恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART 作:カスケード
―――場所は変わって、ここは恋次元のプラネタワー。
現在、イストワールはネプギア達女神候補生全員が神次元に飛んでしまうという前代未聞のトラブルに見舞われていた。
当然、イストワールとしてはその対処に追われていたのだが。
「……やはりダメですね。 今の転移でシェアを大量に使った以上、向こう側でネプテューヌさん達がシェアを集めてくれないとゲートを開くことすらままなりません」
計器類を操作し終えて、落胆の色濃い溜め息を吐いた。
とりあえずエネルギーさえ溜まればいつでも神次元と接続できるように調整はしたものの、そのエネルギーが大問題なのだ。
「……さて、当面は現状維持するしかないとして……残る問題は……」
これ以上この部屋で出来る作業は無い。
しかし、イストワールは今にも倒れてしまうのではないかというくらいにふらつきながらなんとか飛び、とある部屋のドアを開ける。
そこにいたのは―――。
「ユニぃぃぃ……どうして貴女までいなくなっちゃうのよぉぉぉ……」
「ロムぅうううう!! ラムぅうううううう!!! 白斗おおおおおおおおおお!!!」
「ァァァアアアァァアアォオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
(嗚呼……女神様達が予想通り壊れてしまいました……。 ベールさんに至っては最早モンスター化しちゃっていますし……)
テーブルに突っ伏しながら泣いているノワール、椅子から立ち上がっては天井に向かって吠えているブラン、そして謎のオーラを振りまきながら意味不明な叫びを上げるベール。
このゲイムギョウ界を平和に導く存在であるはずの女神達は、皆使い物にならなくなってしまった。
特に妹という精神的支えを失ったノワールとブランのダメージは大きい。否、未来の妹としてネプギアを狙っていたベールも、二人と何ら変わらない。
「イストワールぅうううううう!!! どういうことなのよおおおおおおおおお!!!」
「何で白斗とネプテューヌが帰ってくるどころか女神候補生全員が神次元に行っちまってんだあああああああああああああああ!!?」
「そ、それについてはもう何者かの仕業としか……」
「シェアなら!! 私達のを分けて差し上げますからッ!! 早く白ちゃんやネプギアちゃんに合わせてくださいましいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「あーもーっ!! 私にどうしろっていうんですかこんなのぉーっ!!!」
そしてイストワールの存在を認めるや否や一斉に寄ってくる女神達。
凄まじい威圧感に逃げ場を失い、イストワールもとうとう泣きながら吠えてしまうのだった。
―――更に場所は変わって、とあるホテルの一室では。
「ねぇ……MAGES.ぅ……。 MAGES.って何でも作れるよねぇ……?」
「な、何だ5pb.よ……。 それにマーベラスやツネミも徒党を組んでくるとは……」
狂気の魔術師として様々な発明を行ってきた少女、MAGES.は今、人生最大の恐怖を味わっていた。
何せ自分の周りを、光を失った目の少女達が取り囲んでいたのだ。
彼女の従妹こと5pb.、旅仲間のマーベラス、そしてプラネテューヌの歌姫ことツネミ。
共通点としては―――言わずもがな、白斗に恋している少女達である。
「私達ね……もうダメなんだ……。 白斗君と会えない日々に、耐えられないんだよぉ……」
「お願いです……。 白斗さんに合わせてくださいぃ……お願いですぅ……」
「ヒッ!? 亡者のように這い寄るんじゃない! ええい、悪霊退散ッ、悪霊退散ッ!!!」
「「「痛たたたたたたたっ!?」」」
ずり、ずり、とカーペットに這いつくばりながら這い寄るその様は、まさにゾンビ。
白斗と触れ合えないことに精神が限界に達し、彼女達も女神達に負けず劣らずに壊れていたのである。
湧きあがる恐怖に耐え切れず、MAGES.が十字架やらニンニクやらを投げつける。意外とダメージは入った。
「お願いしまずぅ……白斗さんに……白斗さんに会わぜでぐだざいィィ……」
「ツネミよ、キャラ崩壊という言葉を知ってるか? これ以上その顔と声を晒せばアイドルとしての道が断たれ、リアクション芸人として生きていかねばならんぞ?」
「もうボク達は限界なのぉ……。 白斗君に会いたいのぉ……」
「だからMAGES.ぅ……いつもみたいに次元転移の装置作って私達を飛ばしてェ……」
「分かった!! 分かったから!!! 私の半径3メートル以内に近づくなッ!!!」
MAGES.とマーベラスを含めたメンバーは、時折次元間の旅を楽しんでいる。
次元移動の方法は様々だが、MAGES.の発明によるところも大きい。
そのためツネミ達はMAGES.に神次元へ飛ぶための装置の開発を依頼していたというわけである。
恋は人をも狂わせるとは言うが、最早狂人を通り越して廃人一歩手前の彼女達への恐怖に根負けし、MAGES.は装置の開発を約束する。
「白斗くぅん……待っててねぇ……」
「もう絶対離さないから……ふ、フフフ……」
「白斗さん……白斗さぁん……」
「ブルブル……これはさっさと装置を作り上げねば、寧ろ私の命が危ない……!!」
一体この台詞を聴いて、誰が国民的アイドル二人と笑顔がトレードマークのくノ一だと理解出来ようか。
末恐ろしさを感じずにはいられないMAGES.だったが、自分の身を守るためにも急いで神次元への転送装置開発へと着手し始めるのだった。
☆
―――さて、場所は神次元の海上へと移る。
そこでは白波を立てながら海面を突っ切る一隻の船があった。
金持ち御用達のクルーザーの様な船で、指定されたラステイションの港に行くとこの船が停泊しており、身なりの整ったスタッフが出迎えてくれていた。
そして彼らに案内されるまま船に乗り込み、接待を受けながら女神様ご一行は新たなる国を目指していた―――のだが。
「わー! 風が気持ちいいね、お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
「白兄ぃ、もうちょっと寄ってよ! 椅子から落ちちゃうって!」
「お兄ちゃん! 見て見て、カモメさんがいっぱーい!」
「ひゃぁぁ……! このお船、早過ぎるよぉ……(ぶるぶる)」
「はじめてのふねー! ぴぃ、かいんげきー!!」
現在、黒原白斗は五人の女の子に囲まれていた。
右手はネプギア、左手はユニにしっかり握られて椅子に座らされている。更には足元はロムとラムが抱き着いており、頭はピーシェがホールドしているという状況。
因みにネプギアは左手で白斗を掴みながら、右手で姉のネプテューヌを握っているという両手に華状態である。
「えへへ、お兄ちゃんにお姉ちゃんと一緒―♪」
「お、おおぉぉ……何だこの……この子達に何かをガンガン吸われていく感じは……。 ってかネプギアに至っては何か精神年齢下がってないか……?」
「ネプギアって甘えん坊なところあるからねー……。 私達と離れ離れだったから甘えたいんだよ、きっと」
ネプテューヌは苦笑しながらも嬉しそうな表情を浮かべている。
白斗も口先では困っていたが、可愛らしい女の子五人に囲まれて嬉しくないわけがない。が、困っていないわけでもない。
特に妹分5人の相手をする白斗の労力はそれはもうすさまじいものだった。
「あははー! おにーちゃんのほっぺ、びろーん!!」
「い、いへへへへへ!! ひーひぇ、ひっはふは!!」
「あはは、白斗もピー子に絡まれる私の大変さを理解してくれたー?」
「り、理解しましたとも!! プルルート、手伝ってくれ!!!」
「はぁ~い! あたしも白くんにぎゅ~っ!!」
「って、お前まで引っ付いてどないすんねん!!?」
しかし、ネプギアとユニは引っ付いているだけで大人しいものだが他のちびっ子三人はそうもいかない。
特にピーシェは久々に白斗に甘えられるということで大暴走。プルルートに救援要請を送るが、彼女まで白斗に抱き着いてくる始末。
「の、ノワールにブラン!! お前達も手伝ってくれぇ!!!」
「羨ましい状況で何を言ってるのかしらね、あの男」
「馬には蹴られたくないから。 ここでゆっくりお茶してるわ」
「お前らホントにそう言う時だけは仲いいのな!!?」
二人の女神様からは白い視線を貰ってしまった。
どうも助けてくれる雰囲気ではないので、リーンボックス到着まではこの状態でいるしかない。
「白兄ぃ、あんまりピーシェ達ばっかり構わないでよー」
「分かってる、分かってるって! また訓練とか、ちゃんと一緒にいるからさ」
「うん、約束だよ!」
だが、甘えん坊で言えば割とユニも甘えてくる。
