恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART   作:カスケード

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第五十四話 白と黒の激突

―――突如、ラステイションの執務室に舞い込んだ報せ。

それは現在のゲイムギョウ界におけるシェアトップを誇る大国、ルウィーの女神が接触してきたとのことだった。

しかもラステイションの女神であるブラックハートことノワールとの会談を求めているらしく、一同に緊張が走る―――

 

 

「あ、ぷるるーん。 そっちに敵行ったよー」

 

「任せて~。 え~い!」

 

「ってアンタ達何緊張感の欠片も出さないでゲームしてるのよ!? ワザとなの!? ワザとでしょ!!?」

 

 

―――こともないように、ネプテューヌとプルルートはゲームで遊んでいた。

 

 

「ってかお前ら、五十三話のつい直前の描写によると書類読み込んでたはずだよな?」

 

「白斗、メタ発言ダメだよ?」

 

「メタ発言の女神が何か言ってるぞ……」

 

 

溜め息を付きながら白斗は頭を抱えた。

仕事を進めなければならないこの大切な時期にルウィーの女神が接触してくるなど誰が予想できようか。

 

 

「白斗。 ルウィーの女神ってことは……ブラン、だよね?」

 

「俺も軽く調べた程度だが、ルウィーを治めてるのはホワイトハートとのことだ。 加えて、こっちの世界にノワール達がいるってことは……十中八九そうだよなぁ」

 

 

今回接触を仕掛けてきた女神、ルウィーという国からしてほぼ間違いなくブランの事だろう。

こちらの世界では性格にも違いがあるのかもしれないが、アポなし突撃を見るからにキレやすい性格は変わっていないようだ。

 

 

「何? 貴方達、ルウィーの女神を知ってるの?」

 

「あ、ノワールは知らないのか。 まぁ、実を言えばだな……」

 

 

白斗がかいつまんで説明した。

恋次元にもルウィーが存在しており、そこを治めていた女神がホワイトハート……ブランという少女であったこと。

普段は物静かだが、怒りっぽい性分で一度怒ると手が付けられないことなど、知る限りの情報を伝えた。

 

 

「ふーん、貴方達の世界にも似たような女神がいるって話ね」

 

「ただ本当に同じ性格なのか、そもそも本当にブランなのかってところも分からないんだが」

 

「何にせよ、アポなし突撃なんて常識知らずの迷惑女神なんて百害あって一利なしだわ。 さっさと追っ払ってやる!」

 

(迷惑女神って……ブランはそんな子じゃないんだけどなぁ……)

 

 

確かにアポなし突撃は迷惑には違いないだろうが、白斗の知る限りブランは悪意を持ってそんな行為に及ぶような少女ではない。

ただ、それは恋次元のブランの話であってこの神次元ではどうなっているか分からない。

故に口に出すことも出来なかった。

 

 

「ノワール、手荒なことはしちゃダメだよ?」

 

「さぁ? それは向こうの対応次第によるわ。 まぁ既に向こうから迷惑行為してるんだもの、手荒なことされたって文句は言わせないわ!」

 

「あわわ~……ノワールちゃん、激おこだよぉ~」

 

「でも激おこなドSぷるるんの方が怖いのでネプ子さんは平気です」

 

「ねぷちゃん酷い~!」

 

「漫才してるなら置いていくわよ! っていうか話ややこしくなりそうだからアンタ達はここに残ってなさい!!」

 

「お、オイ!! ノワール待っ…………!!」

 

 

とりあえず落ち着くよう宥めるネプテューヌとプルルートだが、すっかりお冠になったノワールには通じず、白斗の静止も振り切って女神化、飛び出してしまった。

ノワールとブラン、どちらも勝気が強く、いざという時は我を押し通すタイプ。双方が衝突すれば売り言葉に買い言葉になるのは火を見るよりも明らか。

 

 

「あーあ、仕方ないなぁ。 私達も行こっか」

 

「ねぷちゃんと白くんが行くならあたしも~」

 

 

このままでは厄介事になること、そしてノワールが心配なこともあり後を追うことにしたネプテューヌとプルルート。

何だかんだで友達思いな二人に微笑みを漏らす白斗だが。

 

 

「あ、悪い。 俺ちょっと準備してから行くから先行っててくれ」

 

「準備~? 白くん、何するの~?」

 

「ホントは皆のためを思って用意してたんだが、思わぬ形で役に立ちそうだ。 まぁ、すぐに追いつくから」

 

「オッケー! それじゃ、ノワールの後を追いますか!」

 

 

何やら白斗には秘策があるらしい。

ただ、自信満々かと言われると微妙なところだが、ここぞという時に頼りになる彼の事だ。

彼を信じ、とネプテューヌとプルルートは近くの森へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラステイション近郊の森―――。

まだまだ危険なモンスターが数多く潜む、所謂ダンジョンの一つに数えられるこの森の中で一人、その少女は佇んでいた。

青白い髪を美しく揺らし、小柄ではあるがきめ細かく美しい肌を持ち、そして赤と白のレオタードを身に纏うその少女は一人悶々と悩んでいた。。

 

 

「…………だあああああっ!!! クソッ!! 勢いに任せてここまで来ちまった……!! どうすんだよ……私は女神ホワイトハートだってのに……自分が情けねぇ……!!」

 

 

そう、この神次元におけるホワイトハートである。

身に纏うプロセッサユニットの配色以外はまさに恋次元のホワイトハートと瓜二つを超えて全く同じである。

 

 

「はぁ……正直ラステイションの女神になんていうかも全然考えてねぇし……。 どうすりゃいいんだよぉ……」

 

 

一人寂しく頭を抱える白の女神。だが、彼女の問いに答える者はいない。

何故こうなってしまったのか、事の発端は今朝に遡る―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっすらと寒さが入り込む、ルウィーの教会。

畳が敷き詰められた女神の執務室でその少女は渋面を浮かべていた。

あどけなさが残る可憐な顔つきが苦虫を嚙み潰したように歪み、その小柄な体躯が怒りやらストレスやらで震えていた。

 

 

「……日を追うごとに、シェアが少しずつだけど低下しているわね……」

 

