舞鶴第一鎮守府の日常   作:瀬田

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UA1000超え記念に、更新を速めてみました。
ありがとうございます。

少しだけ長くなったので、前後編パートに分割します。

※上陸はしません


第九話 東奔西走!クリスマス島上陸作戦(前篇)

12月17日。

 

艦隊は遠征部隊や哨戒部隊の艦娘を除き、一時待機の休息となっている。

 

「皆、集まったか」

 

普段ならのんびりとした空気の流れる執務室には、ただならぬ緊張感が漂っていた。

 

「はい!榛名は大丈夫です!」

「鎧袖一触よ、心配いらないわ」

「うちに任しとき!」

 

精悍な艦娘たちの顔ぶれを一瞥し、微笑を浮かべる提督。

しかし、彼の眼は、ただならぬ鋭さを内包していたのだった。

 

「それでは、代表者の点呼をとろう」

 

威儀を正し、少し強い口調。

 

「まずは戦艦担当。長門」

「ああ。このビッグセブンに任せろ」

 

日頃の生活や艦隊決戦時と同様、頼もしい表情を見せる長門。

改二改装を終え、さらに磨きのかかった戦闘力を発揮する。

 

「重巡担当、摩耶」

「おう!摩耶様についてきな!」

 

同様に、こちらも改二の装備の眩しい摩耶。

対空戦闘の技術をマスターし、一段と心身ともに強くなった。

 

「軽巡担当、神通」

「···お任せ下さい」

 

物静かに、それでいて、確かな意志の秘められた瞳で答える神通。

演習でも、実践でも、純粋な身体能力で彼女に追随する者は、姉の川内の他にいないと言われている。

 

「雷巡より、北上」

「はいよー、張り切っていきましょー」

 

北上はいつもと同じ、のほほんとした表情で言った。

これが夜戦時には破滅的と言えるほどの活躍を見せるのだから、人は見かけによらないとはよく言ったものだ。

 

「空母担当、赤城」

「一航戦の誇り、お見せします」

 

語気に確かな自信を含ませる赤城。

鳳翔から歴戦の将とその技術を受け継いだその魂は、凛として薄れることを知らない。

 

「そして、駆逐担当、吹雪」

「はい!司令官、頑張ります!」

 

初期艦として名を轟かせる吹雪。

提督の戦術、そして彼の艦娘たちにかける思いを、誰よりも理解していると言っても過言ではない。

練度は極限値を迎えようとしており、またその実力も鎮守府の中で有数を誇る。

 

「よし···これより、君たち六隻による、X作戦を実施する」

 

そして、精鋭の中の精鋭部隊を率いる男──提督は、ゆっくりと立ち上がって言った。

 

「作戦の成功はもはや心配していない。君たちに課せられた使命は、大切な人の笑顔のために闘い──────」

「──────そして、絶対にここへ帰ってくることだ」

「「了解っ!」」

 

稲妻のような刺激が、血を煮えたぎらせる。

 

「各艦抜錨!勝利を刻めっ!」

 

提督はその腕を、振り下ろした。

 

 

 

12月20日。

 

「···ねぇ、やっぱり気にならない?」

 

夕立は、僚艦の時雨に問いかけるように言った。

 

「な、なんだい?」

「吹雪ちゃん、最近見かけないっぽい。それに、トレーニングルームにも長門さんがいないなんて」

「そ、そうかな···年の瀬だし、二人とも忙しいんだよ、きっと」

「···そうっぽい?」

 

首を傾げ、訝しげな目をする夕立。

 

(うっ···)

 

その視線に、時雨は少したじろぐ。

 

「お風呂も白露がいっちばーん!」

 

と、二人の間をすり抜けるように、白露が走り抜けて行った。

 

「あーっ、待つっぽい!夕立もいっちばーん!」

 

その後を追いかけて走り去った夕立に、時雨はほっと胸を撫で下ろした。

 

「やあ、時雨」

「ん···あぁ、最上。お疲れ様」

「お疲れ。相変わらず大変そうだね」

 

後ろからやってきた最上が、苦笑しながら言う。

 

「確かにそうだね···でも、今一番頑張ってるのは提督と、第一艦隊の皆だし···このくらいはね」

「まあねー、僕のところも熊野と三隈が楽しみにしてるからさ、鈴谷と大変なんだよ」

「み、三隈さんまで···それは大変だね」

「まあ、見てて面白いんだけどね。っていうか、熊野は意外そうにしないんだね」

 

笑いをこらえるようにして言う最上に、時雨もつられて笑ってしまう。

 

「なんというか、熊野さんは純粋だから」

「そうだね。艦隊指揮は出来るのに、ね」

 

そのギャップが、彼女の何とも言えない愛嬌というか、愛らしさを醸し出しているのだろう。

二人は顔を見合わせて、また笑い合うのだった。

 

────────────

 

翌日、早朝〇四〇三。

執務室の隣、会議室に、一部の艦娘の面々が集まる。

 

「···すみません、遅れました」

「珍しいな、加賀が遅れるなんて···って、なるほど」

「ええ、この子を起こしていたので···」

「ふにゃあ···まだ眠いよ翔鶴姉···」

 

加賀の背中にもたれ掛かるのはもちろん瑞鶴。

 

「おーい瑞鶴、起きろ」

「ふぇ···」

 

ぼんやりとした瑞鶴の視界に、彼の苦笑が段々と確かに映っていく。

 

「て、提督さん!?」

「あら、起きたのね。重いのでそろそろ降りてくれると助かるのだけれど」

「加賀さん!?」

 

