恋次元ゲイムネプテューヌ LOVE&HEART 作:カスケード
妹っていいですよねぇ。私にも妹がいたらなぁ。
―――いよいよ、友好条約締結まで本格的に時間が無い。
ルウィーのロムとラム襲撃以降、暗殺者達に目立った動きは無かった。それでも白斗は毎晩の見張りを決して欠かさず、彼女達を守り続けた。
因みに昨晩は一人の不審者を捕らえた。
「ち、違う! 俺は暗殺者なんかじゃない!」
「ほぉ、じゃぁ何だ?」
「女神様の風呂の残り汁を飲みたいだけ―――」
「死ね(首コキャ)」
「こぺっ!!?」
救いようのない変態をまた一名、始末した。(殺してはいない、だが女神様はさすがに殺意を覚えたとのこと)
白斗自身、彼が信頼し、大切にしている少女達を守れると思えば何日にも及ぶ貫徹と見張りなど苦にもならなかった。
だが、とうとうそれが彼を心配する女神達の目に留まり―――。
「「「「休め」」」」
「……はい」
腕を組んだ四女神の威圧感溢れる声に、白斗も従わざるを得なかった。
因みに全員女神化。本気も本気である。
「白斗、護衛の件は感謝しているわ。 ついでに変態を始末してくれたことも」
「だからって休んでくれないのはさすがにダメ。 もう、貴方は私達にとって無関係な人なんかじゃないの」
「勝手にくたばったら……私達が代わりに引導を渡してやるかな?」
「それ以前に、姉を残して逝く弟なんて酷過ぎますわ」
皆、女神化すると気が強くなる傾向にある。
それ故に声もかなり冷たいものを含み、白斗は正座しながらも冷や汗が止まらない。
尤も、それが単なる脅しではなく彼女達の優しさからくるものであるとは理解しているのだが。
(……仕方ねぇ、少し昼寝して睡眠時間を調整すれば……)
「昼寝すれば貫徹してもおkだとか思ってないでしょうね?」
(なんでバレてんねん!?)
ブラックハート様の鋭い視線が突き刺さる。
ぴたりと寸分の狂いも無く言い当てられた信条に思わずびくついてしまう。
「図星、ね。 これはもう、お目付け役が必要じゃないかしら」
「同意見だ。 つーわけで、今日はお前に監視をつけてやらぁ」
「ということで、先生! お願いしますわ!」
反省の色が見えない白斗に、とうとう最終兵器を持ちだす女神様。
手を伸ばした先に居たのは―――。
「はーい! ネプギアです!」
「どぉれ! ユニです!」
「ラムちゃん登場!」
「……ロムちゃんも登場……(どきどき)」
女神の妹、全員集合の図だった。
「……おおう、シスターズの皆様。 ご機嫌麗しゅう。 助けて」
「「「「却下♪」」」」
「ひどいっ!?」
物凄く良い笑顔で、断られました。
よよよ、とわざとらしく白斗が泣くが誰も同情はしない。
「いいですこと? 白ちゃんは今日一日、ネプギアちゃん達の監視の下、羽をしっかり伸ばしてもらいますわ」
「姉さん、監視されてたら羽は伸ばせません」
「それでも伸ばすんだよ! 無理矢理にでもな!」
「ブラン様、無理矢理では心休まりません」
と、あれやこれやとツッコミを入れてみるものの、にべもなし。暖簾に腕押し。取り付く島もない。
次から次へと却下され、ガクンと肩を落とす白斗。
「でも、白斗の気持ちを蔑ろにするわけじゃないわ。 今日一日、私達はこの教会から絶対に一歩も外に出ない。 これなら安心でしょ?」
「ノワールの言う通りね。 それに、ここの衛兵だって頼りになるんだから」
「過去三度ほど不法侵入許してますが」
「揚げ足取らない! とにかく休みなさい! ネプギア、後はよろしくね」
「よろしく任されました!」
愛する姉から白斗を任され、握り拳を作るネプギア。
ふんす、と可愛らしい鼻息が漏れているが同時に大丈夫なのだろうかと白斗は不安で仕方がない。
そんな彼の心配を他所に、女神化を維持したままネプテューヌ達は奥の部屋に引っ込んでいった。
「……さて、こんな事態になったのは想定外だが! お前達で俺を止められるとでも……」
「お兄ちゃん、無茶しちゃダメ~!」
「……お願い、無理しないでお兄ちゃん……(うるうる)」
「ごめんよぉ!! お兄ちゃん、無茶しないからぁ!!!」
「「あっさり止められてる!!?」」
見事なまでの掌返し。
尤も、純真無垢なロムとラムに涙目されてまで懇願されたら素直に従うのが紳士と言うもの。
