恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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第五十一話 暗躍の七賢人

某国某所―――。

まるで円卓会議を思わせるような部屋の中、そこに二人の女がいた。

否、一人は紛れもない“銀髪の、眼鏡を掛けた気弱そうな女性”なのだが―――もう一人は宙に浮かぶ本に腰かけた、“褐色肌の妖精”である。

 

 

「ど、どういうことですかクロワールさん!?」

 

「だーかーらー、今言った通りだよ。 “あっちのお前”の力で、こっちに来ちまってんだよ。 あっちのプラネテューヌの女神が。 一応オマケもついているけどな」

 

 

クロワール、と呼ばれた妖精は悪びれもせずそう告げた。

白い歯を見せてケケケ、と意地の悪そうに笑ってみせるも銀髪の女性の焦燥は頂点に達してしまっている。

 

 

「あ、あわわわ……!! もしかしなくても私の所為ですよね!? ど、どうしましょう!?」

 

「ったく、ホントお前ってば力がねーとビクビクオドオドだな。 見ててイラッと来るぜ」

 

「で、でもでもでも……!!」

 

「とにかく、あっちの女神はこっちの世界じゃ女神化は出来ねぇ。 脅威にもなりゃしないんだから放っておいたっていいんじゃねーの」

 

「だと良いんですけど……」

 

 

それでも女性の気は晴れない。

焦り、罪悪感、葛藤、呵責。ありとあらゆる負の感情に踊らされ、一ヵ所に留まることも出来ず、見苦しいまでに落ち着きがなかった。

 

 

 

「……おっと、そろそろあいつらが来る頃だから俺は退散するぜ。 んじゃ、後は頑張れよ。 お前、一応七賢人のリーダーなんだろ? ―――キセイジョウ・レイ」

 

 

 

クロワールは後始末など一切する素振りも見せず虚空に消えてしまう。

後に残されたのはただ一人。恋次元で白斗達を消し去って見せた女性と瓜二つを超えて同一の姿を持つ女性―――キセイジョウ・レイだけだった。

 

 

「あ、く、クロワールさぁーんっ!! もう、どうしたら……!!」

 

「あーら、レイちゃんってば相変わらずソワソワしてるわねぇ。 デキる女はもっと余裕を持たなきゃダメよぉ?」

 

「全くだ!! 俺様のように不動の心とボディを持っていればいいのだ!!」

 

 

未だに慌てているレイ。

そこに姿を現した二つの人影。一つは―――人型のロボットとしか言えない影。だが声色は男で、口調は女。

もう一つはこれまた戦車にロボットを搭載したような風体の影。こちらは荒々しい口調と声色、それに声量。レイも竦み上がってしまう。

 

 

「ワシは常々不思議に思うわい……よく七賢人……延いては女神に弓引く行動が起こせたものじゃな」

 

「あら、アーさん。 今日は早かったのねぇ」

 

「フン、ルウィーの女神はてんでダメでなぁ。 自由が利くんじゃ」

 

 

そして更にもう一つ。小太りな中年の容姿と声の持ち主。

どっかりと自らの席に着くと腕を組んで鼻息を鳴らす。

 

 

「で、では今日集まれる人が全員集まったので……今日も七賢人会議を始めましょう!」

 

「待て待て!! おいレイ、いつものことだが七賢人と言いながら四人だけじゃないか!! 後の三人はどうしたぁ!!?」

 

「ぴっ!? すみませんすみませんすみません!!!」

 

「一々謝るな!! いいから説明しろぉ!!!」

 

「もう、コピリーちゃんってば……仕方ないから裏方担当のアタシから説明してア・ゲ・ル」

 

 

大柄な風体のロボット―――コピリーと呼ばれたそれは、凄まじい迫力でレイに詰め寄る。

気弱な彼女に受け止めきれるはずもなく、頭を抱えて怯えてしまっていた。

これでは会議にならないとロボットの様なスーツを着た人物が立ち上がる。周りも慣れたものだと、誰も気にしていなかった。

 

 

「アブネスちゃんはいつも通り、プラネテューヌの女神のところへ取材と言う名のカチコミ。 後、新人ちゃん二人には例の『アレ』を探しに行ってもらってるわぁ」

 

「ふん、ネズミとマジェコンヌが抜けた穴をあの色物が埋められるかのぉ……」

 

「まぁ、下っ端ちゃんはともかくとしてぇ……もう一人は弱いってことはないわよぉ? 正直、アブネスちゃんとは色んな意味で仲悪いけど」

 

 

妖艶な声と仕草をしながらロボットスーツの人物は語り続ける。

フフ、と決して崩れない余裕の姿勢にアーさんと呼ばれた中年はまた鼻を鳴らした。

 

 

「まぁ、役に立つなら何でもいいわい」

 

「同感だ!! ここ最近、全く暴れられないからな!! 何かドデカイ事件でも起こしたい気分だぜ!!!」

 

「ぶ、物騒なのはダメですよぉ!!」

 

(物騒……ねぇ。 まぁ、アタシ達が裏でやってることはもう物騒を通り越してるケド)

 

 

明らかに一枚岩とはとても言えないこの組織。

不仲という分けではないが、纏まりがなかった。それでも彼らは今日も集う。ただ一つの目的のために。

 

 

「そ、それでは……私達の目的のため、今日も作戦会議を……」

 

「声が小さいいいいいいいいいいいい!!!」

 

「ひゃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」

 

 

―――騒々しい中、それでも不穏な企みは着実に進行していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぇ~。 それでねぷちゃんと白くん、こっちの世界に来ちゃったんだね~」

 

「いやー、一時はどうなることかと思ったけど白斗も無事だったしぷるるんと再会できたしこれはこれで良しとしますか!」

 

「相変わらずお気楽なことで……まぁ、ネプテューヌらしいからいいか」

 

 

