舞鶴第一鎮守府の日常   作:瀬田

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文中の視点についてですが、作品を一度書いて推敲しているうちに変わってしまい、誰のものなのか分かりづらくなっているかも知れません。
しばらく連続で投稿させていただいた後、投稿ペースを落として修正致します。

蒼龍ちゃん好き(大胆な告白


第四話 癒しを求めて

「う~ん…」

 

真夜中、蒼龍は自室の布団の上で呻き声を上げた。

どうやら目が冴えてしまって、眠れないらしい。

隣で眠る妹(カッコカリ)の寝顔を、恨めしそうな表情で見つめていた。

 

(どうしてだろ…って、もう、原因は分かってるんだけど)

 

昨日の晩は、非番なのをいいことに、飛龍に乗せられるままホラー映画を見てしまった。

翌日、つまり今日の秘書艦業務を忘れてしまっていたのだ。

 

(まあでも、自業自得、かな···)

 

眠れずに飛龍の腕にしがみついたことを思い出すと、少し顔が紅くなるのを感じる。

 

(最近、出撃もたくさんあったし···疲れが取れてないのかも)

 

眠るに眠れない午前二時の闇の中。

 

「…水でも飲もうかな」

 

フラフラとした足取りで食堂へ向かう。

月明かりが照らす鎮守府廊下。優しい光に、少し目を細める。

 

(明日は···今日か。秘書艦、飛龍に交代してもらおうかな···クマとかでひどい顔かもだし)

 

若干の悔しさを感じながら歩いていると、ふと、執務室から漏れる光に気付いた。

そこに引き寄せられるように、蒼龍の足は動いていた。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

「···提督?」

 

静かに、蒼龍は光の先、執務室の扉を開ける。

 

「ん、蒼龍。こんな時間にどうした?」

 

思った通り、彼の机には膨大な量の書類か積まれていた。

 

「ちょっとね。提督こそ、こんな遅くまで仕事してたら倒れちゃうよ」

「期限があるから、仕事が遅いとどうしてもこうなっちゃうんだ」

 

心配かけてすまん、と頭を掻いた提督。その表情に、蒼龍はいつも胸の痛みを感じるのだ。

 

「···他の子には、手伝って貰ってないの?」

「有難いことに、大淀が付き合ってくれてるよ。他の子も手伝ってくれるのは嬉しいんだけど、この書類、専門知識がないと難しいからな」

 

独自の緻密な計算式や、複雑な書式は、その手の専門家でなければこなすことが出来ないのだと、彼は言った。

 

「···まあそれでも、もう直に終わるよ。後は見直しだけだからな」

 

そう言って書類から顔を上げた提督は、蒼龍の強ばった表情に気付いた。

 

「蒼龍も、何だかちょっと疲れてないか?」

「へっ!?な、なんで分かるの!?」

「目の下のクマがひどいぞ」

 

(そ、そうだったぁ!)

 

つい先程の思考も忘却の彼方へ。

ひとたび提督の事を考え出すと、彼女はついつい自分や周りが見えなくなる節がある。

 

「み、見ないで…」

 

慌てて顔を隠したが、きっと赤みの差した頬は見えているのだろう。

 

「一体どうしたんだ?なんでもいいから、話してくれないか?」

「じ、実は···」

 

打ち明けるのは、少し躊躇う。

けれど、少しでも目の前の彼と話していたい。心の奥のその声が、蒼龍を動かした。

 

 

 

 

 

「──ほ、ホントにごめんなさい」

「なるほど。そりゃあ本当に怖かったんだな」

「…というより、勝手に観て勝手に怖がってる私のせいなんだけどね…」

 

軽い自己嫌悪に苛まれつつ、提督を見やる。

 

(提督も眠いのに…押しかけちゃって迷惑だよね)

 

「あ、あの、これ以上は提督に迷惑掛けちゃうから」

「…ん?ここで寝てかないのか?」

 

いつの間にか上着を脱いだ提督がいた。

 

「へ…ど、どうして」

「ん?眠れないからここに来たんじゃないのか?」

 

そう言われて初めて気付く。

実は提督ならどうにかしてくれるのでは、と心のどこかで期待していたのかも知れないということに。

 

(わ、私、無意識で)

 

日頃から妄想していたシチュエーションが目の前にあって、意識してしまうと緊張する蒼龍。

自分の欲望のままに甘えてしまえ、と囁く悪魔と、疲れているはずの提督に気を遣って退室するべきだと促す天使が争う。

 

