいよいよクライマックスへ。

誓いのキス。そうこれがなければ結婚式とは言えないような、愛の証を互いの唇に残す。

皆が祝福する中、これをすることで初めて本当の愛となる。

が、白斗もそこまでするとは思っていなかった一方でネプテューヌはスタンバイ完了してしまっており。

 

 

「ね、ね、ネプテューヌ!!?」

 

「ん………」

 

 

柔らかな手で白斗の頬を押さえ、目を閉じながら唇を近づけてくる。

その力に、その艶やかさに、その美しさに。もう、逃げられない。白斗もまた目を閉じ、それを受け入れようと―――。

 

 

「ダメぇ―――――――――――――――――っ!!!!!」

 

「ぎゃばらぁっ!!?」

 

「ねぷぎゃああああああああああああああああああっ!!?」

 

 

すると、悲痛な叫びと共に繰り出された突進で二人が吹き飛ばされた。

ネプギアの涙交じりのタックルだ。華奢な体格からは想像も出来ないようなその一撃で二人が派手に転ぶ。

甘い空気も全てぶっ飛ばされ、神父役を務めていたMAGES.もふぅと息を付いた。

 

 

「お姉ちゃんダメだよっ!! 予行演習なんだから、本番やっちゃダメぇーっ!!!」

 

「白斗も何乗り気になってやがんだ!!」

 

「「す、すみません…………」」

 

 

二人は仲良く倒れながら、ネプギアとブランの説教を受けていた。

何はともあれこれにて女神様ゲームは終了、激痛で動けない二人を他所に不機嫌になりながらノワールとベールが後片付けを始める。

ただ、床に臥しながら白斗は。

 

 

(…………はぁ)

 

 

安心したような、残念なような、よく分からない溜め息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さて、話はまだ終わらない。

ゲームが予想以上に盛り上がり、長引いてしまったので他国の女神達も、そしてMAGES.らもこのプラネタワーで泊まることになった。

のだが、楽しいお泊り会になっても、沈んだままの少女が一人いる。

 

 

「う、ううぅ……MAGES.の馬鹿ぁ……なんでボク、あんなことを……あああああああああ」

 

 

5pb.だ。理由は言わずもがな、今日の醜態である。

大好きな人にあんなだらしのない姿を見せて、しかも心の声をドストレートにぶつけて。

恥ずかしくないわけがない。思い出すだけで、自分の何もかもが焼き尽くされるような感覚に陥って。

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

宛がわれた部屋の中、布団を引っ被って外界との隔たりを作ろうとした。

今はとにかく何も考えたくない。こんな恥ずかしさを抱えたまま、明日からどう生きようか。増してや、白斗にどんな顔をして会えばいいのか―――。

 

 

「あらよっと。 いーつまで引きこもってんだよ、5pb.。」

 

「ひゃあああああああああああああああああああっ!? は、白斗君っっ!!?」

 

 

と、思った瞬間布団が引っぺがされた。

やったのは外でもない、白斗である。

最も会いたくない人物とのエンカウントに5pb.のキャパシティはオーバー寸前だ。

 

 

「あ、あのあのあのっ!! ははは、白斗君ッ!? ぼ、ボボボーボ・ボーボボク……!!」

 

「落ち着けって。 ……昼間の事なら、気にしてないから」

 

「え? ……あ、そう……」

 

 

そう言って軽い笑顔を見せてくれる。

本当に「何とも思っていなさそう」な辺り、安心したような、それはそれで寂しいような。

 

 

「……ただ、まぁ。 お前が落ち込んでるのも分かるし、何とかしてやりたいって思ってるのも事実だから……ほれ」

 

「え? ……め、女神様の……棒?」

 

 

何かを押し付けられ、握らされた。

よく見て見ると、それは王冠マークが刻まれた棒。先程の女神様ゲームで使用したくじだ。

対する白斗は―――1番の棒を握っており、それを堂々と見せつけている。

 

 

 

 