「ええ、それに加え国民も少しずつラステイションやプラネテューヌへ流れていっておりますな」

 

 

そんな女神に報告しているのは、一人の小太りな中年親父。

眼鏡を光らせながらシェアエネルギーや人口の推移などを記した書類を眺めていたが、こちらも芳しくない雰囲気を醸し出していた。

 

 

「ブラン様、やはり移住の規制をしなかったのは悪手だったのでは……」

 

「アァ? 私の決定に文句があるのか、大臣……?」

 

「い、いいえ。 滅相もございません。 ただ、この事態は重く受け止めなければ」

 

「……分かってる、一々口に出すな」

 

 

目の前の男性こと大臣からの諫言にも不機嫌で返す少女―――ブラン。

国民に無理矢理な規制を強いて余計な反感を買いたくないという彼女なりの想いだったのだが、それが良くない形で現実となってしまっている。

受け止めれば受け止めるほど、ブランにとっては苦しい事態となっていた。

 

 

「……それで大臣、ラステイションはどんな感じ……?」

 

「飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことですな。 まだ建国して三ヶ月ですが次々と革新的な制度を打ち出し、また女神自身も近隣のモンスター退治を積極的に行うなどして国民からの支持を得ております」

 

「………………」

 

 

今、目下で目の上のたん瘤となっているのは他でもない、ラステイションである。

まだ生まれて間もない国だが、評判はよく、新しいものに目が無い国民はそれにつられてラステイションに興味を持ち始める。

そして女神ブラックハートも国民の期待に応えて精力的に活動している。今でこそ、シェアの量としては圧倒的にルウィーが上だが長期的に見ればいずれは―――。

 

 

「それにラステイションほどではありませんが、プラネテューヌも盛り返していますな」

 

「あの弱小国家ね……。 今の今まで、シェアそっちのけの国家運営してたはず……。 寧ろ今まで潰れてなかったのが不思議なくらい」

 

「ええ、確かに三ヶ月前まではそうだったのですが……。 ラステイション建国と同時にプラネテューヌの評判も良くなっておりますな。 平和で楽しく、友好的な国と」

 

「イメージ戦略ってワケ……? ラステイションを利用しての」

 

「その通りです。 今まで宣伝活動を行っていなかっただけで、国としては平和そのもの。 それが積極的な宣伝活動によりこのゲイムギョウ界に広く知れ渡り、興味を持った民たちがプラネテューヌに流れる……といった具合ですな」

 

 

しかし、それだけでなくこの数年間で自他共に認める弱小国家だったプラネテューヌのシェアが右肩上がりしていることも気掛かりだった。

国の運営方針そのものは変えておらず、国の良さを上手く宣伝することにより人々の興味が向くように仕向けられているのだ。

結果、実際に移り住んだ人たちがプラネテューヌの魅力に取りつかれてシェアを伸ばしているというのが実情だった。

 

 

「まぁ、プラネテューヌは兎も角……問題はラステイションですな。 早急に手を打たねば遠くない将来、このルウィーが脅かされるやも知れません」

 

「……そうは行くかってんだ……。 私は女神……女神ホワイハートだ。 嘗てこの世界で唯一の女神……私がルウィーを、世界を守ってきたんだ……! それをポッと出の後輩風情に舐められて堪るか……!!」

 

 

―――このゲイムギョウ界は、長らく国がたった一つ、女神がたった一人しかいなかった。

それがこのルウィー。それがこのブランことホワイトハート。

小さな子の体で老いもせず、長い年月、たった一人で国を、世界を、人々を守ってきたのだ。

その自負がある以上、簡単に認めるわけにはいかない。心の中で何かが燃え滾った瞬間、ブランの体が光に包まれ、女神化を果たした。

 

 

 

「な!? ぶ、ブラン様何を!?」

 

「ハン、決まってんだろ! 奴らがどの程度のものかこの手で見極めてやるんだよっ!!」

 

「お、お待ちを……」

 

 

大臣の静止も間に合わず、女神化したブランはウィングを展開して飛び出してしまった。

見るからに勢い余ってのことだったが、ああなった彼女はもう止められない。

 

 

「……やれやれ……じゃが悪手と好機は表裏一体。 今の内にワシの仕事をさせてもらうとするかのう」

 

 

残された大臣は嘆息しつつも、自らの“仕事”のため、とある人物に連絡を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そう、まさに勢い任せでここまで来てしまったホワイトハート。

当然前口上なども用意しておらず、気が付けばここまで飛んでいて、近くを通りかかったラステイションの衛兵に「ブラックハートに会わせろ」と言付けさせた。

確かに頭に血が上っていたのは事実だが、気が付けば大事になってしまっている。ここまで来ればさすがのブランでも理解出来る。

国家元首同士の会談、下手な一言で―――戦争が起きかねない。

 

 

「ああ~……チックショ……。 そうだ、中々現れないことを理由にしてもう帰っち……って、来、来たぁ!!?」

 

 

突破口を見つけた、そんな時に限って逃げ道は封じられる。

ジェット機の様な飛行音に顔を上げてみれば、一筋の黒い影がこちらに飛んできているではないか。

この世界でそんな真似が出来るのはモンスターか、もしくは女神のみ。

ここまで来たらもう逃げることは出来ない。覚悟を決めて、ブランは表情を作り直した。

 

 

「あら、貴方がルウィーの女神かしら?」

 

「……ああ、ルウィーを統治する女神、ホワイトハートは私の事だ」

 

「どうも、ラステイションの女神ことブラックハートよ」

 

 

優雅に着地したブラックハートは目の前の少女を見据える。

明らかに不機嫌そうに顔を歪ませている女神も歯牙に掛けず、敢えて優雅な振る舞いを演じていた。

が、声色などからは敬意など欠片も感じられない。

 

 

「何だその態度、それが他人……増してや女神の先輩に向ける言動か?」

 

「ごめんなさぁい、アポなし突撃なんて無礼をしてくる人が女神だなんて思えなくて」

 

「チッ、やっぱ経験の浅い女神はマナーがなっちゃいねぇな……。 こんな出来の悪い女神が治める国なんざ、長生きできそうにねぇな」

 