「うう…で、でも」

「まあ、そう硬くならなくていい。海域の戦闘は精神もすり減るだろうし、実は艦娘同士では頼り合えない部分もあるんじゃないかとは思うんだ」

 

そう言って提督は蒼龍の頭を撫でて小さく笑った。

 

「ふぇ…」

「よしよし、怖かったな…っと」

 

蒼龍を抱きかかえ、ソファにゆっくりと下ろすと、彼は膝の上に蒼龍の頭を乗せた。

 

「ひゃ…て、提督」

「最近は出撃も多かったからな。疲れさせてしまってすまん」

「そ、そんなこと、ないよ…」

 

優しい匂い。提督の膝の上で、ただ蒼龍はそれを感じる。

徐々に体の余計な力や緊張が抜けていくのが分かった。

 

「何も怖くないんだ。飛龍も赤城も、加賀も、みんなここにいる」

「…うん」

 

提督が軽く背中を叩く。

蒼龍の心拍音に合わせて、心地よい揺れが身体を包んで、眠りを促した。

 

「んん…ふぁぁ」

 

視界が薄れ、我慢しても欠伸が出てしまう。伝わる体温の温かさに、蕩ける意識。

抜群のセラピーを感じつつ、もはや声すらも出なくなっていた。

 

「さあ、お休み。蒼龍」

 

ゆっくりと落ちる瞼。

蒼龍の意識はそこでぷつりと途切れた。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

──翌朝、執務室。

 

総員起こしの後、同室に蒼龍がいなかったことに気付いた飛龍は、きっと朝から秘書艦任務に向かったのだと思い当たり、ついでに朝食にでもしようと執務室を訪れた。

 

「おはよ提督!蒼龍見なかった···って蒼龍!?」

 

仰天して飛龍が声を上げたその先に、蒼龍はただ、快感に身を委ねていた。

 

「あ゛ぁぁ~、ひ、飛龍…おはよおぅぅ」

「…蒼龍、何してんの?」

「おお。おはよう飛龍。蒼龍が出撃で疲れてるって言うから、起き抜けに軽いマッサージをな。結構凝ってるみたいだ。飛龍もどうだ?」

「ひりゅ~···提督のこ、これ、すごい効く、よぉ···」

 

自分でも奇怪な声を上げていることには気付いているのだが、どうにも声が抑えられない。

鍛錬後のケアを怠っていたわけではない。しかし、凝り固まった筋肉がゆっくりとほぐされ、じんわりと心地良い熱が広がっていく。

 

「なんじゃこりゃ…」

「ぜったい、やったほうが、い、いってぇ~」

 

史実の艦艇時代に限らず、飛龍は蒼龍とそれなりに付き合いが長いのだが、親友ながら、こんな表情は見たことが無いと感じていた。

随分と蕩けた顔をして整体マッサージを受ける蒼龍。

そこに若干、複雑な感情を覚えるのだが、まあ本人が満足しているのならいいのだろうと思い直す。

 

「ふ~ん、ま、私は蒼龍と違って不健康な生活なんてしてないし?」

 

何となく小馬鹿にした表情で蒼龍と提督に言い放つ飛龍。

 

「う、そぉだぁ···ひ、ひっ!りゅうだってよふかししてたじゃ、ない゛ぃぃ!痛、痛い痛い!」

「うっ…でも確かに、この絶賛具合なら気になるかも。提督、私にも軽くやってみてよ」

「おう、いいぞ」

 

仕上げに、肩の特に凝った部分を押すと短い悲鳴を上げる蒼龍。

提督としては、それがなかなかに嬉しく思われていた。

 

「よし、んじゃあ飛龍と交代だな」

「う、うん···ありがと、ていとく」

「っとその前にラストスパート」

「ぅ゛っ!?」

「うわあ···」

 

無慈悲に、それでいて力強く、固まった筋肉を剥がしていく。

 

「い゛っ!こ、これでっ!お゛わりじゃないのぉ゛ぉ!?」

「はいはい、もうちょっとな」

 

(···提督って、もしかして···)

 

この時の提督の顔こそ、イベント海域の攻略達成と同等以上の笑顔だったと、後に飛龍は言った。

 

 

 

 

 

しばらくして、飛龍も同じようにマッサージに悶絶した後。

 

「ん、んん~!提督、ありがとね!」

 

