幻想のIS   作:ガラスサイコロ

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08.5_アオミドリの夜

「では、俺達はこれで」

「また明日ね」

 

 俺と青衣が居るのは生徒会室。ひらすら虚さんの愚痴に付き合い、気が付いたら既に日は暮れていた。流石にお腹が空いたのか彼女は食堂へ行く様だ。今日残った仕事は明日やることになるだろう。俺も生徒会として正式な仕事が始められる。

 俺も疲れたし、学園での初日はこれで終わりだ。虚さんを残し『拠点』へ空間転移する。

 そこはもう簡易応接室だ。名前は今決めた。適当な木片でも使ってプレートでもつけようか。

 ん? 少し周りを見回す。何かおかしい。小さな違和感がある。

 『拠点』には俺の空間転移か、紫姉さんのスキマで来るしかない。

 青衣は玄関へ向かおうとするが肩を掴み止めた。俺は口に人差し指を当て喋らない様に指示する。玄関で必ず『ただいま』を言う癖があるからだ。

 俺は『空間を操る程度の能力』を使い『拠点』の奥を確認する。こいつは……

 

「早苗とにとり?」

 

 一人は守矢神社の風祝である東風谷早苗、もう一人は河童の河城にとりだ。二人とも幻想郷にある妖怪の山に住む者だ。

 共に知り合いで心配ない相手だが何故ここにいるのか。普通に考えたら紫姉さんが連れて来たとしか考えられないが。

 まあいい。直接聞こう。俺は青衣を伴って玄関を通り、襖を開ける。

 

「お久しぶりです」

「よ、盟友」

 

 そこにはのんびりとお茶を飲み菓子を摘まむ二人。足も投げ出してリラックスをしている。これらの菓子は人間の里で売られているものだ。

 にとりの後ろにはこんもりとしたいつもの青いリュックが置いてあった。開けっ放しの箇所からその菓子の袋が見えている。持ってきたものだろう。

 

「お久しぶりー」

 

 青衣は二人の姿を見ると、ぱたぱたと駆け寄っていく。

 何故彼女達がここにいる?

 

 

 

 

 

「紫さんとこの前会いまして、青衣ちゃんの調子はどうですかって聞いたんですよ」

 

 最後に会った時と全く変わらぬ早苗。口元に煎餅の食べかすが付いている。

 

「そのときわたしも居てね。久しぶりに会いたいなと言ったら」

 

 同じくにとり。

 

「ここに放り込まれたってわけか」

「はい!!」

 

 まあ、なんというか。こいつらはのんびりしているな。

 

「で、お前らいつから居たわけ? さっき戻った時にはいなかったけどさ」

「30分位前ですか」

 

 なるほど、入れ違いか。

 

「元気で何よりです」

 

 にこにこしながら青衣が自分と俺のお茶を入れる。

 ちなみに早苗とにとりが飲んでいるお茶もこの部屋に置いてあるものだ。客用の湯呑だし紫姉さん辺りが出したのだろう。

 

「其方も変わりませんね」

「当然、皆元気なもんだよ」

 

 からからとにとりが笑う。

 その後は幻想郷の話になった。何でもない、ごく普通の話だ。そのまま10分くらい話し込む。

 

「そうそうところでさ、今日は例のIS学園に顔を出したのかい?」

 

 にとりが話題を変えてきた。目がきらーんと光っている。

 

「出したぞ。今日から出席扱いになる」

「紫さんから聞いたんですが今日戦ったって?」

 

 今度は早苗、食い付きが良い。ま、こうなるわな。つーか紫姉さん見てたのか。

 

「ああ」

「見せて、いや見せろ!!」

「無人ロボットですよね!! 見せて下さい!!」

 

 肯定したらこれだ。機械好きの河童とロボット好きの早苗である。この反応は当然と言えた。

 紫姉さんが話しているなら見せても問題無いだろう。というかそうでなくてはここに居るわけないし。

 俺が言うまでも無く青衣は両手を軽く上に向ける。その空間がぼんやりと白く光り出した。それは見る見るうちに大きくなり、幅が薄い高さ1メートル、横1.5メートルほどの楕円型になる。そこまで大きくなると青衣は軽く光を押し、テーブルの奥まで動かした。丁度俺達4人が見れる位置だ。