「まぁ、私の国よりも貴女の国の方が潰れるんじゃない? だって私の国の方が凄いんだから」

 

「ハァ? 所詮テメーの国は目新しさだけで成り立ってるに過ぎねぇ。 そのうち国民にも飽きられて終わるのが目に見えてるぜ」

 

「飽きられてるのは貴女の方でしょ? 知ってるわよ、今じゃルウィーの国民が次々とこちらに流れてきてるって。 誰かさんの人望がない所為ねぇ」

 

「……上等だ、この後輩風情が……!!」

 

 

―――明らかに険悪。明らかに不仲。明らかに一触即発の空気。

下手な一言が戦火を招く。例えるなら、ダイナマイト満載の部屋に火の粉が待っているような状況である。

そんな大爆発寸前の二人を、この二人の少女は近くの茂みから眺めていた。

 

 

「うわぁ~……やっぱりブランだった……」

 

「でもノワールちゃんもブランちゃんも怖い~……激おこだよぉ~……」

 

「マズイなぁ……ブランはキレたら止まらないし、こっちのノワールは調子に乗る傾向あるし……一触即発だよコレ……」

 

 

ネプテューヌとプルルートだった。

ようやくたどり着いたのだが、来てみれば険悪なムードを漂わせている黒と白の女神に戦々恐々としている。

ひょっこりと茂みから顔を出し、手には木の枝を持って偽装している―――つもりの二人だが、どうしたものかと頭を悩ませていた。

 

 

「ねぷちゃん、どうしよ~?」

 

「どうしようも何も、正直どっちも話聞かないところあるし……」

 

「だよね~……。 ……黙らせちゃう? 物理的に」

 

「ぷるるん、それキミが言うと怖いです。 ハイ」

 

「怖くないよぉ~。 皆で寝ちゃえば、平和だよ~」

 

「それ、約二名が永眠しちゃうパターンだよね」

 

「よく分かったね~」

 

「お願いだから否定してよぷるるーん!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、あそこの馬鹿二名。 アレで隠れてるつもりか? アレで」

 

「…………あ、アレは気にしないで頂戴」

 

 

放っておいても勝手にボケ始めるネプテューヌとプルルート、当然二人の姿、声、仕草はホワイトハートにも届いていた。

こればかりはフォロー出来ないとブラックハートも視線を一瞬逸らした。

 

 

「ハッ、マナーのなってねぇ女神は付き合う友達の質も低いみてぇだな」

 

「何ですって……?」

 

「どうせ高飛車なテメーのことだ、お友達が少ねぇんだろ? だからあんな連中としか付き合えないってワケだ」

 

「……言ってくれるじゃない、国民に愛想尽かされ掛けてる貧乳幼女女神が……!!」

 

「アァ!!? ……テメー、そうか……そんなに死にてぇのか……なら……!!!」

 

 

自分のコンプレックス、何より数少ない自分の友人を貶められては最早ブラックハートに我慢など出来ない。

そのまま売り言葉に買い言葉、ホワイトハートのコンプレックスを次々と刺激、彼女の堪忍袋の緒を切れさせてしまう。

 

 

「うわわわわ!!? ちょ、ブラン落ち着いて!!?」

 

「ノワールちゃんもダメだよ~~~!!?」

 

 

ネプテューヌとプルルートも静止に入るが、少女二人の声が届くことは無い。

互いに武器を取り出す中、今血みどろの殺し合いが―――。

 

 

 

 

 

 

「はい、そこまでです。 どんな理由があろうと、例え女神様であろうと相手を貶めるような発言をしてはなりません」

 

「「――――――――ッッッ!!?」」

 

 

 

 

 

 

互いの武器がぶつかり合う直前、その間に黒衣の人影が降り立った。

さすがに一般人には手を上げられないと咄嗟に身を翻し、武器を引く白と黒の女神。

その人物は執事服を着こみ、優雅な所作で一礼する男性。そしてその顔は―――。

 

 

「…………白斗!? 何やってるの!?」

 

「ほぇ~!? 白くんが執事~!?」

 

 

そう、ネプテューヌの相棒にして想いを寄せる少年こと黒原白斗だった。

だがいつもの黒コート姿とは違い、執事服を身に纏っており、所作も言葉遣いも執事そのものである。

 

 

(な、なんだこいつ!? あの二人と違って全く気配なんて無かったぞ!?)

 

「驚かせてしまって申し訳ありません、女神ホワイトハート様。 私、プラネテューヌの女神様にお仕えさせていただいている黒原白斗という者です」

 

 

驚きの余り後退りするホワイトハート。だが、それも無理もない話。

女神として数多の戦闘を経験してきた彼女が、この白斗の気配を全く感じ取れなかったのだから。しかし、戦闘こそ他に劣る白斗だが暗殺者として育てられた経緯から気配を消すのは得意中の得意だったのである。

とにかく、驚く彼女を安心させるかのように柔和な笑みを浮かべ、恭しく一礼する白斗。

 

 

「ち、ちょっと白斗!! 邪魔しないでよ!! 危ないじゃない!!!」

 

「そ、そうだ!! 第一プラネテューヌの女神に仕えるなら、なんで私達の邪魔をする!?」

 

「だからこそです。 女神様はお二方の争いを望んでいません。 故にここはプラネテューヌが仲裁に入らせていただきます」

 

「知らないわよ!! とにかく邪魔しないでってば!!!」

 

「いい加減にしろってんだ!! 退かねぇっていうなら……!!!」

 

 

いつもと違う彼の姿、立ち振る舞いに戸惑うノワールだったが退くことは出来ないと言わんばかりに怒鳴りつける。

この時ばかりはブランも同調し、半ば脅しの様な形で白斗を退かせようとするのだが。

 

 

「―――お前らこそいい加減にしやがれェええええッッッ!!!」

 

「「ッッッ!!?」

 

 

―――白斗の怒号が、二人の女神の敵意を“殺した”。

 

 

「二人がここで争って何になるんだ!? え? 答えてみろ!!」

 

「そ、それは……」

 

「敵国潰してシェア奪取ってか? そんなに侵略行為と変わりねぇし、何よりどっちが勝ったにせよ負けたにせよ国民が犠牲になるんだぞ!!」

 