一方その頃、神次元にあるどこかの森でネプテューヌと白斗はプルルートとの再会を喜んでいた。

そしてこちらに来た経緯を詳しく話す。正直異世界に来てしまったなどと頭を抱えたい状況だが、ネプテューヌは全く気にしていないようなので白斗も暗い顔はしないことに。

 

 

「はぁ、たった一日とは言えぷるるんやピー子と会えなかったと思うともうネプ子さん食事も喉を通らなくて……」

 

「そうだな。 カレーのお代わりをいつもなら三杯食べてたところ二杯しか食べなかったからな」

 

 

因みに白斗のツッコミは冷めていたという。

 

 

「あれ~? あたし、ねぷちゃんとは一ヶ月ぶりに会うんだけど~」

 

「え? いや、でも確かに昨日この世界に帰ってたよね?」

 

「……そうか、次元間の時差か。 二人が転送されたタイミングでまた時差が発生したんだ。 逆算するにこっちの一日が、向こうにとっての一ヶ月になるっぽいな」

 

「わ~! 白くんすごい~!」

 

 

一方で新たな問題も発生した。それは恋次元と神次元における時差の問題。

それは二つの次元を繋ぐ間が不安定であることを意味しており、そのせいでプルルート達の帰還も遅れてしまったのだ。

今はこうでも、いつ時差が滅茶苦茶になってしまうかもわからない。できることなら早急に戻る手段を確立しなければ。

 

 

「……あ・な・た・た・ち……いつまで人の上でお話してるのよおおおおお―――っ!!!」

 

「「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!?」」

 

 

と、ここで白斗とネプテューヌの世界がひっくり返った。

彼らの真下から急に“聞き覚えのある少女の声”がしたと思うや否や何かが起き上がり、二人を吹き飛ばしてしまったのである。

 

 

「全く! 人の上に落ちてきた挙句そのまま長々とお話するなんてどんな神経してるのよ!?」

 

「あ、いたんだ。 ってことは第五十話からずーっと乗っかってたのかー。 ごめんごめん」

 

「謝罪が軽い!! それと第五十話って何!?」

 

 

少女はネプテューヌに詰め寄る。

その怒りは最もだろう。しかし、白斗は謝罪の言葉などすっかり忘れてしまっていた。何故なら目の前にいた少女の姿に驚いていたから。

黒髪のツインテール、少しきつめな言動、服装こそへそ出しルックのドレス姿だが彼女は紛れもなく―――。

 

 

「って……お前、ノワールか!?」

 

 

そう、白斗達の知るラステイションの女神ことノワールと全く同じ姿の少女だった。

声も、キツめの口調や仕草に至るまで同じだ。

唯一の違いは服装だが、それも本人のコスプレ趣味と割り切ってしまえば違和感など無くなってしまう。

 

 

「なーんだ、ノワールもこっちの世界に来てたんだ。 ノワールもそんなに怒んないでよー、私とノワールの仲なんだしー」

 

「いやお前、親しき仲にも礼儀ありという言葉があってだな!? そ、それよりノワール!! 本当にスマン!!」

 

 

ここで我に返った白斗が頭を下げる。ついでにネプテューヌの頭も無理矢理、押さえつけるように下げさせた。

それでも少女は烈火のごとく怒り狂い。

 

 

「何よ貴方達! 初対面の相手にそんな失礼かつ馴れ馴れしい態度取らないでくれる!?」

 

「しょ、初対面!?  私、ボッチなノワールの数少ない友達なのにそれは酷いよー!!」

 

「酷いのはそっちでしょ!! だ、大体ボッチじゃないし!! 私にはプルルートって言う……し、し……親友がいるんだからねっ!!」

 

「そ、そんな!? ノワールが、ぷるるんと親友……!? ノワールはボッチなんだよ!? ということはこのノワールは偽物!!?」

 

「えぇ~!? ノワールちゃん偽物だったの~!?」

 

「何でそうなるのよ!!?」

 

 

なんと、初対面であると言い出したのだ。

一瞬意地悪でそう言っているのかと思えばどうも違うらしい。先程の発言から鑑みるに、彼女は自分が「ノワール」であることは否定しなかった。

だが、ネプテューヌや白斗とは面識がないと言い張る上に明らかに嘘をついているとは思えない言動。

一方でプルルートとは親友と言い張っている。プルルートの天然ボケも加わり混迷する中、一人冷静に事態を見つめ続けた白斗が達した結論は。

 

 

「なぁ、プルルート。 お前の世界に親友の“ノワール”がいるって言ってたよな?」

 

「うん、そうだけど……ノワールちゃんが偽物だったなんて~!」

 

「いや、それはネプテューヌのボケだから……。 ってことはつまり……神次元のノワールって事になるのか」

 

 

そう、以前の海水浴でプルルートは自分の世界にもノワールがいると話したことがある。

本当に瓜二つだったが故に一瞬困惑してしまったが、自分達の事を知らない以上彼女は“この世界の住人として生を受けたノワール”なのだろう。

 

 

「は? アンタ、一人だけで納得しているようだけどちゃんと私にも説明しなさいよ」

 

「ああ、実はな……」

 

 

彼女のキツイ視線を受けながらも白斗が説明を続けた。

自分とネプテューヌはこことは異なる世界である「恋次元」という世界に住んでいたこと、そこにプルルートがやってきたということ、そして今度は自分達が不慮の事故でこの「神次元」に来てしまったということ。

 

 

「……というワケなんだ」

 

「そんな話、ホイホイと信じられると思う? 確かに一時期ピーシェは姿を消したし、それを追ってプルルートが迎えに行ったけど貴方達が本当に同一人物か証明できないじゃない」

 

 

どうやら余り信じてもらえていないようだ。

事実と合致する部分はあるのだが、先程の無礼が祟って信頼を大きく損ねているらしい。

仕方がないとはどうしたものかと白斗も頭を悩ませていると。

 

 

「こらノワール!! そんな風に疑り深いからボッチなんだよ!!」

 

「だ、だからプルルートがいるって言ってるでしょ!!」

 

