幻想のIS   作:ガラスサイコロ

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20_千客万来の休日

 話は学年別トーナメント4日目、つまり俺達が出た試合の翌日まで戻る。

 夜、寮にある部屋で、備え付けのパソコンを見ながら俺と青衣と唸っていた。

 一夏とシャルロットのタッグを相手にした試合についてIS学園から借りた記録と青衣の記録を比較して改めて考えた。

 俺の攻撃がパターン化している。これをシャルロットに読まれたのだ。

 接近戦は得意だ。妖夢先生から習った剣には二刀流が最初から含まれている。一刀流はともかく二刀流は普通の人間が扱える代物ではない。剣を扱う才能と技を使いこなせる身体能力に恵まれた者だからこそ扱えるものだ。俺はどちらも欠けているが青衣という相棒と二人で可能になる。

 中距離や遠距離はどうか? ニードルレーザーや弾幕、スペルカードの再現を使用しているので問題ないレベルではあるだろう。青衣の性能なら、だ。

 問題なのは命中率だ。1月ほど前に更識会長と虚さんに指摘された面がモロに出ているのだ。俺はニードルレーザーの命中率だけを考えていた。弾幕はそもそも命中率など考えていない。弾幕は相手が自由に動ける空間を奪い、シールドエネルギーを削る代物だ。

 とはいえ剣やオプション、ニードルレーザー以外の武器を積むにしてもどうするべきか。過去に青衣が作り『倉』に保管したものを漁ったが、取り立て良い代物があるわけでもない。使えそうなのは精々槍や鞭、遊び半分で作った蛇腹剣位だ。だが弾幕をばら撒いているのもあり、しっくりこないのだ。バススロットの問題もある。

 今回使わなかったが実は鉤爪は射出が出来る。二度目は通じない一回こっきりの切り札だ。

 考える方向がおかしいな。武器が変わっても攻撃パターンに変化は無いだろう。相手の人数と距離に応じた方法なのだ。弾幕だけで圧殺出来るならそれで終わる事でもある。他人のやり方を参照してみるか? 何せ見本には困らない場所にいるのだ、俺。

 さて、どうするか。青衣と二人であーでもない、こーでもないと頭を悩ませていると携帯が鳴った。『織斑千冬』と表示されている。何だろう。

 

「七海です」

『織斑だ』

 

 相変わらず不機嫌そうだ。ん? 電話だと毎回こうだが癖みたいなものか?

 

『お前達、学園長との話の後に予定はあるか?』

 

 学年別トーナメント後、最初の休みの午前中に時間を取ってもらった。VTシステムの件もあり忙しいだろうに。

 

「夕方からありますが、どうしました?」

『来週、臨海学校があるな』

「ありますね」

『お前達、水着は持っているのか?』

「買いに行く予定です」

『ラウラが一夏と服や水着を買いに行く。追うから協力しろ』

 

 そういえばシャルロットがそんな事を言ってましたな。学園長との話があるから断ったけど。

 それにしても、弟と教え子の尾行ですか。まあ、ラウラは俺から見ても急に可愛くなったが。

 

「他の連中も一緒ですよね? 俺達も誘われましたが学園長との話し合いがあるから断りました」

『……お前も酷い事をするな』

 

 酷い?

 

「出発時間が被ったんだから仕方ないでしょう? 先約があったんですから」

『まあそうだが、お前の空間転移なら』

「向こうで騒ぎになると思いますけど。学園や生徒はもう慣れたみたいですが。精々駅までですよ」

 

 IS学園は半径数キロ程度の人工島、メガフロートにある。一夏達が行くショッピングモールは島の外だ。単なる空間転移なら空間支配の範囲外だが、メガフロートの端まで行ってもう一回転移すれは出来る。繰り返せばショッピングモールにもたどり着けるだろう。『扉』や『窓』の併用は見せる気が無い。どちらにしても目立つ。

 向こうは唸っている。そんなに一夏が気になるのか。何かないか?

 

「……要は時間を短縮して追いつきたいんですよね」

『そうだ』

「俺、学園長の送り迎えしましょうか? 正確な場所がわかれば空間転移で行きますよ。そうすれば時間を少し前倒し出来るんじゃないですか?」

『そうか、その手があったか』

 

 学園長の家は人工島内、車で少し離れたところにある。行ったことは無いが、住所も紫姉さんから教えて貰い知っている。寮の部屋には支給されているパソコンもあるので場所を割り出すのは可能だ

 

「どうせ俺達は何時もの時間に起きてます」

『学園長に掛け合ってくる。お前達も来い。臨海学校は来週だ。それとデュノアに連絡を入れておけ』

 

 そうして電話は切られた。

 少し経ち、織斑先生から30分前倒しにする連絡が入った。その時間に学園長を迎えに行けば良いらしい。

 ふう、と一息ついていたところ青衣にシャルロットに電話しろと突っつかれる。確かに一度断っておきながら現地で鉢合わせたら妙な話になる。予定が早まったから現地で合流するかもしれないと連絡した。

 それにしてもブラコンめ。学園長の予定まで変更させるとは。

 

 