「それじゃ折角だし、白斗さんを交えて遊びましょ!」
「「「さんせ~い!」」」
パン、と手を打ち合わせてユニが提案。
本当ならば、白斗はこの時間で会場の下見なり、警備計画に穴がないか、そもそも誰が暗殺を企てたのかなどやるべきことは山ほどある。
けれども、自分を気遣ってくれる子達の想いに踏みにじれない。少しくらいならと、半ばあきらめるようにしてネプギアの部屋で腰を落ち着かせた。
「それじゃ何して遊ぶ? ゲームはいっぱいあるけど……」
「白斗さんはどれで遊びます? お姉ちゃんほどじゃないけど、色々なジャンルを取り揃えていますよ!」
「……それはいいんだがネプギアよ。 『俺とあの男』ってゲーム、ナニ?」
「ひゃああああああああああっ!!? こ、これは違いますぅ!!!」
一際目立ったタイトルのゲームはネプギアが即隠した。
何やら興味を持ち始めているロムとラムがいたので、話の流れを切り替えることに。
「ゴホン! ゲームもいいんだが折角だ。 トランプとかどうだ?」
「トランプ、ですか……。 確かにアタシ達、そういうリアルな遊びは殆どしてませんからちょっと新鮮ですね」
「トランプやるやる~!」
「(わくわく)」
このゲイムギョウ界では、その名の通りゲーム好きの人が多い。
ネプテューヌやベールに隠れがちだが、ブランやノワールも立派なゲーマー。そして妹であるネプギア達もゲームをこよなく愛している。
そんな彼女達だからこそ、こういった遊びは余り手を付けていないらしく、物珍しそうな目でこちらを見ていた。
「それじゃ、オーソドックスにババ抜きでもやりますかねっと」
「それだったら、ビリには罰ゲームってのもどうかな? この罰ゲームBOXからお題を一つ取り出して、そのテーマに沿ったトークをしてもらうっての!」
「面白そうだが、その箱どこから取り出したんだユニちゃん……」
とにもかくにも白斗の提案は受け入れられ、妹たちに囲まれたババ抜きを行うことに。
カードの取り合いは最初、姦しいもので女の子同士が明るく楽しく話し合いながらトランプを楽しんでいる光景が尊いのなんの。
白斗もほっこりしていたのだが、終盤になるにつれて。
「よっしゃ! アタシ一番~!」
「お先です! 上がり!」
「マジでか!?」
ユニ、続けてネプギアが上がってしまった。更には。
「やったぁ! わたし三番~!」
「く……ラムちゃんまで……!」
激戦の末、ラムまでもが抜けてしまった。
残るは白斗とロムの一騎打ち。義理の兄妹とは言え、真剣勝負。決して手は抜かないとお互いが視線をぶつけ合う。
(さて、俺の手札はスペードのエース1枚。 ロムちゃんの手札は2枚。 ……どっちがジョーカーだ?)
白斗はとりあえず、右のカードに手を伸ばしてみる。すると。
「……!(きらきら)」
「…………(左のカードに手を伸ばす)」
「……!(うるうる)」
「…………(右のカードに手を伸ばす)」
「(きらきら)」
「…………(左のカードに手を伸ばす)」
「(うるうる)」
このやり取りの末、白斗だけでなくネプギアとユニも同じ結論に至った。
(((アカン! この子、分かりやすすぎる!)))
幼い少女だけにポーカーフェイスなど出来ず、感情表現がドが付くほどストレート。
もうどのカードをとればいいか、白斗には分かった。
(ふっ、すまんなロムちゃん。 渡る世間は鬼ばかり。 これも社会勉強だと思って、負けて学ぶのだ!)
あからさまに嫌そうにしている左のカードがエースだ。
それを引き抜こうとカードを手に取ろうと。
「~~~~っ!(うるうる)」
(……あ、甘やかすだけが優しさではないぞ白斗! これも社会勉強……)
「(うるうる)」
(しゃ、社会……勉強……)
「うるうる」
―――結果。
「やった~! 勝った~!(ほくほく)」
「……勝てん。 これは、勝ったらアカンよ……」
幼女は強し。結局、白斗は勝ちを譲る形で負けたのだった。
ネプギアとユニも同情の視線は送ったが。
「お、お疲れ様です白斗さん……でも、約束は約束! さぁ、張り切ってどうぞ!」
「はいよ……」
ユニが罰ゲームBOXを差し出してくる。
中には複数の折りたたんだ紙が入っている。果たしてどんなテーマが出てくるのか、白斗には予想もつかない。
(こ、こうなれば仕方ない……! 頼む、来るな爆弾よ!!)
