恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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第五十三話 ぷるるんな一日

―――白斗とネプテューヌがこの世界に来て、そしてノワールが女神になり、自分の国であるラステイションを建国して、早くも三ヶ月が経った。

ネプテューヌと白斗もすっかり神次元での生活に馴染み、今ではプルルート達の家族として受け入れられ、毎日を楽しく過ごしている。

のだが、この男―――黒原白斗はのんびりとは無縁そうに忙しく動き回っていた。

 

 

「うっし、そろそろラステイションへ向かうかな」

 

「えー、白斗ってばまたノワールの所へ行くの~?」

 

「おにーちゃん、もっとあそんでー!」

 

 

書類をまとめ上げた白斗が立ち上がると、後方から不満気な声が二つ聞こえてくる。

ネプテューヌとピーシェのものだ。特にピーシェは白斗と遊びたい余り、彼の足にしがみついてくる。

困ったような顔を浮かべながらも、白斗はピーシェの小さな頭を撫でてあげた。

 

 

「悪いな、今日はお仕事の日なんだ。 明日には時間が出来るから、いっぱい遊ぼうな」

 

「って白斗ー! ピー子にだけなでなでするなー!! 私にもしてー!!!」

 

「お前は何ちびっ子と張り合ってんだ……ほら、これでいいか?」

 

「ねぷ~……ふふ、白斗のなでなで気持ちいい~……」

 

 

結局はネプテューヌも撫でてあげる白斗だった。

 

 

「あ、白斗さん。 今からラステイションへお出かけですか?( ・ω・)」

 

「イストワールさん。 そうですけど、何か用事でしたか?」

 

「いえ、恋次元側の私と通信が繋がっておりまして。 折角ですから少しくらいお話されはどうかと思って(^-^)」

 

「わーい! いーすんとお話だー!! 白斗、私が送ってあげるから話していこうよ!」

 

「そうだな。 んじゃ、お言葉に甘えて」

 

 

どうやら三ヶ月ぶりに通信が繋がったらしい。

久々にイストワール、あわよくばネプギア達の声も聞きたくなった。近況報告などもしなければならないことから、その申し出を喜んで受けることに。

 

 

「では、呼び出しますね……(゚Д゚)」

 

「いーすん自身が通信機になるとはいえ、この無表情いーすんはちょっぴりホラーだよ……」

 

「確かに……」

 

 

そして肝心の通信機だが、それはイストワール自身だった。

別世界の自分と意識をリンクさせるようなもので、結果その間イストワールは処理能力が限界を迎え、反応を示さなくなる。

やがて聞こえてきた声は、こちらの世界に比べて落ち着いた雰囲気の少女の声。

 

 

『白斗さん、ネプテューヌさん。 お元気ですか?』

 

「わーい、三ヶ月ぶりのいーすんだ!! 私も白斗も元気いっぱいだよー!!」

 

「お久しぶりです、イストワールさん」

 

 

恋次元側のイストワールだった。

彼女は、神次元側のイストワールに比べて一回り大きく、言動も容姿も大人っぽい印象を与える。

当然仕事も出来、今も昔も女神補佐として活躍していた。

ネプテューヌがこちらの世界に飛ばされている以上、今では彼女こそが事実上のプラネテューヌのトップと言っても過言ではない。

 

 

『それは何よりです。 ただ、こちらとしては三日ぶりなのですが』

 

「やはりこっちの一ヶ月が、そっちの一日ですか……』

 

『そうなりますね。 白斗さん、お仕事の方は順調ですか?』

 

「何とか。 小細工でせせこましく稼がせていただいておりますよ」

 

 

 

肩を竦めながらも、白斗が報告を続ける。彼が行った、プラネテューヌのシェア獲得について。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白斗が目を付けたのは、まさに建国したてのラステイションだった。

最初は建国に伴い、幾らかの援助を申し出たのだが基本的にノワールはワンマンアーミーを信条としているため、中々受け取ってもらえない。

そこで白斗はプルルートに提案し、ラステイション間との貿易を優遇する措置を取らせたのだ。

 

 

「ラステイションとの関税を緩める? 随分と大きく出たわね」

 

 

この話が出た時、唯一訝しんだのは他ならぬノワールだ。

話を持ち掛けられたプルルートとネプテューヌはと言えば、話の全容を聞かないまま「承認~」と判子を押してしまったものである。

 

 

「まぁな、これならノワールが嫌だって言っても受け入れざるを得ないし。 ノワールにとって得はあっても損はない話だろ?」

 

「で、貴方達のメリットは?」

 

「ラステイション内におけるプラネテューヌの印象が良くなる。 プラネテューヌはのびのびとした自由を信条とする国だし、その上で他国にも常に友好的な国だと認識してもらえる」

 

「なるほど、出来立てホヤホヤの私の国を宣伝材料に使うワケか。 抜け目ないわね」

 

「全部、“ノワール”に教わったんだけどな」

 

「え? 私? どういうことよ?」

 

「いんや、こっちの話」

 

 

白斗自身、機転はあっても政治に深く精通しているわけでは無かった。

そんな彼を鍛えたのは、恋次元側のノワールだ。彼女の仕事を手伝ううちに自然と身に付いた知識、交渉術、胆力。

それら全てを白斗は吸収し、独自の手腕で活かしていた。

 

 

「ここで突っぱねると、ラステイションは『他国に攻撃的だ』って国民からの印象が悪くなっちまうぞ~? 受ければ『ラステイションは友好的な国だ』っていい印象持ってもらえるぞ~?」

 

「ぐぬぬ……貴方の話に乗らざるを得ないってのが癪だけど……いいわ、お受けします」

 

「おう、よろしくな。 詳細はまた今度に詰めよう」

 

「ええ、よろしく」

 

 

恋次元ではノワールの良きパートナー、しかし神次元では交渉における最大のライバルとなっている白斗。

こうして白斗は他国間との交渉を一手に担い、互いに「持ちつ持たれつ」な関係を上手く築き上げていった。

時に妥協、時には交渉材料を用いて有利な条件を引き出すなど巧みな交渉術を余すことなく発揮する。

―――全ては「プラネテューヌの印象を良くする」ことに力を注いでいた。

 

 

「白斗さん! 我が国が『平和に、自由に、そして仲良く暮らせる国』としていい評判を得ていますよ! ……まぁ、シェアはルウィーも含めてダントツ最下位ですが(ノД`)」

 

「一朝一夕には良くなりませんって。 それに俺はただ宣伝しただけ。 実際に素敵な国にしてるのはプルルートですから」

 

「えっへん~! 白くん、分かってる~♪」

 

「出来ればプルルートさんにはもう少しお仕事して頂ければと……( 一 一)」

 

 

今回、白斗達に必要なのは「ゲイムギョウ界でのシェア独占」ではなく、「シェアそのものの確保」である。

そのため白斗はプラネテューヌの評判を良くすることで、プルルートやネプテューヌに向けられる信仰心そのものを以前より多くしようと務めた。

国に革新を齎すワケではなく、余り知られていなかったプラネテューヌをゲイムギョウ界中に知ってもらえたこととプルルートのんびりとした運営方針が見事に融和、シェアの量としては三国中最下位ではあるが、シェアの量自体は以前よくも増えたのだという。

 

 

「と言っても印象操作なんて簡単にできるものじゃないけど……増してや国単位でなんて」

 

「あいちゃん、凄いでしょ!! これが私の騎士様、白斗なのだ!! ドヤァ!!」

 

「なんでお前がドヤるんだ……。 まぁ、小細工と裏工作しか取り柄のない白斗さんですから。 これくらい出来なきゃネプテューヌの傍にはいられんさ」

 

 

素の戦闘力そのものは弱い白斗だが、仕事は出来る。

持ち前の頭脳と機転、フットワークで各所に根回しを行い、プラネテューヌの印象操作に努めていた。

元よりそう言った仕事には慣れていたので、驚くほどの効果を生み出したワケである。

彼の手腕に、神次元側のアイエフもすっかり感心してしまっていた。

 

 

「いやー、白斗様々だよー。 というワケで私達は安心してゲーム出来るね、ぷるるん!」

 

「だね~。 ねぷちゃ~ん、後でぷにぷにやろ~」

 

「貴方達も仕事しなさーい!!m9 ゚ Д゚)」

 

「「ひゃわわわわわぁぁ~~~!!?」

 

 

―――と、このように基本女神様がぐうたらでサボり魔なのでシェアの順位としては一向に最下位に甘んじていたが、獲得できるシェアの量自体は増えているということだった。

因みにシェアの量では最下位とのことだが、実は量的にそこまで大差をつけられているわけではなく、十分な信仰心を得られているとのことだ。

 

 

「…………という感じですね、俺らは」

 

『さすが白斗さん。 貴方がいればそちらは安心ですね』

 

「でしょでしょー? さっすが私の騎士様!」

 

「お褒めに与り光栄です。 ……で、そちらは大丈夫ですか?」

 

 

仕事にはあまり関与していないネプテューヌが何故かドヤ顔だ。

けれどもそんな彼女に喜んでもらえて満更でもない白斗だった。

とりあえあず話題を切り替えようと、恋次元側の近況を聞いてみた―――のだが。

 

 

『うぐッ!? うぅゥゥウウウウウウウウゥゥゥ………!!!』

 

「ねぷっ!? いーすんが読者にお見せ出来ないような形相で苦しみだした!?」

 

「イストワールさん!? どうしましたっ!!?」

 

 

腹の辺りを押さえて苦しみだしたイストワール。微妙に吐血しているような気がする。

とても良い子には見せられない光景にネプテューヌや白斗も大慌てだ。

 

 

『それが……このままでは、ゲイムギョウ界は……滅ぶかも知れません……』

 