「だ、誰もそこまで!!」

 

「なるんだよ!! 分かるだろ!? 女神同士が争えば、嫌が追うにも国民が巻き込まれる! だったらここは相手のためでもなく、国民のために矛を収めろッ!!!」

 

「「………………っ」」

 

 

恐ろしい迫力を込めての正論で、女神が怯んだ。

頭に血が上って互いにそこまで気が回っていなかった。理由がどうあれ、国家元首同士で争えば一番被害を被るのは国民なのだ。

さすがに国民を犠牲には出来ないと、良心を維持している二人は武器を虚空へと納め、互いに一歩後退った。

 

 

「……失礼いたしました。 ですが、このままでは二人とも引っ込みにくいでしょう。 ですからここは一つ、茶会でもしながら意見交換ということで」

 

「「何でそうなる!?」」

 

「ではお二人はこのまま戦争、ないしはモヤモヤを抱えたままご帰国なさると?」

 

「「う、うぐ………ッ」」

 

 

いつの間にか、白斗の背後にはテーブルにチェア、そして上質なティーセットに茶菓子とそれこそ貴族かと見紛うようなお茶会の準備が整えられていた。

互いに嫌な相手と顔を突き合わせながら茶会など御免被りたいが、正論を説かれた上にここまで用意されては無下にも出来ない。

ブランとノワールは互いに見合わせながらも、渋々席に着いた。

 

 

「白くん~! 大丈夫~?」

 

「おお、プルルートにネプテューヌ。 この通り怪我はないよ」

 

「ホッ、良かったぁ……。 ところで白斗、何で執事の恰好してるの?」

 

「ああ、コレ? いや、前ネプテューヌが『一度でいいからお嬢様気分味わってみたいな~』とか言ってたじゃんか」

 

「私が……? ……あ」

 

 

それは以前、恋次元にいた頃。プルルート達と一緒にテレビ番組を見ていた時の事だ。

世界の大富豪を紹介する番組があって、その中に大富豪を支える執事が登場したのだが、その執事にお世話されているお嬢様の存在が羨ましくなり思わず口にしてしまっただけのこと。

 

 

「だから今日の仕事終わりの余興として用意してたってワケ。 まぁ、こんなことに使うとは思ってもみなかったけど」

 

「うそ……あんな些細な事、覚えていてくれたの……?」

 

「お前にとって些細なことでも、俺にとっちゃ大事なことだからな」

 

「………~~~~っ!!」

 

 

だが、白斗はそんな些細な事でも覚えていてくれたのだ。彼にとって大切なネプテューヌの望みなのだから。

そんな彼の優しい笑みにネプテューヌは赤く染まった頬を押さえてしまう。

 

 

「んで、お茶請けはプルルートが食べたいって言ってたショートケーキ。 再現するのに結構苦労したんだぜ、これ」

 

「え……あたしのために……?」

 

「おう。 喜んでくれた……かな?」

 

「……うん! 白くん、ありがと~!!」

 

 

そして用意されたお茶請けことショートケーキは、プルルートのリクエストだ。

リクエストと言っても明言していたわけではなく、こちらも「食べられたらいいな」程度に考えていたものだ。

そんな些細な願いすらも聞き逃さず、叶えてくれる―――そんな白斗の思いやりにプルルートは美しく、可愛らしい笑顔を見せてくれた。

 

 

「さて、お待たせしました女神様。 本日は紅茶しか用意しておりませんでしたが、大丈夫でしょうか?」

 

「……ああ、急に押し掛けたのはこっちだしな。 紅茶で構わねぇ」

 

「ホントに、誰かさんがアポなし突撃なんてするから―――」

 

「ノワール様、過ぎたことを仰いませぬように」

 

「う……わ、悪かったわよ……」

 

 

ここからは接待の時間、言葉遣いも態度も改めて白斗が用意に取り掛かる。

調子に乗るノワールを諫めつつ、カップの飲み口を拭きつつ紅茶を注いでいく。色鮮やか紅茶と、そこから広がる香りが興奮する女神達の神経を解していった。

 

 

「……いい香りね……」

 

「……んじゃ、頂くか……ん? 美味い……けど、今まで飲んだことのない味だな……。 どんな茶葉を使ってるんだ、コレ?」

 

「特別な茶葉ではございません、普通のハーブティーです。 ですが飲み口に柑橘類の皮から搾った汁を塗ってまして、これがスッキリした後味を残すのです」

 

 

紅茶の淹れ方は勿論、少しの手間を加えてより紅茶を楽しめるように配慮している。

器用さがウリの白斗だからこそできる気遣いに、思わず感心してしまう黒と白の女神であった。

 

 

「美味しい~! でも白斗、よく紅茶の淹れ方なんて知ってたね?」

 

「まぁ、向こうの世界で姉さんからしこたま教わったから」

 

(姉さん……あー、ベールか~。 そりゃ納得)

 

 

紅茶を飲みながら、ネプテューヌは合点がいった。

白斗の言う姉さんとは恋次元のベールのこと。彼女は大のゲーム好きであるが、同時に大の紅茶好きでもある。

そんな彼女から紅茶の全てをレクチャーされたのなら、この腕前も納得だ。

 

 

「さ、ケーキもお召し上がりください。 お代わりもありますので」

 

「え、ええ……ぱくっ。 ……お、美味しい!!」

 

「ああ! しつこくない程よい甘さに苺の酸味……。 スポンジもしっとりふわふわで、クリームとマッチしてて……美味しい!!」

 

「……良かった」

 

 

女神様も、やはり女の子。

甘いものには目が無く、白斗お手製のショートケーキの味にもうメロメロだ。しかもこれが紅茶と合うものだから、次々と口にしてしまっている。

気が付けば、直前までの険悪なムードはすっかり解消されていた。

 

 

「白斗~! 食べさせて~!」

 

「全く……はしたないですよ、ネプテューヌ様」

 

「女神様命令だからいいのっ! あーん♪」

 

「やれやれ……。 はい、あーん」

 

「ん~~~っ!! 美味し~~~っ♪ 幸せ~……♪」

 

 

