舞鶴第一鎮守府の日常   作:瀬田

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12月下旬にイベントですよね…備蓄しなきゃ



第六話 一航戦の誇り

(あの赤城が不調···か)

 

どの演習、出撃報告書も、それを証明するような文章が並んでいる。

 

「うーん、何かあったのか?」

 

(だとしたら、無闇に本人に聞くのは不味い)

 

艦隊において重要な役割を担う彼女の不調は、かなりの痛手であることは間違いない。

 

(最も、誰であったとしても同じことか)

 

そう考え直して、空母寮へ向かった。

 

──────空母寮 翔鶴型部屋

 

「うーん、覚えがないなあ」

 

部屋の前でいいと言ったのだが、翔鶴の熱烈な歓迎を受けて今に至る。

 

「俺も未だに信じられないんだが···翔鶴は何か知っているか?」

「いえ、あまり···あ、不調と言えば、暁ちゃんがどうとか話を聞きましたけど···」

「暁···?」

 

暁型駆逐艦一番艦 暁。例の通りの見た目相応の性格をしている。

 

(何かあったのだろうか)

 

そう考えていると、瑞鶴の声。

 

「何なら加賀さんに聞くのが一番早いんじゃない?部屋も一緒だし」

「そうしたいのは山々なんだが···確か今あいつは出撃だったな」

「それじゃあ聞けないわね···私たちからもそれとなく話をしておくから、提督さんは暁の方に行ってみてよ」

「ああ。そのつもりだ。ありがとな。二人とも」

「いえ···それでは演習なので、これで私達も失礼しますね」

 

演習場へ歩いて行く二人の背を見送って考える。

 

(暁と赤城···何か関係があるのか?···とりあえず偶然だとしても、暁の所には行かないと)

 

赤城に暁に、普段なら考えられないメンバーの不調。

 

(一体、何があったんだろ)

 

あんまり艦娘とのコミニュケーションが届いていないのだろうかと猛省する。

 

(···っと、ここか)

 

着いたのは二階、暁型の部屋。

 

「···暁、いるか?」

 

ノックをしてしばらくすると、出てきたのは電であった。

 

「あ、司令官さんなのですか?暁ちゃんなら···」

 

電はおずおずと、部屋の隅を指差した。

 

「···暁?」

「ひっ···し、司令官?」

 

まるで怯えるように、暁は振り向いたのだった。

 

 

「お化け?」

 

暁、ついでにその場にいた電を間宮に連れてきた。

 

「···にわかには信じ難いのです」

 

(···電、当たり強すぎじゃない?)

 

「ほ、ほんとよ!···昨日、夜にトイレに行こうと思って起きたら···」

 

────────駆逐寮、二階廊下

 

「うう、ちょっと怖いわ···」

 

震えて廊下を歩く。その床下から、何やら物音がするのだ。

 

グォォ···

「あれ···?」

 

グォォォォ···

「な、なに···?」

 

グォォォォォォォォォ!

「ひ、ひいぃ!」

 

────────────────

 

「夜のトイレ、行けたんだな」

「失礼ね!行けるわよそれくらい!」

「···それで、その後はどうしたのです?」

「そ、その後はダッシュでトイレに行ったのよ···」

 

当時の光景を思い出したのか、身震いしている暁に些か苦笑しつつ、質問を続ける。

 

「どこから音がしたとか、覚えてるか?」

「···うーんと、確か下の階から···」

 

(下の階···)

 

「電、寮の部屋割りを知ってるか?」

「えっと、確か一階は空母の皆さん···でしたと」

「!?」

 

思わず立ち上がると、二人の怪訝な視線が刺さる。

 

「ど、どうしたのよ」

「わ、悪い。ちょっと用事が出来たから、これで払っといてくれ。電」

「は、はいなのです···」

 

そう言って、急ぎ空母寮へ向かった。

 

「···あ」

 

(提督、なぜ空母寮に)

 

出撃を終えて戻ってきた加賀は、空母寮に向かう提督の後姿に気付いた。

 

「···提督」

「ん、おお、加賀か!いいところに!」

 

加賀の手を引いて走り出す。

 

「ちょ、ちょっと···」

「話は後だ、とりあえず行くぞ!」

 

(行くってどこに···)

 

多少の疑問はあれど問いただす暇もなく、加賀は仕方なく付いて行くのであった。

 

────────────────────

 

「そんな···赤城さんが不調だなんて···」

「信じられないかも知れないが本当のことだ。加賀は出撃があったからあいつと会う時間が無かったとは思うが、気が付いたことがあれば教えて欲しい」

「···ごめんなさい、ご期待には添えなさそうね···」

 

しかし、彼女の顔は依然深刻であった。それは大切な同期の身に何があったのか、本当に心配しているように見えた。

 

「そうか··でも加賀には色々と話すことがあるから···そうだな、ちょうど夕飯だし、鳳翔のところで話すか。この後は予定はあるか?」

「いいえ、無かったはずだわ。行きましょう」

「よし」

 

加賀の予定もないようなので、詳しく話を聞くため、居酒屋 鳳翔の前までくる。

 

「好きなもの頼んでくれ」

「赤城さんには悪いけど、流石に気分が高揚します」

「おーい鳳翔やってるかー···」

「···あ」

「赤城さん?」

 

暖簾をくぐり、扉を開けた先。カウンターの奥で鳳翔と話す彼女は、紛れもなく赤城だった。

「燃費が悪い?」

「実はこの間、他の鎮守府でそんな噂を聞いて···」

 