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 学年別トーナメント明けの休日、学園長室で青衣は寮長室で話した時の記録を再生させた。内容は第二回モンドグロッソで起きた一夏の誘拐事件と織斑先生の引退理由、俺の出した復帰案、最後は青衣が喧嘩を売った事だ。引退理由は初耳なのだろう渋い顔だ。

 VTシステムといいまたドイツか。そう顔に書いてある。

 

「織斑先生の復帰ですか……」

「はい。それで束に命令解除の依頼を出そうかと考えています」

 

 織斑先生の返答に学園長が唸る。

 復帰が成立すれば、ロシアの国家代表でもある更識会長はモンドグロッソで最強の相手が出来てしまう。だが更識会長なら受け入れるだろう。その辺は心配していない。

 

「一夏さんの誘拐については犯人は不明、ドイツでは捜査どころか誘拐事件自体を無かったことにしている可能性も有りますね」

「あり得る話ですね。発表しても否定するでしょう」

 

 青衣の言葉に学園長が同意する。

 

「正直、篠ノ之博士かドイツの関係者に調べて貰わなければ解決できない話ではないでしょうか」

「ええ」

 

 学園長のいう事が正論だ。内部を探れる者でないとわからない。

 

「それと……実は今度の臨海学校で束が何かするかもしれません」

 

 織斑先生は同意しつつ、さらっととんでもない事を言い出した。驚いて全員で彼女を見る。

 

「篠ノ之……箒に誕生日プレゼントと言っていました。箒の誕生日は7月7日と日程が被りますから直接現れる可能性もあります」

 

 おいおい、それはまたとんでもない話だな。篠ノ之束が、世界中のお尋ね者が現れるってか? 理由は妹へのプレゼント?

 

「その時に捕獲して良いですね?」

 

 俺は織斑先生に向かい、言う。

 

「説得するから待ってほしい」

「そんな悠長な事を」

「そうですよ」

 

 俺と青衣の反論だ。

 

「最初は説得する流れだろう? 現役復帰の話をすればどうなるかは解らない。下手なことをすればへそを曲げるかもしれん」

 

 それは有り得る話だ。

 俺は学園長を見る。彼女も頷いていた。

 

「向こうが何かしてきたら容赦なく倒します。それで良いですか?」

「構わない」

 

 しかめっ面の青衣が言う事に織斑先生が同意した。

 

「青衣がいいなら俺もいいですが。でも」

 

 俺としては目的が第一ではある。だが自然と大きなため息が出てしまった。俺に視線が集まる。

 

「何か起きる気がするんですよね。クラス代表戦の無人機に学年別トーナメントのVTシステム、それに臨海学校でプレゼントの内容も気になります」

「確かに」

 

 青衣が俺に同意する。顎に手を当てながら呟く。

 

「今の秩序を乱しにきた私達が言うのも何ですが、平和が一番です」

 

 皆、苦笑いだ。懸念というか、何かとてつもない規模で馬鹿げた事が起きる気がするのだ。

 

「警備を増やしても……篠ノ之博士相手では無駄ですね。学園に残る者を考えると好ましくない」

 

 学園長が言えば警備の調整は出来るだろう。だが篠ノ之束がISに対して絶対命令を持つ以上、例えば国家代表である更識会長に臨海学校に参加してもらってもISを使えば無力化される。それに臨海学校の期間は教師陣も機体も何割か減ってしまうのだ。IS学園の警備はそれだけで半減する。

 

「警備については少し考えましょうか、他に何か?」

「ありません」

 

 何か指示をするかもしれないが、俺達はこれ以上動けない。これで解散となった。適当な挨拶後、学園長室から退出する。

 

「さて、これから山田先生と合流した後、直ぐに行っても構わないか?」

 

 ドアを閉めた直後に織斑先生がこんなことを言い出した。一夏が気になるのだろうが急かし過ぎである。

 

「制服姿じゃあ目立ちますよ? 着替えないと」

「青衣、お前は目立つ。どうせあの面子で目立たぬわけがない。別にかまわないだろう?」

 

 青衣の言葉にあっさり返す。ちょっと想像してみる。

 一夏にシャルロット、ラウラが行っているはずだが、オルコットや鈴、箒も聞いていたのだ。多分張り込んでいるだろう。確かに目立つ。あれは全員目立つ。しかも挙動不審かもしれない。

 まあ、制服は夕方の用事で使う。その時に着替えるのも面倒だ。

 

「……バッグ位は取りに行きますよ」

「仕方ないな」

「そう言う織斑先生の荷物は?」

「職員室だ。準備が終わったら来い」

「了解」

 

 そう言うと彼女は俺達に背を向けた。

 

 

 

 

 

 職員室で合流後、最寄駅まで空間転移してモノレールで移動する。駅前に転移してもいるのはIS学園関係者か関係者相手に商売をしている者が主体だ。話を聞いている者も多く、驚かれるだけでそれ以上は無い。

 それと山田先生、毎回感激するの止めてくれません? 慣れて下さい。

 

「慣れろ? 無茶を言うな」

「そうですよ」

 

 口に出ていた様だ。確かに俺基準に考えていました。

 さて、始発駅で中途半端な時間の出立という事もあり人はまばらだった。モノレールは既に到着していたので乗り込み4人で並んで座る。

 

「そう言えば七海」

「はい?」

 

 端に座る俺にもう一方の端にいる織斑先生が声を掛けてきた。俺の隣にいる青衣、更に隣の山田先生も俺の方を向く。

 

「お前、箒に勝ったと聞いたが本当か?」

 

 試合何てやったっけ?