相当寂しかったのだろう、普段はツンデレよりなユニですらオープンに引っ付いてきている。
何とか彼女の頭を撫でながら、以前の日課でもあった銃の特訓の約束をすればとびっきりの笑顔を見せてくれる。
(あ、あ~……ホントーに何かが吸い尽くされていく……早く……早くリーンボックスに到着してくれぇ~……)
まだ船を走らせて30分も経っていないのに、既に疲労が滲み出ている白斗。
割と情けないことを思いながら、それでも可愛い妹達の相手をし続けるのだった。
「白斗~! ネプギア達ばっかり構っていたら、ネプ子さんむくれちゃうよっ!」
「そうだそうだ~! もっとあたし達にも構って~!」
「アンタらはもうちょっとお姉さんしなさいね!?」
そして妹以上に構ってちゃんと化しているプラネテューヌの女神様二人にも手を焼かされ、白斗の疲労は更に加速していくのだった。
「知らなかったのか? 疲労は加速する……」
「やめろ、マジでやめろ」
アホなことを言いだしたネプテューヌに軽くチョップを一発。
それでもツッコミの腕は鈍らせない白斗である。
☆
「―――お待たせしました。 ここが我が国、リーンボックスでございます」
「わぁ~! 広~い!」
小一時間後、船員からのアナウンスに船内で過ごしていた一同が外へと降り立つ。
そして眼前に広がった世界は―――まさに別天地だった。
まず港からすぐ見えたのは、地平線すら見える広い滑走路だ。旅客機は勿論、戦闘機も頻繁に飛び交っている。
自分達の大陸では見られない光景に、プルルートは大はしゃぎだ。
「おお、戦闘機が飛び交ってらぁ。 こっちのリーンボックスもやっぱり軍事国家のようだな」
「そうみたいね……あ、白兄ぃ! あの衛兵の銃、結構良くない!?」
「ん? ほほう……型式としては古いが、射程や威力に優れてそうだな。 ただ手振れとかで命中精度は悪そうだが……」
「アンタ達……何を銃談義で盛り上がってるのよ……」
片や銃マニア、片や元殺し屋。どうしてもついつい視点がマニアックになりがちだ。
そして数少ない共有できる分野ということで、白斗とユニはよく銃についての専門的な話で盛り上がる。
ユニの銃マニアっぷりを初めて目の当たりにしたノワールはただただ困惑していた。
「あ、お姉ちゃん見て見て! あっちに大きな建物が沢山ある!」
「おおー、こっちのリーンボックスもスケール至上主義ですなー」
「確かに大きな建物だらけね……。 プラネテューヌは細くて高い建物が多い印象だけど、こっちはとにかく大きさに拘ってる感じかしら?」
ネプギアやネプテューヌは、空港とは反対側に広がるリーンボックスの街並みに釘付けだ。
恋次元でもベールの統治方針は「自由に、スケールは大きく」である。この世界の彼女もやはり同じ方針を取っているらしく、街の造りからしてそれが見て取れた。
ブランも女神として新しい国の風景をしっかりと観察している。
「では、そろそろリーンボックスの教会へとご案内します」
「分かりました。 んじゃ、ネプギア達とは一旦お別れだな」
「ええ!? 何で!?」
「いや、招待受けてるのは女神様と俺だけだから。 急に5人も無関係な人を連れ込むわけにもイカンでしょうよ」
まるで電流でも走ったかのようにネプギアが悲鳴にも近い声を上げた。
いや、彼女だけではない。ユニも、ロムもラムも、そしてピーシェも。
今まで白斗と離れ離れでようやく再会出来たというのに、また離れ離れ。寂しがる気持ちも理解できるが、今回は仕事で来たのだ。向こうの都合もある、心を鬼にしてそう諭すのだが。
「私達はお兄ちゃんの妹よー! 無関係じゃなーい!」
「お兄ちゃんと一緒に行きたい……(うるうる)」
「ぴぃもおにーちゃんといっしょにあそびたい~……」
「うぐっ!? やめてくれ……そのピュアさは荒んだ俺の心に効く……やめてくれ……」
小さなロムやラム、そしてピーシェからの眩しい視線を受け、白斗がぐらつく。
少し捻くれ者のきらいがある白斗にとって、純粋無垢なちびっ子の視線は良く効くのだ。
しかしここで屈しては兄の威厳が損なわれるというもの。それに彼女達のことも大切だが、ネプテューヌ達のためにも仕事を疎かにするわけにはいかない。
「め、面会が終わり次第合流するから! それまでは皆に任務を与える!」
「にんむ?(はてな)」
「そ。 女神候補生ご一行様にはこのリーンボックスの文化風俗の調査を命じる! 俺達が合流するまでの間、あらゆる店を回り、その物価や品質、傾向などを調査すべし!」
「物は言いようね白兄ぃ……。 でも、こっちのリーンボックスも軍事国家ならいい銃置いてそうだし、それもいいわね!」
「わたしは新しい絵本がいい! ピーシェは?」
「んーとね、ぴぃあたらしいおもちゃがほしいっ!」
しかし、その間妹達は暇になってしまうのも事実。
そこで白斗は調査とは名ばかりの買い物に行かせることを提案した。折角新天地に来たのだから、各々の好きなものを買わせてあげたいという気遣いだ。
そしてさすがは女の子、お買い物と来れば皆が目を輝かせていた。
「ではネプギア、ユニ。 皆を任せたぞ。 軍資金(白斗の財布)も預けておく」
「任せて、お兄ちゃん!」
「りょーかい! さーて、どんな銃と巡り合えるのかな~っと♪」
「一応手加減してね!? 白斗さん持ち合わせ少ないから!!」
念のためにと白斗は二つ持っている財布の片割れを差し出した。
次元も違うので、恋次元のお金が使えない以上、この世界のお金を使わねば買い物は出来ないからだ。
因みに白斗もネプテューヌやプルルートを手伝う形でクエストも行っていたので、ある程度は小遣いも持っていた。正直、そこまで余裕があるわけではないが。
「大丈夫なの? あの子達だけで。 ネプギアやユニは兎も角、残り三人は小さい子ばかりじゃないの」
「まぁ、ネプギアはしっかり者だしユニちゃんも真面目だし。 白斗が言いつけなくてもピー子達の面倒はちゃんと見てくれると思うよ」
「うんうん~。 ぎあちゃんとユニちゃんなら大丈夫だよ~。 あたしは信じてる~」
「……信じているという名の体のいい押し付けね」
心配そうな眼差しをノワールが投げつけてくる。無理もない、ロムやラム、それにピーシェは目を離せばどこに行くかもわからない小さな子達なのだから。
だが、ネプギアやユニの事を良く把握しているネプテューヌとプルルートが頼りにしているお墨付きを出した。
ブランは少し呆れを感じていたが、深くは突っ込まないことにした。
「それじゃ、出発しますか。 女神様の根城へ」
改めて白斗達はスタッフの案内の元、リーンボックスの女神様が住まう教会へと案内されていった。
リーンボックスの街並みはプラネテューヌのように近未来的発想だが、教会自体は貴族の屋敷を思わせるような、エレガントな造りである。
この辺りの発想も恋次元と非常に似通っていた。
「……結構いい暮らしをしているみたいね、リーンボックスの女神ってのは」
「ノワール、お前んトコの教会だって明らかに立派じゃないか。 人の事は言えないと思うぞ」
「うぐっ!? い、言ってみただけよ」
(やれやれ、なんで俺までご指名されたのか……今になって理由が分かるなコリャ……)
こちらのノワールはやはり好戦的だ。
全く関係ない白斗が呼ばれたのは、所謂緩衝材という役割だと今になって実感できる。
交戦的なノワールや怒りっぽいブランを交えては話もうまく伝わらないと思ったためだろう。
“彼女”ならば、確かにそのくらいの配慮はしてくる。
「では皆さま、あちらの部屋でお待ちください。 女神グリーンハート様をお呼びしますので」
「女神の部屋か……。 どんなものかしらね……」
(ワクワクしてるトコ悪いけど、私にはどんな部屋か大体予想ついちゃうんだよねー)
グリーンハート直属の部下が向こう側の部屋を指差し、女神を呼びに行った。
応接室は建物の外観に次いで重要とされる部屋。その建物における顔と言ってもいい。
内装次第でそこでどんな暮らしをしているのか、その建物の主がどんな人なのかが分かってしまうからだ。
ブランもゴクリと生唾を飲み込むが、ネプテューヌには大体分かってしまった。何せ、恋次元でも彼女の部屋と来れば―――。
「って何よコレー!? ゲームソフトだらけじゃない!!」
「こっちは……初回生産限定のタペストリーやフィギュア……! サブカルグッズ満載!?」
「まー、こうなりますよねー」
ノワールとブランの目がひん剥かれた。
女神の応接室というからには荘厳かつ威圧感溢れる部屋かと思えば、そんなものなど欠片程もない、ゲーム関連の部屋だったからだ。
ほぼほぼ予想通りの光景にネプテューヌは最早呆れ気味である。
「ひ、ひゃぁ~!? ねぷちゃん見て見て~! お、男の人同士が裸になって~……!!」
