幻想のIS   作:ガラスサイコロ

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04_乱入者相手のデビュー戦

 時は経ち既に5月。入学式などとうに終わっている。

 さて、この4ヶ月近くは俺も大変だったが青衣も大変だった。会長との模擬戦やアドバイスを受け装備やオプションの変更と機体の改造をした。

 俺は入学してはいるが一切授業に出ていない。いや存在自体を秘匿されている。

 理由は欠けている学力とISの腕のバランス関係で、少し後でも問題ないとされた為だ。これは学園側から指定された。

 普通に考えてあり得ないが、いきなり二人目の男性操縦者(青衣限定)ですと現れてもつまらないのは確かだ。入学するタイミングをどうするかが問題だ。いきなり普通にクラスに入っても意味はあまりないだろう。その辺はごねてある。

 最悪の場合は後のイベントで俺達から試合中に強襲してみるか、と伝えている。織斑先生は青ざめていたが。

 そしてクラス代表戦の当日。

 俺が在籍している1年1組の代表は例の織斑一夏だった。何かあるとしたら今日だろう。

 相手は2組の鳳鈴音という専用機持ちだ。しかもこいつは中国の代表候補生。

 一夏とオルコットの試合を見たが、舐めまくっていたオルコットと違い真っ向勝負の様だ。

 俺と青衣は『拠点』から茶を啜りながら観戦していた。外の世界に居る間宿泊している和室と違い、簡易的なテーブルとイスしかない殺風景な場所だ。

 俺達には学園から役目を与えられている。何かあった時は呼ぶから対処しろ、連絡手段は見ていればわかる。それだけを言われていた。

 そしてその何かが起きた。

 一夏対鳳の試合はやがて深い灰色をした全身装甲のISが乱入し中止となる。

 隣にいる青衣に目配せしテーブルから少し離れて彼女を纏う。次いで狐の面を被ると、両手に新たな刀状の近接ブレード『無名』を呼び出した。打鉄やラファール・リヴァイヴのブレードよりも上等な代物だ。

 

「後は指示待ちですね」

「そうだな。出番を待つか」

 

 とりあえず、相手の能力を見せてもらいますか。

 しばらく見ているのだが、こいつ織斑一夏と鳳鈴音を観察していないか? 動きもおかしいし。

 

「調査なら、観察は基本だろうな」

「ですね」

 

 『窓』を介してアリーナ周辺を俺の『空間を操る程度の能力』で解析する。徐々に範囲を増やし、数十秒後に上空にいるもう一体を探知した。目では見えないし、おそらくだが動かなければ何も反応は無いだろう。浮遊しているだけでも普通はエネルギーを使うのに反応しない。これがステルスと言う奴か。すごい技術だな。俺は心の底から感心する。

 アリーナの様子と言えば、何と言うか、そのねえ?

 一夏君よ。全力で戦えないって、お前も俺と同じド素人だろう。最初からやれよ。何なんだ? この自信は?

 

「出番、いつでしょうかね?」

「いつだろうな」

 

 とにかく様子見である。

 

 

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 学園内のセキュリティが乗っ取られた。増援は送れない。

 一夏と鳳は襲撃者を食い止めるという。しかし即席の二人ではコンビネーションが拙く、試合で消耗をした今では襲撃者に勝てる見込みは少なかった。

 個々で戦っても同じだろう。現に有効な手が打てていない。だが、

 

「どういうことだ」

 

 アリーナの管制室にいる千冬はつぶやく。真耶も違和感の正体に気が付いた。一夏と鳳もだ。二人の会話中に相手は攻撃してこない。

 一夏は全力がどうこう言っているが千冬の耳には入ってきなかった。

 この時、千冬の脳裏に『一夏に手柄を与えるイベントが来る』との言葉が過ぎっていた。今は招待された客や生徒達がいるので目撃者としては十分過ぎる。そして目撃者は生存していなければ意味がない。その読み通りなら生徒に死者は出ないだろう。放っておけばいいと一瞬頭に過ぎるが生徒達はパニックを起こしかけている。自分たちで崩壊したならば何事もなく終えるとは考えにくい。

 一夏は妙な自信を持っているが根拠が乏しい。不安要素がある。

 生徒の安全が第一にしなければならない。そう思い千冬はマイクをアリーナのスピーカーに設定し叫ぶ。

 

『織斑と鳳は回避に専念しろ!!

