恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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神次元編
第五十話 そして神次元へ……


―――騒がしも楽しい夏祭りから、一夜が明けた。

あれだけあった屋台の数々は夜の内に撤収され、日が昇ればまたいつものプラネテューヌの街並みに戻ってしまう。

そう、全ては何事も無かったかのように過ぎ去っていく。

今、この世界から二人の少女が消えようとしても、世界は残酷なまでに穏やかだった。

 

 

「……シェアエネルギー、接続完了。 後はその陣の上で待っていただければ大丈夫です」

 

 

機械の調整を終えたイストワールが振り返った先には、その消えようとしている少女が二人。幾何学模様の陣の上で静かにその時を待っていた。

神次元という世界からきた女神プルルート、そして彼女の家族であるピーシェである。

 

 

「……ぷるると、もう……かえっちゃうの……?」

 

「……そうだね~。 もうすぐ……だね……」

 

 

二人とも、気が気でなくどこか落ち着かない様子だ。浮かれているのではない、寧ろ何らかのアクシデントが起きてくれればいいのにとさえ思う状況だ。

 

 

「……本当に帰っちゃうのね。 何だかんだで帰っちゃうと……寂しさすら感じるわ」

 

「そうね。 私達は交流は少なかった方だけど……それでも貴女達に助けられたもの」

 

「また気軽に訪ねてくださいな。 この世界はいつでも貴女達を歓迎しますわ」

 

 

そしてプルルートらを見送るために、三ヶ国からもノワール達女神も駆けつけていた。

ネプテューヌほど親しかったわけではないが、それでもピーシェとも少なからず遊んだし、白斗を助けるためにプルルートに世話になったこともちゃんと覚えている。

彼女達にとっても大切な友人を見送るために、必死に時間を空けてきたのだ。

 

 

「ピーシェ! これ、わたし達が大好きな絵本なの!」

 

「後で読んでみてね……(おずおず)」

 

「ろむ、らむ……うん! ありがとっ!」

 

 

今にも泣きそうな表情を押さえて、ロムとラムがお気に入りの絵本をピーシェに手渡した。

元からちびっ子同士、仲が良かったこともありピーシェも嬉々としてそれを受け取る。

 

 

「ぎあちゃんにユニちゃんもありがとね~」

 

「いえ、私達の方こそありがとうございました」

 

「うん。 白兄ぃを助けてくれましたし、色々楽しかったし」

 

 

一方のネプギアとユニはプルルートに別れの言葉を交わしていた。

思えばプルルートもピーシェも、どちらかと言えばネプテューヌや白斗とベッタリだった。それだけあの二人が魅力的なのだろうとどこか悔しさも感じていたが、同時に誇らしくもあった。

 

 

「あ、そ~だ~。 ぎあちゃん、これあげる~」

 

「え? プルルートさんが私に? ありがとうございま……す……」

 

 

背後から何かガサゴソと漁り始めたプルルート。

確かに付き合いとしては薄かったかもしれないが、それでもプルルートにとってネプギアも大切な存在だった。

満面の笑顔で差し出されたそれを受け取ろうとした―――のだが。

 

 

「……ぷ、プルルートさん。 何ですかこの微妙な表情のネプギアンダ……」

 

「大切に……してね~?」

 

「はっ、ハイイイイィィィ!!?」

 

 

有無を言わせぬ迫力で、受け取らざるを得なかった。

一瞬自分には用意されてなくてムッとしていたユニも、この出来栄えを見て寧ろ安堵してしまい―――。

 

 

「ユニちゃんには……これ~! ロボットアニメ風に“ユニこ~ん”!」

 

「………………………………………………………アリガトウゴザイマス」

 

 

可能な限り、大人な対応をしたユニだった。

 

 

「ははは、素敵なプレゼントで良かったな二人とも」

 

「それじゃ私達からは、ぷるるんとピー子にそれぞれプレゼントだよー!」

 

 

そこへ一歩踏み出したのは、いつもと変わらない様子の白斗とネプテューヌ。

するとネプテューヌが二人の手に何かを握らせていく。

手の中にあったのは何かのカップ、そして蓋には「ねぷの」とマジックで書かれていた。

 

 

「あー! ねぷのぷりん!」

 

「うん! ついでに私と白斗の手作りだよー!」

 

「向こうの世界に帰ったら食べてくれ。 んで、俺達が遊びに行ったらまた作ってやるからな」

 

「わ~! ありがと~!」

 

 

そう、これは餞別の品などではない。約束の証だ。

二人が寂しがらないように、二人とまた会うために。白斗とネプテューヌの想いが込められた、優しい食感の、優しいデザートだった。

 

 

「……またな。 プルルート、ピーシェ」

 

「すぐに会えるからね! ……約、束……だよっ!!」

 

 

ネプテューヌは少しだけ言葉に詰まった。頭では分かっていても、やはり心は泣いてしまっている。

事実、ネプテューヌの瞳には綺麗な涙が少し浮かんでいた。

でも、笑顔は決して崩さない。痩せ我慢などではなく、本当に二人に会うという気持ちでいっぱいなのだから。

 