目を閉じ、心の声に従うことにした。
勢いよく引き抜き、紙を開く。誰もが固唾を飲んで見守る中、書かれたテーマは。
『コ イ バ ナ』
「確かに爆弾じゃないね!? それ跳び越えて核兵器だよねこの話題!!?」
「「「「きゃ~~~~~♪」」」」
白斗は悲鳴にも近い声を、ネプギア達は歓声にも近い声を上げた。
コイバナ、乙女の嗜みにして今の白斗には爆弾以上の何物でもない話題。嫌な汗が滝のように流れ、体中の水分が失われていく。
「それじゃお聞きしたいんですけど! 白斗さんはその、恋人っているんですか!?」
「ちょ待てやネプギア! これ、俺がトークするんじゃないの!?」
「ええ、トークしてもらいますよ! 主にアタシ達からの質問に!」
「これ抽選の意味あった!?」
「とにかく誰が好きなんですか!? お姉ちゃん!? それともノワールさん!?」
「そもそも、白斗さんの好みのタイプって何ですか!?」
主にネプギアとユニが興奮気味に質問攻めしてくる。
よりにもよって一番キツイ話題に限ってのこの質問攻め、白斗にとっては拷問この上ない。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんは嫌いなの?」
「ら、ラムちゃん……。 あのね、好きか嫌いかで言ったら好きだけど……」
「じゃ、私達と一緒……♪(にこにこ)」
「癒される笑顔をありがとう、ロムちゃん。 ついでに暴走気味なこの二人も止めてくれると嬉しいなぁ!?」
まだ色恋沙汰に疎いロムとラムは天使の様な優しさだ。
白斗は数少ない癒しを覚えるものの、だからと言ってネプギアとユニが止まる気配がない。
「さぁ! どうなんですか!!」
「洗いざらい白状してください! 自白した方が罪が軽くなるんですよ!?」
「裁判長おおおおおお! 誘導尋問は違法でござる~~~~~~!!」
テンションマックスな二人は止まる気配が一向にない。
余りの四面楚歌な状況に白斗もいよいよ泣きそうになったその時、ネプギアの懐から何やら着信メロディが流れる。
「あ。 ごめんなさい……はい、もしもし?」
(ありがとう! どこかの誰よ!)
彼女の通信端末、Nギアを手に取り、何やら話し込んでいる。
この間にもお茶を濁す話題を見つけなければと頭をフル回転させる白斗だったが。
「あ、す、すいません! 今から伺いますので!」
「……どうした、ネプギア?」
何やらただ事ではない様子だ。
訊ねてみると、少し困った様子でネプギアが唸っていた。
「いえ、服屋さんにドレスを仕立てて貰ってたのすっかり忘れてました……」
「ドレス?」
「はい。 今度の友好条約の場で着る服です」
「あー……確かに礼服は必要になるわな……」
白斗も思わず納得の声を上げた。
友好条約、それは世界に大革新を齎す条約。当然それを公約する場ともなれば、普段着のままで出席するわけにもいかない。
故にドレスを仕立てて貰い、それの受取日が今日ということらしいのだ。
「はい。 もう日にちがありませんし、急いで取りに行かないと……」
「まぁまぁ。 受け取りに行くだけだろ? 俺が行くよ」
とにかくこれでコイバナを切り上げることが出来る。
好機と言わんばかりに白斗が重い腰を持ち上げたが、がっしりとロムとラムが両手を引っ張って離さなかった。
「ダメだよお兄ちゃん! 今日は私達がお目付け役なんだからね!」
「……無理、ダメ、絶対……(ぷっぷくぷー)」
「で、でもさ。 皆が買い出しに行くともなればさすがに危険……」
困った、非常に困った。
一人で出かけるのは皆が許さない。かと言って、誰かに買いに行かせるのも今の状況を考えれば白斗が許さない。
ともなれば―――。
「仕方ありません。 ……皆で行きましょうか!」
「……それしか、無いなぁ……」
ユニの折衷案に、白斗もやれやれとため息交じりに賛同した。
危険は付きまとうが、互いに歩み寄って尚且つ目的を果たすならばこれしかないと白斗も覚悟を決めることに。
一方、それを知ってか知らずかロムとラムは買い物が出来ると大はしゃぎだ。
「わーい! お買い物~!」
「おっ買い物~♪ おっ買い物~♪(わくわく)」
「二人とも、お菓子はダメだよ」
「「そんなっ!?」」
しっかりと釘を差して置く。
まるで家族の様な会話を繰り広げながら、一同はプラネテューヌの教会を後にした。
☆
その頃の女神様。
「ふっ、甘いですわ! 私のテクについてこれまして?」
「何の! プラネテューヌの女神の力、見せてあげる!」
「ラステイションの女神の力も甘く見るんじゃないわよ!」
「へっ、テメェらの攻撃なんて蚊ほどにもねぇぜ! ぶっ飛びやがれ!」
女神化したままで、ゲームに興じてました。何というシェアエネルギーの無駄遣い。
大丈夫なのか、ゲイムギョウ界。
☆
さて、場所は変わりプラネテューヌの街中。
白斗は女神シスターズを引き連れて、大都会の中を歩いていた。
先日の雨上がりで、青空がより美しさを引き立たせている今日この頃。プラネテューヌの輝きは一層強まっていた。
「……相変わらずのオーバーテクノロジーぶりな街だぜ……」
周りを見てみれば、人々の移動は歩かなくても光の足場で自動的に運んでくれる。
エレベーターの高速移動は当たり前、常に最新情報は空中に浮かぶディスプレイでいち早く入手できる。
未来都市、としか言いようのない発展ぶりに白斗は改めて舌を巻いていた。
「そう言えば白斗さんは余り街中を歩いてないんですね」
「主にネプテューヌ達についていくらいかな。 街中はここまで見たこと無いや」
今までは護衛のために教会、或いはプラネテューヌの外へ赴くと言った具合だ。
今日みたいな遊び目的で街に出たことは無い。
(でもネプギア、ホントに大丈夫か? 幾ら何でもみんなで外で歩くのは危険……って言ってる傍から視線感じやがる……んだが、あれは衛兵?)