「あー……ベールって守備範囲広い、っていうかゲームなら何でもイケる口だからねー。 乙女ゲーとかも良くやり込んでるってさ」
するとプルルートが珍しく顔を赤くさせて、爆発していた。
彼女が指差した先には壁に掛けられたポスター。男同士の艶めかしい絡み合い―――俗にいうBLというジャンルだ。
恋次元のベールも自分の趣味趣向をオープンにしてきたベールなので、ネプテューヌもある程度理解を示していた。因みに彼女も顔を赤くしながらもチラとポスターを見ている。
「こっちはコントローラーが詰め込まれた棚……さっすがベール姉さ…………んんッ!?」
折角だからと白斗も見学していると、とあるポスターが目に入る。
それはほぼ全裸で、大事な所を隠しきれていない美少女キャラクターのポスター。
所謂R-18なゲームの特典だろうか。不意打ちで入ってきたそれに、男である白斗はついつい反応してしまい―――。
「って白斗のバカー!! 何見てるのぉーっ!!!」
「ぎゃああああああっ!? 目が、目があああああああああああッ!!?」
「あたし達という者がいながら~! 白くんの浮気者ぉ~っ!!」
「う、浮気って……ぐほぁ!? ちょ、プルルート!! 落ち着ごががががァァァ!!?」
当然そんなことを許せるネプテューヌとプルルートではない。
即座に目を潰し、涙交じりにポカポカと……ではなくドカバキと握り拳を振るう。女神様のパワーは尋常ではなく、白斗はただされるがままにズタボロにされるのだった。
「うふふ……私のコレクション……堪能して頂けたようですわね」
するとそこに優雅な女性の声が。
少し緩んでいた一同に、まるで電流が走ったかのような緊張感が流れる。
「え!? そ、その声は……!!」
ノワールが目を見開いた。彼女だけではない、ブランもだ。
何せ、その声には聞き覚えがあったのだから。
やがて扉の奥から現れる、美しい緑のドレスを着こんだ金髪の美女。その名は。
「うふふ、お久しぶりですわね皆さん。 改めまして、このリーンボックスの守護女神。 グリーンハートことベールですわ。 お見知りおきを」
―――ベール。以前、ルウィーに来た時に知り合った美女だった。
「なっ!? ベール!!?」
「貴女だったなんて……!!」
シリアスなまでの反応を見せるノワールとブラン。
対するネプテューヌ達はと言えば。
「ま、まさかベールがリーンボックスの女神だったナンテー」
「知ラナカッタナー」
「わ~! ベールさんお久しぶり~」
全く緊張感の欠片もないリアクションを見せるのだった。
「ってか白斗とネプテューヌは明らかに棒読みじゃない。 ひょっとして知ってたの?」
「だから言ったろ? ノワールと同じ事情だって」
「同じ……ってそこから同じだったの!? そうならそうと先に言いなさいよ!!」
「いや、あの時はベールさんも伏せて欲しそうだったからさ。 事を荒立てたくもなかったし」
以前、ベールと紹介した時に「ノワールと同じ事情」だと伝えておいた。
それが彼女の中では「自分と同じ姿の人物が恋次元にいただけ」だと解釈されたのだ。
実際の所「女神と言うところまで同じ」とは想像できなかったのである。
尤も白斗もそんな勘違いをしてくれるような言い回しにしたのだが。
「そういうことですわ。 ですが、嘘も言っておりませんので」
「……ルウィーに来たのも偵察のためね」
「ついでに言うと俺達が牢屋にぶち込まれた時、衛兵を倒してくれたのもベールさんだ。 だから事情を隠してた件はこれでチャラにしてあげて」
「……そう言うことなら仕方ないわね」
(あら白斗君……私の印象を落とさないようにフォローしつつ、それでいて手助けした件を交渉材料にされないように立ち回っていますわね。 やはりやり手……)
偵察されていたと知ればいい顔をしないブランだが、白斗がすかさず言葉を添えてくる。
ブランはそれを受けて渋々だが引き下がり、同時にベールも牽制されてしまう。
戦闘能力こそこの中の誰よりも弱い男だったが、それ以外の面では本当に器用に立ち回る。
ベールの中で、白斗に対する警戒心と興味がまた一つ上がった。
「それで、本日はどういったご用件でしょうか? 尤も、穏やかな話題とは思えませんが」
「ふふ、やはり察しが良いですわね。 貴方をお招きして正解でしたわ」
(やはり俺が緩衝材が……やれやれ。 ってことはこの後、大荒れするんだろうなぁ……)
予想通り、白斗はスムーズに話を進行させるために呼ばれたらしい。
早くも胃が痛くなるのを感じながら、ベールの言葉を待つ。
「では単刀直入に。 ……私は今から、正々堂々と大陸のシェアを頂戴しますわ」
瞬間、黒と白の女神様から殺気が爆発した。それはもう、近くのガラスにヒビが入るくらい。
「……その言い分ですと武力介入ではなく、そちらのゲーム機をこちらに流出させていくという感じですかね」
「お話が早くて助かりますわ。 そう、我が国で最も大人気のゲーム機、そしてソフトを売り捌く……国民の皆さんは、一体どこのハードが至高なのか、すぐにご理解して頂けますわ」
「……わっかりやすく喧嘩売られてるわね……!」
「はいストーップ!! ……どうやら生産体制どころか、こちらに流す算段も整っておられるようで。 もういつでもリーンボックスによる大陸制圧準備は完了していると」
「その通り。 ただ、前置き無しでいきなりハード流すのも上品かつ優雅とは言えませんので。 それに宣戦布告無しで不意打ちされたことを言い訳にされても困りますし」
「はーいブラン様ぁー!? 無言で目を血走らせてハンマー振り上げないでねー!?」
言葉遣いこそ優雅だが思い切り喧嘩を売っている。
そして言い値で買うと言わんばかりにブランが殺気を漲らせてハンマーを振り下ろそうとしていた。
白斗が咄嗟に羽交い絞めにしなければ、武力衝突となっていたことだろう。
「白く~ん、どういうこと~?」
「理解してなかったのか……。 要するにベールさんが自分のゲーム機を売りさばくことで支持を得て、大陸のシェアを奪いに来るってさ」
「はぁーあ。 予想してたけど、どーして皆面倒ごとを率先して起こしたがるのかなー?」
「今回ばかりは俺もネプテューヌに同意だわ……」
予想していたが、今回ばかりは予想が外れて欲しかった。
白斗とネプテューヌはどっと圧し掛かる疲労感に重い溜め息を吐いてしまう。
「ふふふ、楽しみですわね……。 一週間後のこのゲイムギョウ界が、リーンボックスのイメージカラーである緑に染め上げられる光景……ああ、心が踊りますわ!」
「既に勝ち確の妄想……ねぇ、あいつ斬っていい?」
「駄目です」
「じゃぁ、磨り潰すのは?」
「駄目です」
冷静に捌く白斗だが、実際の所は冷や汗塗れだ。
いざ怒髪天となった女神様二人を白斗如きが止められるわけもない。何とか言葉で収めるように必死に舌を回していた。
「そうですわ。 私はあくまでゲームという平和的かつ国民の誰もが納得できるジャンルで勝負しているのですから。 貴方達も同じ土俵で勝負すればいいのではなくて? 尤も、今から準備したところで間に合うとは思えませんが」
(武力衝突という負け筋を潰している辺り抜け目ないよホント……)
そして弁舌に関してはベールも負けていない。
彼女は大のゲーマーという印象が付き纏いがちだが、いざ仕事をするとさすが女神と言わんばかりに有能なのだ。
ネプテューヌが仕事の速さを売りとするなら、彼女は抜け目のなさ。
自分の負け筋を潰して勝利に直結するようなゲームメイク。まさにゲーマーだからこその腕前と言うべきか。
「それに戦う前に既に勝負は決していますし」
「どういうことよ?」
「では……SEをよーくお聞きになって」
するとベールが何やら女神達の胸を見始める。まるで品定めをするように。
「ちらり」
「な、何よ?」
ぽいーん。
「じろじろ」
「なになに? 私の胸に何かついてる?」
ぺたん。
「ちらっ」
「なっ……! どこ見てやがる!?」
ぺたーーーん……。
「じーっ……」
「ほぇ?」
ぺたんこ。
「そして彼は……ふむ」
ぽよん。
「オイ待て!! なんで俺を見た!? なんで俺からそんな効果音が出る!?」
「白斗テメェェェ……私より胸あるのかァァァ!! その胸寄越せェェエエエ!!!」
「いやいや!? 俺男だから比べてもアギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
「こんな胸引きちぎってやるゥ!! ガルルァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「取れるッ、俺のB地区取れるゥウウウウウウウ!!! ァァアアアアアアアアアア!!!」
以上、ベールさんのお胸品評会でした。
さぁ、画面の前の貴方は台詞と効果音だけで誰がどの人か分かったかな?