 

「……うん! ねぷてぬ、おにーちゃん! また……またあそんでねっ!!」

 

「約束、だからね~……!」

 

 

一方のプルルートとピーシェは、涙を堪えようとはしなかった。

けれどもネプテューヌに負けないくらいの笑顔を浮かべている。やはりこの三人に相応しいのは、眩しいまでの笑顔である。

 

 

「……間もなくゲートが繋がります! 白斗さん、ネプテューヌさん! 下がってください!」

 

 

そして、とうとう訪れる別れの時。

白斗もネプテューヌも、名残惜しそうに陣から離れる。やがて陣から光が溢れ出し、その光は二人を包み込んだまま天空を貫いた。

 

 

「……ぷるるーん!! ピー子ぉーっ!!」

 

「……やめろよネプテューヌ……こっちまで、泣きたくなる……っ」

 

 

もうすぐ、二人がいなくなる―――そう認識した途端、ネプテューヌの涙腺が決壊した。

彼女に釣られて、白斗の目尻にも涙が浮かんでしまう。

 

 

「……ねぷちゃ~ん! 白く~~~ん!!」

 

「ねぷてぬー!! おにーちゃーん!!!」

 

 

その涙は二人にも伝播し、彼女達の涙腺も決壊させてしまった。

お互いがお互いを求め合いながら、それでも互いにその場から動かず―――。

 

 

 

「………転送―――っ!!」

 

 

 

―――二人の姿は光で完全に見えなくなり、光の柱は遥か空へと消えていく。

やがて静寂が訪れ、後に残されたのは色を失った陣のみ。

優しい微笑みを浮かべてくれるプルルートとピーシェの姿はもう、どこにもなかった。

 

 

 

「…………行っちゃった、ね…………」

 

「…………ああ」

 

 

二人が消えてしばらくしても尚、白斗とネプテューヌはその場から離れようとしなかった。

ただ、二人が消えてしまった空をぼんやりと眺めていることしか出来なかった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その日の夜、ネプテューヌは真っ暗になったとある部屋を訪れていた。

 

 

「………………」

 

 

そこは今朝まで、プルルートとピーシェに与えられていた部屋だ。

中でも一際目に着くのが、床に散りばめられた玩具や人形、積み木やお絵かき用の道具の数々。

壁にはピーシェが描いた絵の数々が綺麗に留められている。

 

 

「……片付け、しなきゃね……」

 

 

ネプテューヌは散らばった玩具を手に取り、しかしそこで止まってしまった。

まるでこの玩具をどうするべきか、決めあぐねているような―――。

 

 

「―――片付け、手伝うよ」

 

「あ、白斗……」

 

 

すると彼女の真横からぬっと飛び出る人影。白斗のものだった。

彼はテキパキと散らばって玩具を片付けていき、おもちゃ箱の中へと放り込んで部屋の隅に置いておいた。

 

 

「捨てる必要なんかない、そうだろ?」

 

「え……?」

 

「確かにいつ会えるか分からないけど、どれもこれも大切なピーシェとの思い出なんだ。 だから、捨てなくていいんだよ」

 

 

今はただ、片隅に仕舞っておくだけ。必要な時にまた取り出せばいい。

そんな彼の優しい微笑みに、ネプテューヌは少しだけ涙して。

 

 

「……ありがと、白斗。 やっぱり白斗は優しいね」

 

「いやいや。 ……お前には負けるさ」

 

「え? 後半何か言った?」

 

「何でもない。 さ、早く片付けて晩飯だ。 今日はコンパが腕によりをかけて作ってくれるってさ」

 

「わーい! こんぱのご飯-!!」

 

 

ようやく、いつも通りのネプテューヌに戻ってくれた。

彼女の笑顔を取り戻せたことに一安心すると部屋をあっという間に片付け、二人して部屋を出る。

パタンと閉じられた部屋には、静寂しか残らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それから次の日。

プルルートとピーシェが帰ってしまってから、早くも一日が経過しようとしている。

教会職員やイストワール、ネプギアはすっかり立ち直り、ネプテューヌも表面上何とか持ち直している。

今は姉妹仲良くゲームと言う名のサボりをしている中、白斗に話しかけられる声が一つ。

 

 

「白斗さん、少々よろしいでしょうか?」

 

「イストワールさん? 構いませんよ」

 

「では……あちらの方で、お話しますので」

 

「あ、はい……?」

 

 

教祖イストワールだった。今日も小さな本に乗り、ふわふわと浮かんでいる。

彼女かこんな訊ね方をしてくる時は何か仕事がある時だ。

だが、肝心なイストワールの様子が少しおかしい。話すのを躊躇っているかのような、そんな風に見受けられた。

 

 

「……実は一つ、仕事をお願いしたいんですが……」

 

「仕事は構いませんけど……内容は?」

 

「……市民団体の調査、です」

 

「市民団体?」

 

 

聞き慣れない単語だ。団体と言うからにはそれなりの人数、おまけに市民たちで構成されているのだろう。

しかし、イストワールがわざわざ調査を依頼するからには何かがあるはず。

 