その出自からどうしてもこちらを注視する視線には敏感になってしまう白斗。
振り返ると、そこにいたのは複数のプラネテューヌ衛兵。
何やら話し込んでいる―――体に見せかけて、こちらを見ているという感じだ。
(白斗さんがそうおっしゃるかと思って、予め衛兵さんに相談したんです。 私達の邪魔にならない程度で護衛してくれるそうで)
(ほー。 衛兵さんもよく我儘に付き合ってくれたな)
(あれでもお姉ちゃんを慕う人で構成されてますから)
白斗も数回程度だが、プラネテューヌ衛兵と話したことはある。
軽い世間話程度だが、その際話題に出るのはネプテューヌに対する忠誠心だ。半ばアイドルのように神格化されているきらいはあるが、それでも彼女という女神に忠誠を誓うその姿はまさに忠臣。
白斗も思わず唸ってしまったほどだ。
「ですから白斗さんもこれに懲りたら、少しくらい気を緩めてくださいね?」
「善処する。 で、肝心のドレスはどこで引き取るんだ?」
「それ、絶対善処しないフラグよね……。 あのプラネテューヌのデパートです!」
「デパートね。 ……って、ユニちゃん達の分も仕立てて貰ってるのか?」
「はい! プラネテューヌのブランドはトップクラスですから!」
さすが若者受けする街だけあって、流行やファッションセンスにも敏感らしい。
見ればユニだけでなく、ロムとラムの服も注文してあるとのことだった。
些細かもしれないが、こういった点も友好条約に関係してくるのだろう。そうして案内された、高層ビルにも見えるデパート。
明らかに高級スーツやドレスの数々で出迎える服屋が、今回の目的地だった。
「すみません、連絡をいただきましたネプギアです」
「お待ちしておりました。 ドレスの方もご用意できております。 よろしければ、今から試着していきますか?」
礼儀正しい店員が出迎え、そんな提案をしてきた。
試着というのは恐らくサイズの最終的な確認だろう。もしどこか不備があれば、残りの時間で仕上げて見せるというプラネテューヌの技術力が伺える発言だ。
「ではお願いします。 白斗さんも、見ていってください!」
「そうそう! アタシ達の美貌、目に焼き付けてよね!」
「面白い、受けて立とうじゃないか」
今までの彼女達の服装と言えば、姉達の面影を受け継ぎながらもどこか可愛らしい印象が残るデザインだった。
そんな彼女達の魅力がどう引き出されるのか、それとも新たな一面が生み出されるのか、白斗は実に興味深く見ていた。
そんな彼女達の挑戦を引き受けたはいいものの、30分経ってもまだ試着室から出てこない。
「………長ぇ」
女の試着は長い、とどこかで聞いたことがあるがここまでなのか。
タンタンタンと爪先、指先を打ち鳴らしながら待ち続けていると。
「お、お待たせしました」
「ん? 最初はユニちゃんか」
カーテンの向こうから、ユニの声が聞こえた。
そして着替えを手伝ったらしい、複数の女性スタッフが試着室から出てきた上で深々と一礼する。
開けられた幕の向こうにいたユニの姿は、黒色のドレスが大人っぽさを強調させ、彼女の女性らしさを引き立たせていた。
「……ど、どうですか?」
「……大人の美しさ、って奴かな。 綺麗だ」
「も、もう! 白斗さんってばお上手~~~!」
率直な感想を述べた途端、身悶えするユニ。
元々どんな衣装に仕上がるかはあらかじめ知っていたので、今日の試着は最終点検と言ったところだが初めて目の当たりにした白斗からすれば、そうとしか言えない魅力があった。
「お兄ちゃん……できたよ……♪」
「おーぷんざかーてん!」
「と、次はロムラム姉妹か……」
今度は可愛らしい声が二つ。
カーテンが明けられると、白を基調としたドレスに身を包んだ二人がこちらへと駆け込んできた。
「見て見て~! 似合うでしょ~?」
「こらこら、走り回るんじゃありません。 でも、二人とも綺麗だ。 大人への第一歩を踏み出したって感じ」
「お兄ちゃんに、褒められた……♪(るんるん)」
二人はまだ体格的にも幼い。
しかし、ドレスの美しさが普段二人が前面に押し出している可愛らしさを少し押さえ、その代わり女性特有の美貌を引き出している。
「は、白斗さん……こっちも大丈夫です……」
「最後はネプギアか。 どれどれ……」
「あまり、その……期待しないでください、ね……?」
「フリだな? よし総員、ネプギアのカーテンを注視するのだ!」
「「「じいいぃぃ~~~~っ」」」
普段は可愛らしいというユニと、ロムラム姉妹でさえ綺麗だったのだ。期待するなと言う方が無理がある。
