舞鶴第一鎮守府の日常   作:瀬田

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この欄って、何か書いた方がいいんですかね?
小説のネタより、ここのネタの方が先に枯渇しそうです。

今回は少な目です。どうぞ!


第八話 お悩み相談室

「ね、ていとく」

 

昼下がり、そんな声がして後ろを振り向いた。

 

「おお、どうした?」

 

そう答えて振り返った廊下の先、長めの金髪を靡かせているのは、島風型一番艦、駆逐艦島風だった。

普段の彼女の、天真爛漫なイメージとはかけ離れて、彼女のもたらす静寂。

 

「...ちょっとだけ、でいいんだけど」

「おう、どうかしたのか?」

「相談に...乗ってほしいの」

 

少し暗めのその表情が、どこかで引っ掛かる。

 

「...えと、その...」

 

語口は遠慮気味というか、口籠もっているようだった。

 

「無理して言わなくてもいいんだぞ。どうしても言いたいことなら、しっかり待つから、落ち着いて話せ」

 

頭を優しく撫でると、恥ずかしそうにしながらも、彼女は口を開く。

 

「と...ち」

「...?」

「ともだちが、ほしいの」

 

────────────────

 

「なるほど...」

 

島風には、同型艦がいない。

それは、その並外れた航行速度などからくる他の艦娘との性能さによるものだ。

艦隊のメンバーからは一歩離れた立場をとることも多い。

 

「そ、その、提督は普段から忙しいのに、迷惑かけちゃうけど···ごめんなさい」

「気にするな。俺の方こそ、気付いてやれなくてすまん」

 

(しかし、彼女は本当に純粋で思いやりのある子だ)

 

申し訳なさそうに俯く島風をまた撫でて、微笑みかける。

 

「寂しい思いをさせてしまったな」

 

すまない、と謝れば、島風へ慌てた顔を見せた。

 

「そ、そんな···提督は何も悪くないよ!」

 

その慌てように苦笑しつつ、彼女の手を握った。

 

「何も姉妹ではないからって、遠慮しなくていいんだ。皆は島風のこと、大切にしてくれてるから」

「そ、そうかな··」

「ああ。とりあえず昼飯だ。それからまた考えよう」

 

執務室の扉を開けて、島風の手を引くと、嬉しそうに笑うのだった。

 

「あら、提督。今日は島風ちゃんと一緒ですか?」

 

注文口でせっせと働く間宮に話しかけると、彼女は珍しそうに言った。

 

「ああ。とりあえずいつものを頼む。島風はどうする?」

「う、うん···提督と同じの、食べる」

「分かった。それじゃあ二つだな」

「はい。よかったわね。島風ちゃん」

「うん···!」

 

間宮の笑顔につられて、島風も微笑んだ。

 

(やっぱり、間宮はすごいな)

 

女性の持つ包容力や安心感にはやはり驚かされる。

 

「ありがとう、間宮」

「へ!?」

 

少し羨ましいな、なんて思っていると、突然の流れ弾に被弾して動揺する。

 

「···?どうしたんだ」

「い、いえ!それより、冷めちゃいますよ!」

「···そ、そうか」

「むぅ···」

 

島風の不満げな表情には、気づくことのない提督であった。

 

 

「食った食った」

 

 

昼飯を終え、島風を連れて廊下を歩いていると、前からドタバタと走る艦娘の姿が。

「テイトクー! Tea Timeネー!」

「おう、金剛」

「提督。今からお姉様たちとお茶会をするのですが、どうでしょうか?」

 

金剛の後を歩いていた榛名はそう言った。

 

「そうだな···あっ、そうだ、島風も一緒にどうだ?」

「え···わ、わたしもいいの?」

「もちろんネー!それじゃあLet's go!」

 

金剛のハイテンションさに苦笑しつつ、後を追う。

 

「あら、提督、島風ちゃんもですか。こんにちは」

「こ、こんにちは」

 

提督の背後に隠れる島風を見て、霧島は苦笑する。

 

「島風ちゃんは提督が大好きなんですね!」

「私もデース!負けませんヨー!」

「比叡や金剛が怖いんじゃないか?」

「そ、そんなことないですよ!···たぶん」

「そうデース!ねーシマカゼ!」

「う、うん!」

 

まだ緊張しているようだが、島風の頑張りは伝わってくる。

 

(その調子で頑張って欲しいものだが)

 

「それでは紅茶を淹れますね」

 

榛名が立ち上がる。

 