「むぅ~っ……! ベールさんがそんな事するなら、あたしだって~……! じろ~っ」
「ふふ、幾らでも見てくださいませ」
ばいーん!!
「わぁ~!? 効果音が全然違う~!?」
「ふふ、これが彼我の力量差ですわ。 そちらは人並みが二人、平均以下が二人、そして絶望的なのが一人……全く、この大陸の人々は女神に恵まれてませんわねぇ」
「誰ガ絶望的ダァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
「ってか俺を人並みにカウントしないで貰えますかね!?」
わざとらしい含み笑いに敏感に反応してしまう女神が一人。
何を隠そう、というか隠す気もない。ブランである。やはりこの世界でも、ブランとベールの相性は最悪だった。
因みに白斗の心からの叫びは誰もが無視している。白斗は泣いた。
「あらあら、誰も貴女の事だなんて言っておりませんわ。 それとも自覚があるのかしら?」
「殺ス!! コイツ殺ス!! ソノ贅肉削ギ落シテ、ルウィーニ晒シテヤルゥウウウ!!!」
「晒すの首じゃなくて乳!? ってか女神化すんな落ちつけ餅つけェ!!!」
「ブランちゃん暴れちゃダメだよぉ~! ベールさんも言い過ぎ~!!」
「そーだそーだ! いじめんな! ペチャパイいじめんなー!!」
「テメーらも大差ねぇだろーがアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
慌てて女神化したブランを取り押さえる白斗達。
けれども火に油を注ぐ、プラネテューヌの女神様に白斗の胃痛は加速する。
「ほらー、私達は女神化すればー」
「白くんも大満足のないすばで~になるし~」
「ここで裏切んのかチクショオオオオオオオオオオオオ!!!」
「いやですわ、これだからマナーのなっていない女神は……。 吠えるだけならワンちゃんの方がお利口でしてよ?」
「グルルルルルルルルルルァアアアアアアアアアアアッ!!!」
「あーもーっ!! アンタらマジでいい加減にしろぉーっ!!!」
いい加減胃がボロボロになってきた白斗ではブランを押さえるのも限界だ。
しかしベールは相変わらず勝利を確信しながら優雅に笑っている。
「ふふ、白斗君も苦労しますわねぇ。 何でしたらそんな娘達の補佐なんてやめて、私の執事になります? 月収50万クレジット、福利厚生付き、週休二日ですわ」
「何その好待遇!? ってか俺を買い被り過ぎでは!?」
「謙遜はやめてくださいまし。 調査済みですのよ、貴方主導の政策のお蔭でプラネテューヌが盛り返していること……何より貴方は“他人を支える”ことに関しては他の通髄を許さない。 それは貴方自身のこれまでの行動が何よりも証明していますわ」
すっかり白斗に興味を持ったベールは白斗についてもしっかりと調査をしていた。
白斗がどんな政策を行い、どんな成果を齎したのか。
そしてそれを通じて白斗が誰かのために、己が全てを尽くす人だということも。
「何言ってるのさベール!! 白斗は私のなんだからねーっ!!」
「そうだそうだ~!! 白くんは絶対に渡さないんだから~っ!!」
「お前ら引っ付くなっ!! ま、まぁそうしてくれるのは嬉しいけどさ……」
「ふふ、なんとでも仰ってくださいまし。 どうせ私が大陸を統一すれば貴方達は女神でなくなり、彼は職を失う……そんな白斗君を私が拾って差し上げるのは当然の流れなのですから」
どうやら既に白斗を手に入れる算段は付いている、というよりも確定事項らしい。
益々頬を膨らませ、白斗の腕に抱き着いてくるネプテューヌとプルルート。最早白斗の胃も心臓も限界だった。
「さて、これから大忙しになりますので失礼いたします。 では皆さん、残り少ない栄華をゆっくりお楽しみくださいませ。 おーっほっほっほ……!」
一切優雅さを崩さず、綺麗なハイヒールの靴音を鳴らしながらベールは去っていった。
もう完全に勝ち誇っている。自分の勝利を疑っていない。他の女神達を舐め切っている。
「……随分舐め切ってくれるじゃないの……あの女神ィ……」
「贅肉が贅肉が贅肉が贅肉が贅肉が贅肉が贅肉が贅肉がァァァァァァ」
「ブランに至ってはモンスター化してるよコレ……。 はぁ、やれやれだな」
ベールが去った後の応接室は殺気に満ちていた。
特にブランに至っては敵視している巨乳相手ということもあって理性が崩壊している。
メンタルケアに手古摺りそうだと白斗が重い溜め息を付いた。もう本日何度目になるかもわからない。
「とにかく帰るぞ!! あっちが正攻法なら、こっちも正攻法で返り討ちにしてやりゃいいだけの話だぁ!!!」
「そうね。 私達のハードの方が凄いって証明すればいいだけの話よ。 急いで帰って対策を練らないと……」
「やっと幾分か理性を取り戻してくれたか……。 ネプテューヌ、今日の晩飯は胃に優しいモンを頼む……」
「うーん、なら雑炊がいいかなー」
そしてベールが去ってしばらくした後、白斗のメンタルケアが功を奏したのかやっとブランとはまともな言葉を交わせる状態にまで落ち着いた。
けれども傷んだ白斗の胃がすぐに回復することは無い。彼のためにも最高の雑炊を作ってあげようと誓ったネプテューヌであった。
「って言ってるけど白斗、私達プラネテューヌも一応ピンチだよ?」
「じゃぁ、お前は何で慌ててないんだよネプテューヌ」
「だって白斗が落ち着いてるから! 何かあるんでしょ?」
「……ま、予想してたことだからな。 あ、でもこれノワールとブランには内緒な?」
「うん~! 白くん、やるぅ~!」
「まぁな。 ……んじゃ、可愛い妹達を迎えに行くとしますか」
何やら白斗は既に対策を立てていたらしい。
だがそれは後回し、今は街中に繰り出しているネプギア達を迎えに行く方が先だ。
怒りに燃えている女神様二人を何とか引き連れ、白斗達はリーンボックスの巨大都市へと歩いていくのだった。
☆
―――一方その頃、恋次元からの来訪者ことネプギア達女神候補生はと言えば。
「ん~! ここのパフェ美味しいねユニちゃん!」
「そうね。 ただ……ボリュームあり過ぎないコレ……?」
「確かに、ちょっと残しちゃいそうだね……」
リーンボックスのカフェテリアでスイーツを堪能していた。
女の子5人による漫遊も中々楽しいもので、デパートで玩具や銃、絵本にクレヨンと各々の欲しいものを見て回った。
無論白斗のお金なので豪遊など出来なかったが、美味しいものを食べるくらいはいいだろうと評判だと聞きつけたカフェテリアに来たわけである。
「んー……ここのぷりん、おいしいけどなんかちがう……。 ねぷのぷりんがいい」
「あはは、ピーシェちゃんは何か拘りがあるみたいだね」
「んー、パンケーキ美味しー!! 今度お兄ちゃんに作ってもらいましょ!!」
「うん! アイスクリームにホイップクリーム、チョコレートにプリン乗せ……♪(うきうき)」
「ろ、ロム? それカロリーが凄いことになっちゃうわよ……」
ちびっ子三人もスイーツをそれぞれ食べていて、色々な反応を見せてくれる。
特にロムは様々なトッピングを施したパンケーキを夢見ていた。
確かに誰もが一度は憧れる欲張りセットだが、乙女としてさすがにカロリーに気を遣うユニが苦笑いしながら止めに掛かった。
「けど……こんなにデカイの、幾ら何でも食べきれないわよ」
「そうだね。 メニューで見るだけじゃ大きさ分からないし……こういう時お兄ちゃんがいてくれれば押し付……食べてくれたんだろうけど……」
「ネプギア、アンタ最近図太くなってるわね……」
ネプギアは 図太い属性 を 手に入れた!