「滅っ……!? どういうことですか!?」

 

『では……まず、女神様達の近況をお伝えしないと……いけませんね……』

 

 

凄まじい胃潰瘍に悩まされているのだろうか。

体中をプルプル震わせながらも、イストワールは力を振り絞って話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――まず、ネプギアさんですが……。

 

 

「お兄ちゃ~ん……お姉ちゃ~ん…………どこ~……?」

 

 

寂しさの余り、涙目でフラフラと辺りを彷徨うようになってしまいました……。

 

 

「ああ、ネプギアならやりかねないな……」

 

「素直な良い子なんだけど……それ故に甘えたがりなんだよねネプギア……」

 

 

ええ、その通りなんです……。

正直見ているだけでもう可哀想になってくるくらいで……。当然、こんな状態ではお仕事にも手を付けてくれません。

そしてお仕事と言えばアイエフさんとコンパさんも……。

 

 

「…………はぁ…………」

 

「…………ふぅ…………」

 

 

溜め息ばかりでお仕事に手を付けてくれず、更にツネミさんと5pb.さんは……。

 

 

「白斗くんが……いない……。 うぅ……白斗くぅん……」

 

「ネプテューヌ様と一緒にいなくなるなんて……あ、あぁ……ぁぁぁ……」

 

 

すっかり弱気の弱腰になって……大好きだったアイドル活動も休止中です。

 

 

「いやそんなにか!?」

 

「そんなにだよ、白斗」

 

「何故ネプテューヌが同意する!?」

 

 

こればかりはネプテューヌさんの言う通りです。

マーベラスさんに至っては……。

 

 

「失礼しますっ!! 白斗君帰ってきてますか!?」

 

「ま、マーベラスさん……。 いえ、昨日ご説明した通りまだですけど……」

 

「そう、ですか……」

 

 

一縷の望みをかけて訊ねてきたマーベラスさんには申し訳ないのですが、現実は非情。

白斗さんがいないことを伝えるとしょんぼりして部屋を出て行き……。

 

 

「あの!! 白斗君いつ戻ってくるんですか!?」

 

「で、ですからまだ未定です!!」

 

「そう、ですか……」

 

 

三秒も経たないうちにまたやってきて再確認。

少し語気を強めにしてやっとこさ追い出して……。

 

 

「でもでもっ!! 白斗君と通信くらいは……」

 

「いい加減にしなさーい!!!」

 

 

今度は一秒もしないうちに入室するという有様です。

こんな感じで皆さんが使い物にならないので結果、私がお仕事を全て引き受けて……正直、倒れそうです……っ。

 

 

「いやみんな情緒不安定すぎるだろ!?」

 

「でもみんなの気持ちも分かるよ。 私だって一日一回は白斗キメないと苦しいもん」

 

「俺はヤバイ薬か何かか!?」

 

 

とまぁ、そういうわけでプラネテューヌは現在内政面が滞っています……。

女神たるネプテューヌさんがいないのもありますし、今まで補佐してくださった白斗さんの不在、そしてネプギアさんやアイエフさん達の機能停止でどうしようもないんです……。

でも、酷さで言えば他国も引けを取らず……ラステイションでは……。

 

 

「…………(ぽけー)」

 

「…………(ふにゃー)」

 

 

あの真面目で仕事熱心なノワールさんとユニさんが揃ってポンコツ化……。

 

 

「っだあああああああ!! 白斗ぉおおおおおお!! なんでネプテューヌと一緒に神次元に飛んじまうんだああああああああああああああ!!!」

 

「お兄ちゃん……寂しいよぉ……(くすん)」

 

「お兄ちゃんと遊びたい遊びたい遊びたい~!!」

 

 

ブランさんは白斗さんと触れ合えないストレスから常時キレ気味で、ロムさんはぐずりだし、ラムさんも聞き分けが無くなる始末……。

 

 

「白ちゃん白ちゃん白ちゃん白ちゃん白ちゃん白ちゃん白ちゃん白ちゃん白ちゃんあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

そしてベールさんは……なんかもう、怖いです……。

 

 

「何なの一体!? どいつもこいつも狂気に侵されてるんだけど!? マジ怖ぇよ!!?」

 

「因みにネプ子さんも白斗と一日以上会えないと発狂します」

 

「ネプテューヌ、頼むからお前は優しいままのお前でいてくれ」

 

 

というわけで各国の女神様は仕事が手が付かない状況で……。お陰様で自国の統治すらままならない状況。

現に問題も少しずつ発生しているそうです。

……そういう意味で、ゲイムギョウ界はある意味滅亡の危機に瀕しています……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐ……聞いているこっちの胃が痛くなってきた……」

 

「因みに私の事を心配してくれているのがネプギアとツネミだけだったので、ネプ子さんも心が痛いです」

 

 

イストワールの話を聞き終えた白斗とネプテューヌは胸を抱えて苦し気な表情を浮かべていた。

今なら吐血しそうになっているイストワールの気持ちがよくわかる。

 

 

『そ、そういうワケですので白斗さんとネプテューヌさんには一刻も早く戻って頂きたく……』

 

「り、了解です。 全力を尽くします……」

 

『お願いします……。 と、そろそろ通信が不安定に……またご連絡しますね』

 

「うん! いーすん、またねー!!」

 

 

こうして恋次元側との通信は終了してしまった。

欲を言えばネプギア達にも一言挨拶したかったのだが、イストワールの話を聞く限りでは皆気は確かではない様子。

正直怖くもあったので今回は見送ることになった。そうこうしている間に通信のために無反応となっていた神次元イストワールも意識を取り戻し。

 

 

「……あ、お話は終わりました?(>∀<)」

 

「うん! ありがとね、いーすん」

 

「さて、ぼちぼちラステイションに行ってきますかね」

 

「それじゃ私が女神化して送っていくね! ぷるるんも呼ぶ?」

 

「いや、どーせ寝てるだろうし起こすのも可哀想だしな。 それじゃネプテューヌ、お言葉に甘えていいか?」

 

「わーい! 白斗とお出掛けだー!」

 

「仕事だってば……ま、仕事終わりに遊ぶくらいは女神様も大目に見てくれるか」

 

「見ますとも! 何たって私、白斗の女神ですからー!」

 

(ふふ、ネプテューヌさんったら……本当に白斗さんに事がお好きなのですね(*´ω`*))

 

 

他愛もないやり取りだったが、ネプテューヌからは幸せのオーラが溢れていた。

そんなオーラに当てられてはイストワールの顔もついつい綻んでしまう。

 

 

「それじゃいーすん、行ってきま~す!」

 

「夕飯までには戻りますんでー」

 

「はーい、いってらっしゃい(^▽^)ノシ」

 

 

元気よく手を振りながら白斗とネプテューヌはラステイションへ向けて出発した。

普段はプルルートと同じくらい仕事嫌いでサボりがちなネプテューヌだが、白斗が絡めばある程度はこなしてくれる。(それでもある程度な辺りが悲しいが)

本人としては仕事を果たしたいというよりも、白斗と一緒にいたいという気持ちゆえなのだろうが。

 

 

「ん~……いーすん……ぴーしぇちゃん……おはよ~……」

 

「あら、プルルートさん。 おはようございます(^∀^)」

 

「ぷるると! おはよー!」

 

 

そこへ眠たそうな声と共にふらりと現れる一人の少女。

今日もぬいぐるみを引きずり、寝ぼけ眼を擦っているこの国の女神様ことプルルートだった。

 

 

「ふぁぁ~……あれ~? 白くんとねぷちゃんは~……?」

 

「ねぷてぬとおにーちゃん、おしごと!」

 

「おしごと~……?」

 

「はい、白斗さんはノワールさんとの打ち合わせのためにラステイションへ。 ネプテューヌさんは白斗さんを送るために出掛けてます(´▽`)」

 

 

お蔭でプラネテューヌのシェアが少しずつ伸びているとイストワールもご機嫌そうに付け足す。

―――のだが、プルルートはご立腹のご様子で。

 

 

「むむむ~……! 白くん、いっつもノワールちゃんやねぷちゃんとばっかり遊んで……」

 

「いえ、ですから白斗さんはお仕事をですね……(;´・ω・)」

 

「それに、あたしのこと毎回置いていっちゃうんだよ~? 酷い~!」

 

「それはこんな時間まで寝ているプルルートさんが悪いかと(;´Д`)」

 

 

実際の所、最初の内は白斗やネプテューヌも何度か声掛けしたのだ。

だがドア越しに返ってくるのは、安らかな寝息か「起こさないで~」という不機嫌な声だけ。

そんなやり取りを何度も繰り返せば自然と置いていかれるのも当然という話。

無論仕事がない休日など遊びに付き合ってくれるのだが、だからと言って平日に置いていかれることにプルルートは不満を感じていた。

 

 

「……あたし、ノワールちゃんの国まで行ってくる~!」

 

「え!? いえ、プルルートさんにはやっていただきたいお仕事が……!!(; ゚Д゚)」

 

「そんなことより白くんやねぷちゃんが大事~! 行ってきま~す!」

 

「お仕事も大事ですよぉーっ!!(;>Д<)」

 

 

そんなイストワールの心の叫びも振り切って、プルルートは教会を飛び出してしまう。

彼女を見送ってくれるのは「いってらっしゃーい!」と元気よく手を振るピーシェくらいのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のラステイション。

 

 

「うーん、ノワール~。 このイベントシーンであっちこっちキャラが瞬間移動してる~」

 

「一々私に報告しないでメモとかに纏めて頂戴よ。 一人でゲームくらい静かにしなさい」

 

「こーゆーのは実況するのが大事なのっ! ゲームを一緒に味わう連帯感がね……」

 

 