 

「はい。 ……この団体は、どうも女神反対運動を行っているようなのです」

 

「……女神反対……? 正気かそいつら?」

 

 

白斗は訝しさ―――を超えて、怒りすらにじませた。

女神に救われ、女神と共に過ごし、そして女神を愛している彼だからこそ知っている。女神様は誰もが素晴らしい人だと。

しかもこのゲイムギョウ界は女神ありきで成り立つ世界。にも拘わらず女神の存在を否定する彼らに、好感など抱けなかった。

 

 

「分かりません。 何故彼らが女神反対運動を行っているのか、どれくらいの規模なのか……それを貴方に調査してもらいたいのです」

 

「寧ろ引き受けさせてください。 そんなふざけた団体名、徹底的に……」

 

「い、言っておきますがあくまで調査ですから。 それにこの世界では過去、女神様がシェアを巡って武力衝突したこともあります。 彼らはその被害者かもしれない……ですから、事の真相を“調査”するに留めて欲しいのです

 

「……分かりました。 武力行使なんて、女神様の心象を悪化させかねませんからね」

 

 

渋々、と言った様子だが白斗はあくまで市民団体の調査を請け負った。

今でもその市民団体に対する怒りがどうしても湧いてしまうが、イストワールの言う通り詳細を知らないままでは一方的に怒りをぶつけるのも筋違い、お門違い。

切り替えが出来る人間こと白斗は一旦怒りを抑え、調査に臨もうとするのだが。

 

 

「はいはーい! そーゆーことならネプ子さんも行かないと!」

 

「おわ!? ネプテューヌ、聞いてたのか!?」

 

「聞いてたよ! もう、私の尾行にも気づかないくらい怒ってるんだから、白斗から目が離せなくなっちゃうよ」

 

 

すると脇からにゅっ、と小さくも可愛らしい影が。ネプテューヌのものだ。

どうやら今までの会話を聞かれていたらしく、同行を申し出てきたのである。無論、自分に対する批判なのだから自分が行かねばならないという責任は理解できる。

だが、白斗はそれを良しとはしなかった。

 

 

「いいのかネプテューヌ? ただでさえ二人が帰って参ってる時に、こんな辛い仕事……」

 

「まぁ、正直言えばイヤだけど……何だか落ち着かなくてさー。 だからたまには気分転換!」

 

 

苦笑いながらも、ネプテューヌは退く姿勢を見せなかった。

普段はお気楽でも、いざという時は女神様。そんな彼女こそ、白斗は心を打たれる。

 

 

「……はは、気分転換に仕事とはお前らしい。 分かった、なら俺が絶対に守る。 んで、さっさと調査を済ませたらその後は街に出も遊びに行くか。 二人で」

 

「え、ホント!? やったー!! 白斗とデートだー!!!」

 

 

そんな彼女の姿を見ていたら、先程まで白斗が抱いていた市民団体への怒りもどうでもよくなっていた。

ならば自分がすべきことはその市民団体の一切を暴き、もし本当に女神に反感を抱いているのであれば根気強く説得すること。

そしてお気楽ながらも健気で優しい女神様を精一杯守ることだった。

 

 

「……まぁ、今回は大目に見ましょう。 では白斗さん、ネプテューヌさん。 調査の方、よろしくお願いします」

 

「了解です」

「合点ー!」

 

 

こうして白斗とネプテューヌは、市民団体の調査へと乗り出すことになった。

一連のやり取りを終えてか、二人の雰囲気も幾分か軽くなったようだ。

 

 

 

 

「……しかし、このタイミングで市民団体による女神反対運動……ですか。 これが……転換期のキッカケにならなければいいのですが……」

 

 

 

 

 

それでも、イストワールは憂いていた。

この運動が齎す、ゲイムギョウ界にとってある意味一番厄介な時期に―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、市民団体を探しに街に繰り出したはいいものの」

 

「その団体さんはどこにいるのかなー?」

 

 

街に出て数分、白斗とネプテューヌは早速手掛かりに困っていた。

というのも、足取りが掴めないくらいに細々とした活動しかしていないらしい。アイエフに連絡を取ってみても「女神反対」と書かれたビラを配ることだけ、ギルドなどで情報収集してもメンバーもまばら程度らしく、吹けば消えそうな程度の活動しかしていないらしい。

それでもイストワールの目に留まる辺り、それが長く続いているのだろう。

 

 

「ただ、聞いた話じゃどれもこれも銀髪の女が関わってるらしいな」

 

「その人がリーダーなのかな?」

 

「こき使われる下っ端的存在……かもしれないが、規模を見る限りじゃ下っ端をこき使うだけの余裕もないだろう。 なら、そいつが中心人物である可能性が高い」

 

 

得た情報を元に推測を組み立てていく白斗。

ならば一旦その市民団体そのものを探すより、よく話に聞くその「銀髪の女」を探した方が早いのではないだろうか。

 

 

「おや、貴方達。 市民団体を探しておいでですか?」

 

「ねぷ?」

 

 

するとそこに掛けられた飄々とした声。

振り返ると、先程まで誰もいなかったはずの場所にいつの間にか男が立っていた。

黒いローブで肩から下を覆い隠し、頭にはつばの広い帽子を被っており姿の全容を見せない。

ただ、帽子の下から覗かせる笑顔は―――慇懃無礼ながらもどこか油断ならない雰囲気を醸し出している。

 

 

(コイツ……いつの間に俺達の背後に立った!? 気配なんて全く感じなかったぞ!?)