 これは青衣の記録だ。記憶ではなく記録、一切の加工が無い代物だ。青衣は自身の記録を任意に取り出すことができる。因みに外の世界に出てから他のISを解析したことで、記憶媒体さえ用意すれば外の世界でも再生できるファイルとして出力することも可能になった。

 再生用のノートPCも『拠点』に置いてある。この前買ってきた。学園長室でのやり取りなどもここに収めて、更に幻想郷にもバックアップとしてもう一台置いてある。他にDVDにも焼いて保管もしている。何せ重要な証拠物件だからね。

 

「んー、無人機の直前からでいいですかね」

「その前は?」

「IS同士の試合です」

「そこから見せて」

「解りました」

 

 光の中に俺達が『拠点』で待機していた時に見ていた一夏と鈴の試合が映し出される。

 二人はほー、とかへーとか呟きながら記録を見ている。顔はギャラリーと同じだ。唯、にとりはアリーナの仕組みにも興味が行った様だ。確かにどうなっているのだろう。

 そしてそのアリーナを突き破り、無人機が乱入して来る。

 

「こいつが無人機かい?」

「ああ」

 

 しばらく進む。俺が無人機を2体撃破した。

 

「無人ってすごい技術だけどさ。青衣を見ちゃっているからかな、IS自体に衝撃は足りないね。ばらしてみたいけどさ。

 それよりアリーナも面白いね。ダムとは違って面白そうだよ」

 

 技術者としては戦う内容よりも機械の中身の方が気になるらしい。にとりはいつの間にかスパナを持っていた。空いているもう片方の掌にぱしぱし当てている。

 

「にとり、外の世界に出たら消滅しかねないぞ」

「わかってるよぉ」

 

 にとりは河童、つまり妖怪だ。外の世界では迷信とされた為、存在できないので幻想郷が出来たのだ。

 妖怪なのに普通に出歩ける青衣が例外といえる。あれ、そういえば紫姉さんは学園長に会いに行ったな。どうやったんだ? そういえば二ッ岩マミゾウも最近まで外の世界に居たんだよな。今度聞いてみるか。

 

「思ったよりも格好良く無いです。それに小さすぎません?」

 

 早苗は少し不満そうだ。ロボット好きだからな。数十メートルの巨大ロボットを想像していたのだろう。間欠泉地下センターの真上に非想天則なんてものを作るくらいだし。正直、非想天則を初めてみたときは俺は驚きを通り越したが。

 

「そうだよ、何でこの無人機は来たわけ?」

「俺が知りたい」

 

 二人は俺を振り向くが、満足のいく回答など出せるはずがなかった。

 

「ISって誰か乗ってるものでしょ? そのコアも一人しか作れなくて、今あるのは番号管理されてんだろ?」

「そうだ。正規の物は全部管理されているはず」

 

 にとりが俺に確認をしてくる。

 

「じゃあ、犯人丸わかりじゃん。他にも作れるなら別だけどさ」

「普通に考えたら私の制作者、篠ノ之束ですね。唯でさえコアは貴重ですしこんな使い捨てみたいな方法は普通取れないでしょう。それに番号付きなんて失敗したら身元ばれますよね。実際失敗していますし」

 

 と青衣。俺も頷く。

 

「外の世界、何やってんだろ。特に篠ノ之束」

「私の悪印象を除いてもあの人を基準にすると流石に皆怒ると思います。何せ変人中の変人ですから」

 

 心底不思議そうなにとりへ青衣は返す。

 

「ま、そのうち何か返してくるでしょう」

 

 そしてにやりと笑う。

 記録では俺が一夏と鈴の二人と戦い、倒した所だ。

 

「この2人だけどさ、女の方は結構やるけど」

 

 にとりは少し顔をしかめている。

 

「男性の方、本当に突撃しただけですね。顔も良くて熱血ですけどリアルで見るとこれは……」

「辛辣ですね」

 

 早苗だ。確かに一夏は俺に突っ込んで撃墜されただけだからな。しかも零落白夜を使い続けたせいで半分自滅。辛口なのはしょうがないか。

 