立派に建てられた教会の一室、そこでは大画面に繋げられたゲーム機の前でボヤくネプテューヌの姿があった。

そんな彼女にはぁ、と溜息を洩らしつつもとりあえず彼女の「指摘点」は頭に叩き込んでおく。

 

 

「まぁまぁ。 ネプテューヌ、俺ももう少しで打ち合わせ終わるからそうしたら一緒にやろうぜ。 新作ゲームのテストモニターなんて中々出来ないしな」

 

「うん! ならじ~っくり進めますか~」

 

 

そう、ネプテューヌは現在ノワールの教会で新作ゲームのモニターをしていた。

ゲーマーといての血が騒いでいるのか、ネプテューヌは「こんな仕事なら大歓迎!」と嬉々としてテストプレイに励んでいる。

主な仕事としてはデバッガーに近く、ゲーム中の問題点を見つける作業だ。

 

 

「このテストモニターの件自体も白斗の提案だけど……よくもまぁ、思いつくものだわ」

 

「小細工や悪巧み大好きなんで」

 

 

現在ネプテューヌもプラネテューヌの女神の一人としてゲイムギョウ界にその名を広めつつある。

そこに注目した白斗は「アイリスハート様の友好的な触れ合いが別次元の女神とも交流を齎した」と大々的に喧伝。ネプテューヌの騒がしくも明るく、楽しく、何より優しい人柄も相まって一気に受け入れられた。

そしてノワールには「プラネテューヌの女神も大絶賛!」というお墨付きを得られると口添えして、ネプテューヌにこの仕事を回させたのである。

 

 

「こうして私の国のゲームは完成する一方、貴方達は友好国としてプラネテューヌを宣伝、着々とシェアを獲得……本当に白斗の筋書き通りって感じがして正直釈然としないわ」

 

「戦闘弱くておまけに仕事も出来ない騎士なんて、あいつのためにならないからな」

 

「……貴方もなんだかんだでネプテューヌに甘いわよねぇ」

 

 

一見ネプテューヌに厳しいようで、一番甘やかしているのはこの男かもしれない。

 

 

「ま、今のところ私としても大助かりだししばらくは貴方に乗せられておきますか」

 

「そうしてもらえると助かる。 これからもずっとだろうけど♪」

 

「あーら? 私だって乗せられたままじゃ終わらないわよ……?」

 

「ほほう、面白い。 師匠(恋次元ノワール)仕込みの辣腕を振るう時が来たようだ」

 

「ってまだ辣腕振るってなかったの!?」

 

「今のはメラゾーマではない……メラだ。 白斗さんの本領はここからだぜ?」

 

 

恋次元のノワールにあれやこれやとしごかれたおかげで白斗もそれなりに政治に詳しくなり、金や物の流れなども把握できるようになった。

今ではネプテューヌの女神補佐としてイストワールと共に愛する女神を支える無くてはならない柱となっている。女神になりたてのノワールに後れを取るつもりはさらさらなかった。

そんな彼の挑発的な態度にヒクつきながらもノワールはライバル心のようなものを感じ、不敵に微笑む。

 

 

「あ、たまにはプルルートに顔を出してやれよ。 ここ最近ロクに会ってないだろ?」

 

「そ、そうだけど……いざ女神になると仕事が……」

 

「……あー、我がプラネテューヌは友好国だってのに、この国の女神様は一度も視察に来ないのかー、そうなのかー」

 

「うぐ……! 受けざるを得ないような状況を作り出して……!」

 

「はっはっは、これも師匠(恋次元ノワール)譲りだがな」

 

 

少しこじつけのようにも思えるが、少しの隙も最大限に利用する。

政治的な付き合いをする上で必要なことだとノワールに教わった。彼女の場合は競争心剥き出しのやり方だが、白斗は付き合いがしやすいように少しマイルドさを取り入れている。

具体的には角を立たせにくく、国益そのものよりも、国家間が友好的になるように誘導しているのだ。

 

 

「……それにしてもノワール、疲れが溜まってるな。 少し休んだ方がいい」

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、本当に休む暇もないのよね……。 まぁこれくらいだったら大丈夫。 この打ち合わせ終わったら少し休むわ」

 

(……こりゃ休まないパターンだな。 後で無理矢理にでも寝てもらうか)

 

 

やはり無理しがちな所は恋次元でも神次元でも共通らしい、ノワールの悪癖。

こちらのノワールとはそこまで深いつながりではないとは言え、目の前の知り合いが、増してや女神様が倒れるなど白斗としては容認できることではない。

何が何でも眠ってもらうと心に誓った。

 

 

「さて、後の打ち合わせは……二国間交流事業、共同主催のサブカル交流会か」

 

「初のラステイションとプラネテューヌ共同によるサブカルチャー満載のお祭り……正直私としてはもう気合入りまくりなのよね」

 

「……色んなコスプレ出来るもんな、公認で」

 

「そうそう! 夢にまで見た衣装を堂々と……ってち、違うから!! ってか何でコスプレのこと知って……いや!! 知らない知らない知らないーっ!!」

 

(これもノワール譲り……とまでは言うまい。 あいつの名誉のためにも)

 

 

やはりこちらのノワールもコスプレが趣味らしい。

そんな彼女が大手を振るってコスプレ出来る機会が訪れるのだから、気合も入るという物だ。

ノワールのためにも詳細まで詰めようと白斗も意気込んだその時。

 

 

「(ガラッ)白く~~~~~ん!!!」

 

「うおわっ!? ぷ、プルルート!!?」

 

 

何処からともなく、引き戸を開ける音と共にプルルートが殴り込んできた。それも白斗の名を呼びながら、大いに頬を膨らませて。

 

 

「な、なんでアンタがここに!? ってかここ引き戸無いんだけど!?」

 

「ぷるるんまであの迷惑幼女のような登場の仕方を!?」

 

 

『あの迷惑幼女』とは三か月前にプラネテューヌ教会に殴り込んできた七賢人の一員、アブネスのことだろう。

あれからというもの、迷惑な取材と称したカチコミは来なくなっておりプラネテューヌは至って平和―――は表向き。実はその裏で白斗がアブネスが来れないようあの手この手で根回ししていたというせせこましい努力があったのはここだけの話である。

 

 

「白く~ん、いい加減あたしとも遊んでよ~」

 

「え? あ、ああ……悪い。 今忙しいからネプテューヌと遊んでてくれ。 それかピーシェ……」

 

「ねぷちゃんやピーシェちゃんとは毎日遊んでるもん~! でも白くんってばあたしを放っておいて、いつもねぷちゃんやノワールちゃんとイチャイチャしてるし~!」

 

「い、イチャイチャじゃないわよ! 私は真面目な仕事の話をしてるだけ!! ってかアンタも女神なら遊び呆けるなーっ!!!」

 

 

何やらいつにも増して我儘―――というよりも駄々っ子なプルルート。

否、駄々っ子というよりは甘えん坊だろうか。

何か既視感を覚えていた白斗が、その正体を探っていると。

 

 

(……あ、ネプテューヌに似てるなそう言えば。 仕事やらクエストやらであんまり遊んでないとあんな風に不機嫌になってたっけ)

 

 

そう、ネプテューヌの姿そのものだった。

普段ぐうたらで仕事もサボる、その癖甘えたがり。白斗が傍にいない日々が続くと不機嫌になり、道理も何もかも吹き飛ばして白斗をひったくって遊びに出掛ける。

一日中付き合っているといつの間にか上機嫌になっていて、笑顔に溢れているのだ。

 

 

「……ノワールちゃん~」

 

「何よ、言っておくけどまだまだ仕事が―――」

 

「そこの書類、ミスしてるよ~。 それと~、あれと~、これも~」

 

「えっ!? 嘘っ!? あ、ホントだ……ってこれも!!?」

 

 

机に上に広げられた書類をちらと見たプルルートが突然何枚かを拾い上げてノワールに差し出してきた。

慌てて目を通してみると、確かに深刻な計算ミスやらタイピングミスやらが見つかった。

 

 

「プルルート、あんな細かいミス良く見つけられたな」

 

「えへへ~、偉いでしょ~」

 

「ああ、偉い偉い」

 

 

白斗も指摘されなければ見逃していたところだ。

それほどまでに細かく、しかしながら重大なミスを見つけ出したのは紛れもないプルルートの有能さだ。

彼女もネプテューヌ同様、仕事には精を出せば成果を出してくれるほど優秀なのである。

何はともあれ、ちゃんと感謝の態度を示さねばならないと差し出された彼女の頭を優しく撫でた。

 

 

「ふふ~、白くんのなでなで気持ちいいね~」

 

「ちょっ! ぷるるん、それ私の特権なんだけどー!?」

 

「ねぷちゃんのケチ~。 あたしもしてもらったっていいでしょ~」

 

(……やっぱりプルルート、寂しかったのか)

 

 

ようやく彼女がここまで駄々を捏ねる理由を悟った白斗。確かにここ最近、プルルートとしっかり遊んだ時間を取れていなかった。

どちらかと言うとネプテューヌやピーシェ、ノワールの用事に合わせることが多く、プルルートが寂しがるのも無理はないと痛感していた。

 

 

「……で、ノワールちゃん~。 その書類、すぐには直せないよね~?」

 

「え? ええ、これだけミスがあると他の部分も確認が必要ね……」

 

「ノワールちゃんは最近無理し過ぎだよ~。 少しは休まなきゃ~」

 

「あ、そこはぷるるんの言う通りだね。 最近ノワールは頑張り過ぎだし、休んだ方が良いよ」

 

 

プルルートやネプテューヌからも休息を勧められた。

これだけミスが発生しているということは、疲労の余り注意散漫になっている証拠。

確かにこのラステイションは建国して間もないため、一日でも早く安定させるためにも女神たるノワールの苦労は甚大なものだろう。

白斗の懸念が、最悪の形で的中してしまった。

 