何やら風雲と急用のできたらしい飛龍を見送って、晴れ晴れした顔で蒼龍は言った。

 

「疲れが取れたならよかった。まあ、夜更しはほどほどにして、身体に負担を掛けないようにな」

「う、ごめんなさい…」

「気にするな。蒼龍だってそんな時くらいあるだろう。その時は俺やみんなに相談してくれよ。また今日みたいに、出来ることがあるかもだからな」

 

提督の微笑が、蒼龍の心を虜にする。

何よりも、こうして他ならぬ自分だけを気遣ってくれているという構図が蒼龍の僅かな独占欲のツボを突いていた。

 

「はぅ…わ、分かりました…」

「さて、朝飯だけど間宮のところに行かないか。奢るよ」

「ほ、ほんと!?あ、で、でも」

「こんな時くらい遠慮するな。ほら、先に着替えてきなさい」

「わ···はい!待っててね!」

 

手を振って駆け出した蒼龍に苦笑して、つい、欠伸が出る。

 

「ふあ···今日は昼寝でもするかなぁ」

 

たまにはこんな朝があってもいいかも知れない。

そんなことを考える提督なのであった。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

後日。

 

「提督」

「ん···どうしたんだ、みんな揃って」

 

廊下で呼ばれ、その声に振り向くと蒼龍の他、赤城や加賀などの正規空母の面々が揃い踏みであった。

「蒼龍に聞いたんです。提督のマッサージ、とても効くそうなんですか?」

 

赤城が笑顔で聞く。

その後ろに半泣きで佇む(引き摺られているように見えたが)二航戦たちがとても対称的で気になったが、ここは素直に答えておくことにした。

 

「ああ。効くかはわからんが、あの日から二人ともよく来てくれているな」

「へぇ…」

 

赤城の目がより一層細く鋭くなったが、提督にその理由が分かるはずもない。

 

「やっぱり効くんですね、蒼龍?」

「ひっ!?そ、そうみたいです…」

 

(あれは狩るものの目ね…)

 

隣に控えた加賀が、冷静に判断していることなどつゆ知らず、ただただ二航戦は震え上がるばかり。

 

「そんな訳で貴女たち、抜けがけは禁止よ」

「は、はい!ぜ、絶対に守ります」

「え、ええ···絶対ですね」

 

加賀が何を言っているかは分からなかったが、五航戦もその奥にいるようだ。仲のいいことで何よりと思う。

 

──最も彼女らは、赤城の見たこともない表情に怯えていたが。

 

「提督、お時間があれば私たちにもお願いしたくて···」

「ああ、もちろんいいぞ。まとまった時間は確保できるか分からないから、また個別で聞いてくれ」

「はい!でしたら、明日のお昼などどうですか?一緒に頂くついでに」

「あ、それ私も···」

 

言いかけた蒼龍に、怜悧な視線が突き刺さる。

 

「蒼龍?」

「ひいい!?」

「ん、蒼龍もか?」

「いえ。蒼龍は鍛錬がありますので。ねえ加賀さん?」

「…ええ。そうね、みっちりと」

「えええええ!?」

「あまり無理はするなよ?」

 

言ってはみたが、なにやら不平不満をぶちまけて泣きわめく蒼龍と、それを面白がって爆笑していたものの、ついでに鍛錬に巻き込まれて絶望する飛龍に苦笑する。

 

正規空母部隊は、普段は師弟関係を感じさせないような仲の良さがウリだ。

それでも、戦闘時はしっかりと先輩の指示を守り、意見を出して作戦を遂行する雰囲気の良さも持ち合わせており、提督が感心するところとなっている。

 

「ふええええ、勘弁してくださいいい」

「終わった…何もかもが…終わった」

 

何故二航戦がこんなことになっているのか、提督には直接の原因が分からない。

まさか、自分のマッサージが原因となっていることは考えもしないであろう。

そんな鈍感さを発揮しつつ、提督はまた一つ欠伸をしたのだった。

 

 




シリアスとは…となっている方もいらっしゃるかもしれませんが(そもそも読者さんがいない)割とタグは保険みたいなところがあるのでなかなか出ないかもです。

ついこの間橘花改を作りました。ジェット機演出かっこいい。

海外艦、もし追加するなら初登場は

  • ドイツ艦
  • イタリア艦
  • ロシア艦
  • アメリカ艦
  • イギリス艦
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