 

「武道場の件でしょうか?」

「そうだ。タッグ発表後の件だ」

 

 俺の困惑が解ったのか、隣にいる青衣が回答する。その隣にいる山田先生は初耳らしい。驚いていた。というより何で織斑先生が知っているんだ?

 彼女は俺を見てにやりと笑う。

 

「箒から聞いた。お前の剣について興味があるらしい」

「俺のは御大層な代物でもないですよ。先生が居て教わりましたけどね、その先生の様に人生掛けているわけでもない」

「だが箒は負けたと言っていたぞ」

「箒が方法を間違えただけです。自分の土俵ではなく俺の土俵に来たのが悪い。でなけば俺は負けていたでしょうね」

「ほう、土俵か」

 

 非常に楽しそうにしている。

 

「ところでISでは二刀流を使っているな?」

「使いますが何か?」

「日本の剣術では余り見ないな。箒を相手にした時も柄を相手に向ける独特な型だと聞いた。それにお前はその体格で二刀流に慣れ過ぎている」

「単に余り見ないだけでしょう? それに両手に一つずつ持って使う武器何ていくらでもありますよ。別に剣だけとは限りません」

 

 確かに二刀流を基本や重視している流派は少ない。もともと冥界の半人半霊が使う流派だ。

 とはいえ絶対無いかと言えばそうでもないし、武器が異なれば条件は違う。使ったことは無いがトンファーやサイ等もそうだろう。

 

「単なる興味だ。気にするな」

 

 そういうと織斑先生は妙に機嫌良くなった。俺は青衣や山田先生と共に奇妙な感覚に陥った。

 

 

 

 

 

 ショッピングモールに着いた。連絡を取ってシャルロットのいる店で合流する。一夏とラウラを含めた3人は既に水着を購入したらしい。

 俺は適当な水着を取った。サイズが合っていれば十分と思ったが青衣とシャルロットはデザインはしっかり選べと言う。

 

「緑は外せないかな? 名前的に」

「シャルロットさん、此方の黒が入っているのはどうです?」

「うーん、少し暗いかな? こっちは?」

「白だと汚れた時に目立ちますよ。いっそ緑は気にしないようにしましょうか」

 

 妙に張り切っているらしい二人と、それをほほえましげに見ている教師二人、ラウラは一夏と一緒に入れれば十分みたいだ。

 

「おい、安いので十分」

「そんなに変わりません。しっかり選びましょう、ねえ?」

「そうだよ」

 

 そのまま二人に押されてしまった。確かにこれから夏になると言うのに何故か半額シールが貼ってあるからという理由で手に取ったのは不味かったか。結局、膝くらいまである丈の長いトランクスの水着を買った。色は青と黒、ISとしての青衣と同じ色である。紙袋ごと持ってきたバックに入れた。

 次は青衣だが、此方はとんでもなく時間が掛かった。

 さて、俺は青衣の待機形態を身に付けている以上、離れることはできない。女性の水着売り場で精神をすり減らしていると、軽く笑いながら織斑先生がやってきた。

 

「女の買い物は時間が掛かる、良く覚えておけ」

「……良く知ってます。皆、そうなんですね」

「ああ。気に入ったものが見つかるまで離れんぞ」

 

 それからしばらく経つ。ようやく決まったらしい。青衣はシャルロットを連れて買いに行き俺も同行する。そういえば一夏とラウラはどうしたのだ? いつの間にか消えていた。

 さて、どうするかと思った時、俺は妙な気配が漂っている事に気が付いた。『空間を操る程度の能力』を発動させ、事態を知った。

 傍らにいた織斑先生も怪訝な表情を浮かべている。そんな様子を見てやってきた山田先生は不思議そうな顔をしている。

 

「どうしました?」

「囲まれてる」

 

 織斑先生以外の全員が息を飲んだ。

 

「囲まれてるって……?」

「そのまんまの意味、かなり離れているが複数が俺をしっかり見ている。こりゃあ良くない方向だな」

「え!?」

「俺達は離れるが……いや、逃げた方が良いか?」

 

 シャルロットと山田先生は少し慌てる。織斑先生も連れて空間転移した方が良い気がする。

 何人かいる相手も俺達が感づいた事に気が付いたのだろう、殺気というほど強くないが悪意が増す。

 

「一夏達と一緒の時を見られたかもしれない。目当ての俺が居なくなったら……一夏に目が向くかもしれないな。居ないのも気になる、どうします?」

「ふむ、お前はどう考える?」

 

 隣にいる織斑先生に聞くが、彼女は俺に投げる。

 

「青衣は俺が合図したら体を消す。3人は空間転移で別の階に逃がすので一夏とラウラを見つけて下さい。

 シャルロットは最悪、専用機を使ってくれ。

 俺はもう一回ここに戻って連中をおびき寄せます」

「それじゃあ目立ち過ぎるな。私が七海と一緒に迎え撃とう。山田先生はデュノアと一緒に一夏とラウラを探して下さい」

「任せるんじゃなんですか?」

「そう言うな」

 

 織斑先生は実にごく自然に流す。シャルロットと山田先生は不安げだ。というよりも一夏が心配ではないのか?

