後、ざっくりのはずが長くなりました。何故?
「保護者、あなたが……?」
「ええ、二人を育てた八雲紫です」
涙が止まった更識会長が戸惑いながら紫姉さんに問いかける。見かけは俺達と変わらない上、俺以上に不可解な現れ方だ。背後のスキマも開いたままで元も胡散臭いし、まともな人間にも見えないだろう。
スコーンという金属音と軽い衝撃が俺の頭を襲った。金タライである。いつの間にか俺の頭上にスキマを開けて落としたのだ。地面に落ちた金タライがぐわんぐわん音を立てていたが、直ぐにスキマに回収される。
「女の子を泣かせるなんて、しかも慰めもしないで何をやっているの!!」
背後にあるスキマの数が増える。
「あ、俺は……」
「言い訳無用!!」
もう一発。落とされる。
満足したのか紫姉さんは俺から視線を離す。学園長と更識会長は呆気にとられていた。
「紫姉さんとの何時ものやりとりですので、気にしないで下さい」
青衣は呆れたかの様に言う。
「お、おお、おお姉さん? 例の!?」
「そうです。俺達の育ての親、その片方」
完全に困惑した目で更識会長は俺達3人に次々視線を移す。
「えっと、どういう方?」
「唯の妖怪ですわ」
「よ、よう?」
あっさりとした紫姉さんの回答に更識会長は素っ頓狂な声を出す。学園長も驚いた様だ。説明していなかったの?
……そりゃそうか。胡散臭さが何倍にもなるな。
「私も分類上は妖怪ですよ。付喪神という道具の妖怪です。ISに意志はあっても道具ですからね」
「青衣ちゃんも!!」
知っている者がごく普通に妖怪と名乗ったことで更に驚きは増す。
「貴方は最初から意思があったから外に引っ張り出したのよ。話を聞きたかったし」
「それで意志を体として外に出す方法も教わりました。あとは自力です」
俺達の会話を聞いた後、更識会長と学園長は俺へゆっくりと視線を移す。何を考えているのか丸わかりです。
「俺は正真正銘の人間ですよ。プロフィールも調査の通り。どこを切り取っても人間以外出てきません」
「そ、そう。でも今の話なら妖怪が人間を育てたり教えたりって」
「いくらでもある話ですわ。有名どころでは牛若丸に剣を教えた天狗ですか。あいつは筋が良かったって今でも言ってますし」
「鞍馬天狗!! 生きて、いえ存在しているんですか!?」
紫姉さんの後半はぼやきに近い言葉に、更識会長は更に素っ頓狂な声を出す。
「長寿な者も多いですから」
「つーか、妖怪や神、妖精の寿命は有って無い様なものだろ」
にっこり笑う姉さんを俺は見る。外見は若いんだよね。あ、そういえば。
頭に再度の衝撃。また金タライを落としたらしい。
「女性の年齢を詮索しない」
「……ある奴が若造って言われたのを思い出したんだよ」
俺は金タライがスキマに吸い込まれる前に拾い『倉』へ放り込む。
「誰が誰に言ったのよ?」
「二ッ岩マミゾウ、狸の親分の。命蓮寺の雲山に若造って言ってた。
あそこの連中って地底、旧地獄や魔界に1000年は封印されていたろ。住職も命蓮の姉だしね」
「……あの狸は後で締めときましょうか」
「恨みを買わない程度にお願いします。以前に言った通りお願いすることもあるので」
全く、と言いたげな紫姉さんとフォローする俺。
「あの、命蓮……上人? 平安時代の? そのお姉さんは『尼公』でしょうか? 1000年位前の……人?」
おずおずと学園長が言う。流石、歴史や古文にも詳しい。
「姉の白蓮は生きてますよ」
「じゅ、寿命は?」
今度は更識会長だ。
「人間やめました。今は魔法使いという種族になっています。彼女も分類上は妖怪ですから寿命は無いです」
「というより命蓮寺は妖怪寺ですね。あそこの目的は弱い妖怪の保護と人間との共存ですから」
「そういえば青衣、お前は熱心に誘われていたな? 俺もだけど」
「緑兵は人間ですからね。私とセットで元人間の一輪とそっくり。男女は逆ですけど」
「そういえばそうかも。俺が妖怪化したなら種族はIS使いになるのか?」
「基本的に今と変わりませんね」
幻想郷トークを繰り広げる俺達に更識会長と学園長は固まったままだ。
「ところで、座り直しませんか?」
すっかり泣き止んだ更識会長の傍らで、ハンカチを差し出しながら紫姉さんは言った。
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さて、予定外の事になったので学園長の夫である轡木十蔵、そして虚先輩にも来てもらった。虚さんも更識会長の右腕としていろいろ動いているらしい。聞く権利はあるだろう。
生徒会室も施錠はしたが監視のために『窓』を追加しておく。虚さんは『拠点』に初めて来るのだ。驚く顔は初めて見た気がするな。
間違いなく、これからの話はもっと驚くことになるが。
二人の仕事はどうしたか? いないと疑われる?