白斗に命じられ、ユニ達も穴が開くほどの視線でネプギアの試着室を見つめている。
「う、うう~……白斗さん、意地悪です……」
「はっはっは、褒め言葉と受け取っておこう。 さぁ、覚悟を決めたまえ」
普段は頼れる皆の兄貴分として映ることの多い白斗だが、その実飄々とした発言で周りを茶化すことも珍しくない。
それがまたアットホームな雰囲気を引き出しているのだから、余計にネプギアとしては意識してしまう。
それでもいつまでも引っ込んではいられないと腹を括り、カーテンを開け放った。
「ど、どうですか……?」
―――いつものネプギアと言えば、姉に比べれば地味という印象が拭えない少女だった。
だが、それがどうだ。控えめな雰囲気は寧ろ淑女としての美しさを引き立たせていた。
まるでおとぎ話に出てくるお姫様の様な、幻想的な雰囲気さえ醸し出している。恥ずかしがるその姿は、扇情的さえあった。
「………やっぱ、女神の妹は女神様なんだな」
「え……っ」
思わず出てしまった、そんな言葉。
しみじみと呟いた白斗の言葉が嘘ではないと、嫌でも分かってしまっただけにネプギアは口元を抑えてぼっ、と頬を赤く染める。
そんな彼女の様子を見て、白斗も何を言ってしまったのか理解してしまったらしく。
「……っ! い、いや、まぁなんだその……馬子にも衣裳って奴かな? あ、アハハハ!」
「で、ですよねぇ!? ……女神様、かぁ……♪」
慌てて取り繕うような言葉を発し、顔を逸らした。
けれども純真なネプギアは先程の言葉が嬉しかったようで、それが脳内に反芻しては上機嫌になる。
対するユニ達は、ネプギアの褒め方が自分達以上だったことが不満らしく頬を可愛らしく膨らませていた。
「あー。 白斗さん、依怙贔屓だー」
「ネプギアだけずるい~!」
「もっと……褒めて欲しい……」
「え、え~……。 別に依怙贔屓したつもりも無いんだが……」
飄々としていると言っても女性経験が皆無な白斗からすれば、先程の様な女殺しの台詞は意識して出せるものでは無い。
文句を垂れるユニ達をどうにか宥め、改めてドレス自体も問題なかったということでこれで買い物は終了―――かに思われたのだが。
「あ、そう言えば。 白斗さんはどうです?」
「どう……って何のことだ?」
ユニが唐突に訊ねてきた。
彼女が一体何を言っているのか、全く見当がつかない。
「ですから、式典用の礼服ですよ」
「……ちょい待ち。 俺も出るの!?」
「当り前ですよ! 最早白斗さんは、皆には無くてはならない存在。 お姉ちゃん達を守ってくれた人をお招きするのは当然です!」
ネプギアまでもが、語気を強くして詰め寄ってきた。
白斗自身、式典の警護をどうするかしか考えていなかっただけに式典参加の準備などしているはずもない。
「礼服なんてあるワケないっしょ。 そもそも俺、異世界人っしょ」
「でしたら、今から買いましょう! 服!」
「マジでか!? 第一俺、そういう堅ッ苦しいの苦手なんだって!!」
「ダーメーでーすー! 店員さん、服買いますので連行!!」
「「「「「畏まりました」」」」」
「ぐおっ!? 畏まるな店員共ぉ!! HA☆NA☆SEEEEEEEEEEEEEeeeeee……」
白斗の叫びも空しく、店員によって羽交い絞めにされ、店の奥へと連行されていった。
きっと今頃、試着室の中では着せ替え人形よろしくあれやこれやと礼服を試されている白斗がいることだろう。
「お兄ちゃんの服、どうなるのかなー? ロムちゃんはどう思う?」
「どんな服でも、お兄ちゃんならきっとカッコよくなる……(きらきら)」
二人にとって憧れであるらしい、白斗の礼装に思いを馳せていた。
ガールズトークで時間を潰していると、肩で息をしている白斗が戻ってきた。
「お帰りなさい白斗さん、いい服ありました?」
「……やたら勧めてくる服があったんでな……似合ってるかどうかは知らない……」
「楽しみですね!」
ネプギアとユニも、白斗の礼服が楽しみらしい。
こうまで期待の籠った目を向けられては、嫌だの何だの言っていられない。
「ありがとうございます。 服の裾直しなどは本日中に仕上げますので」
「オーダーメイドのドレスとは違ってさすがに早いな、裾直しだけだと。 あ、金払います。 幾らですか?」
「あ、白斗さん。 お金でしたら私が……」
「女に奢らせる男がいて堪るかっての。 これでもクエスト手伝ったりして報酬貰ってるからさ」
余裕そうに掌をひらひらさせながら白斗は財布から金を取り出した。
この世界に来てからもう一週間以上。さすがに文字の読み書きやクエストなどは慣れてきた。