「じゃー、それ以外には?」

 

「………………と、友達は数じゃなくて質なのよ!!」

 

「いや、友達に質を求めるのもおかしいんじゃ……」

 

 

すると白斗に噛みついている姿を面白くないと感じたらしい、ネプテューヌが抗議の声を上げ始めた。

こうなると売り言葉に買い言葉、この二人がヒートアップすると中々止まらないのは恋次元でも同じだったのだ。

やれやれと溜め息を付きながら白斗が仲裁に掛かろうとすると。

 

 

「ねぇ、ノワールちゃぁん……?」

 

「ってプルルート!? なんでへ、へ、変身してるのよぉ!?」

 

「ねぷううううう!? まさかのぷるるん激おこ案件ー!!?」

 

 

いつの間にか、プルルートが女神化をしていた。

ほんわかとした女の子から一転、冷徹な美女ことアイリスハートへと変貌した彼女はその冷たい眼差しと冷ややかな微笑でノワールを見下ろす。

 

 

「そんなにオトモダチって言ってくれるならぁ……あたしの言うことは信じてもらえるのよねぇ?」

 

「ま、まぁね……貴女の言うことなら、信じてあげるのも……ヤブサカじゃゴザイマセン……」

 

(あ、こっちのノワールも女神化ぷるるんには逆らえないんだね)

 

 

親友ではあったが、パワーバランスが決まっているようだった。

 

 

「この二人は紛れもなくあたしの大切なオトモダチなの。 二人も謝ってることだし、許してあげたらぁ? 細かいことは水に流してあげるのも、女の器量よぉ?」

 

「で、でもね…………」

 

「そう言えばぁ……この世界に帰ってきてから、この姿でノワールちゃんを堪能していないのよねぇ……ねぷちゃんや白くんと会えなくてストレス溜まってたしぃ……」

 

「ヒッイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!?」

 

 

舌なめずりをしながらコツ、コツとハイヒールを鳴らして近づくアイリスハート。

聞けばこの世界のノワールは女神ではない、ただの一般人。そんな彼女がプルルートに勝てるはずもなく、ただ怯えていると。

 

 

「まぁまぁ、プルルートも落ち着いて」

 

「ちょっと白くん? 邪魔しないで欲しいんだけどぉ?」

 

「俺達のためを思って言ってくれてありがとな。 まぁ、ストレス発散だったら愚痴なりなんなり付き合うからさ。 とりあえず今は矛収めてくれ」

 

「……仕方ないわねぇ、白くんが言うなら。 でぇもぉ……」

 

「分かってる、後でパフェ作るからさ。 腕により掛けちゃうぜ」

 

「……ふふっ、細かいことは水に流してあげるのも女の器量よねぇ」

 

(な、何なのよアイツ!? 口先だけでプルルートの暴走を止めた!?)

 

 

ノワールには信じられなかった。

自分にとって唯一無二(ここ重要)の親友であるプルルートの最大の問題点だと思っていたアイリスハートによる暴走。

少なくとも自分の知るところでは誰もが止められなかったはずなのに、この白斗と言う少年は止めて見せたのだ。

しかも彼女を然程恐れることもなく、それこそまるで友人に語り掛けるかのような軽さで。

 

 

「そうそう! 皆で甘いものを食べれば仲良くなる!! 特に白斗の作るデザート絶品だから、こっちの偽ノワールも食べてみてね」

 

「だからその偽物扱い止めなさいっ! ってか、彼……白斗だっけ? 何なのよ一体?」

 

「ふっふっふー、優しくて、頭が良くて、カッコ良くて……私の自慢の騎士様だよ! ドヤァ!」

 

「なんで貴女がドヤ顔するのよ……。 それに騎士様って…………ふーん?」

 

 

白斗の事となると、自分の事のように自慢しだすネプテューヌ。

一瞬訝しんだノワールだが、なんとなく察した。白斗の事を語っているネプテューヌは、嬉しそうで、幸せそうで、この場にいる誰よりも乙女だったから。

そうこうしているうちにプルルートも感情が収まったらしく、女神化を解除した。

 

 

「それじゃ早速、あたしの教会に案内してあげる~!」

 

「ま、待ちなさいよプルルート! 私はまだ、『アレ』を見つけてない……」

 

「ノワールちゃん~……?」

 

「ま、まぁプルルートにとっても大切な友達との再会を祝わせてあげるのも、友達として大切なことよね!? ええ、貴女の教会で存分に祝いましょ!?」

 

 

やはり悲しきパワーバランスが、そこにあった。

 

 

「それにまぁ、プルルートを御せるってことは本当に親しいってことなんでしょうし……さっきの話は信じてあげるわ。 それと……邪険にしてごめんなさいね」

 

「いや、それに関してはこっちに非があるし信じてくれたからいいよ。 な、ネプテューヌ」

 

「うんうん! さ、帰ったらみんなで白斗のパフェ食べよー!!」

 

 

そして一方、自らの不手際に関してはしっかりと詫びるノワール。どうやら責任感が強いことはどの世界のノワールも同じらしい。

しかし、白斗とネプテューヌは大して気に留めるでもなく、そのままプルルートをが案内するプラネテューヌの教会へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがあたしのプラネテューヌだよ~」

 

 

やがて森を抜け、見えてきた大都会。

ネプテューヌらがいた世界と比べると小規模で、高層ビルの高さも幾分が低い。しかしそれでも随分発展した街であることが分かる。

何より、ここで暮らしている人達は皆穏やかというか、自由気ままな印象があった。

 

 

「おお! プラネテューヌ、我が第二の故郷よー!!」

 

「いや、確かに雰囲気は似てるけどもお前の故郷じゃないからな?」

 

「えぇ~!? ねぷちゃんってあたしの国出身だったの~!?」

 

「ホラ勘違いしちゃう子が約一名!! でも、それくらい雰囲気が似てるな」

 

 