「……何なりとご命令を、女神様」

 

 

 

 

―――それで、彼女の気が少しでも晴れるなら。

白斗にとっては、回りくどい気遣いだったのかもしれない。でも、5pb.にとっては先程までの暗雲とした気持ちが吹き飛んでしまう程の優しさだった。

受け取った棒を大事そうに抱え、顔を赤らめながら5pb.は―――口にした。

 

 

「……じ、じゃぁ……ぼ、ボクと………夜のデートに、行ってください!! 今から!!!」

 

「了解っ!」

 

 

命令と言っても、かなり無理がある。そんなことは5pb.にもわかっていた。

白斗だって疲れている、夜は大抵の人は自由時間、白斗だってしたいことがあるはず。にも拘わらず、白斗は即座に頷いてくれた。

笑顔で、何一つ嫌な顔色も魅せず、まるで初めからそうするつもりだったかのように。

 

 

「それっじゃ、どこへ出掛ける?」

 

「そ、それは……白斗君にお任せするよ」

 

「了解。 ただ歩いてってのも味気ないから……着いてきてくれ」

 

「え? い、いいけど……」

 

 

どうやらデート内容は白斗に一任するらしい。

ならばと言わんばかりに白斗は彼女を連れていく。そこはプラネタワーのガレージ。

そこに置かれていたのは、一台のバイク。

 

 

「いやー、コツコツ作ってたのが完成したばっかりでな。 免許も取ってきた」

 

「ば、バイクを……白斗君が!? 凄い!!」

 

「と言ってもネプギアとかアイエフの力を借りながらだけど」

 

 

そう言いながら白斗はヘルメットを被ってバイクに跨り、アクセルを踏んでエンジンを回し始める。

夜中背の静寂を破壊する、情熱的なエンジン音がガレージの中に轟く。感触は上々、それを確かめた白斗は予備のヘルメットを5pb.に手渡した。

 

 

「……乗れよ。 今夜はこいつで、ドライブと洒落込もうぜ!」

 

「……うんっ!!」

 

 

5pb.は笑顔でヘルメットを被り込んで後部座席に座り込み、白斗の腰に手を回した。

タンデムなど初めてだったが、何も怖くなかった。白斗の背中が大きくて、安心できて―――とても、幸せだったから。

 

 

「それじゃ―――ぶっ飛ばしていくぜぇ!!!」

 

「ひゃぁぁぁぁっ!!? ……アッハハハハハ!! 速い、凄く速ーい!!!」

 

「サラマンダーより、とか言わないでくれよ!?」

 

「分かってるって! あははは、楽しいーっ!!!」

 

 

真夜中、もうすぐ日付が変わろうとする時間帯。

それでも二人は大はしゃぎでツーリングを楽しむ。誰もいない時間帯、二人きりのドライブを味わいながら。

これから先、どうするのだろうか。このまま街を走り回って警察とカーチェイスか、それとも綺麗な夜景を探しに行くのか、街を出て自然を堪能しに行くのか。

―――どれでもいいし、どれでもしてみたかった。5pb.は、しっかりと握り締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

今あるこの幸せを。そしてその幸せを運んできてくれた―――女神様のくじを。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――尚、この後しっかりと女神様達に叱られたことは、明記しておく。




ということで王様ゲーム回でした。
女神様ゲームにしたのは、ゲイムギョウ界っぽいからという理由でそれ以上でも以下でもありません。
そしてオールキャラ回でありながら、5pb.ちゃんの回でもありました。5pb.ちゃん、新曲待ってるよ。是非とも忍者ネプテューヌでお待ちしております。
ついでに今回、今まで出番が薄かったメーカーキャラにも登場してもらいました。賑やかし役として適任ばかり。お気に入りはREDちゃん。
更にさりげなく生きていました白斗君のバイク、今回お披露目です。今後も登場することがある……かも?
さてさて、次回ですがツネミさんとのイチャイチャ話にしたいと思います。お楽しみに!
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