いいや、こっちが重要。ここからは直接説明をしないと理解できない話だ。下手をすれば轡木十蔵は妻が錯乱したと考え最悪夫婦が離婚、虚さんもお嬢様が発狂したと言いだしかねない。
更識会長が移動し、轡木夫妻の横に更識会長と虚先輩が並び、紫姉さんは青衣の横だ。
幻想郷について俺達は一通り説明を行った。青衣の記録付きで。その成り立ち、何故人間がいるのか、妖怪や神、妖精がどういうものか等だ。
予想していたが説明は困難だった。だが理解はともかく此方の背景は納得してもらうしかない。
山の中にいる神々(秋姉妹)、空を飛ぶ天狗(射命丸文)や機械を弄る河童(河城にとり)、遊ぶ妖精たち(チルノ他)、ライブする騒霊(プリズムリバー三姉妹)、道具に足が生えた付喪神たち、一つ目やぬりかべ達が映し出されている。これは一例。明らかに外見からして人間ではない物も混じっている。
更に時代劇の様な人間の里の風景、人間と将棋を指している白狼天狗、春を告げる為に人里上空を回る妖精(リリーホワイト)、例の命蓮寺で行われた夏祭りや縁日、極めつけは各地の宴会だ。数々の種族が入り乱れた日常が映し出されている。
外の世界では聖徳太子と呼ばれた者の逸話を持つ豊聡耳神子、そしてかぐや姫が実在の人物でその蓬莱山輝夜が不老不死であり今も活動していると知った時の反応は文字通り『驚き叫ぶ』であった。叫んだのは普段は冷静な学園長だ。夫婦とも70近い老人と言っても良い年齢なのでそのままぽっくり逝くのではないかと心配した。
「人種のるつぼならぬ、種族のるつぼな世界ですか」
少し疲れたのか、ぐったりした様子の学園長夫婦。他の2人も似た様なものだ。
常識外の世界を垣間見たのだ、当たり前の反応ともいえる。
「そうです。貴方達が観測している世界とは表と裏の様な関係ですね。この幻想郷は科学技術によって『非常識』や『迷信』と排除された者が集う世界です。『常識』である科学技術に浸食された世界には絶対に観測できません。貴方達の住む世界の事を此方では『外の世界』と読んでいます。
私はその幻想郷を造り出し、今も管理している者の一人です」
「……」
紫姉さんの正体を知った4人は目を見開いた。そこまでの重要人物だと思わなかったのだろう。どう反応していいのか、完全に困り切っている。
「日本では明治より前は幻想郷へ訪れることが出来ましたが、今は特殊な条件が揃わないとできません。
日本以外の地域は解りませんが同じような『非常識』の排除が続いています。現に他の地域から来た者も多くがいます」
青衣が新しく映したのは紅魔館の外観と一部の内装。他とは建築様式が全く違うのでわかりやすい。そして宴会で俺達と一緒に騒ぐ吸血鬼達(レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレット)とメイド長(十六夜咲夜)だ。
「あ、メイド長は人間ですので」
「人間!! 他の子は外見でその、妖怪だって解るけど、何で?」
俺は訂正を加えておくが、更識会長は引っ掛かったようだ。
「単に紅魔館が気に入っているみたいです。因みに俺と同類、能力持ちの人間ですよ。他のメイドは妖精です」
「……七海君の様な能力持ちは、妖怪達と暮らすのですか?」
虚さんだ。眼鏡を直している。
「いいえ、普通に人間が集まる里や独立して過ごしている者が多いです。寧ろ俺達が例外ですね」
次いで映し出されるのは鈴奈庵で会話する本居小鈴と稗田阿求、他にも箒で空を飛ぶ魔法使いの霧雨魔理沙。
「俺の様に目覚めた場合も扱いはわからないことも多いです。俺はその典型と言っても良い。
後はさっきの住職みたいな元人間の妖怪や仙人等の世話になる者も多いです。能力にも後天的な物が多いですし、それを目指して弟子になるのが典型例ですね。
魔法使いが不老不死になるのは妖怪化するしかないですが、仙人は制約が付くけど人間のまま不老長寿になりますから。封印された期間があるとはいえ飛鳥時代から今まで生きている仙人を見れば解ると思います。修行を怠ったら死ぬみたいですが」
「こ、後天的……」
「どちらにしても修行は厳しいらしいので脱落者が大半の様です。他の妖怪に後天的になる方法もありますね」
ああ、頭がパンクしかけているな。ちょっと休んだ方が良いか?