だが、そう思えてくるくらいに雰囲気が酷似しているのだ。

ネプテューヌの国ことあちらのプラネテューヌでも発展しているところ、そして何より人々が自分らしく、自由に、そして楽しく暮らしている点。

まさにネプテューヌが掲げる信条と全く同じだったから。

 

 

「……実際に来てみて安心したよ。 プルルートの国も素敵なところで」

 

「白くんありがと~! あたしは~、みんなが楽しく暮らせたらそれが幸せだと思うんだ~」

 

「……ふんだ。 私だって、女神になればこのくらい……いやゲイムギョウ界一凄い国作るんだから……!」

 

 

白斗はプラネテューヌの空気を目一杯吸って、やっとその魅力を堪能できた。

心優しいプルルートの想いが溢れた国を気にり、プルルートも白斗が自分の国を気に入ってくれたことを嬉しく思っている。

自分の国を語っている時のプルルートは珍しく饒舌。街の名所を案内している時の姿は、とても誇らしげで、嬉しそうにも見えた。

一方で彼女の親友ことノワールは悔しそうに歯嚙みしている。

 

 

「で、あそこがあたしの教会だよ~」

 

「おお~! あれがぷるるん……の、教……会……」

 

 

そして更に歩くこと数十分、辿り着いたのはプラネタワーに酷似した巨大な建造物……ではなく、平たい一軒家だった。

確かに他の建物よりはちょっと大きくて、ちょっと広く、ちょっと人の出入りもある。しかし何も事情を知らない人に「ここが女神様の住まいだよ」と言って信じる人がいるだろうか。

……よく見ると屋根の一部が剥がれているのは気のせいだろうか。

 

 

「プルルートって国営のセンスは無いのよね。 いつも家計簿は火の車だって教祖がボヤいてたわ。 もうちょっと仕事してたらこんなことには……」

 

「こんなトコまでネプテューヌに似なくても……」

 

「ねぷーっ!! 失礼なー!! 私のプラネタワーは傾いたりしてないよ!?」

 

「一昔前、無茶な政策やって国の経済を傾かせたって聞いたが?」

 

「アーアーキコエナーイ」

 

 

一方でやはり仕事嫌いな面が災いして、国営そのもののセンスは無いらしい。

こういう怠惰な面も共通してしまうのかと白斗は嘆くばかりだった。

 

 

「みんな~! ただいま~!」

 

「あ、ぷるちゃん! お帰りなさいです!」

 

「早かったですねプルルート様……ってノワールはいいとして、後ろの人達は?」

 

 

意気揚々と玄関のドアを潜ったプルルート。

そんな彼女を出迎えたのは、二人の少女だった。

一人は柔らかい雰囲気の、全体的にオレンジ色で胸も大きいセーターを着こんだ少女。そしてもう一人はコートを着込んだ、真面目そうな小柄の少女。

そう、彼女達の姿はどこからどう見ても―――。

 

 

「わーい!! こっちの世界のあいちゃんとこんぱだーっ!! ぎゅーっ!!」

 

「わひゃぁ!? ちょ、何なのよアンタ!!?」

 

「ひゃわわ~!? い、いきなり抱きつかないでくださいです~!!」

 

 

嬉しさが感極まって抱き着いてしまったネプテューヌ。

そう、彼女達はアイエフとコンパ。以前プルルートらから聞いた話によると、こちらの世界では彼女達と一緒に暮らしているとのことだ。

つまり、“あの少女”もここにいる―――。

 

 

 

 

 

 

「…………ねぷてぬ……おにーちゃん…………?」

 

 

 

 

 

 

その時、ひょこっと物陰から飛び出る小さな顔。

黄色い髪、快活そうな服、青い瞳、大きなリボン。そして白斗とネプテューヌを呼び慕うその声。

間違いない、彼女は―――。

 

 

「ピー子!! いい子にしてたー!?」

 

「よ、ピーシェ。 ……約束通り、会いに来たぜ」

 

 

その姿を見るなり、ネプテューヌと白斗は彼女に微笑みかけた。

この世界に来てしまったのは半ば事故の様なものだが、それはプルルートとの、そしてあの少女―――ピーシェとの再会を意味していた。

ピーシェにとっては、大切な人達と一か月ぶりの再会となる。その嬉しさの余り、目に涙を浮かべて。

 

 

「お……おにーちゃーん!! ねぷてぬー!!」

 

「ピーシェ!」

 

「ピー子ぉ――――!!」

 

 

三人が、感動の再会を果たすべく抱きつこうと近づき―――。

 

 

 

「ど―――――ん!!!」

 

「「グホァ!!?」」

 

 

 

―――ピーシェの超怪力によるタックルで、二人は無残にも沈んだ。

倒れ込んだ二人にピーシェは嬉しそうにすり寄る。

 

 

「あははは! おにーちゃんとねぷてぬだー!! やくそくまもってくれたー!!」

 

「あ、ああ……ピーシェも……変わり、な……く………ぐふっ」

 

「この、胃袋を抉るようなタックル……ピー子も、相変わらずで……安、心……ガクッ」

 

 

そして二人は、気絶してしまうのだった。

 

 

「う、うぅ~……。 良かったね~ピーシェちゃん~……。 あたし、感動したよ~!」

 

「いや、どこに感動できる要素が?」

 

 

一人涙ぐむプルルートに、ノワールは一人冷めたツッコミをかますのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、プルルート様が言ってたのってアンタ達のことだったのね」

 

「ピーシェちゃんを助けてくれてありがとうございましたです!」

 

 

再会の喜びもほどほどにアイエフ達によって中へと案内された。

どうやら恋次元での話はよく聞かされていたらしく、事情を話せばすぐに理解してくれる辺り物分かりが良い二人である。

 

 

「そういうことなら歓迎しないわけにはいかないわね。 改めてよろしく、白斗とネプ子」

 

「ねぷぅ!? ちょっとあいちゃん!? ちゃんと私の正式名称言ってよ!!」

 

「でもネプテューヌって言いにくいし」

 