 

「……ごめん、ノワール。 俺も無理をさせ過ぎた」

 

「いいのよ、そこは私の自己責任。 それよりも、白斗の方こそ大分無理してるでしょ」

 

「俺は別に……」

 

「そうだよ~! 白くん、いっつもお仕事お仕事でまともな休息なんてしてないよ~」

 

「だね! 白斗ももうちょっとガス抜きしなきゃ!!」

 

 

と、ここで矛先は白斗にも向けられた。

日々ノワールと仕事をしているということは、白斗も日々仕事をしているということ。

さすがにノワールほどの無茶はしていないが、それでも白斗にも疲労が溜まっていることは否定できなかった。

 

 

「常日頃ガス抜きしかしてないお前らに言われるのは癪だが……それもそうだな。 俺がまともな休憩を取らないと、ノワールも休んでくれそうにないし」

 

「うんうん! それじゃ~……」

 

「へ!? ぷるるん、ここでその光はまさか……!!」

 

 

するとプルルートが突然光り始める。

この光の正体―――いうまでもなく、女神化の光であり。

 

 

 

「それじゃ白くぅん……ノワールちゃんはお休みだし、あたしたちが遊んでても文句は言われないってことよねぇ!?」

 

「「「な、なんで変身するのおおおおおおおおおおおおおおお!!?」」」

 

 

 

するとそこには凡そ三ヶ月ぶりの登場となる、この神次元におけるプラネテューヌの守護女神ことアイリスハート様がご降臨なされた。

突然の女神化にネプテューヌとノワールは勿論、白斗も大慌てである。

 

 

「ねぷちゃん、ノワールちゃん。 白くんは借りて行くわよ~!」

 

「んな!? ぷ、プルルート!! ちょ、待っ……うおあああああああァァァァァ………」

 

 

そのまま白斗は凄い力で掴まれ、凄い勢いで外へと連れ出され、凄い速度で空の彼方へと消えていった。

怒涛の展開にネプテューヌとノワールはついていけず、二人が消えてしまった空をポカンと眺めるばかり。

 

 

「……いいの? 貴女の騎士様なんでしょ?」

 

「まぁ、ぷるるんが寂しがるのも分かるし今回だけは譲ってあげようかな。 堂々と待つのも正妻の務めだしね!」

 

「……アンタはアンタで健気ねぇ」

 

 

ネプテューヌは一瞬寂し気な表情を見せたものの、持ち前の明るさをすぐに取り戻し再び新作ゲームのテストプレイを再開する。

そんな彼女に呆れと同情を織り交ぜた視線を送りながら、ノワールは仮眠をとるべく寝室へと赴くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~い、我がプラネテューヌへ到着~」

 

「うおっと……ふぅ、今日はいつになく強引だな」

 

 

やがて下ろされたのは、プラネテューヌの市街地。

今日も今日とて人々がのんびり行き交っているが、さすがに空から人が降り立ったともなれば聊か注目を集めてしまっている。

しかもそれが露出の高いボンテージを着込んだ、グラマスな美女とくれば尚更だ。

 

 

「ってうぉい!! 目立ってる目立ってる目立ってるって!!」

 

「あらぁ、ホントねぇ。 どうしてかしら?」

 

「空から素敵な女神様が下りてきたら嫌でも目立つわ!!」

 

「いやねぇ、女神様だなんて。 白くんってばお上手なんだからぁ」

 

「事実!! 燦然たる事実!! えぇい、とりあえずここから離れるぞ!!」

 

 

周りからの視線に耐え切れず、その場から逃げるように白斗はプルルートの手を取って走り出した。

それでも彼女の程の美人で尚且つ露出の高いプロセッサユニットであれば嫌でも注目を集めてしまうのでなるべく大通りを避けていく。

 

 

「うふふ! 自分から手を握ってくれるなんて白くんは大胆ねぇ!!」

 

「そりゃ大胆にならざるを得ないからな!! ってか女神化は解除しないのか!?」

 

「えー? たまにはこの姿のままでもいいじゃない?」

 

「ああ分かった!! ならまずは服買いに行こう!! そのままは目立つ!!」

 

「あらぁ、デートでは定番ね。 いいわよぉ♪」

 

 

目立つ原因の一つである女神化の解除を促すが、プルルートは取り合わない。

どうやらしばらくはアイリスハートのままでいたいらしい。

ならばと白斗は無理に女神化を解除させること無く、まずは彼女の服装を周りに合わせるべく、服部屋と飛び込んだ。

 

 

「ハァ……ハァ……ぷ、プルルート……服、買ってやるからそれ着てくれ……」

 

「あら、いいの? ん~……ここは白くんのセンスにお・ま・か・せ♪」

 

「一番困る注文来たよ……。 なら……これとこれとこれ!!」

 

 

息を切らしながらも、奢ることは忘れない白斗。

今のアイリスハートに似合いそうな服を一目見て選び、次々と手に取っていく。

 

 

「え? そんな服を着ろって言うの?」

 

「言うんです! 絶対似合うから!!」

 

「あ、ちょっと……!」

 

 

確かにすぐさま選びはしたが、白斗なりに真剣に選んだつもりだ。

それらをプルルートに手渡し、試着室へと押し込む。

幸いにもまだ日の高い時間帯であったからかそこまで客はおらず、注目を集めていないという奇跡に感謝しながら白斗は試着室の前で待つ。

 

 

「……プルルート~、まだかー?」

 

「ち、ちょっと待って頂戴。 こんな服……恥ずかしいわよ……」

 

「はぁ? あんな露出の高いプロセッサ着てるくせに?」

 

「あ、あれとは違う意味よぉ! 大体こんな格好……似合わない……」

 

「……ってことはもう着てるんだな? なら御開帳だー!!」

 

「あっ!!?」

 

 

例え下着姿だろうが全裸だろうが構わないと言わんばかりに試着室のカーテンを開ける。

するとそこには落ち着かない様子でもじもじしているアイリスハートがいた。

 

 

「……な、何よぉ。 だから似合わないって言ったじゃない……」

 

 

―――そして、その服装は露出が抑えられている清楚系の服だった。

紫色のカーディガンを羽織り、丈の長い白いスカートを清潔に着こなしている。

確かに露出こそ押さえられていたが、お淑やかさを全面に押し出した分、美しさと可愛らしさが溢れ出ていた。

 

 

「何言ってんだよ……すげぇ似合ってるじゃん……」

 

「そ、そんなしみじみ言わないで頂戴……」

 

「そりゃしみじみするって! 店員さーん、この服買った! このまま着させてー!」

 

 

普段は露出など全く気にしないアイリスハートだが、こうした大人しめの服を着たことなど全くなかった。

というよりも女神化した時はプロセッサユニット以外身に纏わないので、こんな清楚でひらひらしている服を着ること自体に戸惑いを覚えていた。

それを白斗が無理矢理購入、そのまま着て街を歩く羽目に。店から出た途端、多くの視線がアイリスハートに突き刺さった。

 

 

「……ねぇ、白くん」

 

「なんでしょうか」

 

「……街の人達、あたしを見てない? やっぱり服が似合わなかったのかしら……」

 

「逆だ逆、絶世の美女だから目立ってんの。 周りの声、よーく聴いてみ」

 

 

プルルートは最初、服との組み合わせが悪くて悪目立ちしているのではと思い込んでいたがどうやら違うらしい。

白斗の言う通り、人々の声に耳を傾けてみると。

 

 

「おい、何だあの人!? メチャクチャ美人じゃん!!」

 

「キレイ……!! モデルさんかしら?」

 

「あんな顔と体に加えて服の着こなし……ずる過ぎるだろ!!」

 

「んで、そんな美女を引き連れてるあの男……羨ま死刑」

 

 

まさに大絶賛の嵐だった。

 

 

「……ホント、に……?」

 

「ホントもホント。 自分の国民くらい信じてやれって。 ……こんなにも国民から羨望されるくらいの素敵な女神様とご一緒出来て、白斗さんも鼻高々ですよ」

 

 

そう言って隣を歩く白斗はどこか誇らしげで、しかし緊張していて。その緊張は繋がれた掌から直に伝わる温もりと震えと汗で分かる。

―――白斗も緊張しているのだ。美人のプルルートを独り占めしているこの一時に。

 

 

「……うっふふ! なら、そんな素敵な女神の国を案内してあげるわぁ!」

 

「はは、こうしてプルルートに案内されるとなるといつぞやの逆だな」

 

「ええ、それに約束したもの。 あたしの国を案内してあげる、って」

 

「……ああ。 やっと、だな」

 

 

それはこの神次元に戻る前にプルルートと交わした約束。

今度、白斗とネプテューヌがこの神次元に来た時、プルルートが自分の国を案内してくれるというものだった。

あれからやや時間こそ掛かりはしたが、ようやくその時を迎えたのである。

 

 

「ホントに白くんってば、あたしのことずぅっとほったらかしにするんだもの。 いけずぅ」

 

「ゴメンってば。 お詫びってほどじゃないけど、今日のお財布は俺持ちだからさ」

 

「ふふ、なら遠慮なく! まずはゲームセンターよ!」

 

(やっぱゲーセンからなのね、ゲイムギョウ界)

 

 

今度はプルルートに引っ張られながら白斗はプラネテューヌの街中を歩いていく。

改めて周りを見渡すと、発展した中でもどこかのんびりとした空気が漂っており、人々の雰囲気もかなり緩い。

それでいてゲームに興じたり、友人らと話している国民の姿はとても楽しそうである。

 

 