「え!? 何今の地の文!? 図太い属性!?」
日頃、無個性であることに悩んだネプギアは「ラーニング」を習得しました。
これでその場の状況に応じた属性を手に入れることが可能になります。
「いらないよー! っていうか今回お姉ちゃんに置いてけぼりにされなかったからこんなスキル手に入らないって思ってたのにー!!」
「何の話をしてるのよ……。 でもまぁ、確かに白兄ぃと食べたかったなぁ……」
「うん……。 折角お兄ちゃんやお姉ちゃんと会えたのに……」
「「はぁ~……」」
メランコリックな溜め息を付く乙女二人。
こういう時にこそ傍にいて欲しい人がいないこの状況。仕事だから、仕方がない、理屈が分かるだけに溜め息は深くなるばかりだ。
「……ねーねー。 ぴぃ、きになったんだけどー」
「ん? 何かな、ピーシェちゃん?」
すると二人を見ていたピーシェが無邪気な視線を投げかけてくる。
丁度いい、話題を変えるチャンスだとネプギアも快く応じたのだが。
「みんなって、おにーちゃんのことすきなのー?」
「「ゴホゲフガフッ!!?」」
「きゃ!? ちょっと二人とも、どうしたの!?」
「大丈夫……?(さすさす)」
突然のドッキリな質問にむせかえったネプギアとユニ。
そんな二人に驚きつつも、ロムとラムはそれぞれの背中をさすってあげる。
「ゲホッ!! な、何よピーシェ!? そんな色気づいた質問しちゃって!? その年で思春期にはまだ早いわよゴホッ!!」
「あのね、みんながくるまえに、ねぷてぬやぷるるとたちが、おにーちゃんのことすきってはなしてた!」
「ケホケホ……こ、恋バナでもしてたのかな、お姉ちゃん達……」
どうやら二人がやたら白斗の事を話題にするので、あのアフタヌーンティーでの一幕がピーシェの脳裏に過ったらしい。
それでこの質問―――理屈は分かるのだが、タイミングも分かって欲しかった。
「ろむとらむは、おにーちゃんのことすき?」
「もっちろん! お兄ちゃん大好きー!」
「私も……。 優しくて、温かいお兄ちゃん大好き……♪(るんるん)」
「ぴぃもー!!」
やはりちびっ子たちには所謂「恋愛感情」というものはまだまだ分からないらしい。
ただ、この上なく白斗に懐いていることには間違いなかった。
何せ、元来の面倒見の良さから三人とよく遊んでいたのだから。
「で・も。 ……私達が聞きたいのは、そういう好きじゃないんだよねー!」
「うんうん。 ネプギアちゃんとユニちゃんは、お兄ちゃんの事好きなの?(わくわく)」
「色気づいているのこっちだったー!?」
まさか、年だけならピーシェとそう変わらない幼い双子ですら色恋に興味を持ってくるとは。
大方姉である恋次元のブランの影響だろう。
再びやってくる心拍数の大波に押しつぶされそうになるネプギアとユニ。もはや冷静な判断が出来ない。
「え、えーと……そ、そうね!! まぁ、白兄ぃには良く面倒見てもらってるし!? ゲームとか特訓とかにも付き合ってもらってるし!? そういう意味では嫌いじゃないわよ!?」
(あー、これお姉ちゃんと同じだー)
(ユニちゃん、可愛い……♪(にこにこ))
「そこ! 生温かい目を向けるんじゃないッ! そ、それよりもネプギアはどうなのよ!?」
姉と比べれば薄味だが、それでもツンデレ気質が出てしまうユニ。
だが裏を返せば、それだけ白斗の事が大好きであるということ。そうすっかり理解してしまっているロムとラムは、微笑ましい顔を向ける。
話題ごと逸らそうとネプギアに白羽の矢を立てるのだが。
「……好き、だよ。 妹としてだけじゃなくて……一人の、お、お……男の人、として……っ」
「え……」
上擦った声で、しかしハッキリとそう告げていた。
ネプギアは今にも目を回しそうで、顔もこの上なく赤くなっている。息は乱れ、汗は拭き出し、心臓はうるさいくらいに鳴り響いている。
それでも、どうしてもこの気持ちだけは偽りたくなかった。
「優しくて、温かくて、頼りになって、でもどこか抜けてて、危なっかしくて、だから支えたくなって、そしていつも私を支えてくれる……お兄ちゃんが、白斗さんが……大好き、だよ」
「ネプ、ギア……」
「この気持ちだけは……お姉ちゃんにも、ユニちゃんにも! ま、負けないのっ!!」
ほぼ勢いに任せての発言だったが、後悔はしなかった。
凄まじい疲労感で肩で息をしていたが、不思議と胸が空いている。今まで声に出せなかったことを、堂々と言ったからだろうか。
「……負けない、ですって? そんなの……そんなの!! アタシだって同じよ!!!」
すると、そんなネプギアの声に負けないくらいの大声が響き渡った。
先程とは違う、真っ直ぐな瞳で、捻くれた言い回しを一切していないユニの声だった。
「アタシだって!! いつも白兄ぃに支えて貰って!! アタシも支え返して!! 一緒に遊んだり、悩んでくれたり、守ってくれたり……大好きになる決まってるじゃない!!!」
「ユニちゃん……」
いつも照れ隠しが出てしまうが故に押し込めてしまった言葉。
それを勢いに任せて、怒涛の勢いで吐き出し続ける。
無論恥ずかしい。顔中から火が出そうだ。でも、不思議と胸の内が軽くなってくる。
「お姉ちゃんと同じくらいに白兄ぃのことを考えるようになった! いつも白兄ぃの事考えると幸せになって! 切なくて! でも嬉しくて!!」
「……凄く分かるよ。 だって、同じなんだもん」
「……ええ、同じよ。 これだけは……白兄ぃだけは!! アンタでも、お姉ちゃんでも!! 絶対に譲らないんだからぁっ!!!」
正々堂々と宣戦布告し合う女神候補生二人。
その目には闘争の炎と決意の光が灯っており、しかし二人の間に嫌悪感など嫌な感情はは一切感じられなかった。
きっと、二人が正式に「恋のライバル」となったからだろう。
「うわぁー……ネプギアもユニも凄い……」
「これが……恋する乙女……!(どきどき)」
「ねぷぎあとゆに、どしたの?」
ラムは二人の迫力に押され、ロムは恋する乙女の姿に胸を高鳴らせ、ピーシェは一人首を傾げていた。
「それじゃ、ユニちゃんとも正式にライバルになったところでそろそろここを出……あれ?」
「どうしたのよネプギア? 早く行きましょうよ。 そろそろ白兄ぃも用事終わっただろうし」
「そ、そうなんだけど……あれ!? あれあれあれ!? な、無いっ!?」
「ね、ネプギアちゃん……無いって、何が……?(ぶるぶる)」
席から立ち上がったネプギアがポケットに手を伸ばした途端、顔を青ざめさせた。
急いで全身をまさぐるが、お目当てのものが見つからないらしい。
何か猛烈に嫌な予感がするので震えながらもロムが訊ねてみると。
「……お兄ちゃんから預かった、財布が……無い……」
「「「「え……?」」」」
瞬間、空気が凍り付いた。それはもうルウィーなんて目じゃないくらいの冷たさで。
「ま、待ちなさいよ! わたし達が絵本買った時とか、持ってたでしょ!?」
「うん、その時にはあったはずなんだけど……もしか、して……」
「落としたか……スられた……?」
「……かも……」
ネプギア は うっかり属性 を 手に入れた!