「ちなみに、この二人は吸血鬼です。此方の方が姉ですが幾つだと思います? 口に出さなくても良いです」
今度は青衣だ。レミリアを指さしている。その口から出た吸血鬼という言葉に完全に凍り付いた。
「おーい、女性の年齢」
「この2人は公言していますから。
姉は500歳以上です。妹も5歳しか違わないので約500歳で問題無いでしょう。でも見ての通りまだ子供です」
金タライは回収しているが、多分まだ残っている。俺が年齢を言っていたら落ちていただろう。
「は?」
少し後、素っ頓狂な声を出したのは虚先輩だ。いつもからは想像が付かない声だった。幾つを想像していたんだろうか。
「ちなみに私はISとしては9歳、妖怪化してから数え直して7歳ですね。
映している記録は私視点ですから解りませんが、外見は全く変わっていない様です。妖怪は精神的な存在です。多分、私も100年やそこらで見た目はほとんど変化しないでしょう」
「命蓮寺の初期メンバーを出したらどうだ? 小傘以外は皆1000歳を超えているだろ?」
「そうですね」
金タライが落ちてきた。予備があったようだ。そちらも回収して『倉』へ入れておく。
次いで映される面々。雲山以外は皆人間なら10代で通じる容姿だ。
「ちなみにこの人が例の尼公、住職で大魔法使いの聖白蓮です」
それを見て皆ぽかんとしている。見た目は不思議な髪色をしたほんわかお姉さんだし。
「いきなり信じろと言っても無理でしょう。まずは休憩を入れましょうか?」
紫姉さんだ。4人とも疲れている。
「是非、そうさせて下さい」
虚先輩からすれば、いきなり俺に放りこまれたも同然なのだ。
「でしたら奥をどうぞ。俺はここで学園長室と生徒会室を見ていますから、何かあったら教えますよ」
結局監視は人力、結局は誰かが見ないといけない。式の作り方でも覚えるかな。いや、俺じゃあ修行不足か。
俺は青衣に本体を渡す。すると彼女は記録を消してぱたぱた奥へ向かった。本当、お茶を入れたりするのは大好きなんだよな。
「緑兵、適当にお菓子出して」
「ほい」
『倉』を開いて、煎餅の入った袋や金平糖、青衣の作ったクッキーを紫姉さんの前に出す。
「ありがとう、お茶は持って来るから待ってなさい」
「言ってくれれば適当に『扉』作るよ」
「駄目よ。効率は重要だけど相手の心も考えなさい」
「……わかった」
俺を見てにこりとする。
「では奥で用意していますので、落ち着いたら此方へどうぞ」
紫姉さんは奥に消えて行った。
俺と外の世界の4人が残される。
「いいお姉さんじゃないですか」
「……まあ、そうですね」
学園長だ。確かにそうなんだよな。
「全く、長生きはするものだ。頭は柔らかいつもりだったが……まだ整理はついていないがね」
「当然だと思います。非常識の世界をすんなり受け入れる方が異常です」
今度は十蔵さん。軽く笑いながら妻である学園長と共に立ち上がる。
「ISには……」
「はい?」
虚さんだ。一度ぽつりとつぶやいた後に此方を向く。奥に向かい始めていた十蔵さんと学園長も立ち止まり、此方を向く。
「ISには幻想郷の技術が使われていますか?」
「此方での解析結果なら言えますが、それが合っているとは限りませんよ? それに少し長くなります。休憩後の方がいいんじゃないですか?」
「平気だから」
彼女が頷く。
俺は自分の横に和室へ繋がる『扉』を開ける。『扉』と言っても今回のはサイズが小さい窓程度だ。これは『窓』と違い互いに筒抜けで出入りもできる。向こうで準備していた青衣や紫姉さんが此方を向く。
「あら、何?」
「ちょっとだけ説明追加するから」
「んー、解ったわ」
あっさりとした紫姉さんの声。声が届くように『扉』は開いたままだ。
「さて」
俺は虚さんの方を向く。各々座り直す。俺が青衣が居た席に座り、4人相手に正面を向く形だ。
「大体は虚さんの認識で良いです。ちょっと違いますが、説明には困らないので今は良いです」
「ISの仕組みをざっくりで良いから説明して」
「では簡単に。
まずISのコアに此方の技術が使われています。特殊な力を利用する為です。この特殊な力は魔力や霊力、妖力というのですが、違いは分からないでしょうし今回は言い方を全て魔力で統一させます。
この魔力は人間を含んだ生物が持ち、自然や空間自体にも含まれていますが外の世界の人間にはまず知覚できません。できたら非常識の世界に片足を突っ込んでいます。何せ魔法や妖術、俺達が使う能力の燃料みたいなものですから。
ISコアはこの魔力を搭乗者や周囲の空間から取り込むか、供給されたシールドエネルギーからISコア自身が生み出しています。コアはこの魔力をISのアーマーや武装に回しています。
此処までイメージはつきましたか?」
虚さんが一瞬迷った後頷く。更識会長、轡木夫婦も此方の声に耳を傾けている。
「ISには普通の攻撃が通じません。シールドや絶対防御等で保護されているからです。主にシールドはシールドエネルギーから、絶対防御は搭乗者の魔力を使っています。
このシールドにダメージを与えて壊すには微量でも魔力を含んだ攻撃でないと通じません。例え同じ武器でも魔力を帯びていなければほとんど無効化されます。
例えば唯の銃弾とISから発射された銃弾。どちらも同じ鉛玉ですよね? でもISの方しか効果は出ません。
単なる衝撃なら通りますが、外の世界の技術で緩和されますので有効な手にはなりません。これがISに対抗できるのはISだけとされている理由です。最もシャレにならないレベルで衝撃を与えれば別ですが」