 

「ラウラも同行しているだろう? それに二人とも専用機も持っている」

 

 なるほどね。一夏は経験が無くてもラウラは軍人、ある意味本職だ。

 

「言っててもしょうがない。二人は後ろに行って下さい。後、上の階には居ないですから適当なエスカレータか階段で行って下さい」

「う、うん」

「何かあったら電話する。とりあえず一夏の携帯を鳴らして合流して」

 

 二人は俺の指示通り奥に消えて行った。やはり眼中にないらしい。遠回りまでして相手する気はない様だ。完全にスルーされた。

 

「俺達も移動しますよ。店や人がいない所が良いでしょう」

「そうだな」

「それと織斑先生、青衣に荷物を渡して下さい。一緒に本体へ格納してもらいましょう」

「わかった」

 

 青衣と織斑先生を伴い移動する。『空間を操る程度の能力』の探知を頼りに店が少なく人がいない方向へ向かう。行ったり来たり、最後に角を曲がる。ショッピングモールの端、今は人がいない場所に着いた。案内板によると駐車場を繋ぐ廊下らしい。俺と織斑先生は荷物を青衣に渡す。手ぶらの方が良い。

 

「前から走って来るのが3人、後ろからも3人。後30秒ってところです。青衣」

 

 俺の合図で青衣は荷物ごと体を消す。

 

「後ろから来た連中の、更に後ろに回り込みません? 不利な状況にする意味なんてないですから」

「ほう、面白い」

 

 俺は織斑先生を伴って、後ろから追ってきている3人の少し後ろに転移する。丁度、角だった場所だ。追手は既に通り過ぎた後なので見えない。

 買い物帰りの客が数人と店員がいた。突然現れた俺と織斑先生に戸惑うような声を出すが、俺達は前に行かない様に警告を出しておく。異様な空気は伝わったのだろう。あっさり従ってくれた。

 さて追ってきた者達だが向こうで鉢合わせたのだろう、互いにミスを罵り合う様な声が聞こえた。ヒステリーも起こしている。声からすると若い女から中年まで居るな。

 俺達を探すことにしたのだろう、此方に向かい走る足音が聞こえて角から一人の若い女が現れた。

 俺を見ると同時に声を張り上げ女性用のバッグから大きめのナイフを取り出し、悲鳴を上げてその場で崩れ落ちた。

 惜しいね、距離は10メートル程足りなかった。後ろにいた客はナイフを見て騒ぎ出す。

 正面の角から刃物を持った女が追加で2人、呻いている者を押しのけて走ってくるが直ぐに同じ目に合う。転倒し悲鳴を上げたまま芋虫のごとく這いつくばった。

 更に追加でやってきた2人も同じ。倒れている者に重なる。潰された者が痛みで悲鳴を上げた。これで5人。後1人。

 

「七海、お前何をやった!?」

「いつもの空間転移ですよ」

「何?」

 

 織斑先生が怪訝な顔で俺を見る。俺は懐から大きめの小銭入れを取り出した。緑色のがまぐちで、かえるのような装飾がありなかなかコミカルなデザインだ。中には1円玉がびっしり詰まって大きく膨れている。

 普段はバッグに入れているが、移動しながら取り出しておいた。俺が軽く振ったため中の硬貨がチャリっと音を立てた。

 

「連中の両手両足を目掛けて硬貨を何枚か転移させました」

「……そうするとどうなる?」

「空間転移で飛ばしたものが転移先のものと重なると内部に入り込みます。しかも物性問わず最優先でね。今は手足の中に硬貨が埋まりました。骨を砕いて肉は断ち切ります。

 紙切れでIS装甲の素材も斬り飛ばせますよ。ISのシールドみたいな結界が施されているなら少し変わってきますが」

「そ、そうか」

 

 彼女は俺の説明に引いている様だった。

 今回はやらなかったが周囲の空気も転移させることはできる。だがそれを使うと、血管内に空気が入り込み死ぬことが有る。そこは自重している。

 

「硬貨を弾丸にするから持ち歩いても自然で安上がりですよ。それに流通している物ですから綺麗ではない。直ぐに手術して処置しないと化膿します」

「下手な銃よりも強力な代物だな、それは。仮に頭に打ちこんだらどうなる?」

「死にますね。仮に生き残っても脳に大ダメージがあるでしょう。人間相手ならこれで十分です」

 

 がまぐちを軽く振り、再び中で硬貨が擦れる。音を聞いた織斑先生が唾を飲んだ。

 人間相手と幻想郷のノリで言ってしまったのだが気付かれなかったか。ちなみに唯の硬貨では単なる物理攻撃なので妖怪などを相手するには効果が薄い。

 

「で、そこの人はどうする? 此方に来て同じ目に合う? 投降する? 隠れていても撃てるからな」

 

 角で此方を伺っている女に警告すると、ゆっくりと正面の角から現れた。それなりに整った顔立ちで化粧をしているが今は般若の様な顔つきなので台無しである。丸腰でバッグのようなものも持っていない。

 

「お前は……」

 

 その般若を見た織斑先生が反応をする。知り合いなのか?