「また余計な属性が出来ちゃったー!?」
「今回に関しては事実そうでしょ!? どーしてくれんのよぉっ!!」
「ど、どどどどどどどどどどどっ!?」
「あーもーっ!! テンパり過ぎて奇行種みたいになってるしーっ!!!」
ある意味人生最大のピンチにネプギアは大慌てだ。
こうなってしまった彼女は使い物にならないとユニも頭を抱えてしまう。だが頭に電球を浮かべたかのように、ピーシェが声をかけてくる。
「ねーねー、だれかおにーちゃんにでんわできないの?」
「そ、それよそれ!! 白兄ぃ財布二つ持ってるって言ってたし、とりあえずこの場だけでも凌いでもらいましょ!! お金は後で返す!!」
「ピーシェちゃん、頭いい!(ぱちぱち)」
「えへん! それほどでもある!」
「この威張り様はネプテューヌさんの遺伝ね……。 って、アタシ携帯自分の世界に置きっぱなしだった……」
「それじゃ私が……って充電切れてるー!?」
「わ、私もロムちゃんもケータイなんて持ってないし、ピーシェ……は聞くまでもない……」
「詰んだ……」
ピーシェが連絡を入れるという名案を出してくれるも、全員の連絡手段が全滅していた。
絶望的な状況に膝と手を地に着ける一同。そこへ。
「きゃーっ!! ひったくりよ!! 衛兵さん、そいつ捕まえてー!!」
「了解。 Fire!!」
「ぎゃああああああダダダダダダダダァ!!?」
街の方が騒がしくなったので目を向けて見ると、ひったくり事件が発生していた。
すると衛兵たちが犯人らしき男に発砲する。
弾はゴム弾だったので殺傷力自体は無いが、それでも当たれば痛い。何十発と言うゴム弾を受け、男は地に沈んだ。
「ゆ、許してくれェ……出来心なんだよぉ……」
「それで許されるなら女神様や衛兵は要らないんだよ、キリキリ歩けオラ」
「下手な抵抗すると10万ボルトの電流流すからな」
徹底した攻撃に連行、それも割とバイオレンスだ。
この上なく痛めつけられた男の姿を見て、ネプギア達は更に青ざめる。明日は我が身だと。
「ど、どうしようロムちゃん……お、お金ないってバレたらわたし達も……」
「あんな目に……!(ぶるぶる)」
「それもこれもネプギアの所為よ!! どーしてくれんのよぉっ!!」
「ごめんねごめんねごめんねーっ!!」
今にも泣きそうなロムとラムに触発されてユニまで吠えだした。
いよいよ冷静な判断が出来ず、ネプギアもただ平謝りするしかない。
「お嬢ちゃん達、どうしたんだい? さっきから騒がしいが」
(ヒッ!? 筋骨隆々の店員さん!?)
と、そこへマスターらしき男が現れた。
だが荒事にも対応するためか、物凄くマッチョだった。あんな腕に掴まれたら、か弱き女の子の細腕など折れてしまうくらいに。
おまけに声も低いので、威圧感が凄まじいのなんの。
「ところで、もう食べ終えてくれているようだけど……そろそろお会計か?」
「え、いや、あの……」
「んん……?」
「……お、お代わり……ください……」
「ん? ああ、お代わりか。 同じのでいいのかい?」
「はィ……」
声を震わせ、目を潤ませながらユニが必死に搾り出した言葉。
それはお代わりの注文だった。
「な、何でお代わりしちゃうのユニちゃん!?」
「し、仕方ないでしょーっ!! ここは時間稼ぎのためにも食べ続けるしかないでしょ!!」
「時間稼いでどうするの!? お兄ちゃんに連絡も取れないのに!!」
「こ、こうなったら女神の力で……って、そうだこっちの世界だとまだ女神化できないんだアタシ達……!」
「出来たら出来たらで何するつもりだったの!?」
どうやらユニもイカレてしまったようだ。
やがて運ばれる、ボリューム大のスイーツにネプギア達は顔を強張らせる。
「や、やっぱり量が凄い……。 うぷ……もう、美味しいのか、美味しくないのか分かんなくなってきちゃった……」
「カロリーが、カロリーが……ぇぅ、お腹も、ヤバイ……」
元々ボリューム満点のパフェやパンケーキ、当然小食な女の子達が処理しきれる量ではない。
必死に食べ勧めているが、食べれば食べるほど不健康へと近づいていくのが良く分かる。
「ラムちゃん、私……もう食べられないよぉ……(ぐったり)」
「が、頑張ってロムちゃん……! で、ないと私達……捕まっちゃうのよ……!」
「そうなったら、ぴぃたち……おにーちゃんたちに、もうあえない……」
「そ、それは……!」
「それはイヤァー!!」
特に小柄なロムやラムはもう食べる気力すら湧かない。
しかし、もし無一文がバレてしまったら大好きな兄―――白斗ともお別れになってしまう。
そんな妄想が、ネプギア達を更に追い詰めていく。
「私、まだお兄ちゃんに告白してないのに……!」
「アタシも……こんなことなら、白兄ぃにもっと甘えとくんだったぁ……」
もう今にも大泣きしそうなまでに表情が崩れているネプギアとユニ。
白斗の背中が勝手に遠くなっていくような気がして、それが尚更心を突き崩してくる。
「「「「「お兄ちゃああああああああああああああああああん!!!」」」」」
そしてとうとう耐えきれず、悲しき叫びを天空に向けて放ってしまうのだった―――。
「……なーにをやってるのかねチミ達は」
「はぁ、予想通りの展開だったね……」
すると彼女達の背後から二人の男女の声が聞こえた。
呆れ交じりながらも、聞くだけで安心と元気をもらえるその声の主を、彼女達は良く知っている。
振り返れば、そこにいた。黒衣の少年と、紫の少女。白斗とネプテューヌが。
「お、お兄ちゃんにお姉ちゃん!? なんでここに!?」
「ネプギア、俺の財布落としたろ? それで警察から連絡が来て、お前らが無一文になってるだろうなーって思って捜索してたってワケ」
「で、皆の叫び声が聞こえて駆けつけて見たら案の定この有様だし」
「うう……ごめんなさい……」
白斗が懐から財布を取り出した。どうやら今回はスリに合ったわけではなく、単純に落としてしまっただけらしい。
その財布に入れていた連絡先から白斗に届けられ、そこから事情を察して今に至るということのようだ。
「ちゃんと反省はしてくれよ? んで、もう出るか?」
「あ、お兄ちゃん! このパフェ食べて! 私じゃ食べきれなくて……」
「ネプテューヌちゃんも! わたし達のパンケーキあげる!」
「あ、ありがとう……。 おおう、これまた凄いボリュームで……」
まだ山のように食べ残されたパフェやパンケーキに戦慄する白斗とネプテューヌ。
確かに味はいいのだろうが、いかんせん量が凄い。
白斗とネプテューヌも緊張という意味で固唾を飲み、そして何とか食した。
「ぐふっ……! こ、これ以上は勘弁……うぷぇ……」
「お腹はキツいけど、カロリーは心配ないかなー。 私、女神化しまくればダイエットになるし。 あれ相当カロリー消費するんだよねー」
「ズルッ!! ってか女神化をダイエットに使ってんのかよコイツ!?」
「多分、女神化をダイエットに使ってる人は後にも先にもネプテューヌさんだけね……」
こんなもの食べまくっては肥満体以前に糖尿病になりかねない。
しかし、ネプテューヌは神聖なる女神化を使ってダイエットしているらしい。呆れ半分、羨ましさ半分で白斗は肩を落としつつ、そして会計へ。
「……………………こりゃまたクエスト地獄かな……トホホ……」
どうやら相当な買い物をしてくれたらしく、もう一つの財布を使わざるを得なくなってしまった。
こうして精神も財布も削りに削ったリーンボックス漫遊記は終わりを迎え、一同は行きと同じ船で送られることになった。
☆
次の日、ゲイムギョウ界は嘗てない衝撃を迎えていた。
それもそのはず、まだラステイションが建国されてそう月日も経っていないのにまた新たなる国ことリーンボックスの存在が公にされたからだ。
更には新たなるゲーム機が各国に流れ、凄まじい勢いで大陸中にリーンボックスの名が広まっていく。
そしてそれから、緊迫の一週間が過ぎ―――。
「いやー、平和ですなー」
「だね~」
「相変わらずお二人はお気楽ですね……(^▽^;)」
プラネテューヌの女神様は、のんびりとしていました。
「でも、事実そうよね。 結局あれだけ大見得を切っておきながらリーンボックスのハードは不評で今じゃゲーマーでも忌避される存在になっちゃったし」
「そうね。 分かり切っていたことなのに、狼狽えていた自分が恥ずかしいわ」
「まー、こうなるよねー。 だってベールだもん」
「ベールさんだもんね~」
そしてネプテューヌやプルルートだけではない、プラネテューヌの教会にノワールとブランも集まっていた。
話題はリーンボックスのゲーム機について。なのだが、肝心のそのゲーム機は相次ぐ不評により売れば売るほど赤字、出せば出すほどシェアを落とすという有様。
「ねぷてぬ、べるべるのげーむってそんなにだめなの?」
「らしいんだけど……ネプギア。 不評って、どんなのが上がってるの?」
「えぇと……大きくてスペースを取る、ディスクに傷がすぐにつくとか、排気音が大きいとか」
「なるほど。 ユニちゃん達の所はー?」
ネプギアから読み上げられる不評店は、どれもゲーム機としては致命的だ。
特にディスクに傷がついては遊べなくなる。ゲーム機でシェアを獲得したいリーンボックスにとっては、まさに致命傷である。
「ラステイションでも似たような感じですね。 それとソフトが少ないとかも」
「それにね、ソフトもなんていうかゴツそうなのばっかりなの」