 

「あ、失礼。 手品みたいなものでして。 ですからそう警戒なさらずに」

 

(しかも心を読みやがった!? ……つーか、こいつの声どこかで聞いたような……?)

 

 

まるで心を見透かしているとでも云わんばかりに白斗の心情を言い当てる男。

クックック、と聞きようによっては不快にも取れる笑い方をしている。

だが、白斗はどこかで聞き覚えがあった。直接会ったことは無いはずだが、この“飄々とした声”は―――。

 

 

「えーと、それでアナタは何なのかな? こんなところで新キャラ出されても私達も読者も絶賛困惑中だよ?」

 

「ははは、これは手厳しい。 さすがは女神ネプテューヌ様、メタ発言も相変わらずで」

 

 

どうやらこの男はネプテューヌが女神であることを知っているらしい。

だが、女神暗殺のために派遣された刺客では無さそうだ。もしそうならば、先程の一瞬でネプテューヌに害を成していただろうから。

 

 

「私、ジョーカーと申します。 世界を股に掛ける……語り部、でしょうか」

 

「語り部?」

 

「ええ、ええ! 数多の物語を思いついてはそれを語る……まさに語り部です」

 

 

ジョーカー、男はそう名乗った。

だが答えているようで、いまいちわからない答えである。

偏に「語り部」と言われてもしっくりこない。吟遊詩人とでも名乗ればよさそうなのに。

 

 

「まぁ、私のことなどどうでもよろしい。 それよりそろそろ、貴方達の尋ね人のこと……聞きたくはないですか?」

 

「……それもそうだな」

 

 

白斗は依然警戒心を露にしながらも情報を求める。

信憑性があるかどうかは、話を聞いてから判断しなければならない。

 

 

「市民団体のリーダーでしたら、この街の外にあるバーチャフォレストで次の活動に向けた準備を行ってます。 ……が、次は少々規模が大きくなりそうでして」

 

「規模?」

 

「ええ、ええ! 今度は大声を上げて女神反対ー! と叫ぶ大規模なデモ活動を行うと小耳に挟みまして。 あ、でも私の耳は大きいですけどね」

 

 

かなり具体的な内容だ。しかも次の活動内容まで告げている。

作り話、にしてはどこかリアリティがあり、嘘だと切り捨てることのできない説得力がどこかあった。

これが彼の言う「語り部」としての技術なのだろうか。

 

 

「うーん、白斗。 行ってみる?」

 

「……そうだな。 罠……の可能性はあるが低いだろう」

 

「おやおや、信頼されているのだかされていないのだか……。 して、その根拠は?」

 

「もしネプテューヌを傷つけようとするなら、さっきの一瞬で殺りゃいい。 わざわざ他の場所に呼び寄せて罠にかける……なんて非効率的だ」

 

「おお、頭が切れますねぇ!」

 

「……まぁ、ネプテューヌを捕らえるって目的があるなら別だが。 こうやって堂々と話してる辺り、その線も薄いだろうしな」

 

「ほほ、どこまでも冷静冷徹! 貴方とネプテューヌ様のコンビは、まるで月と太陽のように映えますね~」

 

 

罠にかけるつもりならば、こうして警戒心を抱かせるような言動は普通はしないだろう。

警戒された時点で罠は確実性を失ってしまうのだから。

そんな白斗の切れ者ぶりを評価するジョーカーの口調はどこか大仰で芝居じみている。

 

 

「……とにかく行ってみるか。 一応、礼は言っておく」

 

「うん。 ありがとね、ジョーカー!」

 

「いえいえ。 では、私はこの辺で」

 

 

そう言ってジョーカーはローブを翻しながらその場を去る。

掴みどころのない言動に体捌き。まるで実体すらないのではと思わせるような不気味ささえあった。

白斗は最大限の警戒をしながら、ネプテューヌを守るように歩いていく。

 

 

 

 

「……次なる物語の舞台でお会いしましょう。 女神ネプテューヌ、そして守護騎士……黒原白斗よ……フフフ……」

 

「「――――――ッ!?」」

 

 

 

 

 

だが、去り際に残されたその一言だけはどうしても聞き逃せなかった。その契りを交わしたことを知っている人数など、ごく限られているのだから。

慌てて振り返るも、既にジョーカーの姿はどこにもない。まるで幽霊だったかのように、初めからそこに存在しなかったかのように―――。

 

 

「は、白斗……? 今のって、一体……?」

 

「……少なくとも、気の置ける存在じゃあなさそうだな」

 

「ミステリアスな新キャラ……これはもう、物語的にも新章突入のフラグだよ!」

 

「お前は何で盛り下がるようなメタ発言しちゃうのかな!?」

 