ネプテューヌ達と一緒にクエストをこなすことで報酬を貰い、更には元々物欲自体もそんなになかったため、お金自体は結構溜まってきた。
(嘘ですー! ホントは財布大ピンチですー! でも、ここは漢の見せ所。 我慢我慢……)
のだが、さすがに礼服は想像以上の値段だった。
特に欲しいものなどは考えていなかったのだが、お金が減るのはやはりダメージが大きい。
兎にも角にも、服が出来上がるまでもうしばらく時間が掛かるため適当に時間を潰すことにした。
「さて、丁度いい時間帯だしどこか食べに行くか?」
「私、ファミレスがいい!」
「ファミレス、ファミレス……(わくわく)」
「ロムちゃんとラムちゃんもこう言ってますし、ファミレスにしましょうか」
デパートの定番の一つ、ファミレス。
特に反対理由も無いので、全員でそこに向かうことに。注文を終え、料理がずらりと並ぶ。
ネプギアはオムライス、ユニはカルボナーラ。そして白斗はというと。
「白斗さんは天ざるですか? 渋いですね……」
「ふふ、パンに肉挟んだようなモンばっかり食ってる奴らにはこの繊細な香りは理解できんよ」
「むむ、アタシ今度挑戦しますから」
まだ白斗の年齢はまだ18、見た目的にはネプギア達とは大差ないはずなのに随分大人びた趣向である。
子供扱いされることにはさすがに我慢ならないのか、ネプギアとユニも少し顔をムッと膨らませる。
そして、肝心のロムとラムは。
「わーい、お子様ランチー!」
「旗げっとー♪(らんらん)」
子供の定番、お子様ランチにご満悦だった。
☆
「……まだまだ時間あるな。 次はどうする?」
「でしたら次はゲーセンとかどうですか?」
服が出来上がるまで、まだ時間はある。
次にユニが提案したのはゲームセンターだった。ゲイムギョウ界は家庭用ゲームやPCゲームだけではなく、遊び場としてゲームセンターも充実しているのだとか。
(……衛兵の皆さんは……追ってきてくれているな。 お、ゲーセンに先回りするつもりか)
横目で周りを観察する白斗。
不審者の捜索と、衛兵の確認のためである。案の定、衛兵は今も尚ネプギア達を陰ながら守ってくれているようだ。
「分かった。 ただしはぐれるなよ?」
「「「「わーい!」」」」
本来であればゲームセンターなど却下したいところだが、だからと言って遊ぶなと言い続けるのは酷と言うもの。
世話になっている彼女達のためにも、今日くらいはいいかとため息交じりながらもゲームセンターへ向かうことになった。
辿り着いたゲームセンターは人も多く、多くの筐体による光や音が入り乱れ、ある種の戦場となっていた。
「おおー、賑わってらぁ。 で、まずは何からするよ」
「あ! じゃあアタシ、ガンシューやりたい!」
ユニが指差した先にはゾンビを銃で倒す系統の筐体があった。
ガンマニアの彼女らしい選択だろう。
「白斗さん! アタシと一緒にやりましょ!」
「俺と?」
「はい! あの時の狙撃見てて思ったんですけど、白斗さん銃も使えるでしょ?」
あの時の狙撃、それはノワールを守った時に逆に敵の狙撃手をライフルで撃った時のことだろう。
さすがにあれだけの狙撃をすれば、素人だと通すのは無理がある。元々「銃を使っていた」という発言までしたくらいだ。
「まぁな。 仕方ない、やれるだけやってみますか。 お、これワイヤレスなのな」
「それだけじゃなくてこのゲーム、プレイヤーの動きが如何にスタイリッシュかも採点してくれるんですよ」
「ほー。 だからワイヤレスなのね」
手渡された銃型のコントローラーを持ち、軽く狙いを定めて引き金を引いてみる。
当然本物とは違い、軽量化されている。
コードで繋がれていないため、振り回しても、派手な動きをしても全く問題ない。
「ユニちゃん、銃の腕前は?」
「ふっふっふ、アタシにそれ聞いちゃいます?」
「失敬、愚問だったな。 じゃあ、この最高難易度モードで行くか」
「待ってました!」
引き金を引いて、難易度選択。
家庭用ゲームであれば遊べることを前提で作られているため、まだ攻略のしようはあるが、こういったゲームセンターは所謂ガチ勢のための場。
最高難易度とは、即ち理不尽ということだ。
「―――さて、行くか!」
ゲームがスタートした瞬間、白斗が覚醒した。
銃を手に右、左、上、下と狙いを瞬時に着けては引き金を引く。正確無比な狙撃がゾンビの急所を次々と捉え、打ち倒していく。
それだけではなく、狙いをつける際にターンを入れたりと動きの魅せ方も華麗だった。
「よっ、はっ、と!」
(え? ナニコレ!? 白斗さん、凄い……!?)