「わたし達、お姉ちゃんに止められて触らせてもらえない……(しょんぼり)」
「あー……リーンボックスのゲームって大人受けするようなのばっかりだからなー」
そして同じようにプラネテューヌの教会に集まったユニ達女神候補生も、それぞれ情報を共有し合った。
どうやら肝心のゲームソフト方面でも問題が多数らしい。
ゲーム機もソフトも問題ばかりならば、売れるわけがない。故にすっかりこの大陸においてリーンボックスの騒動など過去のものとなっていた。
「しかし、ユニ達がラステイションやルウィーで暮らしてから一週間。 何だかんだで適応してるみたいで良かった良かった」
「むー、心配するならネプギアみたいにここで暮らしてもいいじゃないのー」
「まぁまぁ。 ノワール達も別次元とは言え、妹と暮らしてみたかったみたいだし、俺だって時々顔出してるだろ?」
「時々じゃ嫌なの! 毎日! もしくはほぼ毎日!」
「欲張りだなオイ」
白斗は苦笑いしつつも、リスみたいに頬を膨らませるユニの頭を優しく撫で続ける。
ユニ、そしてロムとラムはそれぞれラステイションとルウィーで暮らしている。
この教会にそれだけの人数を置ける余裕がなかったこともあるが、同時にノワールやブランの要望でもあったからだ。
(事実妹が出来たようなモンだからな、ノワールやブランも精神的余裕が出来て以前より更に穏やかだ。 ……心の支えになれてるみたいで良かった)
神次元にノワールとブランは、恋次元の彼女達に比べて随分攻撃的な節がある。
白斗はその原因の一つに親しい人物が少ない故の精神的余裕のなさだと推測したが、それは当たっていたらしい。
仮とは言え、妹分が出来たのだ、姉となった彼女達には、それはもう嬉しいものだっただろう。
「ところで白斗? 最近プラネテューヌのシェアが伸びてるけど……やってくれたわね」
「何かトゲのある言い方だなぁ……。 シェアは相変わらずプラネテューヌがドベなのに」
「前よりグングン上げて置いて良く言うわ。 ついでに貿易収支も黒字と来た」
「まーそりゃ当然だよ。 リーンボックスにプラネテューヌのゲーム機流してるんだからね」
「ええ、白斗さんのお蔭でシェアは勿論、国家予算にも余裕が出来ました!(*^▽^*)」
一方、やられてばかりの白斗では無かった。
リーンボックスがゲーム機を売り出したタイミングに合わせ、リーンボックスにプラネテューヌのゲームをばら撒いたのである。
その収益によってプラネテューヌの経済が潤うのは勿論の事、プラネテューヌのゲームに魅かれたリーンボックスの国民を一部プラネテューヌ信者にして見せたのである。
この上々とも言える結果に、イストワールは実に晴れやかだ。
「ま、それも楽しいゲーム作ってるネプテューヌやプルルートのお蔭だからな」
「えへへ~。 でしょ~?」
「も~っと私達を褒めてくれていいんだよ! 具体的には頭なでなで!!」
「最近おねだりが露骨だな……でも二人はやっぱり凄いよ」
「「ふふふ~♪」」
この政策が打てたのも、偏に魅力的なゲームを作ってくれるネプテューヌとプルルートの力があってこそ。
そんな二人の女神様の頭を、白斗は優しく撫でた。すると二人は気持ちよさそうに、幸せそうに、目をとろんと蕩けさせてしまう。
「お姉ちゃん、いいなぁ……」
「ネプギア……“あれだけ”白兄ぃに甘えておいてまだいうか……」
「でもいいなぁ……ネプテューヌちゃん達……(もじもじ)」
「わたし達だって頑張ったんだからもっと褒めてよ~っ!」
「ぴぃにもー!!」
「……正直、羨ましいわね……」
それを見せつけられた女神候補生達と、とある女神様一人が羨望の眼差しを送っていた。
大好きな人からのなでなでを受けようとすぐさま列を作り出す。
因みにユニの言う、ネプギアが“あれだけ甘えたお話”というのはまた後日、詳しく語ることになる。
何故ならこの時―――。
「貴方達!! よくも卑怯な真似をしてくれましたわね!!」
「わわ!? べ、ベールさん!? って、こっちのベールさんか……」
ベールが、凄い勢いで乱入してきたらだ。
恋次元のベールと余りにも瓜二つで、しかも突然やってきたものだからネプギアも思わず驚きの声を上げてしまう。
「……来るなりご挨拶ですね、ベールさん。 本日はどのようなご用件で?」
「どうもこうもありませんわ! 私のゲームにこれだけの悪評を振りまいておいて!」
「悪評……? 国民から出ている苦情のことかしら?」
「ええ、そうですとも! それもこれも、貴方達が卑怯なネガティブキャンペーンをした所為ですわ!! そうに違いありませんわ!!」
「ネガキャンって……(;´・ω・)」
どうやら現在リーンボックスのゲームに対する不評が、他国の女神達の仕業だと考えているらしい。
何しろ、自信を持って送り出した自分のゲームがいざ蓋を開けてみれば不評に次ぐ不評。
確かに我慢ならないのかもしれないが。
「それに私の国にプラネテューヌのゲームをばら撒くという卑劣な行為まで!!」
「貴方も同じことしたでしょ」
「うぐっ!? ……まぁ、それはさておきますわ」
「さておかれちゃったよ……」
そして白斗が行ったプラネテューヌのゲーム販売についても言及してきた。
だが、これに関してはベールが同じことをしているので文句を言われる筋合いはない。
ぴしゃり、と的確に反論されたことでベールもこの件に関しては話題を逸らす。
「ですが見てくださいまし! SNSで愚痴と称して好き勝手悪評ばら撒く人とか!」
「確かにSNSとか匿名性の高いところでで他人の作品を批判するのは最低な行為だけど、女神様はこんな卑怯なことしてませんって」
「……え? で、では本当に何もしていないと……? で、ですが、私の国では大人気のハードですのよ!?」
ベールがスマホを見せれば、確かにSNSで酷い書き方をしている人がいる。
これ自体は確かに許されざる行為だが、ネプテューヌ達はこんな卑怯な行為をするような人物ではない。
そんなベールを見かねて、呆れたようにブランとノワールも付け加えてくる。
「好む好まざるは国民性の問題だわ。 少なくともリーンボックスのゲームは、大陸の人達にとって好ましいものでは無かったということよ」
「本当に貴方が調査すべきは女神の実力云々より、国民の意識だったって事ね」
「ついでに言えば、貴女の国でそのゲームが大人気だったというのも、それしか存在しなかったから他に手の付けようがなかっただけかと。 だから新しいプラネテューヌのゲームにそちらの国民が目移りしたんだと思います」
「む、むむむ~……っ!!」
更には白斗の補足で、ベールは涙目になりながらも頬を膨らませることしかできない。
反論の余地がない正論だからこそ、何も言い返せないのだ。
ぐうの音も出ないとはまさにこのことだろう。
「……所詮大きいだけで大したこと無いって自分から証明してくれたわね。 これ以上赤っ恥を掻きたくなかったら、さっさと自分の島に引っ込んでると良いわ」
「ぐ、ぬぬぬぬぬっ……!!」
「お、おいブラン。 それはちょっと言い過ぎ……」
「べるべる、だめがみっ!」
「ピー子! ホントのこと言っちゃダメだって!!」
「ネプテューヌも酷ェからなそれ!? 後ホントに『お前が言うな』って奴!!」
しかし、以前散々に馬鹿にされた仕返しだからかここぞとばかりにブランが追撃を重ねてくる。
このままヒートアップするのはまずいと白斗が静止をを呼びかけるも、まだ幼い故に理解しきれていないピーシェ、更にはネプテューヌも火に油を注いでしまう。
こうなっては止められるベール様ではなく。
「ここまでコケにされて引き下がれるものですかっ!! こうなれば、このゲイムギョウ界に君臨すべき存在が一体誰なのか……実力で示してあげますわ!!」
とうとう武力行使を宣告した。
思わず額を叩いてしまう白斗だが、他の女神達は知らぬ存ぜぬのどこ吹く風だ。
「あらあら、今度は武力に訴える気? どこの誰かしらねぇ、戦う前から勝負は決してるだの、吠えるだけならワンちゃんの方がお利巧だの言ったのは」
「受けるつもりは無いと? 敵前逃亡ですか!?」
「ベールさん、落ち着いてください。 今リーンボックスの方が劣勢なのは明らか、無理に武力行使すればリーンボックスへの悪評が広まるだけかと」
「白斗の言う通りだよ。 それに戦う理由なんか無いしー」
「面倒だし~」
ノワールを初め、女神達からはまさに前回の状況のお返しと言わんばかりにまともに取り合おうとしない。
白斗はこれ以上厄介な事態にならないように必死に言葉を選んでいるのだが、最早それで収まってくれるベールではなく。
「……では、戦う理由があればよろしいですのね?」
「何をどうされるおつもりですか……」
「これを……こうするおつもりですわっ!!」
無理矢理にでも戦う理由を作るつもりらしい。
呆れながらも白斗が訊ねると、ベールは袖口から玉のようなものを取り出し―――。
「煙幕の術ですわっ!!」
「ぶふぁっ!! な、何じゃこりゃ!?」
「皆、口を塞げ! すぐに換気するから……むぐっ!?」
それは煙幕だったらしい、ベールが玉を叩きつけるや否や白い煙が充満する。
白斗は咄嗟に煙を吸わないよう指示し、換気をすべく窓に手を掛けようとする―――その時。
煙をぬっと綺麗な手が突き破り、彼の口元を覆ってしまった。
(ご安心を。 ただの目潰しですわ、体に害はありません)
(ベールさん!? ちょ、アンタ何を……おわぁ――――っ!?)