こくこくと、虚さんは頷いた。何かこういう仕草はのほほんさんを彷彿とさせる。
「さて、シールドや絶対防御に似たものを此方では結界と総称しています。俺がISのシールドを解体できるのはその魔力を操り結界を壊す方法を身に付けているからです。搭乗者からの魔力を得ていると言いました。だから人が乗っていないと満足な結果が得られないです。無人機はまだ調べていないのでわかりませんが。
ここまでで何かありますか?」
虚さんは首を横に振る。何も無いらしい、続ける。
「その魔力ですが、物に与えますと特性を変化させる性質があります。何十年、数百年と時間が掛かりますが道具が魔力を溜め続けると独自の意志を持つことがあります。例えばおとぎ話やフィクションで意志を持つ剣とか道具がありますよね? 何で短期間でできたのかはわかりませんが、ISは殆どこの段階で独自の意思を持っています。
更に長時間かけて魔力を溜め込むか、誰かが強力な魔力を与えて物自体が自覚すれば身動きが取れ、別の体を持つこともできます。これが付喪神という妖怪で青衣もそうです」
「あ!!」
虚さんが声を上げ、4人が『扉』の向こうで鼻歌交じりに茶を湯呑に注ぐ青衣を見る。
「魔力によってISコアが意識を持った可能性はありますが、体を持つには至らないと思いますよ。管理されている時点で幻想はないし魔力が溜まる前に使ってしまいます。本来は時間も100年単位で使いますから。青衣は幻想郷に来たからこそ可能だったわけです。
青衣は魔力で自分の肉体を作っています。今は制服を着ていますが、本来は服なども作ります。更識会長や学園長は見ていると思いますが着物姿が基本です。
いいですか、魔力で作っているんです。逆に体を消すこともできます。制服を着た状態でもね。物質である服や手に持った道具ごと体を消し、本体に戻しています。だから唯の物でしかない制服を着た状態で本体から体の出し入れをすることが出来るんです。できなければ裸か着物姿ですからね。
ISの展開と量子化はこれに近いものと推測できます。発光現象もありますよ。青衣は慣れているので光らせずに一瞬で展開できますけどね」
俺の説明が進むに従い、皆の顔がどんどん驚きに変わっていく。俺が説明を止めたためか虚さんは一度頷いた。
「ISは自己進化をします。さて、人間にも魔力があり、魔力は物を変化させると言いました。ISコアが自分で意図的に搭乗者の魔力を読み取り、その搭乗者に合うようにIS自体を変化させるとしたらどうでしょう。
ISの自己進化はIS自身の学習能力と搭乗者の戦い方や魔力に合わせた物質の変質や新規作成、機能追加と考えられます。青衣はその自己進化を自分で認識しているので、他のISよりも早く精密に行うことが出来るんでしょう。
ところで、先ほど見た映像の者は自由に空を飛びまわっていたでしょう? あれもISに利用していますね。PIC、重力制御と言われていますが所詮後付けです。当然俺も生身で飛べます」
「本当ですか?」
学園長だ。何回目だろう、今日驚くの。
「本当です。空間転移以上に目立つので飛びませんが。生身で空を飛ぶことすら『非常識』です。
先ほど言ったことと被りますが、シールドエネルギーが切れると飛行を始め動けなくなるのは魔力を生成できなくなるからだと思います。絶対防御など最低限のものは搭乗者から、周囲の空間から取り込んでいるのは誰も使っていない状態や最低限の機能を持たせる為だと思われます。
外の世界ではエネルギーの供給程度は出来てもコアの解析はまず不可能だと思いますよ。なにせコア、ISの根本が『非常識』の塊です。ISは幻想と現実のハイブリットというべきものです」
「そう、そうなの。殆ど説明できるのね」
「残念ながら此方の技術ではできます。疑問も残りますが」
「そっか……」
どこかすっきりした表情だ。彼女は整備課、技術には関心が高く常々疑問を持っていたのだろう。
「ざっとこんなところです。
外の世界相手では幻想の技術が入っている為にほとんどダメージが届かず、空も自由に飛べる最強兵器。
幻想の世界相手では外の世界の火器が強力なので、生身で相手するには危険な攻撃力を持つ。しかも魔力を帯びている。
本当に厄介ですよ。単なる物質ならなんとでもなったんですがね。だから危機感を持っているんですよ、俺達は」
俺の言葉に虚さんが顔を引きつらせた。少しはISがどんなものなのか理解したのだろう。
「上がごろごろいるって、こういう事だったのね」
今度は更識会長だ。疲労感はあるがもう泣いていない。笑ってすらいる。
「冗談抜きに神話や伝説、歴史上の古強者が現役でいる世界ですから。上位には1000年超えの者すら珍しくない。
その辺は相性次第ですね。ISに対しても俺みたいに先手を取れば優位に立てる者もいます」
神や妖怪などは唯の人間が消えたら奉ったり畏怖を覚える相手が居ないので弱体化するのだが。そんなことは言わない。
「……本当、笑うしかないわ」
しょんぼりとなる。あ、これは不味い。また泣くかも。
「勘違いしているみたいですが、幻想郷のほとんどを構成するのは普通の……空も飛べないし俺みたいな能力も魔法などの術も無い外の世界と何ら変わりのない人間や唯の妖怪、力の無い妖精達ですよ。
例えば街中でISが大暴れをすれば大惨事ですよね。此方でも同じことが言えます」
「シャレにならないわ……というか唯の妖怪って?」