「でも一夏はまだ訓練始めて1月程度だからな。まだこれからだろ」

「へえ」

 

 一応フォローをしておこう。

 今度は教室が映る。教壇で俺と青衣の自己紹介からだ。

 もちろんアリーナからの間はカットしている。全て再生する必要なんて無いし。

 

「織斑千冬ですか? ブリュンヒルデですよね? 世界を取った」

 

 早苗だ。世界的に有名なので、外の世界に居た彼女は当然のごとく知っている。ロボット好きの女だし、ISに興味があっても不思議はない。

 

「そう、その織斑千冬だよ」

 

 もっと有名な白騎士という単語もあるが彼女は知らない。話していないからだ。口止めされているわけではないが、吹聴する必要性も無いし。

 

「この織斑千冬と織斑一夏って姉弟? そっくりだね」

「その通り、姉弟だよ」

「ちょっと気になるんですけど……」

 

 にとりの質問と俺の適当な回答、最後は早苗だ。彼女は顎に手をやる。

 

「普通に考えて、弟の担任を姉がやるっておかしいですよ。学校が特殊ですから同じところにいるのは仕方ないとしても、普通ならその学年は外れるはずです。不公平になるからって」

「身内贔屓ってことかい?」

「そうです」

 

 にとりが早苗に顔を向ける。確かにそれはあり得る事だな。

 

「私が見た限りですけど、公平さなんて考えてないですよ。

 奥にいる山田先生、眼鏡の女性ですけどこの人が担任の方が良かったです」

 

 青衣がここで自身の感想を言う。そして次に俺に視線が集まる。

 

「俺は……この人の世界は弟中心に回っていると思う」

「贔屓ってレベルじゃないですよね、それって」

 

 早苗が少し驚いたように言う。何で? と顔に書いてあった。

 

「姉は多分無意識だな。

 弟の方は姉や皆を守るって言ってるし。悪い奴じゃないと思うが今日会ったばかりでよくわからん」

 

 これが一夏に対する本音。織斑千冬は白騎士事件の件もそうだが、こそこそ篠ノ之束に連絡しているのに知らないと言ってみたり、いまいち信用できないと思っているけどな。

 

「この篠ノ之って」

「篠ノ之束の妹です。箒と言います」

「ふうん、言ってることピント外れに思うけどね。周りが引いてない?」

「正直、今のところ箒が一番よくわからん」

 

 青衣の記録ではIS学園が発表した例のプリントが配布されたところだ。読み進める皆の顔がどんどん変わっていく。

 

「おお、こりゃ凄い」

「常識が壊された瞬間ですね!!」

 

 にとりはけらけら笑い、早苗は心底嬉しそうだ。自分も常識が壊れた経験があるからだろう。こいつの場合は主に勘違いという方向性だったが。

 少し進む。誰も青衣の言葉に突っ込まない。横にいる少し青衣は恥ずかしそうにしている。やがてクラスは解散。青衣は箒に声をかけた。

 

「伯母さんでいいじゃん」

「いや、俺と同い年。若いから」

 

 一言で乙女の悩みを切って捨てるにとり。

 今度は鈴の襲来。

 

「威勢良いね、さっきの娘でしょ」

「そのうちわかるけど意外と冷静さもあるぞ。中国の代表候補生だ」

 

 にとりの中でも鈴は高評価らしい。

 そして5人の女性至上主義者の来襲。

 

「IS動かせるだけなんですけどね。外の世界に居たときクラスで見ました、こんな娘」

「何かさ……同じ女と思われたくないんだけど」

「人間というだけで私は共通なんですよ」

「妖怪でよかった、のかな?」

 

 早苗とにとりも嫌悪感を持ったらしい。そして俺が能力を使用した事もあるが情けない姿を晒す5人。青衣の言葉、そして織斑先生が薄笑いを浮かべながら試合を強制する。

 

「何というかさ、迂闊だよねこの5人」

「IS操縦者憧れのブリュンヒルデは弟さんが可愛くて仕方がないんですよね。その前で彼を含めて男性を貶めるなんて何を考えているんでしょうか」

「喜劇でもここまでの流れは無いよ」

 