ガンマニアであるユニも、当然愛用の武器は銃。
故に日々の鍛錬から腕前には自信があった。だが隣に立つ白斗は、ユニ以上の動きと正確さを以てスコアを稼いでいる。
そんな彼の動きに見とれていると、ユニの方にゾンビが―――。
「おっと、ボーッとすんなよ!」
「あ、ご、ごめんなさい!」
咄嗟に白斗が、ユニに向かうゾンビを打ち抜いた。
周りへのフォローも忘れない、当然こうして遊んでいる間も周囲への警戒は解いていない。
「良いってことよ! それよりゲーセンなんだから、楽しもうぜ!」
「はい! おりゃりゃりゃ!」
「っと! ポジションチェンジ!」
「ラジャー!」
段々互いの呼吸を掴んできた二人が、まるで演武の様な動きと共に銃弾を繰り出す。
白斗が打ち、ユニが牽制。弾が尽きればユニが前に出、そして白斗が再び前衛へと舞い戻る。
ゲームの音が、観客の歓声が、ネプギア達の応援が、そして彼らの動きがまるで一つのミュージカルを作り上げるかのように一つになっていく。
「これで!」
「チェックメイト!」
そして、二人同時に放った弾丸が、ラスボスの眉間を打ち抜いた。
激しい音を立てて崩れるラスボス、感動のBGMと共に告げられるゲームクリア、彼らの動きに感動したネプギア達による惜しみない喝采。
それら全てが、白斗とユニの中にかつてない高揚感と充実感を齎した。
「……っふぁー! やりきったー!」
「はい! もう、なんていうかサイコーです!」
最後に互いに銃を突き合わせて、この喜びを分かち合う。
二人とも最高の笑顔で、気持ちの良い汗を掻いていた。
「白斗さん! 次、私とレーシングゲームで勝負しましょう!」
「待ってー! 次は私とプリクラ~!」
「お兄ちゃん、UFOキャッチャーしよ……(きらきら)」
「うおおおおおお!? ええい、聖徳太子ぃ……!!」
かなりの腕前と見たネプギア達が一斉に押しかけてきた。
そんな彼女達を何とか捌きつつも、白斗は今日一日をゲームセンターで過ごすのだった。
☆
―――そして時間は経ち、夕方。
白斗たちは紙袋にお買い上げした礼服を入れ、デパートを後にしていた。まだ水たまりが残っている夕暮れ道を、まるで家族のように5つの影が歩いている。
「あぁ~……さ、さすがに疲れたぞ……」
「ですね。 これだけ楽しかったゲームセンターも久しぶりです」
「そうよねー。 白斗さん、次は負けませんからね!」
あれからも白熱したゲーム対戦が続くのなんの。
白斗も勝ったり負けたりと互いに楽しむことが出来た。途中、格闘ゲームでリアルファイトに発展しかけたが、そこは白斗の腕前で撃退。
それを機に切り上げ、礼服の裾直しも終わり、今こうして皆で帰っている。
「お兄ちゃん! ぬいぐるみありがとー!」
「大切にするね……(にこにこ)」
「おー。 可愛がってやってくれよ」
ロムとラムは、くまとアザラシのぬいぐるみをそれぞれ抱えていた。
UFOキャッチャーの景品で、白斗が大苦戦の末に手に入れたものである。
正直、小遣いが尽きてしまいそうだったのだが二人のこの笑顔を見られただけでも報われるというものだ。
そんな二人の頭を撫でてやりたくもあるが、今は両手に買い物袋を提げている状態。言葉と微笑みだけで我慢することにした。
「白斗さん、今日は楽しかったですか?」
「ああ。 正直、俺こんなに遊んだことって無かったからな」
「そうなんですか?」
この言葉に嘘はない。楽しかったことも、逆に今までは楽しむことすら出来なかったことも。
ネプギアとユニは不思議そうにこちらを眺めてくるが、それが当然の反応だろう。この年齢であれば普通は同年代と楽しく遊ぶのが当たり前。
だが、彼は元の世界では―――。
「……まぁ、色々あったのよ。 それより腹減ったなぁ」
「でしたら今日は私が食事当番ですから、何かリクエストがあれば聞きますよ?」
「アタシも手伝います!」
「そうか? んー、なら……」
夕食のリクエストを強請るくらいならば罰は当たらないだろう。
何がいいか思いを馳せていたその時、荒い運転をする車がこちらへ走ってきた。
しかもすぐ近くには大きな水たまりが。
「っと! 危ねっ!」
「「「「きゃっ!?」」」」
咄嗟に白斗は全員を抱き寄せ、彼女達をそのコートで覆った。
瞬間、車が横を過ぎ去り、その勢いで水飛沫を上げる。
ネプギア達はコートのお蔭で直撃せずに済んだが、白斗はそうもいかず顔面に泥水を盛大に被ることになった。
「ぶはっ! ぺっぺっ……ったく、荒い運転をする奴は世界共通なのな」
「そ、それより白斗さん大丈夫ですか!?」
「ノープロブレムよ。 泥水被っただけだし、コートは撥水加工してある。 それより皆は?」
「わ、わたしは大丈夫だよ……」
「わたしも……お兄ちゃん、ありがとう」
ユニが慌ててこちらを覗き込んでくる。幸いにも怪我などはないようだ。
シスターズにも怪我は勿論、泥水一滴すら被ってない。
「そっか、良かった」
「良くないです! 顔吹きますから少し屈んでください!」
「お、おう。 ありがとう」
ポケットからハンカチを取り出したユニが、白斗の顔に付いた泥水を拭き取ってくれる。
さすがにハンカチのサイズでは髪などは拭けなかったが、それでもある程度はさっぱりできた。
「悪いなユニちゃん。 ハンカチ、汚しちまった」