 

緊張感あふれる一場面も、いい意味でぶち壊してくれるネプテューヌ。

そんな彼女のお蔭で、白斗も肩の力を抜くことが出来た。

突然彼らの前に現れた謎の「語り部」、ジョーカー。彼が一体これから何を語るのか、この時の二人は、そして世界は。まだ知る由もなかった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして歩いて数十分後、ここはバーチャフォレスト。

プラネテューヌ近郊にある森で、その分他のダンジョンに比べればモンスターは比較的弱めとされている。

だが有する面積もかなりのもので、冒険初心者にとっては最難関となり得る。

 

 

「確かにここなら隠れて悪巧みにゃ打って付けだが……」

 

「もー、白斗ってば。 まだその人が悪人って決まったわけじゃないよ?」

 

「あー……悪い悪い」

 

 

聊か冷静さを欠いていたようだ。

これからするべきは調査、或いはその人物との対話や説得なのだ。感情を振りかざすだけでは決して納得させることなど出来ないだろう。

と、草根を掻き分けて進んでいると。

 

 

「ふぅ……やっと15人集まった……。 これで少しはデモ活動も実るかな……」

 

 

少し開けた場所に立っている、銀髪の女性。眼鏡をかけており、言動からしても弱々しい……というよりも頼りない印象を受ける。

今までに聞いていた特徴と合致しており、更には彼女の足元に纏められたビラの数々。白斗は狙撃訓練で培った視力を用いて、離れた場所からでもそれをしっかりと視認していた。

 

 

「……女神反対、か。 ビンゴ、十中八九、あいつが市民団体の重要人物だろうな」

 

「それじゃ……あの人が私を陥れようとしている悪者なんだね! このネプ子さんが月に代わってお仕置きしちゃうよー!」

 

「お前さっき悪人と決めつけるなとか言ってなかったか?」

 

「えへへ、冗談だよ冗談。 それじゃ白斗!」

 

「ああ、お仕事開始するとしますか。 ネプテューヌは念のためここにいてくれ」

 

 

突撃を開始する前に白斗は持ち前の用心深さで周りを探る。罠などの類もなければ、あの銀髪の女性の佇まいは隙だらけだ。

体格や肉付きからしても戦闘態勢に入る素振りすらない。ならばと気配を消して忍び寄る必要もない、わざと茂みを揺らして彼女の前に現れる。

 

 

「えっ!? あ、あのあのあのっ!? どちら様ですかっ!?」

 

「アンタが女神反対運動を扇動してる人……で間違いないか?」

 

「そ、そうですけど……あ! ひょっとして入団希望の方ですか!?」

 

「話を聞きたいだけだ」

 

 

白斗の姿を見るや否や、女性はオーバーリアクションにも近い様子で慌てだした。

どうやら気弱さの余り動転しているらしい。白斗としても殺気など微塵も出していなかったのだが。

ただ、入団してくれるかもしれないという存在にかなり目を輝かせている。よっぽど人が集まっていないのだなと白斗は最早呆れすら感じていた。

 

 

「は、ははは……初めましてっ! わ、私は……その……この団体の代表を一応、務めさせていただいてますっ! その……キセイジョウ・レイと申します……」

 

 

ぺこり、と頭を下げるキセイジョウ・レイと名乗る人物。

気弱ではあるが、礼儀正しい。気性自体も激しくは無さそうだが、ならばそんな彼女が何故女神反対運動なという、場合によっては国家反逆罪にも問われかねない行動を起こすのかが分からなかった。

 

 

「黒原白斗だ。 それでレイさん、でいいか?」

 

「あ、はいッ! わ、わわわ、私にそんなお気を遣わなくてもぉっ!!」

 

「いや、そんなに怯えないでくれ……。 あー、やり辛ぇな……。 そんな気弱なアンタが、どうして女神反対運動なんて過激なことをするんだ?」

 

 

とにかく、彼女の事情を聴かないことには話にならない。

この時点で面倒臭いと感じながらも、とりあえず話題を振ってみる。

 

 

「か、過激なんてそんな! 私達は女神によってではなく、正しい規制によって生きるべきと訴えているのであってですね……」

 

「しかし、この国……この世界を守ってるのは女神様だろ? その女神様を排したら誰がお前らを守ってくれるんだ?」

 

「た、正しい規制によって生きれば問題なんて起きないんですよ! 女神がいなくても、生きていけるようにですね……!」

 

 

先程から彼女主体で話をさせているのだが、どうも話が拙い。

女神に対する敵愾心、というよりも自分が正しいと思っての行動らしいのだが何もかも中途半端に感じて仕方がなかった。

 

 

「それに、女神が何でもかんでもしてくれるワケじゃないんです……。 女神がいても、全ての人を幸せにしてくれるわけじゃない……。 だから、女神がいなくても大丈夫な世の中に……」

 

「でも、全ての人を幸せにしようと努力してるぜ? まぁ、この国の女神様はサボりがちなのは否定できんが……」

 

(ねぷー!? 白斗ぉー!! 私を守る気があるのかコラー!!)