 にとりは心の底からおかしい様だ。早苗は呆れを通り越している。

 そして俺との試合開始前。アリーナのステージ上だ。

 

「はー、噂では聞いていたけどここまでなのか」

 

 噂とは外の世界で進む女尊男卑の流れのことだ。

 幻想郷では青衣がISである事と俺が操縦している事を知っている者も多いので抑え込まれているが、とっくの昔に考え方は入り込んでいるのだ。因みに外来人はこの事を知ると必ず衝撃を受ける。

 

「ISの操縦者はより酷いって言う事だけは追加しておきますよ。IS持ってもいないのにでかい顔をする者も多いですけど」

「ふうん」

 

 にとりの逆に感心するかの声と青衣の注意だ。

 そして試合は僅か41秒で終わる。

 

「あっさり」

 

 一言ですか。

 

「うーん、これは酷い。泣いてませんか? この人たち」

「そりゃ見下した相手にぼろ負けした挙句、味方からこの仕打ちじゃ泣きも入るさ」

 

 ハイパーセンサーでは丸見えなのだ。この時5人とも泣いていた。俺はいい気味だと思う反面、暴言を浴びせる観客に切れかけた。

 

「全員に喧嘩売ったんだ。やるねえ」

「後で怒られたけどな」

 

 にとりは俺を見てにやりと笑う。適当に俺は返した。

 そしてビットに戻り俺は青衣を解いた後、満面の笑顔を浮かべた更識会長に頬を思いっきり抓られる。

 

「この娘は?」

「更識楯無先輩。2年生でロシアの国家代表。IS学園内最強で生徒会長をやっている。

 俺も生徒会役員だから云わば上司だな。世話にもなっている」

「国家代表!! ロシアの!? 凄いじゃないですか」

 

 早苗は流石に驚きを隠せない様だ。

 

「緑兵とどっちが強いのさ。1回は戦ったんでしょ?」

 

 俺の顔を見る早苗とにとり。さて、どう言ったものか。

 

「ISの模擬戦は緑兵の2敗です。これは流石に無効試合になりましたけど能力を使った1戦では完封しました」

 

 横から青衣が口を出す。少し憮然とし、声も不機嫌だ。

 

「次こそは勝って下さいよ」

 

 俺を見てそう言う。少し怖い。

 

「お、おう」

「はい」

 

 頬を掻きながら言う俺に青衣は安心したかの様な顔をする。

 

「尻に敷かれてるね」

「いつもの光景ですよ」

「うるさい!!」

 

 俺は恥ずかしさの余り、にまにま笑うにとりと早苗に声を荒げた。

 因みに青衣の記録では俺が更識会長に説教された後、なぜか来たギャラリーが映し出されていた。

 そして記録は終了した。光は真っ白になっている。

 

「お? 続きの試合は?」

「無かった。誰も来なかったそうだ」

「男を認めたってことかい? そんな簡単に主張を変えるかなぁ?」

「いや、単に来なかっただけ。この後女性至上主義者来たし」

 

 その一言でにとりは大笑いを始めた。

 

「青衣、見せて、見せて」

「はーい」

 

 記録が再び再生を始めた。その生徒が食って掛かり更識会長、そして俺と青衣とのやり取り。そして俺と更識会長の睨み合いが始まった。

 

「やー、一日が濃密だね。毎日こうだと面白いだろうな」

「そんなにあってたまるか、こんな日」

 

 軽く伸びをするにとりに俺は返す。何せ事件から始まった一日だ。

 

「この後って何をやったの?」

「学園内を案内してもらって、飯食った。後で生徒会に顔を出したら別の先輩に愚痴られた。それで帰ってきたのがさっき」

 

 畳に転がりながらにとりは笑う。

 

「そういえば世間の反応はどうだったんでしょうか」

「出しますよー」

 

 小首を傾げる早苗に青衣は再度記録を再生させた。食堂で見たテレビだ。

 

「はー」

「反響すごいですね」

「女性しか動かせないって前提が狂ったからな。女尊男卑を正当化する根本が揺さぶられたわけだ」

「この日は歴史に載るかもしれませんね」

 