「いいですよこれくらい。 それより帰ったら先に顔、洗ってくださいね」
「はいはい」
どこか気の抜けた返事で、そう返した。
そんな姿を見たネプギアが、ある結論に辿り着く。
「……なんというか白斗さんって……」
「ん? 何だ?」
今日一日、これまでの白斗を見てきたネプギアがふと漏らした一言。
「……お兄ちゃんみたいだな、って……」
そう呟いた彼女の顔が、とても可愛らしくて。
まるで本当の妹のように思えた。
「お、俺がか?」
「はい。 温かくて、面白くて、私達を守ってくれて、どこか抜けてて、でもいざと言う時はカッコよくて……私のお姉ちゃんみたいで」
「ネプテューヌと同格ぅ? はは、それはあいつに失礼だぞ」
白斗は脳内にネプテューヌの日常を浮かべる。
普段はぐーたらで、仕事も不真面目で、底抜けの明るさで、メタ発言連発で、ゲーム好きで、でも優しくて、いつも人を思いやっていて、常に元気を与えてくれる人。
そんな彼女と自分など比べるまでも無いと思っている白斗だったが。
「そんなことないですよ! ロムちゃんとラムちゃんが、そう呼びたくなるのも分かります」
「あの二人はピュアだからなー。 それに、俺自身が弟だったから妹ってのは正直嬉しいや」
白斗自身、最初こそ戸惑いはあったものの、あの二人から兄と呼ばれるのは寧ろ嬉しかった。
姉がいたし、この世界にもベールという姉が出来た。だからこそ、自分も兄として振る舞ってみたいという密かな憧れがあったのだ。
そんな彼の姿を見てネプギアは。
(……私もいつか、白斗さんを……お兄ちゃんって呼びたいな……)
密かに、そんなことを思っていた―――。
☆
―――それから夜。
最早当たり前となった、四女神やその妹達と共にする夕食。今日は白斗のリクエストに合わせて肉じゃがを作り、皆で舌鼓を打った。
夕食も食べ終わり、後は寝るだけとなった時間。
「ネプギア、ちょっといいか?」
「白斗さん? はい、どうぞ」
ネプギアの部屋のドアがノックされた。
声の主は白斗、最早警戒することなく許可を出すと扉の向こうから白斗が入ってきた。
「確か、ネプギアって自前の工具セット持ってたよな?」
「はい、持ってますよ! 女の子の必需品です!」
「そんな女の子見たことねぇ……」
部屋自体は可愛らしいのに、物々しい色合いと重量の工具セットをるんるんと取り出すネプギア。
笑顔は可愛らしいのだが、少し心配になってしまう白斗。
「で、だ。 それ、ちょっと貸してもらっていいか?」
「いいですけど……何か直すんですか?」
「直す……っていうかメンテっていうか」
「でしたら! 私も! お手伝いします! というかさせてください!」
「よっぽど機械いじりたいのね……」
メンテという単語を聞いた瞬間、ネプギアの鼻息が荒くなった。
如何に彼女が機械好きであるかを物語っている。
「悪いけどちょっとプライベートなモンなんだ。 あんまり見せたくないんだよ」
「そうですか……残念です……」
しょんぼりしてしまった。
「ではこちらをお貸ししますね。 でも白斗さん一人で大丈夫ですか?」
「今まで俺一人でメンテしてきたから。 道具さえあれば大丈夫だ」
「分かりました。 何かあれば呼んでくださいね」
「おう、ありがとな」
工具箱を受け取り、白斗はお礼をして帰っていった。
後に残されたネプギアは、自身のケータイを取り出す。そこにあったのは待ち受け画像ではなく、今日のゲームセンターで一緒に撮ったプリクラだ。
女神シスターズ、そして彼女達に囲まれる白斗の姿が写っている。
「……ふふ♪ 白斗さん、武器とかにも詳しいみたいだし、今度ビームソードの調整とか手伝ってもらっちゃおうかな~」
白斗は手先が器用なだけでなく、機械工学の知識も備わっていた。
それ故、暇があればネプギアの手伝いをしてくれることもあった。そんな時間でさえ、ネプギアにとっては楽しく、幸せに満ちていた。
☆
―――白斗の部屋。
与えられた個室でありながら、白斗はこの部屋に籠ることが少なかった。
理由は当然貫徹してまでのネプテューヌ達の警護。
故にこの部屋を使う時は着替える時か、仮眠を取るか、そして―――。
「……ぐッ! こ、この間の無茶が……効いてきたか……ッ」
胸を押さえて、白斗は苦しんでいる。
今、この瞬間。彼の全身をまるで鉄の爪が引き裂くかのような激痛が襲っており、滝のような汗を流していた。
だがここで大声を上げることは出来ない。
「ったく……マジで恨むぜ、親父よぉッ……」
何とか立ち上がった白斗は工具箱からドライバーなどを取り出して並べる。
そして、コートとインナーを脱ぎ去った。
「……こんな“偽りの心臓”なんて……あの娘達にゃ、見せられねぇよな……」
寂しく呟いた白斗。
彼の左胸、心臓があるはずの場所には―――
冷たく、重々しい“機械の心臓”が埋め込まれていた―――。
ネプギア、ユニ、ロム、ラム、異なる四つの属性を持つ妹って結構難しいです。
だからこそ書いていて楽しくなるし、彼女達には楽しんでもらえたらと思って今回のお話を書きました。
白斗君のすさんだ心も少しずつ癒されていくような……。
そして次回はあの女神のターン!お楽しみに!
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