「座敷童とか喋る兎(妖怪兎)が殴り合いとかIS相手に戦うとか想像つきますか? 単なる力なら人間よりも弱い妖怪はいくらでもいますよ」
「なるほどね……」
自分たちと変わらない人間や弱い妖怪がいると聞いて一安心したらしい。
「とりあえず今は落ち着いてください。さっきみたいな事は勘弁です」
思い出したのか顔を赤くした更識会長を引っ張り、虚さんは笑いながら奥に向かう。俺は『扉』を消した。
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紫姉さんがお茶と菓子を器に入れて持ってきた。其方を向く。俺以外は和室だ。
「そっちの様子は?」
「学園長室も生徒会室も誰も来ないし電話も鳴らない。生徒会室は電気も消しているし留守だと思うだろうな」
おぼんから俺の前にお茶とお菓子を置く。お茶を手に取るが少し熱い。冷めるのを待つことにした。
「そう、ところで気に入った女の子が居たら浚って来ても良いわよ」
にやりと笑いながらとんでもないことを言いだした。楽しむつもりだな、これ。
「外の世界でも長丁場になると思うし、好きにしなさい。但し」
指を一本立てる。
「手を出しても良いけど責任は取る事」
「……何言ってんだ!!」
この言葉には流石に抗議した。
「あんな小さな子だったなのに、女の子泣かせるなんて大きくなったわ」
こっちの抗議はどこ吹く風、お盆を持ったまま器用に腕を組みうんうん頷いている。
「……当分ないから」
「子供の顔も見たいわね……」
「学園でやらかしたら大問題だ」
「えー?」
不満気な声を上げるが顔は笑っている。わかってて言っている。
「何なら学園長にでも聞いてきなよ。速攻却下されるぞ」
「つまんないわね……2、3人纏めて手籠めにする位の甲斐性見せなさいよ。此処もあるし監禁しちゃえば?」
「女の言うセリフじゃねえ」
「緑兵が真面目すぎるから言ってるのよ」
「そう育てたのは誰だよ?」
手に持った扇子をひらひらさせる。青衣の悪癖そのまんまである。
「それはそうと、和室にも『窓』を出せばよかったんじゃないかしら」
「居づらかっただけ。特に更識会長」
「泣かせちゃったしね」
「いい加減それから離れてくれよ」
「はいはい、じゃあ後で。私は向こうで和んでいますよー」
そのままふらふら戻っていった。
「何だったんだ?」
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10分程度経過し、皆が戻ってくる。
「こっちは何も動きが無かったですけど、技術的な話の続きと幻想郷の背景のどちらの先になりました?」
とりあえず声をかける。
「その話だけどね、技術的な話はもういいってことになったの」
更識会長だ。虚さんも頷いている。
「私達、これ以上知ってはいけない気がするもの」
「……まあ、賢明ですね。覚えても外の世界では変人扱いされるだけでしょうし。じゃあ、背景ということで」
「その前に質問を良いかしら?」
「なんでしょうか」
更識会長の質問、受けたのは紫姉さんだ。
「聞いた話や見た記録でイメージはなんとなくできたけど、異種族が仲良くなって子供とか生まれないのかしら?」
俺は隣の青衣と顔を見合わせる。
「霖之助さんは確か人間と妖怪のハーフだったよな。他に居たっけ?」
「慧音先生は確か半獣ですよね」
「慧音先生は後天性だよ。あれ、意外といない?」
「種族が違いますから子供が出来にくいと聞いています。それに妖怪は寿命が長いので親から子供が出来るケース自体が少ないですし。種族ごと例外もいますが。
何にしてもタッチしません。それに人間の里内部や各家、個人単位のいざこざまで関知できませんし」
青衣と話していると、紫姉さんが4人に言う。
「なるほど。それはそうですね」
納得した様だ。
「それで私達幻想郷側の背景ですが」
説明が始まった。
幻想郷に迷い込んでしまった外来人、外来人は誰かに保護された場合には外の世界への帰還か定住を選択することになる。急速に増える定住希望者とその理由。同時に入り込んでくる女尊男卑。
俺とISである青衣が居るせいで女尊男卑の広まりは抑えられているが、考え方は入ってしまった。そしてこれからも外来人が増える見込み。人口の問題もある。
昨日、ISの絶対命令や男性が動かせる可能性が高いことは発表されたが、ISが解放され誰でも動かせる様になるまでは実感も無く事実的には変わらない。
そして幻想郷の有力者、幻想郷から繋がる是非曲直庁、冥界、魔界、地底等の数々の世界にいるトップや各組織の有力者には女性が多くいる。実際に交流もあり、条件付きで行き来することも可能なのだ。幻想郷を介し更に広まることも、すでに始まっているかもしれなかった。
「……つまり私達の時間からすれば大昔から今現在まで、幻想郷や他の世界には女性の有力者は多くいるので元からバランスが取れていた。しかし一方的な女尊男卑が入り始め、各世界で危機感を募らせていると言う事ですか?」
「幻想郷はその認識で合っています。他の世界は危機感は持ち始めたと言うのが正確なところですね。
世界の裏側とはいえ幻想郷は地理的に日本、そして外の世界から一番迷い込みやすい場所ですから影響も最初に受ける。
私は他の世界の有力者達に話をつけ、この計画を動かし支援も取り付けています。緑兵と青衣はその実行者です。私たちが言いだした事ですから汗をかくのは当然でしょう?」