正体はベールだった。
他人の危機に関しては敏感な白斗だが、自分の事となると極端に鈍くなる。
その性質が災いして彼女の接近に気づくことが出来ず、結果凄い力で引っ張られてしまった。
「ケホケホッ……! 白兄ぃ、まだー!?」
「ま、待ってください! 今私が開けますからー!(; ・`д・´)」
一方、白斗の身に何があったかを知る由もないユニが呼びかけている。
だが、反応が返ってくるわけがない。
慌てて近くにいたイストワールが窓を開けるなり、換気扇を点けるなりで部屋中の煙を外へと追い出した。
「こほこほっ……! け、煙たい……(ふらふら)」
「ロムちゃん、大丈夫? もー、何するのよこっちのベールさんってばー!!」
「ぴぃ、びっくりした! べるべる、にんじゃみたい!」
「みんな大丈夫~? 白くんも…………あれ? あれあれ~?」
煙が晴れると、全員の無事が確認できた。
毒ガスの類ではなく、完全に目潰し用だったため誰一人体調不良を訴える者はいない。
―――のだが、一人だけ。プルルートが辺りを見回してみて、一人いないことに気付いた。
「は……白斗がいない―――――!!?」
「「「「「ええええええええええぇぇぇぇぇッ!!?」」」」」
ネプテューヌが、そしてプルルート達が悲鳴を上げた。
あの黒衣の少年こと白斗の姿が忽然と消えていたのだ。
辺りを見回しても、あちこちのドアを開けても、窓から教会の周りを確認しても、彼の姿はどこにもない。
「ちょっと、ベールの姿もないわよ!?」
「まさか……白斗を連れ去った……!?」
更にはベールまでもが消えていた。
言い逃れのしようもない。煙幕に乗じて、ベールが白斗を連れ去った。
ブランも、ノワールと同じ結論に達したようだ。と、そこへ鳴り響く電話。慌ててネプテューヌが取ると、予想通りの人物の声が聞こえた。
『ご機嫌よう、危機管理が出来ていない皆さん』
「ベールッ!! 白斗を攫うなんて女神として許されるとでもッ……」
『勘違いなさらず。 彼を我が国に招待しているだけですわ。 客人として』
「それで私達が納得するとでも!?」
『大事なのは彼の意思ですから。 ただ相当お疲れでしたのね、今ではジェット機の座席でぐっすり眠っていますが。 ダメじゃありませんの、こんなにも酷使させたら』
どうやら白斗は眠っているようだ。
これまでの睡眠薬に加えてこれまでの激務による疲労ですっかり眠っているらしい。
良く耳を凝らしてみると、確かに白斗の安らかな寝息が聞こえてくる。
『それと女神の名に誓って彼には傷一つつけません。 こちらの国で少し遊んでいただくだけですから。 お詫びとして彼には十分なお土産も持たせるつもりですし』
「とにかく白斗は渡さないッ!! 今すぐ……」
『やめておいた方がよろしいですわよ? 今、私の命令でリーンボックスの領空には戦闘機による警備を強化していますから。 女神と言えども無傷……何よりも国民を撃墜させるわけにはいきませんわよね?』
「この用意周到さ……最初からこうするつもりだったようね」
女神化して追いかけようとするも、話から察するに相手はジェット機に乗り込んでいるらしい。
先手を取られている以上、追いつくことはほぼ不可能。その上、リーンボックス領空では戦闘機が待ち構えているらしい。
こうなってはさすがの女神化と言えども双方無傷による突破はほぼ不可能。
『ご安心を、以前と同じように船を手配させていただきます。 それで白斗君をお迎えに上がればよろしいのですわ。 その間に白斗君には我が国の良さを堪能していただきます』
「時間を稼がれてるわね、これは……」
『ではしっかりと準備の上、お越しくださいな。 おーっほっほっほ……!』
ブランが歯嚙みするも、意にも介さずベールは笑って受け流す。
直後通信が切れ、受話器からはツーツーと空しい音が響き渡る。
「……ベール、テメーは私を怒らせた」
「白くんは~……ぜぇ~ったいに渡さないんだからぁ~……!!」
「ヒッ!? ね、ネプテューヌさんとプルルートさんが激おこ……!?(゚д゚;)」
瞬間、凄まじい怒気と殺気が紫の女神二人から膨れ上がった。
大好きな白斗を取られて心穏やかでいられるはずがない。
それはネプテューヌとプルルートだけではない、ネプギア達も同じだった。
「私も同じです! お兄ちゃんは絶対に渡しません!」
「今回ばかりはお留守番なんて出来ないわ! アタシも行く!」
「そうよ! お兄ちゃんを助けるのも妹の役目なんだから!」
「お兄ちゃん……取り返す……!(ふんす)」
「ねぷてぬ! おにーちゃんをとりかえしてきてね!!」
妹達とて、目の前で兄を奪われて大人しくしていられるような腑抜けではなかった。
まだ女神化は出来ないが、だからと言って戦力にならないわけでもない。
皆が既に武器を手に取り、徹底抗戦の意を示した。
「そうね。 私も白斗には世話になってるし、ここで借りを返さないと」
「白斗は私を助けてくれた……だから、今度は私が助ける……!」
そしてノワールとブランも協力してくれる。
特にブランは白斗に助けられたという意識が高いからか、それとも別の理由からか。
何にせよ、この世界における最高戦力が集まった。最早ベール一人で抑えきれるようなものではないことを確信し、ネプテューヌが率先して声を上げる。
「それじゃ皆の者! 白斗を助けにいざ行かん! リーンボックスへー!!」
「「「「「「「おおぉぉ―――――!!!」」」」」」」
―――また、女神達は行く。大好きな人を取り返すために、リーンボックスへ。
「ああ……なんだかんだで今日のお仕事もしくれないのですね皆さん……(ノД`)・゜・。」
そして一人寂しく、イストワールは泣いた。
サブタイの元ネタ「たけしの挑戦状」
ということでリーンボックスへ行くお話でした。それに加え、ネプギア達女神候補生達のお話も。
原作ゲームではユニとかは余りカフェとかには行かないのですが、こうして女の子達がカフェでワイワイしているのを見たいなーということであの一面を盛り込んでみました。
女子会っていいですよねー、覗きたくなりますよね。(ぇ
因みに女神候補生全員参入した理由の一つに、今まで彼女達の描写が弱いかなと思ったからです。
なのでこの神次元編では妹達が可愛らしく大活躍しちゃいます。括目せよ。
さて、次回はVSグリーンハート。一体どうなってしまうのか、お楽しみに!
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