「···あ、あの、わ、わたしも···手伝う!」

「···ふふっ、ありがとう。それじゃあお願いしますね」

「島風、いい子ネー!」

「本当ですね。」

「私たちの妹に欲しいです!」

「四人もいるのにか」

「姉妹は何人いてもいいものです!」

「なるほどな」

「あーっ!今適当に返せばいいとか思ったでしょ!」

「そんなことはないぞ」

「棒読みじゃないですかー!」

「テイトクは薄情ネ!」

「ふふ、そうですね」

「全く、本当に仲がいいんだなお前達は」

 

頬を膨らませて抗議に迫る比叡と金剛。

彼女らから目を逸らして、榛名と島風の方を見やる。

 

「こ、これでいいのかな···」

「ええ。上手ですよ。皆さん、島風ちゃんが紅茶を淹れてくれましたよ!」

「待ってたネー!」

「···うん、美味しいです島風ちゃん!」

「あ、ありがとう···」

「良かったな、本当に美味しいぞ」

「て、提督も···」

「そういえば、今日はどうして島風ちゃんが?今日は特に秘書艦の娘は···」

 

不思議そうに、霧島が尋ねる。

 

「ああ、その事なんだが···島風、どうする?」

「うん···私が言うよ」

 

島風は意を決するように、口を開いて、自分の言葉で、たどたどしくも説明した。。

 

「なるほど···そういうことだったんですね!」

「うん···わたしがみんなの邪魔をする訳にはいかないから···」

 

そう言った島風は、やはり寂しそうだった。

 

「シマカゼ···!」

「な、なに···?」

「シマカゼーー!」

 

肩を震わせた金剛は、そのまま勢いよく島風に抱きついた。

 

「わっ···」

「もう寂しくありまセン!ワタシたちが付いてマース!」

「そうです!私もいます!」

「榛名も、霧島も居ますよ」

「み、みんな···」

「俺もだ。島風」

「て、ていとく···」

 

瞳を潤ませた金剛と島風、それに比叡は、そのまま感動の嵐の中で号泣した。

 

「よかったですね。提督」

「ああ。ありがとう、榛名、霧島」

「いえ、本当に頑張ったのは、島風ちゃん本人ですから」

 

榛名と顔を見合わせて笑う霧島に、提督も微笑んだ。

 

「そう···だな」

 

金剛たちと笑い合う島風の姿が、どこか、懐かしく羨ましいと、そう思った。

 

「よかったな、島風」

「うん!ほんとに、ほんとにありがとう。提督」

 

島風は嬉しそうに、顔を上げて笑いかけた。

 

「これも島風が勇気を出したからさ···ところで、今日はまだ時間があるか?」

「え?···うん、わたしは出撃がないから···」

「そうか。それなら、少しついてきてくれ。」

「う、うん。」

 

そう言って歩みを進めたその先には、建造施設があった。

 

「···新しい子?」

「ああ。海域で新しく仲間になってくれたんだ。」

 

そう言って施設内部の扉を開ける。

 

「あ···」

 

そこに待ち受けていた艦娘こそ、陽炎型9番艦────

 

「天津風···?」

「島風!」

 

天津風は艤装を急いで外すと、島風に飛びつく。

 

「島風!島風なの!?」

「う、うん···!提督···!」

 

驚きながらも提督の方へ振り向くと、彼は嬉しそうに笑っていた。

 

「型は違っても同型艦のようなものだろう。確かに姉妹と呼べる艦娘はいないかも知れないが···島風」

「ど、どうしたの提督···ひゃ」

 

頭をくしゃくしゃに撫でて言う。

 

「みんな、島風のことが大好きだ。大切な仲間だ。その事を、忘れないで欲しい」

「うん、うん···!」

「それと、天津風」

「どうしたの?」

「今、陽炎型の部屋がいっぱいなんだ。だから島風と一緒にどうだ?」

「え···」

 

驚いたのは島風だった。

(もしかして、私の為に…?)

 

「ええ、もちろん。よろしくお願いね島風!」

「う、うん!」

 

「すまないが、天津風にこの鎮守府の案内を頼む。大丈夫だよな?」

 

片目を瞑った提督に島風は少し目を見開いたが────

 

「うん!行こ!天津風」

「ええ。よろしくね」

 

(ありがとね、提督···)

 

「教えてあげる。この鎮守府のこと···みんなのこと···それと」

「優しくてかっこいい、提督のこと!」

 

鎮守府へと駆ける2人の姿が、夕暮れの港に長い影を映していた。

 




史実についてはまだ勉強中です。
記述が間違っている場合はご指摘いただけるとありがたいです。

さて、次回の更新は12時です。
UA1000超え記念と称し、長編を前後編に分けて投稿させて頂きます。

海外艦、もし追加するなら初登場は

  • ドイツ艦
  • イタリア艦
  • ロシア艦
  • アメリカ艦
  • イギリス艦
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