「話のスケールが大きすぎて頭が痛くなってきましたな」
「それだけ重大になりつつあると言う事です。杞憂で済めば御の字ですが」
学園長の確認と、此方の回答にため息を付きながら十蔵さんが言う。確かに話が大きすぎるのだ。
「ところで七海君は……」
再び学園長だ。
「緑兵が幻想郷に来た時に見つけたのは私達です。同時に青衣も入ってきたようですね。
例えるなら警報システムが異常を知らせたので行ってみたら緑兵とISコアが転がっていた、という感じですわ」
「それでそのまま拾っちゃったんですか?」
「ええ」
今度は更識会長だ。あっさり同意した紫姉さんに他の者も口をあんぐりと広げている。
「その後緑兵を見たら能力持ちだとわかりましてね。そのまま青衣と育てました。
本人の希望次第で、希望すれば外の世界へ戻すのが原則ですが、聞いた話と調べた結果が両親の事件です。人間の里という選択肢もあったのですが能力の危険性もあり手元に置くことにしました。
それに能力に目覚めた時点でコントロールが出来るまでは外の世界に返すという選択肢はありません。扱えるようになった後も事実上難しいです」
「何故ですか?」
「コントロールできなければ大抵は暴走して自滅か事故死、或いは発狂。
コントロールできても外の世界で使えば化け物扱いされ下手をすれば自殺か発狂、他の能力持ちと出会ってしまえば殺し合いになる可能性もありますね。何せ自分の能力を過信する者が多いですし、外の世界にも能力持ちや妖怪たちの集まりは今でもありますから」
息を飲んだ。前例がいくらでもあることはこの発言からも予想が付くだろう。
「後は今回の計画ですね、青衣の話と緑兵を見て思い付きましたから」
「ちょっと待って下さい。今回の計画の為に育てたんですか」
今度は学園長だ。待ったをかける。
「そうですね、認めますよ。その前に2人に話はしましたけど」
次いで4人は俺と青衣を見る。
「幻想郷に来て1年位かな、青衣のISアーマーが少しずつ組み上がったくらいで今回の計画について話がありました。やるかやらないか、やらない場合でも青衣関連からは手を引くだけで能力の扱い方は教えると。
俺はやると答えました」
「私の場合は篠ノ之束に恨みがありますしね。あっさり了解しましたよ」
「そうなりますと……6、7年前? そんな前から?」
虚さんだ。逆算をしたらしい。
「そうです。当時、女尊男卑の流入に頭を悩ましていたところ、青衣からISの絶対命令や篠ノ之束の話を聞いて唖然としました。
個人の我儘で外の世界のみならず、幻想郷や他の世界まで振り回す。これだから人間は恐ろしいと思いましたよ、本当」
当時を思い出したのか、紫姉さんは顔を軽く左右に振りながら言う。
「……」
外の世界4人、人間達は何とも言えない微妙な顔つきだ。大妖怪に恐れられた人間。喜んでいいのか悲しんでいいのか。
「今年を選んだのは何故でしょうか」
学園長だ。
「まずISの発表から10年目でぎりぎりだと思いました。IS学園も設立されましたし緑兵と青衣の成長を待ちました。
白騎士は直ぐに目星がつきました。弟がいて緑兵と同い年である事もすぐわかり、調べた篠ノ之束の性格から世界唯一の男性操縦者と持ち上げる可能性があったのであらかじめ今年に設定しました。
男性操縦者が見つかって大騒ぎなら、IS学園に入学させるのが楽だと思いましてね。事実その通りになりました。
ですので織斑一夏が世間に知れたその日に行きました。衝撃が大きかったでしょう?」
「そうでしたね」
そのことを思い出したのか学園長夫婦は苦い顔をした。ま、スキマを操る紫姉さんが現れたらビビるな、普通。
「話を変えていいでしょうか。どうしても解消したい疑問があるのですが」
「どうぞ」
虚さんだ。少し震えている。視線が集まり紫姉さんに続きを促される。
「織斑先生が白騎士なんですか?」
「そういえば言ってなかったわ」
更識会長が頭を抱えた。言ってなかったんかい。
「ごめん、後で話すから」
「……わかりました。
もう1つあります。何故ISに此方の技術が使われているのでしょうか。予想で良いです」
なるほど。此方は単純な疑問だろう。
「実際のところは解りませんが、篠ノ之束の実家はご存知ですか?」
「確か神社……あ」
気が付いた様だ。
「彼女は篠ノ之神社の長女です。篠ノ之神社は古くから崇められてきました。そこに何か残っていても不思議はないですし、実際に神が実体化して教えている可能性があります」
「ちょっと待って下さい。神が教える?」
虚さんは少し慌てている。幻想郷を見ても常識は簡単に捨てられない。捨てたら困るか。外の世界の人間なのだから。
「青衣、守矢神社を建物全体で映して」
「はい」
青衣の記録が再び出る。守矢神社の全景が映る。湖もだ。
「あれ?」
「どこかで? 見覚えが……」
その記録を見て声を出したのは更識会長と虚さんだ。学園長夫婦も何かに引っかかったような顔をしている。
紫姉さんには背後にスキマを開き新聞を取り出す。取り出した新聞をテーブルに広げた。神社が湖ごと跡形も無く消えてしまった記事だ。
「こ、この神社!!」
4人は新聞と記録を何度も見比べる。
「この神社は外の世界から幻想郷に移住してきました。祀られている2柱の神が外の世界で信仰が得られず、消失を待つだけだったので此方に引っ越したんです。因みに此処の風祝、巫女の様な者ですが彼女も能力持ちです。当然自由に空も飛べます。外の世界では使う訳にいかなかったみたいですけどね。