「着いたわよぉ! ここがあたしが女神になって最初に作ったゲームセンター!」

 

「あ、前言ってたところか!」

 

「ええ、初心者からハイまで楽しめる我が国自慢のゲーセンよぉ」

 

 

色とりどりのネオンが眩しいゲームセンターへと案内される。

プルルートが女神になってプラネテューヌを建国した際、真っ先に作ったのがこのゲームセンターだという。

そんな由緒正しき(?)建物だけあって、多くの客で溢れていた。

プルルートの言う通り小さな子供から上級者のハイ、廃人のハイまで幅広く入り浸っている。

 

 

「さて、前俺がゲーセン案内した時は俺が選んだからな。 今日はプルルートが決めてくれ」

 

「ふふ、紳士的ねぇ。 それじゃぁ……レーシングゲームなんてどうかしらぁ?」

 

 

プルルートが指を差したのはレーシングゲームの筐体だった。

座席の作りもかなり本格的で、グラフィックなども臨場感溢れる演出が盛り込まれている。おまけにアイテムを拾っての妨害もアリと言った対戦システムによりこのゲームセンターの中でも一、二位を争う人気っぷりであった。

 

 

「おっしゃ。 俺バイクとか運転してるからな、こういうの自信あるぜ」

 

「あら、そう言えば5pb.ちゃん連れて夜のツーリング行ってたわねぇ。 ずるいわぁ」

 

「はいはい、今度はプルルートも一緒にな」

 

「ええ、楽しみが増えちゃったわね。 ふふっ!」

 

 

座席に座り、コインを入れてゲームスタート。

お互いにマシンとコースを選び、レースが始まる。

 

 

(そう言えばアイリスハートの姿でゲームするのって初めて見たな。 普段のプルルートがのんびり屋さんだから全く腕前や癖が読めんぞ……実力や如何ほどに?)

 

 

レースが始まるまでの間、白斗はふと疑問を呈していた。

女神化すると体に負担がかかるらしく、日常生活において女神が変身することは殆どない。

増してやゲーム目的なら尚更だ。

そしてプルルートはゲームこそ大好きだが、ベールやネプテューヌのような凄まじいゲーマーかと言われればそうではない。あくまで楽しんでいる範疇である。

そんな平時はおっとりゆったりのんびりとした彼女が女神化した姿でのゲームの腕前がどれほどのものか、全く想像がつかない。

 

 

「それじゃぁ……イッくわよぉ!!」

 

「おっわ!? 速ェ!!? 後なんかイントネーションがおかしい!!!」

 

 

開幕位と同時にスタートダッシュしたプルルートのマシン。

アイリスの名に恥じないあやめ色のマシンが一筋の閃光となってレース会場となったハイウェイを駆け抜ける。

 

 

「クッソ!! やっぱゲームの腕前は女神様ってか!!」

 

「うっふふ! さぁ、追いつけるかしらぁ!?」

 

「舐めんなよ! このゲームは対戦形式……妨害上等よ!! そぉらっ!!」

 

「きゃっ!? ……やったわねぇ!!」

 

 

アイテムボックスから甲羅を引き当てた白斗は狙いを定めて投擲。

絶妙なコントロールとタイミングで投げられたそれは見事プルルートのマシンにヒット、転倒させてその動きを止めている間に白斗のマシンが脇を通り抜ける。

 

 

「イかせないわ!! さっきのお返しに激しく打ち付けてア・ゲ・ル!!」

 

「うおおおぉぉッ!? ちょ、プルルート、激しッ……!!!」

 

「白くんがいけないのよぉ? こんなにもあたしをアツくさせた上に先にイッちゃうんだからぁ!」

 

「だからってお前を先に行かせるかよ……!! ラストスパートだ、行くぞッ!!」

 

「ええ! もっと、もっと……!! もっと激しくイくわよぉ!!」

 

(((何昼間っから股間に悪い会話してんだこのバカップルは!!?)))

 

 

言葉だけ聞くと何やらイケない雰囲気である。

アイリスハートの美貌と豊満なボディも相まって、ゲーセンに集う男達は皆エクスタシー寸前だったとか。

 

 

「そらっ!! この甲羅で落ちろッ!!」

 

「ふっ、甘いわよ白くん!! その甲羅で弾かれたあたしのマシンの行く先を見なさい!!」

 

「……んなっ!? ゴール目前まで……!!」

 

「そしてフィニーッシュ!!!」

 

「ぬああああああぁぁ!! やらかしたぁ……!!」

 

「うっふふ、あたしの勝ぁち♪ それじゃ魂を抜き取ってお人形さんに閉じ込めてぇ……」

 

「どんな趣味よそれ!!?」

 

 

最善の一手のつもりが、最悪の一手となってしまった。

プレイングもさることながら、ゲームメイクの腕前も素晴らしかったプルルートに白斗は完全敗北した。

一ゲームしただけで凄まじい盛り上がりになっており、お互いに漫才をしあうくらいのテンションになっている。

 

 

「まだまだ行くわよぉ! 今日はところん遊ぶんだから!」

 

「へいへい。 どこまでもお供いたしますよ、女神様」

 

 

この一戦でエンジンが掛ったのか、テンションが上がっているプルルート。

そんな彼女の苦笑しながらも白斗はとことんまで付き合うことにした。

ゲームセンターで一頻り遊べば腹も減る。ということで次に向かったのはプルルートオススメの洋食屋である。

 

 

「ん! このクリームシチュー絶品だな!」

 

「でしょぉ? プラネテューヌには美味しいものがいっぱいあるんだから」

 

「ははは、ならもっと楽しめるな」

 

「ええ。 これからもずっと、ね」

 

 

オススメのクリームシチューをスプーンで一口、するとまろやかな舌触りと濃厚な牛乳にチーズの味わいが口に広がり、新線や野菜や肉がそれに絡み合う。

料理上手な白斗も認めざるを得ないほどの絶品で、目の前に座るプルルートも満足していた。

 

 

「んで、この後はどこ行くよ?」

 

「そぉねぇ……それじゃぁ、お買い物に付き合ってくれるかしら?」

 

「んぉ? 何か買いたいものでも? 服とかはもう買ったけど」

 

「あのねぇ……そう言う無粋なことを言っちゃうコなのかしら、白くんって」

 

「……へいへい、特に目的のないお買い物でもお付き合いいたしますよ」

 

「そうでなくっちゃ!」

 

 

白斗が微笑むと、プルルートも微笑み返してくれる。

あの美しく、気高く、ちょっと苛烈な女神様が白斗の前では普通の少女として接してくれる。それが白斗にとっては嬉しくて、ついつい自慢したくなった。

そうしてシチューを平らげた二人はプラネテューヌが誇るデパートへと足を運ぶ。

 

 

「おぉー、煌びやか! 見てるだけで楽しくなるな!」

 

「でしょぉ? まぁ、さっきはああ言っちゃったけど気に入ったものがあれば買っちゃいましょ」

 

「りょーかい」

 

 

案内してもらったデパートは、まさに百貨店の名に恥じないラインナップだった。

最新の服やゲームソフト、マニア心をくすぐらせるようなインテリ用品、珍しい味や香りづけが出来る調味料など幅広く扱われている。

 

 

「マジで何でもあるのな。 ラステイションは建国したばっかりだし、モノが少ないってのもあるからな、こうしてウィンドショッピングするのも久しぶりだ」

 

「もぅ、二人きりのデートの時まで仕事の話しないで頂戴」

 

「でっ!? ででで、デートッ!!?」

 

「あらぁ? あたしはそのつもりだったんだけど……白くんはイヤかしらぁ?」

 

「いっ、嫌じゃないけど……」

 

「ふっふふ、照れてる白くんもカワイイわねぇ~」

 

 

見た目だけならばまさにお姉様というプルルート。大人の余裕と色香を振りまいては白斗をからかっていく。

この姿はどこかベールにも通ずるところがある。

しかし、こういう嗜虐心溢れる相手には逆にいじめてやりたくなるのが男の性。

 

 

「そうかいそうかい……なら、アイリスハート様の可愛い所もたっぷり見せてくれよなっ!」

 

「ん? ひゃぁ!? ちょ、またこのパターンっ!?」

 

 

白斗は瞬時にプルルートを抱き寄せた。初めて白斗が彼女とお出掛けした時も、女神化したプルルートをこうして肩に抱き寄せたのだ。

だが今回はそれよりも更に一歩踏み込み、プルルートをそのコートの中に包み込む。

 

 

「も、もぅ……こんな所見られて白くんは恥ずかしくないの……?」

 

「正直恥ずいけど……それ以上に役得。 女神様の表情を独り占めできるんだから」

 

「そ、そんなこと言って……あたしだって恥ずかしいんだから……」

 

「でも突き放さないどころか裾まで握って……ホントは好きなんだろ、こういうのが」

 

「……ホントに、ズルい人……」

 

 

真っ赤に染まった頬を膨らませながらも、決して離れないどころか離すまいと裾を握り締めているアイリスハート。

女神としての美貌に加え、その愛らしさが加わって蕩けない男がいようか。誰もがバカップルとしか見えない格好をしながらも、二人はデパートを練り歩いていく。

 

 

「……あ、ちょっと待って」

 

「ん? トイレか?」

 

「女の子に面と向かってそんなこと言っちゃうなんて悪いコねぇ……?」

 

「いでででででっ!! すいやせんでしたぁっ!!」

 

「もうデリカシーないんだから……あの店に入りたいだけよ」

 

「あの店って……あれか? お洒落なアクセサリー屋だな」

 

 