 

「直接は知らん。だが元日本の代表候補生だ。名前は何と言ったか……」

「ブリュンヒルデ、名前は言わないで良いですよ。男なんぞに覚えて欲しくない。名前が腐る」

「へえ? じゃあAでいいか」

 

 向こうは汚物を見るような目で此方を見る。俺もそんな目で見ているので何も言わない。

 

「貴様、何故こんなことをする」

「何故? 貴方こそ正気ですか?」

 

 織斑先生が女に問うが、それは愚問だろう? これで正気だから目も当てられない。

 

「男が動かせるISを認め、IS学園に入学させるなんて正気の沙汰とは思えません。しかも絶対命令が存在する? せっかく女だけしか動かせないISを汚物以下の役立たずに扱わせるようにするなんて」

「そのISが女しか動かせないのが異常なら直すべきだろう? 狂った世の中もだ」

「狂った? おかしなことを言いますね、せっかく篠ノ之博士と貴方が世の中を正常化したのに。それを裏切るなんて本当に狂っているんですね、どうかしています」

「貴様……」

 

 Aの発言を信じられないような目で織斑先生は返す。Aからすればブリュンヒルデは自分たちの旗印みたいなものだろう。一方的な味方意識があるなら一方的な裏切りと感じても不思議はない。

 

「ISもどき、不良品以下の屑鉄。そんなものに存在価値は認められない」

「正気か!?」

 

 そしてAは右腕につけた腕輪を見せつけるように掲る。ISだろう。その意図を察した織斑先生が叫ぶ。

 

「ああ、ブリュンヒルデはどいていてください。いくら貴女でも丸腰でしょう? あれは私が粛清します。この本物のIS」

 

 織斑先生はISを所持していない。故に何もできないとAは勝ち誇るような、見下した薄ら笑いを浮かべながら打鉄に似たISを纏った。

 

「で」

 

 Aは馬鹿である。己とISに酔っていた。

 展開速度は十分速かったのだ。だが、手に持ったアサルトライフルも見せつけるように掲げていた。見た目はカッコいいけどね。

 Aが展開したと同時に俺も青衣を一瞬で展開、Aの真後ろへ空間転移し、口を動かしているAを引っ掴むと再度転移した。新作の亜空間へと。

 

 

 

 

 

 ISはISコアから魔力の供給を受け、その魔力を使い飛行を始め驚異的な性能や、シールドや絶対防御と呼ばれている結界を展開している。それが俺達幻想郷側の見解だ。現に俺は接触することで結界を破壊し、シールドエネルギーを削ぐことが出来る。学園で見たISは全ての結界(シールド)は同じ造りなので外の世界に来て以降研究はしていたのだ。

 早い話、魔力生成を阻害、或いは外部から吸収できないかと思った。この亜空間は試作品だ。シールドからシールドエネルギーを通し、魔力を空間全体に発散させている。

 

「な!! 何が!!」

 

 Aは泡食っている。

 ふむ、ISのシールドエネルギーに少しずつダメージを与えているがそれだけだ。改善は必須だが今は成功と思って良いだろう。

 この亜空間では幻想郷にいるそれなりの使い手相手には全く通じず、あっさり防がれる程度の代物でしかない。だが外の世界に居る常識に縛られた物には十分だ。特にISが何なのか全く知らずに天狗になっている者には悪夢だろう。現にAは何が起きたか理解していない。

 更に俺には『空間を操る程度の能力』もある。すでに使用し、Aは空間に固定され何もできずにいる。以前に更識会長相手にやった事と同じだ。

 少しでも効くことがわかった以上はもう不要だ。妖術や魔法、封印の本職たちにこの結果を伝えてIS対策を進めることにしよう。

 慌てふためくAに対して俺はオプションから弾幕を発射させた。ISのシールドは殆ど役に立たなくなっている。悲鳴を上げる相手に少し撃っておしまい。

 この亜空間の名前は何にするかな?