先の吸血鬼達もそうですが、自らの意思で移住してきた神や妖怪、緑兵の様な人間は相当数いますよ」
青衣が守矢神社の記録を追加で複数出す。その内の一つでは東風谷早苗が空を舞い、のびのびとしている様子だ。隅で俺も飛んでいる。
「青衣、これ何をしたんだっけ?」
「宴会の準備ですね。里に買い出しに行ったんですよ」
「何で俺、空間転移してないんだ?」
「飛んでいきたいって早苗がごねました。運動不足だって」
「思い出した。あったなそんな事。飛んでりゃ同じだって言ったっけ?」
「緑兵がいると物を持たないから楽とも言ってましたね」
「そりゃカロリー消費しないだろうって荷物持たせたな」
「文句言ってましたね。何のために来たんだって」
「じゃあ空間転移で終わったろって喧嘩したな」
いや、懐かしい。1年位前か。
更識会長は新聞を手に取り、虚さんと新聞に載っている早苗の写真と見比べている。
「ちなみに早苗は昨日遊びに来ましたよ」
「え!?」
「ロボット好きなんですよ、早苗って。だからISにも興味があったみたいですね。昨日戦った記録見せろってここに来ました」
「仲、良いのかしら?」
何故かジト目で更識会長は俺を睨む。仲がいいのは青衣の方なんだけどな。虚さんに窘められていた。
別の記録では神である八坂神奈子と洩矢諏訪子が映っているのだが、置いてきぼりだ。まあ良いだろう。
「そんな訳で実際に祀られる神が居る可能性もあります。私たちの目的はISの解析ではありませんから、調査をしてもあまり意味は無いでしょう」
「そういうことですか、わかりました」
納得した様だ。
「では他には?」
無い様だ。誰も話さない。
「でしたらこの位で。わからないことがあれば二人に聞いてください」
「あ」
俺だ。視線が集まる。
「学園長、すっかり忘れていたんですが」
「何でしょうか」
「織斑先生って結局、女尊男卑には肯定的なんですか? 否定的なんですか?」
前回、学園長室で話した事だ。大分時間が経った。
「否定的と言っていますが、一夏君の手前そう言ったという印象です」
「……そうですか」
どこまではっきりしないんだろう、あの人。
「織斑千冬って白騎士ですね。緑兵、青衣、あなたたち本心ではどう思うの?」
「欠片も信用していません。利用するだけです」
「同じく」
紫姉さんの問いに対する答えに、外の世界の4人が固まる。
「あの、理由を……」
学園長だ。確かに学園での人気は高いんだよな。評価もある。でも理由も何もないと思うが。
「俺達の視点ですが、白騎士事件を起こしておいて反省の色無し。ずっと隠してブリュンヒルデになって、篠ノ之束と連絡着かないと学園長の前で言いながら即日篠ノ之束に電話している。無人機戦も最終的には俺を呼び出しましたけど、遅い。直ぐに呼べって思いました。それに昨日、女性至上主義者5人が教室に来ましたけど、俺や青衣がごちゃごちゃ言われていても見ているだけで何もせず、『男』という言葉で反応し強制試合になりました。弟の一夏があの場にいたから怒ったんですよ。無意識だと思いますが。
性格は横暴。偉そうにしているけど山田先生に仕事は投げている。教師なんだから公平にしないといけないのに弟中心に生きている。今も女尊男卑の原因の片割れなのに内心でははっきりしない。下手をすれば裏切りかねない。
正義面で中立掲げておきながら自分の考え以外は受け付けない。白騎士事件の実行犯だし、嘘吐きなんだか無責任なんだか。
ざっと挙げてもこれ位です。利用するって決めてなかったら関わり合いになりたくない。
紫姉さんに解り易く言うと、嘘も騙しも逃げもする鬼です」
「なるほど、最悪ね」
紫姉さんはうんうん頷いている。他の物はフリーズしている。酷評過ぎたか?
「鬼って……」
「粗暴で強引だけど嘘つかないし約束は守る。だまし討ちだろうが何をしようが真っ向から来るしね、最後は呆れて地底に行ったみたいですが」
話の方向が違ったらしい。戸惑う更識会長に俺は返す。
ん? 萃香は『ちょっとは嘘言う』って言ってたっけ? まあ正直者なのは間違いないだろう。
「まるで知り合いに……いるのですか?」
虚さんだ。後半で顔色を変えた。
青衣が記録を出す。人間の里で酒を飲む伊吹萃香と星熊勇儀だ。当たり前だが周囲に人間もいる、というか俺、萃香の隣で飯を食っているな。勇儀は店のお姉さんが持ってきた酒とつまみを受け取っているし。
「外食してばったり会ったんだっけ? 確かこの後俺達、二日酔いになったな?」
「2人して動けなくなるのはこの日が初めてでしたね」
「そうだったな」
何かもう、外の世界の4人は何もかも諦めた様な顔をしている。鬼は刺激が強かったか。
「私の友人ですが。この2人も名前を言えばわかるかもしれませんね」
紫姉さんが追い打ちをかける。
「それはいいです。何かお腹いっぱいで……」
「なら、この辺にしますか?」
「そうですね。そろそろ居留守も限界でしょう」
紫姉さんと学園長だ。
「十蔵さんはどこへ送ればよいですか?」
「学園長室で良いですよ。近くに居ましたし他の人の見られる方が不味い」
「解りました」
行先が分からない十蔵さんに確認し、開けている『窓』の配置とサイズと調整して『扉』に切り替える。
「これで潜ればその部屋です。俺達は紫姉さんに少し話がありますので、終わったら生徒会室に飛びます」
説明会はこれで終わりだ。ああ、疲れた、精神的に。全員がばらばらに立ち上がる。