プルルートの目に留まったのは、小さなスペースを構えている小物売りの店だった。

ビーズを繋げて作った綺麗なブレスレットやネックレスなどもあれば、宝石を加工して作った指輪に至るまでありとあらゆるアクセサリーが売られていた。

では女性向けの店かと言われればそうでもなく、男心くすぐられるようなショルダーバッグやチェーンなど若者なら誰でも楽しめるラインナップとなっている。

 

 

「お、プルルート。 これとかお前に似合うんじゃね?」

 

「確かに良さそうだけど、今回はあたしじゃなくて白くんのよ」

 

「え、俺の? ……待て、考え直せ!! 俺は女装なんてもうしねぇからな!?」

 

「まぁ、冗談じゃないことはさておき」

 

「冗談じゃないのかよ!?」

 

 

どうやらプルルートによる白斗女装計画はまだ潰えていなかったらしい。

この恐るべき計画を何としても阻止しなければと白斗は決意を固めていたのだが、どうやら今回のプルルートの用件はそれではないらしく。

 

 

「今回はねぇ、白くんをカッコよくしにきたの」

 

「へ? 俺?」

 

「そぉよぉ。 折角のデートだっていうのに、白くんってばいつも同じ格好じゃない」

 

「う……そう言われたらそうなんだけどな……」

 

「と、いうわけで今度はあたしが白くんをコーディネートしてア・ゲ・ル♪」

 

「……お手柔らかにお願いします……」

 

 

ビシッと指を差されたのは、白斗の服装である。

白斗はいつも外行の時は黒コートに適当なインナー、そして黒ズボンを着ているのみだ。

オシャレに拘らない白斗はほぼ毎度この格好で一日過ごすことが多い。それが気になったプルルートが、今度は白斗を着せかえるつもりらしい。

 

 

「んー……白くんは常に黒色の服を着てるわねぇ……。 よし、なら明るい色合いで固めちゃいましょ! 服はこれとこれとこれ、アクセサリーは……」

 

「お、おいプルルート? そんな服だと動きにくいんだけど……」

 

「大丈夫、気慣れればそのうち慣れるわ。 ということでこれ着て見て頂戴♪」

 

「うおっ!? ちょ、押し込むなっ!!」

 

「さっきのオ・カ・エ・シ♪ ほーら、早く着なさい♪」

 

 

アクセサリーや服を選び終えたプルルートがそれらを白斗に押し付けて試着室へと押し込む。

デートを始めた時の、白斗が服を選んでくれた時と全く同じシチュエーションだ。

ただ白斗の場合は着替えにそこまで時間を掛けなかったことと、自ら出向いていく点という違いがあったが。

 

 

「……ま、待たせたな……。 ……似合ってるか……?」

 

「ええ! 白くん、とぉってもカッコイイわ! ふふふっ!」

 

 

少し照れ臭そうにしながらも試着室から出てきた白斗に、それはもう大喜びするプルルート。

今の服装は青い生地のジーパン、黄緑色の半袖アウターに白色のインナーと明るく爽やかな出で立ちである。

どこか近寄りがたい印象を放っていた黒ずくめの衣装から一転、爽やかな好青年へと早変わりした。

しかし手首のリストバンドや首に着けたネックレスが、爽やかさの中にも男らしさを表している。

 

 

「……ん? またやたらと視線を感じるな」

 

「今度は白くん狙いね。 イイ男だから」

 

「そうかぁ? 嫉妬の方が多くね? イイ女連れてるから」

 

「っ!! も、もう……からかうんじゃないの……」

 

 

普段は誰にでも高圧的に受け取られてしまうアイリスハート。

だが、どうしたことかこの少年には全くと言っていいほど通用しない。時々手玉に取ったかと思えば主導権をすぐに奪還されて、からかわれる。

こんな人、今までいなかったのに。皆避けるか、委縮するか。それなのに白斗は堂々と相手にするどころか、プルルートをリードし続けているのだ。

―――それが彼女にとって、恥ずかしいながらも嬉しかった。

 

 

「けど、こうも視線ばっかりじゃ落ち着かねーな……カラオケとかどうよ?」

 

「あら、いいわね! 久々に張り切っちゃうわよぉ!!」

 

 

さすがに注目を集めるばかりでは気づかれもするので衆目を気にしない場所へと行くことに。

その中でもカラオケは隔離された空間というデートとしても定番のスポット。

プルルートも嬉々としてその提案に乗り、二人でカラオケに向かう。二人分の料金を支払い、ドアを潜ると怪しげな雰囲気を醸し出す色合いの照明に彩られた空間へと誘われる。

 

 

「それじゃぁトップバッターは白くん、お願いね♪」

 

「オッケー……と言いたいがよくよく考えたらこの世界の曲あんまり知らないんだよな……」

 

「大丈夫よぉ、スマホの音楽飛ばすことも出来るから」

 

「おお、さすが科学と娯楽の国プラネテューヌ! それじゃ……」

 

 

白斗が迷うことなく選曲したのは5pb.の曲。5pb.は当然女性でもありキーも高めなのだが、白斗はテノールの音程でそれを歌いあげていく。

華麗に、軽快に、何よりも楽しく。白斗も5pb.のファンにしてライブにて彼女と共演することもあり、最早良く馴染んだ曲として歌いあげる。

 

 

「……君が傍にいるから―――♪」

 

「ふふふ、素敵よ白くん! なら、あたしも負けてられないわねぇ!」

 

 

マイクを手渡されたプルルートは喉の調整に入る。

時たま彼女が鼻歌を歌っている時はあったが、それはあくまで変身前の、のんびりとした口調での話。

アイリスハート時の歌がどんな苛烈なものになるのかと身構えていた―――のだが。

 

 

「LaLaLa……LaLaLa……♪」

 

(何これ……すっげぇ上手ぇ……!! しっとりかつ繊細で……綺麗な歌声……)

 

 

激しい歌になるかと思えば、とても綺麗な歌声を披露してきたのだ。

彼女の唇が動く度、カラオケルームの空気が洗練されたような気さえする。

聴くものを惚れさせるその女神の歌声に、白斗はすっかり聞き入ってしまっていた。

 

 

「――――……♪ ふぅ、どぉかしらぁ? あたしの歌」

 

「……いや、マジで参った……。 聞き入っちまったよ!」

 

「でしょぉ? さ、今度はデュエットで歌いましょ!」

 

「こいつは俺の方が気合入れ直さないとな……!! よっしゃ、やってやるぜッ!!」

 

 

こんな素晴らしい歌声に当てられてはやる気しかでない。

5pb.やツネミらとライブを繰り返すうちにすっかり歌手魂に火が付いた白斗が意気揚々とマイクを手に取る。

デュエットに加え、採点機能を用いた勝負など色んな方法でカラオケを楽しみ、少し喉が涸れ始めた頃。

 

 

「あ゛~……調子に乗り過ぎたな……喉ガラッガラよ……」

 

「そぉねぇ……カラオケはこのくらいにして、どこかでお茶でもしましょ」

 

「だな……」

 

 

さすがにこれ以上は喉が持たないとぼちぼち斬り上げ、喫茶店に向かう事に。

やがてプルルートに案内されたのは、近未来都市というイメージがぴったりなプラネテューヌでは珍しい、赤レンガに囲まれた風情ある喫茶店だった。

 

 

「ここよぉ。 いい店でしょ?」

 

「ああ、俺こんな隠れ家チックな雰囲気大好き。 あ、ブレンドコーヒーで」

 

「ふふ、やっぱり感性が男のコよねぇ。 あたしはミックスジュースで」

 

 

テーブル席に互いに向き合う形で座り込んだ二人。

それぞれ飲み物を注文し、やがて差し出された飲み物を口にする。

 

 

「……ん、コクと酸味のバランスが絶妙だ。 こんな風に淹れられたらなぁ」

 

「白くんってコーヒー派なのねぇ。 硬派って感じ」

 

「ま、昔っからコーヒーしか口に出来なかったからな。 自然と馴染んちまった」

 

 

白斗は大のコーヒー党だ。

無論淹れられれば紅茶や緑茶でも口にはするが、一番好きな飲み物と言えばコーヒーで、それもブラックという徹底ぶりである。

 

 

「そんなにいいのかしら? コーヒーって」

 

「飲んでみるか? あ、でもプルルートには無理だろうなぁ、ブラックなんて」

 

「む、随分と挑発してくれるじゃなぁい……いいわ。 ノワールちゃん色の飲み物なんて大したことないんだから!」

 

「何故そこでノワールを引き合いに出す……」

 

 

プルルートは当然コーヒーなど口にしたことが無い。女神化した姿であっても。

故に白斗にお子様扱いされているのが無性に悔しくて、ひったくるように白斗のカップを奪い、コーヒーを口にする。

口の中に広がる熱さ、そしてその闇の底を掻き混ぜたかのような苦みに。

 

 

「んぐっ!? うぇ……苦ぁ~い!!」

 

「ぷっ、あっはははははは!! アイリスハート様の渋面、頂きました!! 激レア!!」

 

「撮るんじゃないわよ!! うぷっ……白くん、こんな泥水飲むなんて正気……?」

 

「泥水じゃありません。 ま、女神様でもダメなものはあるってことで」

 

 

完全にやりこめられたプルルートは唸るしかない。

女神化しているというのに、この少年には主導権を握られがちだ。悔しさも募りつつあったのだが、ふと彼が飲んだカップを恨めし気に睨んでいると。

 

 

(……あ、あら……? これって、所謂間接キス……になるのかしら……?)