「ですです! 可愛いから、私もねぷねぷって呼ぶです!」

 

「ずこーん! やっとあいちゃんやこんぱから正式名称読んでもらえると思ったのにー!!」

 

 

そして気になるネプテューヌの呼び方は、やはり元の世界と同じだった。

彼女には悪いが、余り環境が変わったように感じられないものだから白斗も安心してしまう。

やがて彼女達案内された部屋、そこにいたのは―――。

 

 

「初めまして! 私がこの国の教祖、イストワールです!(*^▽^*)」

 

「わー!! こっちのいーすん、ちっちゃくて可愛い~♪」

 

「ち、ちょっと抱き着かないでください~!!(×Д×;)」

 

 

こちらの世界よりも体格も更に小さく、声もより幼く、どちらかと言えば可愛らしさを前面に押し出したかのような本に乗る精霊。この神次元におけるイストワールだった。

そんな彼女の可愛らしさにメロメロになったらしく、ネプテューヌがその腕に抱きしめている。

体格差が体格差なので、ネプテューヌの細腕と言えど致命傷になりかねないようだ。

 

 

「はいはい。 ネプテューヌ、ストップな。 改めて黒原白斗です」

 

「んでもって、私がみんなの主人公ことネプテューヌさんだよー!」

 

「ああ、貴方達が! お話はプルルートさんやピーシェさんからかねがね……というよりも、最近はお二人の話しかしなくてですね(*´ω`*)」

 

「い、いーすんってば~! 余計なこと言わなくていいよぉ~!」

 

 

どうやらこの世界に戻ってきた後も白斗やネプテューヌのことばかり話していたらしい。

さすがに恥ずかしくなったのか、プルルートが赤面した。

 

 

「私の事も、今ではすっかりいーすん呼びですし……。 ですが、お二人はどうしてこちらに? 恋次元の方で何かあったのですか?( ・ω・)」

 

「んじゃネプテューヌ、説明の方頼む。 その間に俺はパフェ作るから」

 

「ラジャー!! えーとね、どこから話したものかなー」

 

 

説明はネプテューヌに任せ、白斗はコンパによってキッチンに案内される。

かねてからの約束通り、皆にパフェを振る舞うらしくそのため早速キッチンに籠ってしまった。

その間に説明役を任されたネプテューヌによってこちらの世界に来てしまった経緯が話される。

 

 

「謎の女性によってこちらの世界に飛ばされてしまった……ですか(; ・`д・´)」

 

「話だけ聞くとどうも信じがたいわね」

 

「でもネプ子達がこの世界に来てしまったのは事実ですし……話の真相はさておき、二人を元に戻す方法だけは模索した方がいいのでは?」

 

 

やはり次元間移動など簡単に信じられる話ではないらしい。

だが既にピーシェはプルルートと言った事例がある以上、信じない訳にもいかないのだ。

何より当面の問題としては白斗とネプテューヌが元の世界に帰れるかどうかなのだ。

 

 

「方法としては、プルルートさんが使ったように相互間のシェアエネルギーを使うことでゲートを開く方法がありますね(´▽`)」

 

「なーんだ、これで解決だね!」

 

「ところが前回の転送で大幅にシェアを使ってしまった挙、句プルルートさんと来たらお昼寝、ゲーム三昧、裁縫ばっかりで全然仕事に手を付けてくれなくてですね_:(´ཀ`」∠):_」

 

 

キリキリと痛む意を押さえながら、イストワールが吐血する。否、アイエフも微妙に顔色が悪かった。

どうやらプラネテューヌの女神様はとりあえずぐうたらなところから始まるらしい。そして周りが振り回されるのもお約束のようだ。

 

 

「つまり、俺らでシェアを稼いでゲートを繋がなきゃならんと」

 

「あ、白斗! パフェ出来た!?」

 

「俺達の今後よりパフェかよ。 ホラ、デラックスハクトパフェだ。 ご賞味あれ」

 

『『『お……おおぉぉ~~~!!!』』』

 

 

そう言って白斗がテーブルに並べ始めたパフェは、この場に居た全ての女の子の目を惹いた。

ふんだんに使われた生クリームは勿論、中に詰められたフルーツ、スポンジケーキやクレープ生地、盛り付けられたチョコレート菓子やアイスクリーム、そしてプリン。

甘いものをこれでもかと詰め込んだ、デラックスの名に恥じない至高の甘味である。

 

 

「わーい!! 白斗のパフェ久しぶり~!! 私のリクエスト通りプリンもある!!」

 

「おにーちゃん! これねぷのぷりん!?」

 

「おー、そうだとも。 これはねぷのプリンだ」

 

「やったーっ!!」

 

 

甘いもの大好き+無類のプリン好きであるネプテューヌは勿論、プリンが乗っていることでピーシェも目を輝かせる。

彼女にとっての「ねぷのプリン」の定義が曖昧なのだが、とにかくネプテューヌが絡めばそれは「ねぷのプリン」になるらしい。

 

 

「わ~! 白くんのデザートだ~!!」

 

「ふ、ふん! これは食べてあげるしかないわね!」

 

「ホントに凄いわね……! でも私のコンパだって負けてないんだから!」

 

「あいちゃん、何をそんなに張り合ってるですか……?」

 

「こんなパフェ初めてです! 白斗さん、ありがとうございます!(*'▽')」

 

「いえいえ、んじゃアイスとか溶けちまわないうちに食べてくれ」

 

『『『いただきま~す!!』』』

 

 

プルルートは勿論、ノワール達もすっかり目を奪われてしまったようで我慢ならず、早速パフェにかぶりつく。

途端、誰もが破顔させた。皆が美少女である以上、その笑顔はまた格別である。

 

 

「甘くて美味しい~!! ありがと、白斗!!」

 

「んん~っ! やっぱり白くんのパフェは最高だね~」

 

「しかもただ甘いだけじゃくて、時々フルーツの酸味もあったりと飽きさせないわね。 クリーム自体の甘さも控えめにしてるし……ふふっ、これは認めざるを得ないわね♪」

 