 

 

茂みからネプテューヌが可愛らしく怒っている。

抗議をすべく、自分も身を乗り出そうとしたその時。

 

 

「―――けどな、誰より優しく、誰より温かいんだ」

 

(え……? 白斗……?)

 

 

白斗の言葉は、まだ続いていた。彼は知っている。

ネプテューヌという女神様は、確かに欠点も多く抱えるが、それをも上回る長所にして魅力を間近で感じていたのだから。

 

 

「国民と触れ合う時、あいつは凄ぇ笑顔で、あいつと話している人みんなが笑顔になってた。 ネプテューヌはな、仕事こそしたがらないが皆が楽しく過ごすことを願ってる―――素敵な人だよ」

 

(白斗……! もぅ、そういうこと素面で言わないでよ……)

 

 

臆することなく、ネプテューヌの魅力を口にしている。

当然ネプテューヌの耳にもしっかりと届いているため、彼女の顔は既に茹蛸状態であった。

 

 

「それに国民を蔑ろになんか絶対にしない。 だから、反対運動なんて必要ないだろ?」

 

「……貴方、入団希望の方じゃないんですか……?」

 

「話を聞きたいだけ、って言っただろ。 正直言うと、アンタらの調査を頼まれたんだ」

 

「って、ことは……め、女神側の人ですか!? わ、私をどうするつもりで!?」

 

「まぁ、今のところやってるのは迷惑なビラ配り程度。 こんなんじゃ罪に問う必要もない……問う価値もないけどな」

 

 

まだ話して数分だが、白斗は分かってしまった。

恐らくキセイジョウ・レイという女性は余り幸せと感じることのない人生を送ってきたのだろう。

そしてその原因が守護女神ありきのこの世界のシステムにあると感じている。だから彼女なりに考えた末の行動なのかもしれない。

でも、何一つ心に響いてこないのも事実だった。

 

 

「女神様に頼りっぱなしってのも確かに情けない話。 でも、それが女神様がいなくなればいいという理由にもならない」

 

「そ、それ……は……」

 

「なら大事にするまでもない。 そんな身勝手な活動、自然消滅がオチさ」

 

 

これ以上の問答すら必要無かった。

レイの活動は何もかもが中途半端で、ネプテューヌ達に対する反対運動も包み隠さず言えば逆ギレもいい所だ。

そんな連中など、わざわざ軍や女神様を動かしてまで対処する必要もない。

 

 

「ネプテューヌ、帰るぞ。 十分調査は済んだ。 後は警告程度でいい」

 

「あ、はーい」

 

 

すっかり彼女に対する興味を失った白斗がコートを翻してその場を去ろうとする。

白斗の後を追うようにしてネプテューヌも茂みから飛び出した。

 

 

 

 

「……何よ……何で、そんなに私を馬鹿にするんですか……」

 

 

 

 

―――瞬間、謎の違和感を感じて足を止めた。

少しだけ声を濁らせたレイが、何やらブツブツ呟いているのだ。

 

 

「え? いや、白斗は貴方を馬鹿になんて……」

 

「そうやって……そうやって慰めているように見せて私を馬鹿にしてー!! どうしてそんなことが言えるんですかー!!! うわあああああああああああああん!!!!!」

 

「いや、ネプテューヌはお前を気遣ってだな……」

 

 

すると今度はレイが大泣きし始めたのだ。

正直いい歳した大人がみっともないと感じるが、まるで子供の用に泣き喚くものだから白斗も対応に困っていた。

 

 

「ぐすっ……! そ、そうやって女神が……何でもかんでもしちゃうからー!!」

 

「うわー……変なスイッチ入っちゃったよこの人……。 白斗、どうしよう……?

 

「……はぁ、仕方ねぇ。 少しキツイ言い方しねぇと……」

 

 

そろそろ白斗も我慢の限界が訪れそうだ。

ネプテューヌも話が通じない相手にはお手上げのようで白斗に助けを求めていた。

これ以上ネプテューヌに心労を背負わせるわけにはいかない。白斗も心のリミッターを一段階解除し、乱暴な言葉遣いで彼女を正気に戻そうと試みた―――。

 

 

「……女神も……女神に味方する人間も…………!!」

 

「ん……? な、なんだ……?」

 

 

だが、おかしいのは言動だけでは無かった。

何か黒い靄のようなものがレイの体から溢れ始めたのだ。やがて黒い靄は、大きな黒い球体となって―――。

 

 

 

 

 

「みんな……みんなっ!! 消えちゃえ―――――――!!!!!」

 

 

 

 

それを、白斗に向けて放った。

途端、黒い球体から凄まじい風が溢れ出し―――否。凄まじい風圧が、黒い球体へと流れていく。

このベクトルは、この風は、この“吸引力”は―――。

 

 

「う、うわ!!? す、吸い込まれる……ッ!?」

 

「ッ!? 白斗ぉおおおお―――――っ!!!」

 

 