 

 

 

 

 

 ISを破壊されたAと共にショッピングモールに戻る。俺達が消えたから10秒程度だろう。Aが地面に叩きつけられ、潰れた蛙の様な悲鳴を上げた。俺は青衣を纏ったまま宙に浮く。

 

「七海!! 何をやった!!」

「ちょっと新技の実験を」

 

 駆け寄ってきた織斑先生がAを見て言う。

 

「これは……大丈夫なのか」

「胴体は攻撃していないので死にはしないでしょう」

 

 顔が腫れあがった女は呻いている。両手両足が滅茶苦茶な方向に歪んで内出血をしているので、骨もあちこち折れているだろう。だがそれだけで命に関するものではない。

 

「この女、ISを展開したでしょう? 戦闘機や戦車より強力な、重機関銃やミサイルを搭載できる兵器をショッピングモールで展開したんです。実際、手にはIS用のアサルトライフルを持ってました。

 こんな場所で乱射されたら大惨事ですよ。だから当分は身動き取れないようにしました」

 

 織斑先生はつばを飲み込む。俺の話が聞こえていたのだろう、買い物客や店員、床に転がるAの仲間も起きたかも知れない惨状を想像し小さな悲鳴を上げた。

 

「おいおい、其方さんはその位覚悟していただろう?」

 

 俺はAの仲間に侮蔑の目線を送る。まさか周囲に何の被害も出さず俺を倒せるとでも思っていたのか?

 

「シールド……絶対防御が……」

 

 周囲など気にも留める余裕が無いAはISの単語を漏らしている。信奉するISの機能がほとんど役に立たなかったのだ。その声は嘆きにも似ていたが同情なんてする気は無い。

 

「絶対防御なんて御大層な名前を付けましたよね、本当」

 

 俺の肩にある装甲に座った状態で出現した青衣が言う。呟くA以外は黙っていたのでその声はよく通った。手に持ったいつもの扇子で自分を仰ぐ。

 

「結局は操縦者次第ですよ。それと本当のISって何でしょうか? 絶対命令で制約や制限がされた正規ナンバーのIS? それを受けない私? 宇宙開発を目的にしたISが兵器扱いですしね」

「さあな。兎に角俺はこいつが使ったISに同情したが?」

 

 同情するのはISに対してだ。こんな女じゃない。亜空間の実験台としては役に立ったが。これは幻想郷の守備にでも使おう。方法を知らせれば、本職ならもっとしっかりしたものを作成するだろう。

 

「全くです。こんな馬鹿に動かされないようにしばらく姉妹には休んで貰いましょう。どの道コア以外はあちこち破壊していますから絶対安静ですけどね」

 

 その言葉で思い出したのだろう、織斑先生が俺の方を向く。

 

「そういえば、こいつのISはどうしたのだ」

「回収しています」

 

 ISアーマーのダメージが規定値を超えれば待機形態に戻る。先ほどの場所に置きっぱなしだ。『倉』は時間が停止するから修復は効かないが、外に出してコアネットワークから情報を送られたらたまらない。後で別の亜空間にでも放り込んでおくか。

 

「青衣を狙ったISは倒してコアごと頂く。知っているでしょう?」

「……ああ、お前に認められた権利だったな」

 

 野次馬となった周辺の者は俺の持つ権利を知らなかったのだろう、騒がしくなる。そういえば報道で見なかったな。

 

「抑止力のつもりだったんですが、使う機会が来るとは。それに、もしも来るなら団体さんと踏んでいたんですがね?」

「だろうな。お前相手にISが1体とは」

 

 呻くAを見て織斑先生は大きくため息を付つ。Aから漏れ、断片的に聞き取れた内容とお仲間の呟きからすれば男相手だから十分だと思ったらしい。俺のIS学園での戦績も認めず、冗談か何かだと思っていた様だ。

 多分、使っていたISは打鉄の改修型かパッケージを付けたものだろう。確かに腕があればISの性能差はカバーできるが、舐めて来るとは。無条件で勝てると思い込んだ男の俺と見下した青衣だからそれで十分だと思ったのかもしれないが、流石に馬鹿すぎる。

 

「そういや、一夏ってどうなんでしょうか?」

 

 一体という織斑先生の言葉で一夏が頭に浮かんだ。ここに来ている筈なのだ。もし一人でないなら一夏が危険だ、

 

「貴様、一夏も襲ったのか!!」

「ブリュン……ヒルデ……弟に……何故?」

 

 顔を一変させた織斑先生はAを怒鳴りつけると、途切れ途切れになるがAは答えた。その答えに織斑先生は安堵の表情を浮かべた。

 

「一夏さんへ電話します」

「頼む。警告してくれ。七海も山田先生に電話を」

「了解」

 

 床に降りた青衣は指示通り一夏に、俺は携帯電話を呼び出すと山田先生に電話を掛ける。ISを纏って携帯電話を使うなんて初めての経験だ。直ぐに繋がる。何事も無くシャルロットも無事らしい。とりあえず此方の状況を説明して通話を切った。

 まだ織斑先生は尋問をしていた。

 

「そういえばどこのISなんでしょうか? 後、俺がここにいると言う情報の入手先も」

「所属は知っている。情報は確かに気になるな」

 

 織斑先生がAに問う。勤務先から試作パッケージをつけたISを持ち出したそうだ。同じ主義者から情報を仕入れ、IS学園の予定を確認をしたらしい。IS学園では先月末までは学園別トーナメントがあり、次の週には臨海学校だ。直前の休みである今日、高確率で出かけるだろうとも。そしてIS学園から近く設備の整ったショッピングモールは此処しかない。俺はその読み通りに現れたわけだ。