「あいちゃん、あーんです!」

 

「あーん。 うん、コンパが食べさせてくれると更に格別ね!」

 

「ねぷのぷりんもさいこー!! おにーちゃん、またつくってね!!」

 

「ええ! こんなパフェ、初めて食べました! 幸せです~……(*´ω`*)」

 

「お気に召していただけたようで何よりでございます、お嬢様方」

 

 

全員から高評価を得られたことで白斗も満足そうに一礼する。

特に食べたことのあるネプテューヌとプルルートの気に入り様は半端なものではなく、その笑顔はまさに国宝級。

あの笑顔を見るためなら命すらも懸けられるというほどにまで、それはそれは尊いものだった。

やがて全員が食べ終えたので早速片付けを始める。片付けにはアイエフも加わってくれた。

 

 

「ご馳走様。 確かにネプ子やプルルート様が気に入るだけあるわね」

 

「お粗末様でした。 ……ってか気になったんだが、アイエフはプルルートのことを様付けしてるんだな。 俺の知ってるアイエフは普通に呼び捨てしてたからなんか新鮮だ」

 

「なっ!? アンタの世界の私ってそんなに命知らずなの!? い、一体どれだけプルルート様が恐ろしいか……あ、ダメ………あの日の、恐怖が……アアァアアァァアァ」

 

「ハイライト消えた挙句発狂!? 一体何があったよ!?」

 

「あいちゃん、小さい頃に女神化したぷるちゃんの暴走を目の当たりにして……それ以来こうなっちゃったんです……」

 

「納得」

 

「納得しないでよ~! 白くん酷い~!」

 

 

そんなやりとりがおかしくて、笑い声が巻き起こるプラネテューヌの教会(約一名を除く)。

白斗も別次元に飛んだと聞いて一瞬不安だったが、それも払しょくされていた。

こんなにも楽しくて、明るくて、温かい世界に来られたのだから―――。

 

 

「ガラッ!! 幼年幼女をかどわかす悪の匂いを嗅ぎつけて私☆参上!!」

 

「え、ガラッってこの教会引き戸ないんですが!?Σ(゚Д゚;)」

 

 

するとどこからか引き戸を開ける音を響かせて女が飛び込んできた。

ピンクを基調としたフリルたっぷりのドレス、長い金髪、手にしたマイク、そして―――明らかに「お前が幼女だろ」と言わんばかりの背丈。

 

 

「って、アンタまた来たの!?」

 

「何度でも来るわよ! 既にこの教会が幼年幼女を攫う悪の組織だって私は確信してるんだから、尻尾を掴むまで絶対に諦めないわよ!!」

 

「も~! しつこいよ~!」

 

「え? 何なの、この殺伐とした雰囲気……私こういうの苦手なんだけど~」

 

 

するとノワールとプルルートが明らかに顔を顰めた。

どうやらこの少女は何度もこの教会を訪れているらしい。が、彼女達を悪と断定している辺り気持ちの良い人物では無さそうだ。

 

 

「おっと、新顔がいるわね。 自身の罪を隠すために新しく戦力を投入してくるとは……これはいよいよキナ臭くなってきたわね!」

 

「……何なんだお前は」

 

(あ、白斗もちょっと不機嫌になっちゃってる)

 

 

白斗の声のトーンが明らかに落ちた。

これは場合によっては口よりも先に手が出かねないとネプテューヌが冷や汗を垂らす。

そうとも知らず、目の前の女は意気揚々と名乗りを上げて見せた。

 

 

「フン、なら改めて自己紹介してあげるわ。 私の名はアブネスちゃん!! 七賢人が広報担当にして、幼年幼女を守る真実の伝道者!!!」

 

 

何やら大仰な紹介だった。

このアブネスという女は随分と大きく出たものだと悪態を付く一方で、何やら気になることを述べていた。

 

 

「七賢人……?」

 

「この神次元で女神反対を掲げて行動している組織です。 まぁ、その多くが嫌がらせなんですけど……(-_-メ)」

 

「ふーん、ならこの言いがかりも嫌がらせでしかないってコトか」

 

「言いがかりでも嫌がらせでもないわ!! この教会が各国から幼年幼女を攫っているってアブネスちゃんは確信してるんだからね!!」

 

 

どうやらこの世界では七賢人という組織が跋扈しているらしい。わざわざ名乗りを上げている辺り、この世界ではそれなりに大きな組織なのだろう。

恋次元における市民団体の行きつく先がその七賢人なのかもしれない。尤も白斗からすれば、女神を害そうとしている時点でこの女に不快感しかなかったが。

 

 

「大体なんだ、その幼年幼女誘拐って」

 

「知らないの? いま世界中で身寄りを無くした子供達が行方不明になっている事件が多発しているのよ!! そしてその犯人がこのプラネテューヌの教会なのよ!!」

 

「ですから、私達は身寄りを無くした子供達を保護しているだけです!(; ・`д・´)」

 

「私もあいちゃんも、ピーシェちゃんもこの教会で預けられて育っただけです!」

 

 

こんなやり取りをみたことで白斗もネプテューヌも合点がいった。

プルルート達は孤児院のような事業を始めたらしく、アイエフやコンパ、ピーシェはそれ故にここで家族のように過ごしてきたのだろう。

だが同時期に子供達を誘拐する事件が発生、犯人をここだと決めつけては取材と言う名の迷惑行為をしているのがこのアブネスら七賢人らしい。

 

 

「コラー! 何の証拠もないのにぷるるん達を犯人呼ばわりするなー! 大体キミだって幼女なのにー!!」

 

「私は幼女じゃないわよ!! これでも大人のレディよ!!」

 

「そのナリで!?」

 

「ナリのことは言うなー!!」

 

 

明らかに幼女としか思えない見た目だが、あれでもいい歳らしい。

いい歳して服の趣味は非常にキツイと言わざるを得ないが。それでも白斗からしたら、彼女の外見年齢だろうが服の趣味だろうがどうでもよくなった。

 