黒い球体が、白斗を飲み込もうとしていたのだ。

所詮白斗はただの人間。あんな球体に飲み込まれでもしたら、命など無い。踏ん張ろうにも、凄まじい吸引力が引き離そうとしてくる。

ワイヤーを伸ばそうにも、その勢いすら吸い込んでしまう。

白斗が危ない。白斗が、大好きな人が―――消えてしまう。ネプテューヌは迷うことなく、白斗に抱き着いた。

 

 

「お、おい!? やめろネプテューヌ!! 離れろぉおおおおおおっ!!!」

 

「イヤっ!! 白斗を離したくない!! 白斗がいなくなるのは……もう嫌なのっ!!!」

 

 

以前、ネプテューヌは目の前で白斗を失ったことがある。

あの時の絶望など、もう味わいたくない。

しかし、ネプテューヌが抱き着いてくれても吸引力は一向に落ちない。それどころか、益々強まってきており―――。

 

 

「う、うわああああああああああああああああああああああああああ!!?」

「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

 

白斗とネプテューヌを飲み込み―――消してしまうのだった。

 

 

 

「……あ、あれ? 女神と……あの男の人は……?」

 

 

 

それまでがむしゃらに暴れていたレイだったが、ようやく我に返ったらしい。

だが今の彼女に何が起こったのか知る由も―――。

 

 

「おーおー、派手にやったなぁオイ」

 

 

そこに聞こえてきた、可愛らしくもあるが乱暴な声。

振り返るとそこには、手乗りサイズの本の上に腰かけた、小さな褐色肌の妖精。

サイズから見て、その浮き方から見て、明らかに人間ではない。それでもレイは、この妖精に見覚えがあった。

 

 

「え? あ、あなたは……確か昨日、私に何かした……妖精?」

 

「そ。 “向こうのお前”に頼まれてお前に力を渡してやったんだが……気づいてなかったのか」

 

「力……? も、もしかして……私が、女神を……」

 

「ああ、凄かったなぁ。 お前のその力があれば、もう怖いモンなんて何もねぇだろ?」

 

 

褐色肌の妖精は煽り立てるような口調だ。

だが、聞きようによっては悪魔の誘惑のようにも聞こえる。レイは昨日、この妖精と出会い、怯えている内に何かされた。

その何かというのが「力の譲渡」であれば、その力で女神を―――「自分に逆らう愚か者」を消せたということに―――。

 

 

 

「……ふっ……ふふふ……。 そう……そうよ……。 私は正しい……正しいから力を振るえる! なら、この力で……女神達を……排除すればいい!! あーっはっはっはっは!!!」

 

 

 

 

―――その力は、レイから恐れを奪い、狂気を齎す。

先程まで全てに怯えていた頼りない女性などいない。そこにいるのは、力を得た狂人の姿。

そんなレイの姿に、黒い妖精は満足そうに顔を歪ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん……ここは……?」

 

「あ! 白斗!! 良かった……目を覚ましてくれて……」

 

「ネプ……テューヌ……? 俺達は、一体……?」

 

 

妙な肌寒さを覚えながら白斗が目を開ける。

そんな彼を出迎えてくれたのは、必死に白斗の心配をしてくれているネプテューヌの顔だった。

彼女の優しい表情を見て白斗も安心したのだが、一体何が起こったのかよく分からない。

それに周りが妙に明るい―――というよりも空色のように青い。一体どこなのかと周りを振り返ると―――。

 

 

 

「………あの、ネプテューヌさん」

 

「はい、何でしょうか白斗君」

 

「……何で俺の真上に地表があるんでしょうか」

 

 

 

そう、真上に何故か地表が見えていたのだ。しかも徐々にこちらへと迫りくる。

それにこの肌寒さ、加えて風を切るような音から察するに―――。

 

 

 

「ジャンジャジャ~ン!! 今明かされる衝撃の真実!! なんと私達は今、真っ逆さまに落ちているのだー!!!」

 

「ああ、なーんだそういうことか………ってえええええええええええええ!!?」

 

「おおー、ナイスノリツッコミ!!」

 

 

 

ネプテューヌのお気楽な回答に一瞬笑って流そうとして―――できなかった。

これはどこからどう見ても自分たちが落ちているのだ。

勢いからして相当なもので、後5分も立たないうちに地上に叩きつけられてしまうだろう。

 

 

「いやー、まさにピンチって奴ですなー」

 

「何でお前はそんなに冷静なんだ!?」

 

「私、落下のプロですから!!」

 

「どんなプロ!?」

 

 

満面のドヤ顔を見せつけられてしまった。

しかし思えば彼女は確かに落下のプロらしく、アイエフやコンパとの出会いも何故か空から落ちてきたからだという。

落下慣れしている彼女からすれば、この程度ピンチでも何でもないのだろう。

 

 

「それにホラ、私女神化できるしー」

 

「そりゃ頼もしいな!、というワケでマジで頼む!! そろそろヤベェ!!!」

 

「はいはーい。 もー、私の騎士様は慌てん坊なんだからー……ねぷ?」

 

 

だがこういう状況を打開する方法がある。ネプテューヌの女神化だ。

彼女が女神化し、ウィングを展開すれば飛行が可能になる。

ネプテューヌは女神化をするべく胸に手を当てて目を閉じる―――のだが。

 