 確かにありえる。少なくても今年は織斑一夏の件もあるので記録される年になるだろう。

 

「ところで、幻想郷の事なんですけど」

 

 青衣が話題を変える。逆に幻想郷について聞くつもりらしい。俺は……特に聞くこと無いな。

 それから約一時間後、紫姉さんが様子を見に来るまで、女3人はひたすら喋っていた。

 疲れた。

 

 

 

 

 

「それじゃーねー」

「また会いましょう」

 

 早苗とにとりがスキマに送られる。その代わりに俺達と茶を飲むのは紫姉さんだ。

 

「俺達が帰る前からいたでしょ?」

「あら、わかった?」

 

 くすりと笑う。

 

「アオミドリが2組集まるのを見たらおかしくてね」

「……どうでもいいでしょう」

「まあね」

 

 青緑。青衣と緑兵の名前、そしてにとりの髪は青で早苗は緑だ。そういえば早苗の服は青を含んでいた。

 ただそれだけ。意味は全く無い。時々、考えることが分かりません。

 

「これ、さっき見せなかった一幕です」

 

 青衣は再度記憶を呼び出す。そこで俺はぼんやりしている一夏に近づくところだった。

 視界、つまり青衣は近くの監視カメラに向かい、止まると挑戦的に話し始める。

 

「……見ていたのかしら?」

 

 紫姉さんはすっと目を細める。

 

「私たちが無人機を撃破しましたからね、監視していると思いました。

 見ていなくてもそれで結構、見ていたなら表に出て来る可能性は上がるでしょう」

 

 紫姉さんは一つ頷く。

 

「やっぱり篠ノ之束の出方次第ね。こちらに従うとは思えないけど生け捕りが良いわね」

「出てきたら俺の亜空間に放りこむってのはどう? 一応独立した牢屋みたいなの作ってるけど」

 

 俺が提案すると、紫姉さんは少し考える。牢屋と言っても鉄格子ではない。出入り口も窓も無い6畳程度の部屋に簡易ベッドとトイレ、水と空気を引いただけの代物だ。

 

「まず無いと思うけど、空間ごと部屋が破壊されたらどうなるかしら?」

「亜空間内を彷徨うことになる。いや、その前に空気が無くなって窒息します。

 俺が気が付けば引き上げられるけど多分無理です。同じ部屋で24時間監視は難しいし、本当の牢屋みたいに壁か格子で区切るしかない。でもそうなると俺達が危険になる。相手は何をするか分からないし、多分ISも持っている。

 危険を忠告して後は放置? それこそ言うことを聞く相手かな?」

 

 部屋が破壊されたら暗黒無音、空気も重力も無い世界になってしまう。というか改めてみると俺の能力は結構怖くないか? 制御できるようになって、本当に良かった。

 

「無理でしょう。それにそんな部屋なら先に発狂しそうですよ、普通は」

 

 青衣は断言する。確かにそうだ。

 

「なら却下ね。殺す意味が無いし貴方達に危険が迫るのも喜ばしくないわ。絶対命令を安全に解除できる人物が消えることも痛い」

 

 紫姉さんが嘆息する。

 

「可能だったら適当に凹りますか?」

 

 今度は青衣だ。

 

「そうね。貴方も何発か殴りたいでしょ?」

「当然」

 

 獰猛な顔をする紫姉さんと青衣。ん?

 

「あ」

 

 そこで俺は思い付いた。

 

「どうしたの?」

「……今思い着いたんですけどね。人工物と生物を分ける亜空間って作れないかな、と」

 

 紫姉さんと青衣が顔を見合わせる。

 

「ISってどっちの枠になるんでしょうか?」

 

 青衣のふとした疑問。うん俺もそう思った。

 

「それが問題。意識が合っても体があるわけでは……でも待機形態なら人工物だけど。そもそもどうやって分ける? 意識の有る無しで空間では分けられないぞ」

「私は妖怪化していますからね。他のISは持ち込みたくないですし……学園から借りれますかね?」

「無理だろう、流石に。それに青衣が表に出たから、篠ノ之束は別の方法で体造るかもしれないぞ」

「生物兵器も考えられるわよね? 本人かそうでないか、私が境界で分けちゃいましょう」

 