長閑な木漏れ日中で開くお茶会の幸せ、ケーキや紅茶の美味しさによる幸せ、何より好きな人に食べさせてもらえる幸せ。

この三連コンボにネプテューヌはすっかり夢見心地だ。

 

 

「白くん~、あたしにも~」

 

「ぷ、プルルートまで……。 分かりました……はい、あーん」

 

「あ~ん♪ ん~~~っ! ねぷちゃんの言う幸せが良く分かるよぉ~♪」

 

「……光栄でございます、女神様」

 

 

するとプルルートも羨ましかったのか、あーんを要求してくる。

溜息を付きつつも要望に応え、フォークで切り分けたショートケーキを彼女の口の中へ。

これまた幸せの三連コンボが炸裂し、プルルートは足をぱたぱた震わせながら大喜びしてくれた。

 

 

「「……………………」」

 

「……まさかとは思いますが、ホワイトハート様とブラックハート様も?」

 

「「んなワケあるかっ!!」」

 

 

乙女な顔になっている二人につい見惚れてしまったのか、視線を向けてくるノワールとブラン。

思わず白斗がそんな一言を漏らしてしまうが、揃ってツッコミを受けてしまった。

 

 

「実はケーキのついでにスコーンも焼いてみました。 もし良ければこちらもお試しあれ」

 

「んん~、こっちも美味しい~! ブラン~、これ美味しいよ~!」

 

「わ、分かったから馴れ馴れしくすんな! ってかお前、なんで私の名前を……?」

 

「細かいこといいじゃん~! はい、あーん♪」

 

「しなくていいッ!! ……でも、美味いな……」

 

 

白斗から新しくスコーンが出された。

こちらもしっとりとした甘さで、ハーブティーとよく合う。美味しさに感極まったネプテューヌが、ホワイトハートことブランに勧めてくる。

戸惑いつつも受け取ったそれを口にしてみれば、これまた上品な甘さで心を癒してくれた。

 

 

(……そう言えば、こんなに心が軽かったのって……いつ以来なんだろうな……)

 

 

ふと、ブランは思う。

女神になって余裕などない日々が続く中、こんなにも穏やかな気持ちになれたのはいつ以来なのだろうかと。

何より不思議なのだ。それこそ先程まで殺し合いにすら発展しかねない空気を和らげるプラネテューヌの女神だというネプテューヌとプルルート、そして白斗という少年が。

 

 

(ネプテューヌという奴が場を振り回して、プルルートってのがそれに拍車をかけて、ブラックハートがそれに振り回されて、それで白斗がそれをフォローしつつ楽しんでいて……)

 

 

―――誰もがこの空間の中で楽しみ、ありのままの姿でいる。

女神としての威厳を全面に押し出していたノワールも、ネプテューヌとプルルートの前ではすっかり形無しで、彼女達の扱いに手を焼いている。

それを白斗が助けて、最終的には白斗が場を上手く収めていて。

見ているだけでも楽しい、そしてこの輪の中にいることが出来て―――安心する。

 

 

 

(……こんな時間が、いつまでも続けばいいのにな……)

 

 

 

ほっと一息を付きながら、ぼんやりとしていた―――その時、どこか焦燥感を掻き立てるような着信音が鳴り響いた。

発信源は、ノワールからである。

 

 

「え? この音……緊急用の? もしもし、どうしたの?」

 

『ぶ、ブラックハート様大変ですっ!! 現在ラステイションのゲーム機生産工場で、変なロボットが大暴れしておりますッ!!!」

 

「な、なんですって!?」

 

 

切羽詰まった衛兵からの着信だった。

何事かと問いかけてみればロボットが破壊活動を行っているらしい。確かにスピーカーからは、凄まじい破壊音も漏れていた。

大音量から聞こえるその知らせに、一同に緊張が走る。

 

 

『衛兵ではとても敵わず……大至急、救援をお願いします!!!』

 

「わ、分かったわ!! 貴方達はその暴れてるロボットとやらを街中に出さないように!!」

 

『り、了解しましたぁ!!!』

 

「そういうワケだから私は戻るわ!! ホワイトハート、今回の件は一旦預ける!! それまで首を洗って待ってなさい!!!」

 

「は? お、おい……!!」

 

 

これ以上ホワイトハートの言葉を聞く時間すら惜しい。

国民を守るため、ブラックハートは急いでラステイションへと戻って行ってしまう。

 

 

「白斗!! 私達も戻らないと!!」

 

「早くいかないとノワールちゃんに置いていかれるよ~!!」

 

「悪い! 俺後始末してから行くから!!」

 

「んもー!! だったら私が女神化して運んであげるから、手短にね!!」

 

「悪いなネプテューヌ! ……で、ホワイトハート様」

 

「な、何だよ……?」

 

 

ネプテューヌ達も、すぐさまノワールの後を追いたいところだが白斗は留まっている。

どうやら何かホワイトハートに話があるらしく、話を振られたホワイトハートは身構えてしまう。

白斗は武器のコールシステムを利用してテーブルやらティーセットやらを片付けると。

 

 

「これ、お土産のケーキとスコーンです。 余り物ですけど」

 

「あ? ああ、どうも……」

 

 

だが、それは杞憂に終わった。

穏やかな表情と共に手渡されたのは残されたケーキやスコーンである。結構な量を焼いてきたらしく、お土産としては十分すぎる量だ。

正直な所、味も気に入っていたので素直に受け取った―――ところで。

 

 

「……女神様にも色々な事情があるとは思います。 だから、俺に貴女の苦労も、辛さも、何もかもが分かるなんて大言壮語は言いません」

 

「!?」

 

「だから、例え勢い任せになってしまうことがあるかもしれない。 ……でも、ノワールも、ネプテューヌも、プルルートも、勿論貴女も。 誰も悪意は持ってない……それだけは、分かってるつもりですから」

 

 

ふと、そんなことを耳打ちされた。

全部バレていたのだ。今日の来訪が、まさに勢い任せだったことも。けれども、ホワイトハート側の気持ちもある程度くみ取ってくれていた。

 

 

「ではこれにて失礼。 ……ネプテューヌ、プルルート!! 悪い、待たせた!!!」

 