 

 

―――とんでもないことに気付いた。

サラッと手渡されて、サラッと飲んでしまったが、白斗が口を付けたカップに自らも口を付ける。

これを間接キスと言わずして何と言おうか。

 

 

「………………」

 

「って白くん顔が赤いッ! 気付いててワザとやったでしょ!?」

 

「うん」

 

「肯定しちゃうの!? い、いい度胸してるわね……!」

 

「でも俺以上に顔真っ赤にしてるプルルートの可愛さには敵わない」

 

「っっっ!? も、もぅ!! ……ホントに、ズルイ……」

 

 

先程からプルルートがツッコミ役に回ってしまっている。

本来キャラとしてツッコミに回ることなどありえない、ありえてはならないのに。彼の前ではどうしてかそうはならないのだ。

 

 

「あ、ケーキも来たわね。 それじゃ……」

 

「プルルート、あーん」

 

「ち、調子に乗らないッ! ぱくっ!!」

 

「でも食うのな……」

 

 

切り分けられたケーキの一切れをフォークで刺した白斗がプルルートの口元に近づける。

またもや羞恥に悶えるアイリスハートだったが、最早自棄と言わんばかりにそれを食べた。

―――怒っているような口調の割に、顔はにやけていたが。

 

 

「ん、でもここのシフォンケーキ美味いな。 今度俺も挑戦してみるか」

 

「あら、それは楽しみね。 ……ところで白くん」

 

「何だ?」

 

「はい、あーん♪」

 

「ングゥッ!!? ゲッホォッ、ゴホゲフッ!! んな、な、な……!?」

 

 

今度はプルルートが自分のケーキを切り分けて白斗の口元に差し出してきた。

こんな仕返しを予想していなかった白斗は盛大にむせる。

 

 

「あらぁ? 白くんはあたしからの『あーん』を拒んじゃうような悪いコだったのぉ?」

 

「ウン、僕悪イ子。 ダカラ食ベナイ」

 

「ぐすっ……酷いわ……。 あたしの想いを踏みにじるなんて……」

 

「いやー、僕良い子だから頂いちゃうよぉ!? あ、あーん!!」

 

「ふふっ、良いコね♪ はい、あーん♪」

 

 

白斗を盛大に困らせることが出来てアイリスハート様も大変ご満悦だ。

観念した白斗は女神様からの『あーん』でケーキを一口頂く。

とても甘く、しっとりとした味が口の中に広がったのだが、顔中から火が出そうになる。

 

 

「ふふ、白くんってばニヤけてる」

 

「……参りました。 あーあ、敵わないねぇ、ホント」

 

「……敵わないのはこっちよ」

 

「なんか言った?」

 

「いーえ、何も言ってませんっ」

 

 

こうしてちょっぴり騒がしく、でも楽しいティータイムは終わりを告げ、二人は喫茶店を出た。

さすがに日も傾いており、もう少ししたらこのプラネテューヌも綺麗な茜色に染められる時間となる。

 

 

「さて、次はどーする?」

 

「そぉねぇ……さすがに疲れちゃったからぁ……」

 

 

と、ここでアイリスハート様が光に包まれる。

光が収まるや否や、そこにいたのは元の姿に戻ったプルルートだった。

 

 

「ふぁあ~……んー……お昼寝しよ~」

 

「あらら、疲れて元の姿に戻ったのか。 んじゃもう帰るか?」

 

「ううん、違うよ~。 あたしだけの秘密の場所に、連れてってあげる~!」

 

「おわ!? ま、まだまだ元気じゃねぇか!?」

 

 

何やらお気に入りの場所があるらしい。

プルルートに手を繋がれて、ぴゅーっと飛び出していく。

人混みを抜け、街を抜け、郊外の森を抜け―――。

 

 

「ってオイ!? どんだけ走るんだ!?」

 

「もうちょっと~」

 

 

プルルートは迷いもなく移動しているのだから、迷っているということは無いのだろう。

だが一部荒れている道や、木々が生み出した自然の迷路などを抜けて行ってる。森が深くなるにつれ、日の光も届きにくくなり、辺りはまるで洞窟の様な暗さと静けさになる。

本当にこんな場所に、プルルートがオススメする秘密の場所などあるのだろうか。

 

 

「あ~、見えてきたよ~」

 

 

さすがに疲れも見えてきた頃、顔を上げれば木々の壁の向こう側に日の光が差し込んでいた。

出口から差し込むその光の中に飛び込んでみると―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………花畑………」

 

 

 

 

 

 

――――爽やかな風が吹き抜け、色とりどりの花びらを攫って行く。

目の前に広がっていたのは、まさに花畑だった。

赤、青、黄と言った様々な色が咲き乱れ、それらを優しく照らす太陽も心地よい。涼しい風が程よく体を癒してくれる、まさにプルルートが好みそうな絶好のお昼寝スポットだった。

 

 

「ね~? すごいでしょ~!」

 

「……ああ、ビックリしたよ。 まさか森の中にこんな場所があったなんて……」

 

「えへへ~。 ここはいーすん達、それにねぷちゃんやノワールちゃんにも教えてないの~」

 

「まさに自分だけの秘密の場所、ってか。 ……でも、そんな場所に俺を……?」

 

「うん~。 白くんには……知って欲しかったの~」

 

 

こんな場所を独り占めできるほど、贅沢なことは無い。

静かで、ぽかぽかしていて、気持ちよくて、綺麗で。こんな素敵な場所は例え親友だろうと無暗に明かしたくはない。

けれども、白斗を案内してくれた。それだけプルルートにとって、白斗という男が大切だから。

嬉しくなった今も尚繋がれている手を更に握り返す。

 

 

「だからね~……」

 

「わかってる。 頼まれたってこんな素敵な場所、他人に教えたりするもんか」

 

「えへへ~、白くんさすが~」

 

 

白斗の答えは百点満点の回答だったらしい、それに満足したプルルートが彼の手を引きながら更に歩いていく。

そこはふかふかの草が敷き詰められた、天然のベッド。

 

 

「ここでお昼寝すると気持ちいいんだよ~」

 

「どれ……お、おぉ……! こりゃ教会のベッドより気持ちいい……!」

 

「でしょ~?」

 

 

彼女に誘われるまま寝転んでみると、草の柔らかさと香り、冷たさが火照った体を心地よく解してくれるのだ。

加えてお日様の温もり、風の心地よさ。まさにプルルートにとって天国だろう。

 

 

「くー……すぴー……」

 

「ってもう寝たのか……。 ま、あれだけ女神化してはしゃいでいたからなー……」

 

 

朝早くからラステイションまで駆けつけて、女神化したままゲームセンターやショッピング、カラオケにティーブレイクなどを堪能したのだ。

白斗だって疲れるこの充実した一日、寧ろよくここまで保ったとプルルートの頭を撫でてあげる。

 

 

「ふぁ、あぁ~……俺も寝るかぁ……」

 

 

気持ちよさそうに寝ているプルルートを見ていたら、白斗も徐々に疲れが湧いてきた。

重くなってきた瞼には勝てず、大欠伸ひとつして、そのまま目を閉じる。

太陽の温もりと、草の柔らかさと、風の涼しさと―――プルルートの“あたたかさ”を感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それからすっかり日も暮れて、教会へ戻ることにした二人。

そこでは当然の如くネプテューヌが帰りを待っていて、すっかり親密度が高まった白斗とプルルートの様子を見ては詰め寄ってきたが何とかいなして。

今日はコンパの作った夕食を食べて舌鼓を打った後、プルルートからお風呂に入った後、部屋に来てくれというお願いをされたので行ってみることに。

 

 

「そう言えばプルルートの部屋に入るのって初めてだな……こっちの次元の」

 

 

恋次元に居た時もプルルートを起こすべく、彼女に宛がわれた部屋を訪れたことはある。

だがこちらの次元での彼女の部屋に入るのはこれが初めてだ。

さすがにこちらの世界の女神様のお部屋にはおいそれとは入れないと、起こす役目は家族であるアイエフやコンパに譲っていたのだ。

 

 

「プルルート、来たぞ~?」

 

『あ~、白くん来た~! ど~ぞ~』

 

「んじゃ失礼して……うお!? 前よりぬいぐるみ多っ!!?」

 

 

丁寧にノックした後、プルルートの返事が来た。まさに待ちわびたと言わんばかりの声色に照れつつ白斗がドアを潜ると、凄まじくファンシーな光景が広がった。

右を向いてもぬいぐるみ、左を向いてもぬいぐるみ。

プルルート謹製のぬいぐるみがこれでもかというくらい詰め込まれた柔らかそうな部屋である。

 

 

「えへへ~、み~んなあたしのお手製なの~」

 

「だろうなぁ。 みんなのぬいぐるみが多数……ん? このアイエフとコンパのぬいぐるみ、ちっちゃいな?」

 

「昔のアイエフちゃんとコンパちゃんだよ~。 この教会に来て、5年くらい経った頃の~」

 

「へぇ、そんな昔からいたのかあの二人」

 

「うん。 で、二人が少し大きくなってからピーシェちゃんもウチに預けられたの~」

 

(預けられた、なんていうが要は捨て子なんだな……。 全く、酷ェ親もいたもんだ)

 

 

その中にいた、幼さ全開のアイエフのコンパのぬいぐるみ。

どうやら二人が赤ん坊の頃からこの教会で育ってきたらしい。ともなればプルルートやイストワールはまさに育ての親にして家族なのだろう。そしてピーシェも同様とのことだ。

親に苦い経験を持つ白斗は当然いい気分ではなかったが、それでもここで暮らす彼女達は幸せなのだから、余り口には出さないようにした。

 

 

「でも人間以外のぬいぐるみもちゃんとあるんだな。 リスのぬいぐるみまである。 貴女のお名前は何ですか? なんちゃって……」

 

「ああ、ガリュゲンゴッサちゃんのこと~?」

 

「お前……そんなゴツイ名前だったんか……。 ガリュゲンゴッサ……」

 

 