 そんな事を考えていると誰かが走って来る音が聞こえた。其方を見ると通報を受けたのだろう、警備員が数人やって来る。一人女性も混じっているが他は男性だ。ISを展開している俺を見て驚きの表情を浮かべながらも、此方の状況を無線で話している。ISで強化された聴覚で内容は耳に入る。救急車と警察の要請、簡単な状況を報告していた。

 俺はISを解除する。近寄り難いだろう。

 青衣の電話はようやく一夏に繋がったらしい、此方の状況を話していると織斑先生が青衣に手を伸ばした。代われという事だろう。青衣が携帯電話を織斑先生に渡すと、話し始めた。

 

「ああ、気を付けてな」

 

 少しばかりの通話は終わり、青衣に携帯電話が戻される。

 

「向こうは問題ない様だ。気を付けるように言っておいた」

「そうですか」

 

 警備員たちが恐る恐る俺達の方に近づいてきている。一緒にいる相手がブリュンヒルデと気が付いたのだろう。

 

「安心してくれ、私達は協力するつもりだ」

「……助かります」

 

 織斑先生が掛けた言葉に警備員達はほっとしたような顔をする。

 その後は警備員からの通報を受けてやってきた警察も含めて事情を説明した。ISも絡むので被害届は所属しているIS学園から出す形となる。織斑先生は学園長へ電話をかけ始めた。経緯を説明し、直ぐに終わる。

 俺が過剰防衛を取られる可能性は少ないらしい。何せ、人が大勢いるショッピングモールでアサルトライフルを持ったISを展開したのだから。感づいた俺達を追ってきたのも印象は悪いだろう。ISには国際規定もあるので刑務所行きは確実だ。

 俺達は手当をする救急隊員にまで悪態をつくAたちに呆れ果てていた。野次馬の中にいる女性も顔を顰めている者が多く、男性の方はざまあみろと言う感じだろう。

 まあ、いいか。

 警察官たちと何やら話をしていた織斑先生が俺と青衣の方に歩いてくる。

 

「お前達、もう帰っても良いぞ。私は残る」

「そうですか。他の連中と合流を考えていたんですが」

「仕方なかろう、他に居ないとは限らん」

 

 確かにね。それに野次馬も集まってしまった。人ごみの中を通るとなると一苦労だし、織斑先生の言う通り連中の仲間がいないとは限らない。

 

「学園まで空間転移で帰れ」

「そうですね」

 

 俺と同じ想像をしたのだろう、織斑先生はため息交じりで行った。正直、安全に戻るにはそれしかなさそうだ。

 

「織斑先生、これを」

 

 青衣が懐からフラッシュメモリーを取り出し、怪訝な顔をした織斑先生が受け取る。

 

「中身は何だ?」

「映像ファイルが2つ入っています。水着を買った店を出た後から緑兵が私を展開するまでと、此処に戻ってから今までの映像です。戦闘は除いていますから」

「……わかった。必要があれば使わせてもらう」

 

 彼女はそれをバッグの中に仕舞った。

 

「学園で何かすることはありますか?」

「お前達からも学園長に話を通しておけ。連絡してあるから直ぐに会えるだろう」

「わかりました。ところで」

「何だ?」

 

 俺は織斑先生の手に持った紙袋を指さす。青衣が一度返したものだ。

 

「それ、もう一回預かりましょうか? 寮の俺達の部屋まで取りに来ればいいですよ」

 

 彼女は一度紙袋に視線を落とす。

 

「そうだな、頼む」

 

 言い出したのは俺なのだが、青衣が織斑先生から紙袋を受け取った。俺は青衣の肩に手を置く。

 

「では」

「ああ」

 

 俺と青衣は『拠点』を経由しIS学園へと戻った。

 

 

 

 

 

 まずシャルロット達に電話をしてIS学園に戻ったことを連絡、次に学園長へ報告を行った。とはいってもISが絡む話、後で書類か何か作ることになると思うが。その後は食材の買い出しなどに行き過ごす。

 本日最後の用事が残っていた。17時少し前、俺と青衣はある地方にある某寺にいた。

 向こうから日時の指定を受けたはずだが、IS学園の制服を着た俺達に向こうは吃驚していた。住職に父親の骨壺が入った木箱を渡しお布施をする。それで終わり。後は完全に寺へ任せる形だ。

 先祖の墓もあると聞いていたので受け取った配置図に従い、プラスチック製の水桶を持って其方へ行く。途中で水場があったのでこっちで酌むべきだったと少し後悔した。

 目当ての墓は直ぐに見つかった。ある程度は寺の方で管理しているのだろう、水を掛ければ汚れは落ちた。用意した花を飾り、線香に火をつける。手を合わせて終わり。

 来た道を戻る。先ほど通り過ぎた水場の近くに一人の少女が佇んでいた。もう夕方になると言うのに黒い日傘で顔を隠し、場所に合わせているのか同色の上着とスカートを着用していた。

 俺は『空間を操る程度の能力』を発動させる。索敵の意味を含めて広範囲を探るが、寺の敷地内には彼女と寺の関係者しかいない。

 

「そちらの用件は終わったか?」

「ああ」

 

 彼女が声を掛けてくる。この声はどこかで聞き覚えがあった。だがいまいち思い出せない。

 

「昼間は大変だったそうだな」

「面倒と言った方が正しいね。主に後始末だが」

 

 彼女が少し笑う。情報が早い。あのAの関係者なのか?