「んもー!! 今度はこっちの世界のブランまでコナ掛けてたの!?」

 

「白くん~……」

 

「違ぇよ!! ンなことはいいから、さっさとノワール追いかけるぞ!!」

 

「誰の所為だと思ってるのー!!」

 

 

執事服を脱ぎ捨てると、まるでマジックのようにいつもの黒コート姿へと早変わりした白斗が。

彼は急いでネプテューヌ達と合流し、慌ただしい掛け合いをしながら女神ブラックハートの後を追う。

そんな彼らがホワイトハートにとって騒がしく、眩しく―――そして楽しく映っていた。

 

 

 

「……何なんだよ、あいつら……本当に……」

 

 

 

残された女神ホワイトハート―――否、ブランはただ一人。寂しく、そう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――新興国、ラステイション。

建国したてでまだ不安定な部分も多いこの街にとって、ゲーム機製造とは国家生命といってもいいくらいの一大事業だった。

そんな工場に突然押し入りロボットが破壊活動を行う―――絶対に許してはならない行為だ。

 

 

「貴方達、遅いわよ!!」

 

「ゴメンゴメン! でもちゃっかり私達を戦力に数えてくれてるんだよね」

 

「ま、まぁ貴方達も一応戦えるわけだし。 それに今はこの国を守るためにも手段は選んでいられないわ」

 

 

そして現場となっているゲーム機生産工場前。

ここに女神達と白斗は集っていた。見上げれば立派な工場から煙が噴き出し、崩壊した壁からは今も尚破壊音が鳴り響いている。

 

 

「ノワール、被害状況は?」

 

「中の機械はメチャクチャらしいけど、不幸中の幸いか犠牲者はいないわ」

 

「よぉ~し、なら後は悪いロボットさんをやっつけるだけだね~!」

 

「そういうこと。 さぁ、行くわよ!!」

 

 

被害は今の所、この工場内だけに留まっているがいつ住民そのものへ攻撃するかもわからない状況だ。

迅速な討伐が求められる以上、ノワール達は躊躇することなく工場内へと入り込む。

すると視界に飛び込んできたのは。

 

 

「ふっははははは!! やはり破壊活動は楽しいなァ!!! 作戦ってのはこれくらいド派手にやらなきゃ意味がない!!!」

 

「ちょ、コピリーの旦那!! 程々にしとかねぇと女神が来ますって……」

 

「来たら来たらで結構!! 俺様のパワーで粉☆砕すればいいだけのことよ!!!」

 

 

下半身が戦車、上半身が厳つい機体という確かにロボットとしか言いようがない人影。

そして傍らに控えるのは、如何にも虎の威を駆る狐というポジションに収まっている―――“下っ端”。

 

 

「あ!! この間の下っ端!!」

 

「ん? ……げぇっ!? 黒コートの性悪男に女神達ぃ!!?」

 

「コラー!! 白斗が気にしていることを言うなー!!」

 

「ネプテューヌ、それ遠回しに俺が性悪だって認めてるからな? 後でオシオキだ」

 

「ねぷううぅぅううぅ―――っ!!?」

 

 

仲良し女神と騎士との一幕はさておき、一同は今回の破壊活動を行った犯人達と向き合う。

ロボットは兎も角、隣に七賢人所属の下っ端がいる。ということは―――。

 

 

「そんなことより!! アンタ達がいるってことは、七賢人の仕業ね!!」

 

「その通りだァ!!! そしてェ!!! この俺様こそがァ!!!」

 

 

一歩前に出たのは、今回の主犯格と思しき機械。

堂々と腕を組み、ロボットでありながら大音量でその名を轟かせる。

 

 

「七賢人が一人ッ!!! コピリィイイイイエエエエエス様だあああああああッ!!!!!」

 

「のわああああああ~~~~っ!! う、うるさぁい……」

 

「み、耳がキーンってするぅ~……」

 

 

凄まじい迫力と音量に耳をやられた女神達。

今も尚脳内では耳鳴りが残っており、三半規管にも深刻なダメージを受けてしまったようだ。

因みに隣の下っ端も大音量にやられてグロッキーである。

 

 

「す、すまんデカイの……。 聞き取れんかったから、もう一回名前を言ってくれ……」

 

「んん!? 仕方ない奴らだな!! ならばさっきよりも大音量で言ってやるから耳の穴かっぽじってよーく聞けェ!! 俺様が七賢人が一人ィ!!! コピ…………」

 

 

当然こんな状態でまともに名前など聞き取れるワケがなく、白斗が聞き返してしまう。

大声で名乗りを上げることに快感を覚えたのか、コピリーエースというロボットは悪い顔をすることなく口を開き―――。

 

 

「いえ言わなくていいです煩いんで(バンバン)」

 

「ほげげげェ!!?」

 

 

無防備なその顔面に、白斗の銃が容赦なく炸裂した。

さすがに全身が鉄で出来ているだけに致命傷までには至らなかったが、顔面がへこむほどのダメージは与えられた。

 

 

「お、ゴォ……!! 貴様ァ!!! 不意打ちとか卑怯じゃないのかぁ!!!」

 

「女神様のいない間にコソコソ破壊活動してたお前には言う資格ないけどな、卑怯者」

 

「「「「確かに」」」」

 

「俺様アウェーかぁああああああああ!! というか下っ端、お前も言った?」

 

「いえ、言ってねぇッス」

 

「言ってないならこっち見ろ」

 

 

どうやら七賢人側も一枚岩ではないらしい。

思えば中途半端な下っ端に、幼年幼女のためには手段を選ばないアブネス、幼女をペロペロしたいだけのトリックに、破壊活動好きのコピリーエース。

寧ろ共通点を見つけろという方が難しい面々だ。連帯感など、あったものではない。

 

 

「そ、それよりコピリーの旦那! 自慢のパワーで女神なんかブッ殺しちゃってください!」

 

「おう!! 貴様はアジトに帰って、俺様の好物のパインサラダを用意しておくんだな!! 勝利のパインサラダが、俺様を待っている!!!」

 

(あ、コイツ死んだわ)

 

 