「七海君、青衣さん」
「はい?」
学園長だ。夫婦揃って疲労感はあるがどこかすっきりした顔をしている。やがて轡木十蔵が口を開いた
「若者に驚かされることが多いが君たちは極め付けだ。この年になっても現役で良かったと思う」
「お蔭でまだ死ねなくなったわね」
「八雲紫さん。また会いましょう」
「はい」
そういうと2人は一度頭を下げ『扉』を潜っていった。
「2人とも」
虚さんだ。疲労の色は濃い。
「今日はもう疲れちゃった。昨日と今日の分があるから明日は絶対来てね」
「……はい」
「では、失礼します」
すみません。原因の一端です。
ねえ、生徒会の人数増やしませんか? のほほんさんも呼びましょうよ。
生徒会室へ戻っていく。『扉』を消す。最後に残るのは更識会長だ。
「みっともないところ、見せたわね。お姉さんにも」
「気にしませんよ」
「溜め込まれるより良いです」
「まだまだ若いんだから失敗するのも勉強よ。気の良い者に頼るのも必要、女としても組織のトップとしてもね」
俺達の後、紫姉さんは少し笑う。
「そうですね。ありがとうございます。
またお会いしましょう」
そして更識会長が『扉』を通った後消した。
一息つく。俺達は椅子に座る。少し椅子をずらして3人で輪になる。
「それで緑兵、話って何かしら」
「ちょっと思いついたことがあってさ」
紫姉さんに俺の気になったことを話す。もしも害意あるISが幻想郷に入ってきた場合の話だ。
人間の里に住む上白沢慧音。通称慧音先生。寺子屋の先生でもあり、人間の里のご意見番でもあるので嘘ではない。
彼女はある異変が起きた際に、その能力で人間の里を守るべく丸ごと隠したことがあった。その為に一時的に幻想郷から人間の里が消えてしまったのだ。その力があれば仮にISが入ってきても何とか時間を稼げるだろう。
時間が稼げれば俺の様にISに優位に立てる者によって駆逐できる。場合によっては死を操る幽々子様が出ることすら約束している。根本的にはならないが、無人機にも使える対策になるのではないか。
「いけるわね。慧音に効果範囲と時間を確かめておくわ。他には?」
「無い。明日から仕事が山積みでどうしようかと思っている」
「じゃあこの辺にしましょうか」
「まだあるわ。2人とも今日の初授業はどうだった? ふざけた嫌がらせはされてないでしょうね」
後半は青衣ではないが殴り込みしかねない口調だ。
「何もありませんでしたよ。やはり5人相手の試合が効きましたね。寧ろ授業で緑兵のアドバイスが好評だった位です」
「何よそれ?」
ISの授業で起きたことをざっくりと話す。
「生徒に生徒を見させるなんてね。確かに教えることで得るものがあるけど。まあいいわ」
俺に剣を教えた魂魄妖夢だが、剣を教え始めたあたりから腕が上がったらしい。復習の意味があるのだろうか。
「さてっと、2人とも無理はしないでね」
紫姉さんは座ったまま、スキマを出現させ自分だけを吸い込ませる。何時もの通り2人だけになる。
「和室に片付けるものがありますので」
「手伝う」
湯呑などの食器類を片付けた後、生徒会室に戻った。
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虚さんが机でぐったりしている。たれうつほは博麗神社で見たことあるが外の世界でも見ることが出来るとは。
食事にしませんかと聞いたが、
「ごめん、頭がパンクしそうなの……」
そう言うと動かなくなった。原因は俺達にもありますね。
さて、携帯電話を持ち歩けと言われたので『倉』からカバンを取り出して携帯電話の電源を入れる。俺が緑、青衣は青だ。
やがて電子音が鳴る。俺にとっても青衣にとっても初の携帯電話だ。さてさて、2人して取扱説明書を見ながら少し弄ってみる。
なるほど、これは面白そうだ。でも何か違和感がある。違和感というのは大事である。しばし考える。
……ん? 何か足りなくない? 説明書、説明書。
……あ、コードが無い。充電はどうするんだ?
俺は電話帳機能で登録されていた更識会長に電話を掛ける。まさか人生初の携帯電話が『電源コードがありません』になるとは。
因みにこの携帯電話は生徒会室で虚さんから受け取ったことになった。俺達、表向きは学園長室に行ってないし。
最後まで読んで頂き、有難うございます。
ISに対しての独自解釈です。無理やり幻想をぶち込みました。幻想郷と他の世界に対しても同様です。
そして生徒会2人と学園長夫婦の常識もブレイクしました。
『道具に足が生えた付喪神たち、一つ目、ぬりかべ、座敷童、喋る兎(妖怪兎)』は東方の書籍から。鞍馬天狗は居ても不思議が無いだろうと勝手に。
千冬への酷評は緑兵と青衣視点では何一つ良いことをしていないから。
流石にまずいと思いましたが、しょうがない。彼らは見ていないんだから。
話は書けたがタイトルは決まらず、やり直し。
幻想の世界、幻想の日常、現実の中の幻想、ISの幻想、幻想のひとかけら、幻想の端末、幻想のサテライト等と次々変化。
サテライトは「本体から離れて存在するもの」の意味として幻想郷から離れている緑兵の『拠点』を示しています。
再度書き溜めていた分が無くなりました。元は2話分で長くなりましたし。
次回更新は未定です。
何かありましたら感想をお願いします。
-追加-
かっこの修正 人口について追加
発光現象について修正。
全部説明可能にも読めるので一部修正。