 紫姉さんはあっさり凄いことを言う。

 

「いや、その前。捕まえる方が問題」

「緑兵、貴方の『倉』って生物相手に使えないの?」

「あ……」

 

 確かに『倉』の出入り口を閉じてしまえば内部の時間は止まる。そうやって保温し食料の腐敗を止めているのだ。事故防止のために俺は時間停止の例外にしている(そうでないと内部を作れないし)が他人はどうか? やったことが無い。

 今まで完全な倉庫として使っていて、生物相手にやったことが無い。だが食べ物の腐敗が無いと言う事は菌が繁殖しないと言う事で菌の時間も停止したと言うことだ。そして菌も生物、人間相手にいけるか?

 

「考える癖は付いたけど、頭が固くなったり視野が狭くなるのは良くない事よ。

 自分の特性をしっかり把握しておきなさい」

「わかった」

 

 確かに盲点だった。自分が良く使う能力を把握できていなかったとは。

 

「『倉』は今あるのを使いましょうか、新しく作っておかしくなったら嫌ですから」

「実験も忘れずにね」

 

 青衣の言葉に紫姉さんから追加される。

 実験か。犬猫みたいな動物ではよくわからないな。危険があるわけでもないしどうせなら人間の方が良いな。誰に協力をお願いしようか。それとも適当なのを浚うか?

 

「誘拐は厳禁よ。あなたの顔はもうすぐ知られるでしょうし空間転移もあるから怪しまれる」

 

 俺の顔に出ていたのか紫姉さんが止める。

 

「……神隠しの主犯が止めるのかよ。いっそ幻想郷から来てもらうとかは?」

 

 紫姉さんはため息を一つつく。あまり好ましくないことは確かだろう。

 

「幻想郷から来てもらった方が安心だと思います」

 

 青衣は同意した。早苗も来ているし。

 

「……確かに有りね。実験するだけだったらそんな変なことは起きないでしょう」

「了解。なら当分はやること無しか」

「あら、あるじゃない」

 

 はて、なにか忘れているのか。

 そんな俺を見て、紫姉さんは笑いながら言った。

 

「楽しんでおきなさい」

「了解」

「はい」

 

 そして紫姉さんが締めに入る。

 

「さて、二人ともよくやったわ。今日の動きでISに対する研究や見方に変化があるでしょう。

 今はしっかり勉強してしっかり訓練なさい。それと早目に寝るように。疲れているでしょう?」

 

 そう言うと紫姉さんは立ち上がり、スキマを開いて中に入る。そして止まった。

 上半身だけ出したまま、こちらを向く。

 

「そうそう、緑兵」

「何?」

「あの生徒会長に勝ちなさいよ。青衣の操縦者としてね」

「勝ちますよ」

 

 こっちもそう言うか。

 

「それじゃあ青衣、頼むわね」

「はい」

 

 くすりと笑って紫姉さんは消えて行った。後には俺と青衣が残される。

 

「風呂窯洗って、沸かしてくる」

 

 立ち上がり、体を軽く伸ばす。

 

「じゃあ私は片付けますね」

「ん」

 

 俺は青衣に待機形態を手渡すと、奥の風呂場へ向かった。

 今日は疲れた。さっさと寝ることにしよう。

 

 




最後まで読んで頂き、有難うございます。

幻想郷への報告回です。
感想に幻想郷メンバーとの絡みを見てみたいとありましたので、こんな風にしてみました。
早苗は元外の世界の住人、にとりはエンジニアということもありますので登場させました。
某兎の生け捕り作戦考案中。

ところで、何で千冬は一夏の担任なんでしょうか。

それとすみません。本気で感想が欲しいです。
内容が面白いのかつまらないのか、読みやすいのか読み難いのか、一切がわかりません。

次回の更新日も未定ですが、宜しくお願いします。

-追加-
気が付いた方もいると思いますが、緑兵の『拠点』他はスペースコロニーに近いです。
1から10まで設定が必要です。

-追加-
送り仮名の修正 一部修正 全体見直し 「待機状態」⇒「待機形態」
全体の改行修正 ご指摘の箇所を修正
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