死亡フラグを立てたコピリーエースに心の中で敬礼しながらそそくさと脱出する下っ端。

後を追おうとするが、やはりその巨体が立ちふさがる。

 

 

「さぁ覚悟しろ女神共!! 俺様は暴れたくてウズウズしてたんだ!!!」

 

「全く……ホントに七賢人ってのはロクなのがいないわねぇ!!?」

 

 

臨戦態勢に入る相手、しかもそれが七賢人なら容赦はしない。

ノワールがシェアエネルギーを身に纏い、女神化を果たす。続けてネプテューヌ達も女神化し、己の武器を手に取る。

 

 

「例えここがラステイションだろうと、平和を脅かしていい理由にはならないわ。 ―――人々を守る女神の力、見せてあげる!!!」

 

「機械の体なんてイジメ甲斐がないんだけどぉ……徹底的に嬲ってあげるわぁ!!!」

 

「おかしい……プルルートの台詞だけ悪役じみてるのおかしい……」

 

 

凛々しく太刀を構えるネプテューヌはともかく、怜悧な瞳で蛇腹剣を構えるプルルートからは危険な臭いしかしない。

げんなりしながらも、白斗もナイフと銃を構える。

 

 

「行くぞ女神共ォ!! 俺様の渾身のタックル……受けてみろォォォオオオオオオ!!!」

 

「「「きゃっ!!?」」」

 

 

ブルン、と下半身の戦車部分にエンジンが掛る。

と、次の瞬間。まさにロケットスタートと言わんばかりの加速で体当たりを繰り出してきたのだ。

これには堪らず女神達も飛びのいて回避する。

コピリーエースが突進した後、それは鉄の床すらも抉り取り、設置されて遭った機械が跡形もなく粉砕されていた。

 

 

「……どうやら自慢するだけのパワーはあるみたいね……!!」

 

「フハハハハハハハハ!! パワーこそ最強!!! 女神も俺様のパワーは受け止められないだろう!! つまり、俺様こそが最強なのだああああああああああああああ!!!」

 

「くぅっ!?」

 

 

今の一瞬で完全にパワー差が露呈してしまった。

彼の全力の一撃は、女神であっても受け止めきれない。となれば、コピリーエースが採る行動はただ一つ。

ひたすらタックルを繰り返すだけだ。そうすれば、いずれは女神達に攻撃が当たる。当たりさえすれば一撃必殺。コピリーエースの必勝パターンだった。

 

 

「……何だ、どの程度のものかと思ったがその程度かよ」

 

「白斗……!?」

 

 

―――ただ一人、白斗だけは余裕をかましていた。

否、余裕というよりも失望だろうか。

これ見よがしに溜め息を吐いては大仰に頭を抱えている。女神達も困惑していた。

 

 

「……小僧、今なんと言ったァ!?」

 

「だーかーらー。 お前のパワーがその程度だったって聞いてガッカリしてんだよ」

 

「抜かすじゃないか……女神でも何でもない、高々人間風情がァ!!!」

 

「ま、確かに俺はただの人間様だけど……コレがあるんだよ」

 

 

そう言って白斗は自分の胸元を開けさせた。

見せつけたのは、左胸に埋め込まれている機械の心臓である。

 

 

「お前も七賢人なら、あのクソガエルから聞いてんだろ? ―――俺はこの心臓でパワーアップできる。 お前程度のパワーなんて目じゃないくらいに、な」

 

「フン、この俺様と力比べをしようというのか……いいだろう!! 答え合わせはその身をもって知るがいいッッッ!!!」

 

 

パワー対決、と聞いてはさすがにコピリーエースの興味、延いては負けず嫌いに火をつけた。

先程と同じように前傾姿勢になり、下半身の戦車のエンジンをふかす。

凄まじい勢いでタイヤが回転し始め、今にも爆発しそうな勢いで白斗に狙いを定める。

 

 

「白くん!! 幾ら何でも無茶よ!!!」

 

「そうよ!! 白斗、やめてッ!!!」

 

「あー、大丈夫大丈夫。 そこで見ててくれ~」

 

 

必死に叫ぶプルルートやネプテューヌの懇願も何のその、気の抜けたような声色で白斗が返してくる。

そんな彼の言動が気に入らないのか、怒りのボルテージを上げていくコピリーエース。

 

 

「行くぞ小僧ォ!!! エンジン回転数マックスゥ!!! フルパワァァァアアアア!!!」

 

「ぶっ飛ばすぜ!! オーバーロード……!!!」

 

 

白斗が構え、コピリーエースが飛び出す。

特にコピリーエースのタックルは、今までのものとは速度も威力も比にならない。

 

 

 

 

 

 

「砕け散れえええええええええええええええええええええええええッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

まさに全身全霊のタックル。迫りくる破壊の化身に、白斗は―――。

 

 

 

「―――やっぱやーめたっ」

 

「は? ……って、うおわあああああああ!!? 穴ああああああああああああ!!?」

 

 

手を掲げ、袖口からワイヤーを伸ばした。

そのままワイヤーが巻き取られることによって白斗の体は上へと持ち上がり、コピリーエースのタックルを難なく避ける。

それどころか、白斗の真後ろにはマンホールがあり、しかもご丁寧に蓋まで外されていた。

コピリーエースのタイヤがその穴に落ち込んでしまい、脱輪。完全に動きが止まってしまった。

 

 

「は、謀ったなあああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

 

「謀られる方が悪い。 第一、俺オーバーロード・ハートしたところで女神様より遥かに弱いし」

 

「おのれぇええええええええええ!!! この卑怯者がああああああああああああ!!!」

 

「卑怯で結構コケコッコー。 つーわけで、後はお願いしますよ女神様」

 

 

動きを封じられてしまったコピリーエースにはもうどうすることも出来ない。

何せ攻撃方法がタックル任せだったのだから、そのタックルを封じられた以上亜掻くことすら出来なかった。

やがて白斗の指示を受けてネプテューヌ達、女神様に取り囲まれるコピリーエース。特に、アイリスハート様からの威圧感が凄い、ヤバイ、超怖い。

 

 

「さぁて……コピリーちゃん、だったわねぇ? 楽しい楽しいオ・シ・オ・キの時間よぉ……?」

 