 

「とにかく!! こうして幼女を攫って教会の一員として育ててるという前提がある以上、徹底的に取材して―――」

 

 

ズドン!! ―――そんな音と共に、アブネスの目の前に一歩足が踏み出された。

怒りが頂点に達すると大暴れをするプルルート―――ではなく。

 

 

「……そこまでにしてもらおうか」

 

「ヒッ!? な、何なのよアンタ!!?」

 

(あ、白斗がブチ切れですわ)

 

 

白斗だった。女神を愛する彼にとって、これ以上の狼藉は耐え難いものだった。

暴走の予感にネプテューヌは冷や汗を垂らすも、同じく腹が立っていたので止めはしない。

アブネスも白斗の殺気とも言える雰囲気に当てられ、恐怖でその小さな体を震わせるが報道で培った度胸の賜物か、まだ口を開き続ける。

 

 

「こ、こっちは正当な取材をしてるのよ!? 邪魔をする権利なんて―――」

 

「不法侵入」

 

「は?」

 

「名誉棄損」

 

「ち、ちょっと……」

 

「女神様への不敬罪」

 

「い、いや…………だから……!」

 

 

つらつらと並べられる罪状にアブネスは怯むどころか言葉を失う。

白斗はただ、淡々と述べているだけだ。それだけの筈なのに、途轍もない恐ろしさが込められている。

 

 

「こんなモンまだ序の口。 こっちは余りある罪状でアンタを今すぐしょっ引いてもいいんだ。 それだけのリスクや覚悟を背負ってまで誘拐だの何だの言う度胸はあんのか?」

 

「え……え……っと……」

 

「あんのかって聞いてんだよ……アァ!?」

 

「ヒッイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!?」

 

 

鋭く、どす黒い眼光がアブネスを貫く。

すっかり彼の殺気に威勢を削がれ、アブネスは腰を抜かして怯えた。

その恐ろしさと来たら、ネプテューヌ達も言葉を失ってしまう程に。

 

 

「女神様殺そうってんなら、自分も殺される覚悟持ってから臨むんだな」

 

「こ、殺すってそこまで物騒なこと言ってないわよ!?」

 

「同じだ。 お前の軽率な発言で女神様の人生がぶっ壊れるとか考えなかったのか? 考えてないよなァ? 考えてないで軽々しく真実だの何だの勝手なことをほざいてやがるのか」

 

 

一見恫喝にも思える光景だが、白斗はただアブネスに証拠の開示や覚悟を見せることを求めているだけだ。

だが、アブネスはそれが出来ない。どちらも無いから。まさしく言いがかりに過ぎないから。

 

 

「……もう一度聞く。 女神様が誘拐したとか抜かすなら証拠を見せてみな。 もし無いってんなら、先程の罪状でお前を―――」

 

「き、今日の所はこれで勘弁してあげるわよぉおおおおおおおおお!!! 覚えてらっしゃあああああああああああああああああい!!! びえええええええぇぇ――――ん!!!」

 

 

証拠も覚悟も、欠片も持ち合わせてなかったアブネスは白斗の恐ろしさに飲まれ、泣き叫びながら逃げていった。

また来ると公言している辺り、案外メンタルはある方なのかも知れないが少なくともしばらくは寄り付かないだろう。

 

 

「さっすが白斗! 口先だけでマスゴミ退治! 私の騎士様はこうでなくちゃ!」

 

「白くんありがと~! 何だかあたしもスッキリしちゃった~」

 

「ええ、白斗さん本当に助かりました<m(_ _)m>」

 

「本当に助かったわ……。 あのままだとまたプルルート様が暴れてたろうから……」

 

「白斗さん、頼りになるです!」

 

「ま、暴力沙汰にならかった点は評価できるわね」

 

 

一方、迷惑なアブネスを撃退したことでネプテューヌ達もご機嫌のようだ。

相当ヘイトの堪るようなことをしていたらしく、アブネスへの同情が皆無な辺り、彼女の取材と称した迷惑行為は腹に据えかねていたらしい。

 

 

「スッキリしたなら何よりだ。 けど七賢人……ねぇ、名前通りならあんなロクでナシなのが後6人もいるってことか……」

 

「今のところ表立って出てきているのがあのアブネスという人だけですが(´Д`)」

 

「全く、あんなロクでもない連中放っておいたらいけないわ! プルルート、さっさと牢屋にでもぶち込んじゃなさいよ!! 早くしないと女神メモリーまで連中に……」

 

「女神メモリー? 何じゃらほい?」

 

 

七賢人が野放しに出来ない連中であることは理解できた。だがそんな中、ノワールの口から聞き慣れない単語が飛び出す。

その「女神メモリー」とやらが七賢人の狙いの一つでもある以上、聞かない訳にもいかない。

 

 

「女神メモリーというのはこの世界で数百年に一度生まれるという結晶です。 それを食べた女性が、低確率で女神様になることが出来るのです(*‘∀‘)」

 

「この世界ではそんな風に女神様が生まれるのか。 ってことはプルルートも?」

 

「そうだよ~。 でも、あたしはピクニックの最中に偶然って言うか~、きっかけ自体はよく覚えてなくて~」

 

 

どうやらプルルートは女神になりたくてなったわけではないらしい。

彼女の口ぶりから察するに、恐らくピクニックの最中に女神メモリーを間違って食べてしまったためらしい。

 

 

「なるほど、合点がいった」

 

「え? 白斗、何が?」

 

「ネプテューヌがこの世界で女神化出来ない理由だよ。 この世界のシェアはお前の世界と違うワケだから、この世界で女神メモリーを食べないと女神化出来ない」

 

「ふむふむ。 あれ、でもぷるるんは私の世界でも変身してたよ?」

 

「プルルートの場合は自分の体内に、自分のシェアを蓄積してるから大丈夫だったんだろう。 女神メモリーってのかシェアの塊なら、尚更だ」

 