 

「……あれれ~? おかしいぞ~?」

 

「おい、なんだそのどことなく腹立つばーろーっぽい台詞は」

 

「女神化が出来ないや。 テヘペロ☆」

 

「……はああああああああっ!!?」

 

 

いよいよ、慌てだした。何故か女神化が出来ないというのだ。

昨日まで女神化には問題など無く、シェアエネルギーにも異常など無かったはず―――。

 

 

「くそっ!! ネプテューヌッ!!!」

 

「ひゃっ!? は、白斗!!?」

 

 

否、今は考えている場合ではない。

ネプテューヌだけでも助けようと必死に手を伸ばし、その体に抱きしめる。せめて自分がクッションとなるように―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ~、待ってよぉ~」

 

「もう、相変わらず遅いわね。 これが最後の休憩よ!! お誂え向きにあそこにふかふかの草が敷き詰められてるからあそこで一休みしましょ」

 

「はぁ~、やっと休める~……って、あれ~?」

 

「今度はどうしたのよ? こうやって立ち止まっている間にも『アレ』が誰かに……」

 

「え~とね……お空から何か降ってくるよ~?」

 

「はぁ? 空からそんなワケ―――のわあああああああああああああああああっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォン!! ―――そんな凄まじい音と衝撃波が巻き起こり、白斗とネプテューヌは地面に落下した。

 

 

「あいっててて……ね、ネプテューヌ!! 大丈夫か!!?」

 

「うん! ピンピンしてるよ!! 何せ主人候補生があるから!!」

 

「何それ羨ましい」

 

「大丈夫大丈夫! 白斗もこの小説の主人公だからこの程度じゃ死なないって!」

 

「おう、メタ発言やめろや」

 

 

さて、叩きつけられたとは言っても真下にあったのはふかふかの草の塊。

どうやらこれがクッションとなって二人を守ってくれたらしい。ネプテューヌには勿論、白斗の方も骨折などの重傷は負っていないようだ。

互いの無事を確認するや否や漫才を始める辺り、本当に余裕はあるらしく、それでいて二人の仲の良さも示していた。

 

 

「……あれ~? その声……ねぷちゃんに……白くん~?」

 

「……ん? その、のんびりとした声……へ? ま、まさか……」

 

 

まだ粉塵が舞う中、聞こえてきた鈴の音を転がすような可愛らしい声。

だが、二人はその声に聞き覚えがあった。

というよりも忘れるはずがない。何せ、それは二人からすれば“昨日”別れたばかりなのだから。

やがて晴れる砂煙、その向こう側にいたのは―――。

 

 

 

 

 

「あ~やっぱり~~!! 白くんにねぷちゃんだ~~~!!」

 

「ぷ、ぷるるん!?」

 

 

 

 

 

 

―――紛れもない、二人の大切な友人。プルルートだった。

 

 

「ぷるるんっ!! 会いたかったよー!!」

 

「あたしも~!! ねぷちゃんや白くんにずっと会いたかった~!!」

 

 

再会して早々に二人はがっちりと指を絡めながら、互いの手を握り合う。

何故?と言った無粋な質問より、再会を喜び合う二人の少女に白斗もほっこりしながら腰を落ち着けた。

 

 

「白くんも~! 会えて嬉しい~!!」

 

「おう、俺もだ……ってプルルート!? 抱き着くな!!」

 

「コラー!! ぷるるんってば、白斗は私のなんだからー!!」

 

 

ネプテューヌとの再会を一頻り喜んだ後、プルルートも白斗に駆け寄った。

握手でもするのかな、と身構えていたところ何と彼女は白斗に抱き着いてきたのである。女の子特有の柔らかさに包まれ、白斗は一気にドギマギしてしまう。

何とかネプテューヌがベリベリとプルルートを剥がして一呼吸置いた。

 

 

「いやー、まさか一話でお別れと再会の両方をやっちゃうなんてさすがのネプ子さんでも予想できなかったよ」

 

「今日のお前、メタ発言全開だな……ん? 待てよ、プルルートがいるってことは……」

 

 

一息付けたことで、白斗もようやく見えてくる。

“ここはどこなのか?”、“何故ネプテューヌは女神化出来なかったのか?”、そして―――“どうしてプルルートがここにいるのか?”

それらを解決する答えが、ただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよ~。 ここはあたしの世界……神次元だよ~」

 

「「え…………えええええええええええええええええええええええ!!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、白斗とネプテューヌは―――次元の壁を超えてしまったのである。




サブタイの元ネタ ドラクエ3より「そして伝説へ……」

ということで今回から新章突入!!
サブタイ通り神次元、ひいてはネプVの世界へ!!
ということでここからの物語はアニメよりも原作ゲーム寄りの展開になります。そこに白斗、そしてカスケードが加わった一味違う神次元をご賞味あれ。
さて、それに伴い新キャラ登場。慇懃無礼な語り部ことジョーカーさん。やっと出せたべ……。
勿論彼も物語に絡んでいくのでお楽しみに。

では今回は短いですがこの辺りで。感想ご意見お待ちしております!
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