敬愛する両者に囲まれ、驚きのあまり目を回す瑞鶴。

 

「「しーっ」」

「あっ···そ、そうだった」

 

状況を把握した瑞鶴は、口元を押さえた。

 

「···よし。それじゃあ全員揃ったことだ。今年もよろしく頼むよ」

「ハーイ!この金剛にお任せネ!」

 

とん、と胸を叩いた金剛。

 

「私も、微力ながらお手伝いさせて頂きます」

 

その横の妙高も、微笑んでそう言ってくれた。

 

「皆さん、頑張りましょうね 。寒いので柚子茶を淹れましたから、良かったら飲んで下さい」

 

鳳翔が給湯室から現れ、茶を注いで回る。

柚子茶は暖かく、冷えた身体にちょうど良かった。

甘味が眠気に晒された脳を覚ましていくのが分かる。

こうした気遣いが、鳳翔が慕われる理由の一つなのだろうなと、少し納得した。

 

「ありがとう。よし、それじゃあ各艦種別でプレゼントを聞いていこうか」

 

本日の議題────それも、ここのところ連日に渡って鎮守府水面下で繰り広げられる激しい作戦行動は、全てその日のためである。

12月25日。

子供たちが朝起きると、枕元にプレゼントがある。

驚き、同時に喜びに満ち溢れる表情は、何とも微笑ましいものだ。

数々の戦場で荒んだ心を潤すのは、こういう時でなければいつするのか。今だろう。

妙な自問自答に既視感を抱いていると、ホワイトボードの前へ進み出た霧島がペンを握った。

 

「それでは、戦艦から順にいきましょう」

「はい。まず、比叡さんは···」

 

その名にくすくすと、笑い声が零れる。

 

「比叡は超pureっ子ですからネー!まだSanta Clausを信じているのデース!可愛いデショ?」

 

その笑い声は、もちろん嘲笑という訳ではない。

普段では仲間を庇い、そして敵を打ち倒す勇敢な比叡の意外な一面が、艦娘たちにとっては微笑ましく映るのであった。

 

「そうだな。それで、比叡はなんだ?」

「料理グッズ、デスネ!」

「なるほど」

 

先日、提督とのとある一件(決して食中毒騒ぎではない)があってから、比叡は『提督に美味しく食べてもらいたいです!』と、精力的に料理の練習に取り組んでいた。

 

「器具は鎮守府にあるし、エプロンやレシピ本がいいんじゃない?」

 

同じく戦艦の陸奥が、柚子茶を啜って言う。

実は彼女は極度の寒がりで、羽織ったベンチコートのようなものが暖かそうだ。

 

「よし、それじゃあ次に行こう」

 

メモをとった提督が霧島に次を促す。

 

「次は、日向さんですね」

「日向からは、私が聞いてるよー」

 

手を振るのは伊勢。

言うまでもなく、日向の相方として、古くから鎮守府を支えてきてくれた。

 

「おお」

「えっと···瑞雲グッズだって」

 

しん。

その言葉で全てが表現できてしまうほど、沈黙と静寂にその場が静まり返る。

 

「こ、これは···」

 

頬を引き攣らせた山城。隣では、扶桑が困ったような笑みを浮かべていた。

 

「···明石」

「は、はい!?」

 

静かに彼女を呼ぶと、おもむろに彼は財布からカードを取り出した。

 

「これ、使っていいから、何としても作ってくれ」

「わ、分かりましたァ!」

 

肩にかかった重圧と、凄味のある微笑から、明石は全てを察して敬礼をした。

 

──────

 

「よし次」

 

慌てて工廠に駆けて行った明石を見送って、次のプレゼントの検討にかかる。

 

「次は空母ね。蒼龍です」

「蒼龍か。何となくわかるな」

 

彼女の周りの空気はいつも明るい。天真爛漫といった言葉が似合いそうだ。

 

「···で、希望の品はなんだ?」

「それが···」

 

答えに詰まる飛龍。

 

「?」

「あー、これは···」

「なるほどねぇ」

 

納得している艦娘たちに、不思議な視線を投げかける。

 

「気持ちは分かりますね」

 

大鳳が飛龍の隣でうんうんと頷いている。

 

「?俺には言いにくいのか?」

「そうですね···本人の同意がなければ」

 

ならば仕方ない。

 

「そうか、なら頼めるか?」

「夕張さん、出来ますか?」

「もちろんです!任せて下さい!」

 

夕張は親指を立てて、そう言った。

 

(また何かのグッズなんだろうか?)

 

あまり詮索するのもマナー違反かと、提督は深く考えないようにしたのだった。

 

(まあ、こんなの伝えちゃあね···)

 

苦笑する飛龍の持つ紙切れには、「提督君グッズヲオ願イシマス!」の文字が。

 

そんなこともつゆ知らず、提督は会議を進める。

 

「えー、次は···」

 

────────────────────────

 

「文月はぬいぐるみか。これは今日か明日の昼に俺が買いに行けるな」

 

提督が残された最後のメモをとって、会議はようやく終わりを迎えた。

 

「ふあぁ、結構かかっちゃったねー」

 

加古が欠伸をしながら言う。

 

「よし。皆、ありがとう。リストごとに班を三つに分けるから、それを見ながらそれぞれプレゼントを用意しよう」

「「了解っ」」

 

クリスマスまで、あと四日。

 




クリスマスまで一か月を切りましたね。

クリスマス(目を逸らす

海外艦、もし追加するなら初登場は

  • ドイツ艦
  • イタリア艦
  • ロシア艦
  • アメリカ艦
  • イギリス艦
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