可愛らしいリスのぬいぐるみを抱え上げて、白斗は戦慄した。

こんな愛くるしい、もふもふとしたリスのどこに「ガリュゲンゴッサ」なる要素があったのだろうか。

 

 

「お、オホン。 で、こんな夜更けにわざわざ男を女の部屋に呼び出してどうしたんだ?」

 

「そ、そんな言い方しないでよ~。 生々しいよぉ~」

 

「ははは、ゴメンゴメン。 で、実際どうなんだ?」

 

 

少しからかうとプルルートはボッ、と顔を赤くする。

どちらかと言うとプルルートは皆をその言動で振り回すことが多いので、たまには振り回される側に回ってもらいたいという白斗の歪な欲望である。

 

 

「あのね~……えいっ」

 

「うおっ?」

 

 

手を引かれた、かと思うと二人してボフンとベッドに倒れ込んだ。

柔らかな毛布の感覚がすぐに全身を包み、眠気を煽ってくる。

 

 

「一緒に寝て欲しいな~って」

 

「……ま、そんな気はしてたからいいよ」

 

 

対する白斗は顔を赤くこそしていたが、そこまで慌てていなかった。

何となくこういう流れになるだろうと予測していたからである。

 

 

「わ~い! 今日はいい夢見られそ~」

 

「はは、昼間あれだけ寝たのにか?」

 

「お昼寝と夜とじゃ別腹だよ~」

 

「別腹ッスか……」

 

 

寝ることに別腹なんて概念があるのかと一瞬考えこんだが、所謂朝普通に寝るのと二度寝してしまうのと似たような感覚なのだろうか。

ただプルルートにとって大切なことなのだから、あまり深く突っ込まないでおこうと大人な対応をする白斗だった。

 

 

「……ってかプルルートよ、気になってたんだがお前恥ずかしくないの? 俺となんかと一緒に寝て」

 

「……恥ずかしいし、ドキドキしてるけど……胸がね~、ぽかぽかしてるの~」

 

「え……?」

 

 

すると急に身を寄せてきたプルルート。

近くで見る彼女の顔は、とろんとしていながらも顔を赤くした―――乙女の顔だった。

 

 

「どうしてかな~? 白くんって、一緒にいると温かくなれるの~」

 

「そう……か?」

 

「そうだよ~。 いつも傍にいてくれるし~、いつも支えてくれるし~、どんなあたしでも受け入れてくれて……ずっと一緒にいたくなるの~」

 

 

―――ふわりと微笑む彼女に、今度は白斗がドキリとさせられた。

白斗も寝間着という薄い格好をしているからか、心臓の光が漏れ出そうになる。

 

 

「それにね~、白くんが嬉しいとあたしも嬉しいんだ~」

 

「嬉しい?」

 

「うん~。 美味しいお料理を食べて一緒に笑いあったり、ゲームで一緒に楽しんだり、テレビ見て一緒に感動したり……そんな白くんを見てるのが、あたしは好きなの~」

 

 

―――恋愛沙汰に疎い白斗、そして今まで恋愛というものを経験したことが無いプルルートもそれがどういうことなのか分からないだろう。

ただ、今二人の間で出来ているこの一時が幸せ以外の何であろうか。

 

 

「……そういうことだから、白くん~」

 

「な、何でございましょう?」

 

「前……あたしが言ってた“お願い”……忘れてないよね~?」

 

「お願い……ああ、女神メモリーの一件か。 勿論覚えてるよ」

 

 

女神メモリーの一件、それは三ヶ月ほど前の事。

紆余曲折を経てプルルートの手に渡った女神メモリーをネプテューヌとノワールに渡して欲しいというものだ。

そのお願いを飲む条件として、白斗がプルルートの言うことを何でも一つ聞くとのことだった。

 

 

「……あたし、もっと白くんと一緒にいたいから……。 だから、これから一週間の間に一日だけでもいいから……あたしと一緒にいて……」

 

 

―――何とも可愛らしく、何とも理性を理性を蕩けさせてくるのだろう。

そんな言葉を聞かされては、白斗としては言うことは決まってる。

 

 

「そういうお願いだったら、聞きたくないなぁ」

 

「え……? な、なんで~!? あたしのこと……嫌いになっちゃったの……?」

 

 

なんと、白斗はそのお願いを拒絶してきたのだ。

断られると思っていなかったプルルートは絶望し、泣きそうになっている。けれども白斗は穏やかな表情を浮かべながらプルルートの涙を拭ってあげると。

 

 

 

 

 

「俺がここにいるのは、プルルートと一緒にいたいからだ。 ……義務だからで付き合うんじゃなくて、ちゃんと自分の意思でプルルートと過ごしたいんだよ」

 

 

 

 

 

―――そんな、温かい眼差しと言葉を掛けてくれるのだった。

それが嬉しくて、幸せで、プルルートはまた涙を浮かべてしまう。今度はまさに女神に相応しい、美しくも可愛らしい笑顔を浮かべて。

 

 

「……も~、紛らわしいよ~! あたし一瞬怖かったんだからね~!」

 

「はっはっは、ゴメンゴメン。 ……ただまぁ、今まで一緒に過ごせてなかったのは悪かった。 ちゃんとプルルートとの時間も作るから、な?」

 

「……それ、お詫びのつもり~?」

 

「いんや、意思表明。 ……俺だってプルルートと一緒にいたいからな」

 

「……だったら、許してあげる~」

 

 

白斗は心の底からプルルートと過ごしたいと思ってくれている。

だから、プルルートも嬉しくなってより密着してしまう。

 

 

「ね~、明日はどうするの~?」

 

「そうだな、ノワールの一件を詰め直さなきゃな。 ……プルルートもついてきてくれると嬉しい」

 

「うん~。 白くんやねぷちゃんが行くならあたしも~」

 

「ははは、少しは仕事してイストワールさんを労わってやれよ」

 

「くー……すー……」

 

「あーあ、お仕事頑張ってくれたら晩飯はプルルートの好きなもの作ってあげたのになぁ」

 

「うん~! あたし、頑張る~!!」

 

「さも当然のように寝たふりから目覚めるなよ……」

 

 

でもそんな彼女が可愛らしくて、白斗はちっとも怒る気にはなれなかった。

二人して微笑むと、いよいよ本格的に睡魔が襲い掛かってきた。昼寝したとはいえ、連日の仕事の疲れはそう簡単に抜けるものではないらしい。

 

 

「白くん~。 明日もいっぱい……一緒にいようね~……おやすみ~……」

 

「……ああ、おやすみ。 プルルート……」

 

 

そうして二人は幸せな表情のまま眠りについた。

翌朝、ネプテューヌが思い切り不機嫌になりそれを宥めるためにまた白斗とデートの約束を取り付けることになるのだがそれはまた別の話―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ふーん、昨日そんなことがあったのね……この女誑し」

 

「人聞きの悪いこと言わないでくれるかノワールよ」

 

 

そんなドタバタな朝を過ごして昼、ようやく書類が纏まったというノワールの下を訪れた。

のだが彼女の目に飛び込んできたのは白斗の両腕を抱き寄せている二人の女神様。

 

 

「もー! ぷるるん、昨日は譲ってあげたんだから今日も、明日も、明後日も! ずっとずっと私のターンだよー!!」

 

「イヤだよぉ~。 それに白くんだってあたしと過ごしたいって言ってくれたんだから~」

 

 

ネプテューヌとプルルートが幸せそうな顔をしながらも互いにけん制し合っているという、まさに修羅場としか言えない状況。

白斗も力なく反論してみるが、全く意味を成さなかった。

 

 

「全く……私の友達を泣かすようなことしたら、絶対に許さないんだから」

 

「そういう言葉は本人に言ってやんな」

 

「う、うるさいわね! とにかく昨日は失礼したわ、早速昨日の案件を詰め直し―――」

 

 

昨日の案件とはプラネテューヌとラステイション、二国間によるサブカル交流会の件だ。

二国間の女神が主導で開催するので、さすがに一度は女神達にも目を通してもらいたいとネプテューヌとプルルートにも書類を手渡す。

デスクワークこそ嫌うが、どちらもいざ仕事となれば有能な女神様だ。二人とも白斗絡みでやる気十分になっており、さっさと終わらせようと読み込もうとしたところで。

 

 

「ぶ、ブラックハート様!! 大変です!!」

 

「何? 今会議中なんだけど」

 

 

衛兵の一人が慌ただしく駆け込んできた。

建国下手ということもあって衛兵の方も経験不足ということで平静さが保てておらず、来客の前ということもあってノワールが不機嫌で返したのだが。

 

 

 

 

 

 

「そ、それが……ルウィーの女神が現在ラステイションに接近中!! ブラックハート様に合わせろとの打診がありましたぁ!!!」

 

「「「「え……えええええええええぇぇぇ~~~~~!!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

―――そんな報告を聞かされては、余裕も無くなってしまうのだった。




大変お待たせいたしました。ということで今回はプルルートさんとのガチデートなお話でした。
ぷるるんの可愛らしさと同時にメインはアイリスハート様にしようというスタンスの下始めたお話でしたが楽しんでいただけたら幸いです。
何度も言いますが、アイリスハート様はふと余裕を崩した時が可愛いと思うのです。だから白斗君が常にマウントを取ってくるのです。で、そのマウントの取り合いを楽しんでいるのが更に可愛らしく……(以下無限ループ)

そんなこんなで、白斗とプルルートの親密度が更に高まるのでした。
当然これでネプ子さんも余裕とか言ってられません。尚更積極的になります。恋のバトルは更にバチバチです。修羅場って、いいよね。(ゲス顔)

さて次回ですがいよいよストーリーを大幅に動かします。ルウィーの女神様襲来、果たしてどうなってしまうのか。
次回もお楽しみに!!感想ご意見、お待ちしております!!
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