赤城によると、先日の演習で燃費の悪さを指摘する他の鎮守府の提督の話を偶然耳にし、それを気にするあまり食事が喉を通らなくなって、今回の不調に繋がったという。

 

(そんな事言ったら私の立場が···)←加賀

 

「ただの噂だろ?仮に資材を大量に必要だとして、それ相応の戦果を挙げてるじゃないか」

「で、でも私は···」

 

赤城に限らず正規空母という艦娘は、その高い性能と引換えにかなりの資源を要する。

だが、それは当たり前のことで、それを理解出来ずに赤城を責めるのは筋違いであり、戦果を挙げられないのはその司令官の指揮に欠陥がある。

 

「大丈夫だ」

 

頭に軽く手をやる。

 

「ん···て、提督」

「簡単に言えば、資材より赤城がもたらす戦果の方が圧倒的に多いんだ。そうだろ、加賀?」

 

言いつつ隣の加賀に振り向く。

 

「ええ。赤城さんは私よりもずっと有能な方です」

「···そんなことは」

 

赤城が反論しようとすると、間髪入れずに鳳翔が煮物を据えた。

 

「そうですよ。赤城さんはちゃんと、この鎮守府に貢献出来ています」

 

最も、さっきからそう言っているのに、と頬を若干膨らませた鳳翔に苦笑しつつも続ける。

 

「赤城も加賀も、どちらが優れているとか、劣っているとか、そんなことを考えなくていい」

 

それが重圧になるなら尚更だ。

 

「調子が悪いなら休めばいい。独りが不安ならお互いに支え合えばいい」

 

それが怠慢だとは、誰も思わないし、実際にそうではないのだから。

 

「二人はもう、そんなことを言われるような練度じゃないんだし」

 

それだけは、自信を持って欲しいと付け加える。

 

「ふふ、そうですね···それに」

 

鳳翔は、それに続くように、微笑んでいった。

 

「二人が無事に戻って来てくれることが、何より嬉しいんですよ···提督も」

「鳳翔さん···」

「提督···」

 

二人の瞳に、涙が浮かぶ。

 

「そうだな。ありがとう、鳳翔」

 

言いたいことを全て言ってくれた。実のところ、中々恥ずかしかったので、鳳翔には感謝し切れない。

 

「いえ···それよりも、この子達を、これからもよろしくお願いしますね」

「ああ。俺の方こそ、よろしく頼む」

 

ふと、胸中に疑問が湧く。

 

「···ところで、暁が赤城たちの部屋から不審な音を聞いたらしいんだが···何か知ってるか?」

どきり。

 

そんな音が聞こえるかのように、目に見えて赤城は慌てだす。

 

「あ、あのぉ···そ、その···」

「ん、何かあったか···」

「うふふ···赤城さん、あまり提督を心配させる訳にはいかないし、話して上げたら?」

 

苦笑というか、困ったような笑顔の鳳翔。

以前から思ってはいるが、彼女たち空母部隊の母親のような存在ではないだろうか。

 

「え、ええ···じ、実は」

 

赤城は、おずおずと語り出した。

 

──────朝 食堂

 

「おはよう」

「おはようございます、提督」

 

事件の翌日、赤城は既に普段の調子を取り戻していた。

 

「いい食いっぷりだな···鳳翔、俺にもくれ」

「はーい!」

 

厨房で忙しそうな鳳翔だが、いつもよりも笑顔である。やはり、後輩が元気だと嬉しいものなのだろう。

 

「はい!やっばり朝はご飯ですよね!」

「そうだな。···しかし、噂を気にするあまり毎日1食だった奴が言う台詞とは思えないな···」

 

結局、暁が聞いたという怪音の正体は、赤城の腹の音だったと言う。

 

「···廊下に響き渡るって···」

「も、もう!その話はしないで下さい!」

 

赤城が顔を真っ赤にしている。

 

「悪かったって」

 

普段は見られない表情に苦笑する。

 

(···だけど、やっぱり)

 

食事を美味そうに平らげる赤城を見て、つくづく思う。

 

「いっぱい食べる子の方が、いいな」

 

何もなかったかのように隣に座った提督を驚いて見つめる。

 

「え···そ、その···」

「ん?」

 

顔が急に熱くなるのを感じ、彼から顔を背ける。

 

「な、何でもないです!」

 

慌てて両手を振ると、不思議そうな顔をして、彼はゆっくり朝食を食べ始めた。

ちらりと彼の横顔を窺う。

穏やかな表情で、ぼーっとしているようで、ちゃんと自分たちのことを考えてくれている人。

着任当時、自分を指導してくれた鳳翔から、そんなことを聞いた。

 

(でも、たった一つだけ、提督が考えていない事がある)

 

──────それは、自分。提督自身のこと。

 

(だから、私達がそれを支えないといけなくて)

 

もちろん、強制ではない。

心からこの人に寄り添いたいと、そう思うからだ。

 

(提督と、一緒に)

 

この人の隣を歩きたい。

この鎮守府を作り上げていきたい。

この世界を、生き抜きたい。

一航戦の、誇りにかけて。

 




赤城・加賀の改二が待ち遠しいですけど、とてつもない量の改造設計図なんでしょうね(絶望

海外艦、もし追加するなら初登場は

  • ドイツ艦
  • イタリア艦
  • ロシア艦
  • アメリカ艦
  • イギリス艦
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