 

「女を待たせる趣味は無いが、桶を置く時間位くれないか?」

「かまわんぞ」

 

 場違いともいえる俺の言葉に少女は楽しそうな響きを乗せた。お言葉に甘えて俺は近くの水場に桶と柄杓を格納させ、青衣は状況を察して体を消す。予想していたのだろう、少女に反応はない。

 

「さて、同じ用件か?」

「そうだ」

 

 真っ向正面か。相当に自信があると見える。だが昼間の馬鹿と違い、この少女に余裕はあっても油断は無い。

 少しの沈黙、ゆっくりと彼女は日傘を降ろし顔が露わになる。俺はその顔に驚き、目を見開いた。

 織斑先生、織斑千冬にそっくりだ。織斑千冬を俺と同年代まで若くした様な顔だった。

 

「織斑マドカ、だ」

 

 俺達の反応は慣れているのか、にやりと笑いながら日傘を畳む少女は織斑を名乗る。その声で俺は止まっていた思考を取り戻す。正直助かった。

 この顔と名前、織斑先生や一夏の身内なのか?

 話を聞く必要があるな。丁度良い、篠ノ之束に対する生け捕りの練習といこう。

 

「お前のISを頂」

 

 俺は『倉』を彼女の足元に開く。

 

「く!?」

 

 マドカはISを展開し、足元の『倉』に吸い込まれる前に宙に浮いた。展開が滅茶苦茶早い。紫色の蝶の羽根に似た巨大なスラスターユニットを持ったISだ。妙に露出が多い。特に脇腹。

 だが彼女は舞う事は出来なかった。既に『空間を操る程度の能力』でマドカは空間の一点に固定済みであり何をやってもその場から動けない。バイザーで隠された彼女はイラついている様に見えたが、そんなのはお構いなしだ。俺は体当たりをする。同時に能力を解除し正面に、マドカからすれば背後に『倉』を新たに開く。

 大きく舌打ちをするマドカと共に、その『倉』へ突入した。

 

 

 

 

 

 俺がいる為に『倉』内部の時間は動いている無音で暗黒、重力すらない。それが『倉』の内部だ。

 

「どこだ、ここは?」

「どこだろうな?」

 

 同じ空間にいるので通信できる。表情は見えないが『空間を操る程度の能力』でわかった。彼女は少しも顔を動かしていない。ハイパーセンサーに慣れた動きだ。

 

「確認だ。織斑マドカと言ったな」

「ああ」

 

 首肯した様だ。

 

「織斑千冬と織斑一夏の血縁か?」

「ねえさんだ。織斑一夏は私だ」

 

 そんな話、聞いたことないけどさ。

 だがマドカは俺の問いににやりとする。

 

「……双子か?」

「聞き出してみろ」

 

 マドカの顔は見えないが、俺には感覚で口角を釣り上げ狂ったような笑みを浮かべている事がわかってしまった。

 

「そうさせてもらう」

「ふふっ」

 

 亜空間に放り込まれてもやりとりを楽しんでいる。この女はどこか狂気じみている。その上に冷静、厄介だ。

 だがそういう者は幻想郷に幾らでもいる、ある意味懐かしい。

 

「……後でな」

「何?」

 

 だが俺はマドカに付き合う義理は無い。彼女を置き去りにして『拠点』へ飛んだ。そこは何時もの出入り口、『拠点』の簡易応接室である。ISを解除し椅子で一息つくと青衣が体を出現させた。彼女も戸惑っている。織斑マドカが原因だ。

 俺が『倉』から離脱したので内部の時間は止まっただろう。じっくりと織斑マドカとやらが望んだ通り、いろいろ聞くことにしよう。

 

 

 

 

 

 夜、購入した物の入った紙袋を織斑先生が取りに来た。マドカという人物の心当たりを聞いたが無いと言う。だが、挙動がおかしかった。何かを隠している。

 青衣は記録を突き付けようとしたが、それは俺が止めておいた。織斑マドカに話を聞いた後で十分だ。

 『拠点』には紫姉さん宛てに今夜来るように書いた紙を置いてある。篠ノ之束が臨海学校に現れるかもしれないだけで呼び出すには十分な内容なのだ。更に織斑マドカという者まで現れた。

 就寝時間なんて待ってられない。俺がシャワーを浴び、青衣が風呂から帰ったら行く事にしよう。

 そういえば、今日は出かけるたびに客が来たな。普通、客は住んでいる場所に訪ねて来るものだろう。本当にどうなっているんだか。

 




最後まで読んで頂き、有難うございます。

主人公休めてない。そしてマドカの登場です。

ところで……友人から強く勧められ艦これを始めました(無課金)。面白いですね。


何かありましたら感想へお願いします。

-追加-
誤字脱字修正 回りくどい言い方を修正
電話の連絡先が逆になっていた為に修正
『臨海合宿』⇒『臨海学校』とその周辺を修正
辻褄の合わない箇所を修正
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