「ま、待て!! 待てぇえええええええ!!! 幾ら何でもこれは卑怯―――」

 

「あ~ら、無様で惨めで脳みそが足りない鉄の塊が……卑怯なんて高尚な言葉を使ってるんじゃないわよぉ!!!」

 

「ギャヒィンッ!!?」

 

「アハッ!! アハハハッ!!! アーッハッハッハッハッハッハァァ!!!!!」

 

 

アイリスハート様のお楽しみ、調教タイム開始。

蛇腹剣を鞭のように振るい、機械の体を滅多打ちにし続ける。体が硬い分、思いっきり力を籠められるらしく、これはこれでアイリスハート様のお肌がツヤツヤしていました。

 

 

「……正直、敗北者に鞭打つような行為はあまり好きじゃないけど」

 

「まぁ、工場を滅茶苦茶にされたワケだし……キッチリけじめはつけてもらわないとね!!」

 

「あ……が……!! ま、待――――」

 

 

情けない命乞いをするコピリーエース、だがそんなものが聞き入られるはずもなく。

 

 

「クロスコンビネーションッ!!」

 

「ファイティング・・・・・・ヴァイパー!!!」

 

「トルネードソードォ!!!」

 

 

女神達の三つの刃が、コピリーエースの機体を綺麗に切り裂いた。

 

 

「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!! こ、この……俺様、が……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」

 

 

身体を切り裂かれたコピリーエースはあえなく爆発四散。

痛快な断末魔と爆発音を残し、きれいさっぱりと消え去ってしまうのだった。

 

 

「ホント、七賢人ってば大したことない癖に迷惑行為だけは一丁前なんだから」

 

「ノワール、今回はほぼほぼ白斗のお蔭なのだけど」

 

「うふふ、白くんナイスアシストぉ♪ 今後もよろしくね」

 

「お任せアモーレ」

 

 

こうしてラステイションを震撼させた、「迷惑ロボ破壊活動事件」は被害を最小限にとどめた上で解決したのだった。

これによりラステイション、そしてプラネテューヌの女神の戦闘力が大々的に宣伝され、更なる評価を高めることになる。

無論、その宣伝の立役者はネプテューヌの守護騎士としての誓いを交わした、黒衣の少年の尽力あってのものだったことは明記しておく。

 

 

(……それにしても、このコピリーエースっての……明確にノワール達が不在の時を狙ってきやがった……。 そしてノワール達がラステイションを離れることになったのは、ブランが来たからだ……。 ………………まさか、な……)

 

 

ただ、今回の事件に関して白斗が調査を進める中嗅ぎ取った微かな違和感。そして予感。

その予感が現実のものとなるのは―――案外、すぐのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某国某所、七賢人のアジトにて。

 

 

「え、ええええええ!!? コピリーさん爆発しちゃったんですかぁ!!?」

 

「ええ。 まぁ、替えのボディは用意してあるし、すぐに復活させてあげられるから心配しないで頂戴な」

 

 

やはりというか、大慌てしていたのは七賢人の(一応)リーダーであるキセイジョウ・レイ。

仲間の爆死に思わず号泣しそうになるが、コピリーエースは紛れもないロボットなのでバックアップデータさえあれば簡単に復活できる。

機械のスーツを着込んだオカマ口調の男が、余裕ぶった口調でレイを宥める。

 

 

「ケ・ド。 アブネスちゃんに続いて下っ端ちゃん、そしてトリックちゃんにコピリーちゃん……失敗続きになっちゃったわねぇ。 おかげでアタシ達七賢人の評判もガタ落ちよぉ?」

 

「うるさいわね!! あの黒コートの男がすべて悪いのよ!!!」

 

「そうだそうだ!! アタイ達の不幸も全部あいつのせいだっつーの!!!」

 

「俺様の幼女ペロペロを邪魔するあの小僧……断じて許せん!!!」

 

 

艶めかしい口調を続けるロボットスーツのオカマ。今、この七賢人において既に半数以上が女神達に敗北を喫していた。

特に彼らの活動を妨げているのは女神達を守るべく死力を尽くしている白斗という少年だ。

彼に恨みを抱いているアブネスたちが、挙って声をあげる。明らかに逆恨みなのだが。

 

 

「全く、お前達は情けないのぉ。 仕方ない、年長者のワシが尻ぬぐいしてやるか」

 

「あら、アーさん。 自信満々ねぇ?」

 

「ぐふふ、今回の一件でルウィーの女神が大分揺らいでおってのぉ……。 上手い事利用できそうなんじゃ」

 

 

アーさん、と呼ばれた小太りの中年が眼鏡を光らせる。

下品な笑い声に含まれた力強さから、自信のほどが伺えた。明らかに面白くなさそうな反応をするトリックたちだが、失敗という負い目がある以上強く出られなかった。

 

 

 

 

 

 

「見ているがいい、女神共。 貴様らはこのワシの前に膝を屈することになる……ぐふふ……はーっはっはっはっはっはっはァ!!!」

 

 

 

 

 

 

―――悪巧みは、止まらない。




ということで神次元のホワイトハートことブラン様と七賢人よりコピリーエースの登場でした。

神次元の女神様って無印ほどじゃないけど、仲悪いんですよね;
その仲の悪さを無理矢理繋いでいくのが我らが主人公ネプテューヌなのです。そこに白斗という人物をどう落とし込ませるかが結構悩みどころでした。
なので白斗君の立ち位置はまさに裏方。あくまでネプテューヌとプルルートの影になるように、二人という太陽をより輝かせる影というポジションになっています。
そして今回、白斗君には執事をやらせてみました。こう見ると白斗って案外コスプレしちゃってるよーな……。

一方七賢人のコピリーエースさん。何気にツボなんですが、ああいう単純なキャラって動かしやすそうで実は案外動かしにくい。
頑固っていうか、自分のしたいことが明確な分、色んな動きをさせにくいんですよね~。
でもそんなキャラを動かせるのが二次創作の魅力でもあります。
さて、次回の恋次元ゲイムネプテューヌはルウィーへ潜入!ついにホワイトハートとの全面対決に突入!?お楽しみに!
感想ご意見お待ちしております!!
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