「ナ、ナルホドナー」

 

「ネプテューヌ、お前何一つ理解してないだろ」

 

「し、してるしてる~! よーするに、女神メモリーってのを食べればオッケーなんでしょ?」

 

「間違ってない辺りが腹立つ」

 

 

兎にも角にも、ネプテューヌのためにも女神メモリーというものを手に入れなければならない。

彼女がこのまま女神化が出来ないのは色々不都合も生じる。

 

 

「イストワールさん、その女神メモリーはどこで手に入るんですか?」

 

「メモリーコアと呼ばれる特定の場所です。 この近くにも一ヵ所あって、ノワールさんは日々そこに通い詰めているんですよ(^-^)」

 

「そう言うことよ! 私だって女神になりたいんだから!!」

 

 

それで妙に不機嫌だったのか、と白斗も納得した。

今回の邂逅も彼女の女神メモリー探索中に起こったのだろう。自分の悲願を邪魔されたとあっては、確かに機嫌を損ねるのも仕方のない話だ。

 

 

「そういうことなら話は早い! ね、白斗!」

 

「ああ、だな」

 

「え? ねぷねぷも白斗さんも、どうするんです?」

 

 

真っ先に立ち上がったのはネプテューヌ、次いで白斗。

最早アイコンタクトだけで成立する彼らの意思疎通に目を白黒させながらもコンパが訊ねてくる。

 

 

「だーかーらー、これから女神メモリーを探しに行くの! 勿論見つけたらノワール優先で譲ってあげるからね!」

 

「え? な、何よ急に!?」

 

「急にも何もこの世界で私が女神化するには、女神メモリーってのをゲッチュしないといけないんでしょ? だったら手に入れるしかないじゃない」

 

「あ、あのねぇ!? この私が何年も通い詰めて、それでも見つからないのよ!? 簡単に言わないでくれる!?」

 

「大丈夫! この圧倒的主人公、ネプテューヌさんと一緒ならすぐ見つかる! ついでに都合よく私の分も手に入るって! ホラホラ、行こ行こー!!」

 

「ちょ、あ、ひ、引っ張らないで……のわあああああぁぁぁ~~~~!!?」

 

 

主人公らしいというべきか、主人公にあるまじきというべきか。

ネプテューヌは持ち前の強引さでノワールの手を取り、そのまま外へと出て行ってしまった。

 

 

「やれやれ、場所も聞いてないってのに……。 プルルート、悪いが付き合ってくれるか?」

 

「いいよ~。 白くんやねぷちゃんと一緒にお出掛け~!」

 

「おにーちゃん、ぴぃもいきたいーっ!!」

 

「ゴメンなピーシェ、これから行くところは危ないからピーシェは連れていけないんだ。 いい子にしてたら今度はホットケーキ焼いてあげるぞ~」

 

「むぅ~……わかった! ぴぃ、いいこにしてるっ!!」

 

 

さすがにネプテューヌとノワールの二人だけで行かせるわけにはいかない。

白斗とプルルートも立ち上がり、二人の後を追うことに。

すると当然と言わんばかりにピーシェもついていきたいと言い出したのだが、優しく彼女の頭を撫でてあげるとピーシェも大人しくなった。

 

 

「す、凄いわね……あの聞き分けのないピーシェに言うことを聞かせるなんて……」

 

「驚きです~……」

 

「ん? そうか? ピーシェは良い子だから、ちゃんと言う事聞いてくれるよな~?」

 

「うん! ぴぃ、いいこ!!」

 

 

そんな光景にアイエフとコンパは驚きを隠せない様子だ。

確かに普段のピーシェはどちらかと言えば聞き分けのない元気っ子だが、白斗相手だと借りてきた猫のように大人しくなるのだった。

 

 

「白くん~、そろそろ行かないと~」

 

「あ、ヤベ! ネプテューヌ達に置いていかれちまう! それじゃ、行ってきます!」

 

「行ってきま~す」

 

「あ、待ってください! 女神メモリーは……行ってしまいました……(゚Д゚;)」

 

 

これ以上時間を食っていてはネプテューヌ達を完全に見失ってしまう。

急いで白斗とプルルートは彼女達の後を追った。

とは言ってものんびり屋さんなプルルートのペースに合わせて少しだけゆっくりと走る。

 

 

「ねぇ、白くん~」

 

「ん?」

 

 

不意に話しかけてきたプルルート。

そんな彼女に優しく振り返ってみると、彼女は眩しいまでの笑顔で―――。

 

 

 

 

 

 

「…………また、一緒になれたね~」

 

「……ああ! またよろしくな、プルルート!」

 

 

 

 

 

 

 

再び巡り合えたことに喜びを隠せない白斗とプルルート。

未知なる世界に対する不安も、彼女達と一緒なら、やがて期待に変わっていく。

見たこともないゲイムギョウ界で、白斗とネプテューヌ達の慌ただしい物語が今、幕を開けるのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ……。 女神と騎士がこの世界に無事、到達しましたか……。 さて、ここからどんな物語が語られるのか……舞台袖からじっくり見物しましょう。 『語り部』としてね……」

 

 

 

 

 

 

だが、彼らは気付かない。

物陰から見守る、『語り部』と称する男の存在に―――。




お待たせいたしました!神次元編第二話でございます。
物語の導入って色んな説明が入るから書いている側としては結構スッキリさせたいなというのがありまして、余りゴチャゴチャと説明していると物語が失速しちゃうのが悩みの種でして。
そこをネプテューヌ達の明るさと騒がしさでカバーできていれば幸いです。
さて、この物語における七賢人ですが名前の通り七人います。その内、元メンバーであるマジェコンヌとワレチューは既に抜けています。
つまり新しい二名が追加されているのです。その二名とは誰か、次回にご期待あれ。
それでは皆様、次回『女神メモリーを求めて三千里』でまたお会いしましょう!
感想ご意見、お待ちしております!
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