 七海、聞こえるか!! 襲撃者を倒せ!!』

「ええ!?」

 

 大音量で響いた言葉に真耶は驚きの声を上げた。

 同時にステージの一夏と鳳、ステージに向かっていたセシリアと箒、アリーナにいた生徒達が一斉に疑問に思う。

 

「「「七海って誰?」」」

 

 だが次の瞬間、そんな思考は吹き飛ぶ。

 襲撃者の異常に長い腕が宙を舞う。右腕が肩口から切り飛ばされたのだ。

 理解できない光景に、その場にいる者は時間が止まったかのような錯覚を覚えた。

 襲撃者が反応し自らの腕を落とした相手に反撃を加えようとするが、遅い。いつの間にか現れた相手の一閃に今度は左腕が切り落とされる。

 両腕を失った襲撃者を蹴り飛ばし現れたのは両手に刀、狐の仮面を被った青と黒の装甲を持つISだった。

 驚愕の声があちこちで上がる。

 学園関係者でも数人しか知らない生徒、だが正式に入学し未だ出席のない生徒、青衣を纏った七海緑兵だ。

 

「投降しろ」

 

 低い男の声。そして聞くものが底冷えする暗い声だった。事実生徒たちの大半が震え上がっている。しかし襲撃者は臆することなく突撃で答えた。一瞬で緑兵と交錯し首が宙を舞った。

 各所で悲鳴が上がる。

 二つの鈍い音と共に襲撃者の首と体が地に落ちた。

 油断なく緑兵はその二つを交互に見て、完全に動かないことをハイパーセンサーで確認する。

 

「やっぱり人が乗って無いな」

「そうですね。血が出ませんでしたし」

 

 男の声の後に女の声が混じる。千冬から通信が入る。

 

『ご苦労だった。そのままピットへ行け。その機体はこちらで回収する』

「いいえ。終わっていません」

『何だと?』

 

 周囲に4つの黒い球体(オプション)を出した緑兵が睨み付けるのは上空。だが其方とは違う方向、真上に飛び立つ。

 一瞬で最高速に達したが目線の先は動いていない。

 緑兵の4つの球体から虚空に広範囲に弾と誘導弾、レーザーが次々と放たれた。

 アリーナから見れば謎のISがあさっての方向目掛けて膨大な光弾やレーザーを吐き出したように見える。誰もが今まで見たことのないほどの圧倒的な弾幕だった。唖然となる。

 離れた上空に突如先ほどと同じ無人機が現れた。ステルスで隠れていた一体だ。

 やはり誰も気が付いていなかったのだ。そうでなくては警備の充実するIS学園に、攻撃するまで気が付かれずに侵入などできない。

 そして気が付かれた以上隠れる必要はない。緑兵はアリーナの被害を抑えるべく、空へ飛んだだけだ。

 緑兵が先手を打った。無人機は回避行動をとるが、遅い。

 弾幕を一対一と一対多で使い分ける。よく考えてみれば、至極当然の考え方だ。

 そして装備もこの4か月で改造を施し、基本性能も上げてある。戦闘前なら別の装備に変更すること可能だ。

 試験時と異なり背後や真上や真下には打ち出していないが、その分前方に集中させた量は圧倒的だ。弾の密度が濃く近距離から中距離にかけてはほとんど面制圧に近い。遠距離でも並みの腕なら躱せずあっさり削られてしまうだろう。

 これは更識会長のアドバイスを受け、ISの速度からどのくらい移動できるかを考えて範囲を絞ったものだ。使用したデータは現在最新鋭の白式だ。これなら白式でも無傷で一気に弾幕から抜けることは不可能。

 また、攻撃力は減少したが誘導弾は破裂をするように変更した。その為、無人機の体勢は崩され機体のコントロールが乱れる。結果、弾幕が次々と当たっていくのでダメージの総量としては増えている。弾幕の威力は高くないが数が数だ。逆にレーザーの攻撃力は高いので、シールドエネルギーは瞬く間に削られていく。

 回避と防御、攻撃が揃っている更識会長の様な国家代表クラスや織斑千冬クラスなら中近距離でも対抗できるのだが、少なくともこの無人機にそこまでの腕は無かった。

 緑兵はオプションを一時封印することで放つことができる、スペルカードを模した攻撃も不要と判断する。このまま押し切ることにした。

 だが無人機もただやられているわけではない。

 威力のあるレーザーを極力避け、弾幕を食らい体制を崩しながらも緑兵に対して強引に詰めながら次々とビームやミサイルを放つ。

 しかしスラスターを調整し縦横無尽に飛び回る緑兵に全て躱され、あるいは迎撃される。緑兵はあくまで一定の距離を保ち続ける。

 一方的に無人機は攻撃を食らい続け、最後はステージに落下した。無人機は緑兵に近づこうとしていたので落下場所も誘導したのだろう。

 消耗していたとはいえ一夏と鳳が二人掛かりで倒せなかった相手を二体も倒した謎のISに、アリーナにいる全員が茫然と眺めていた。

 緑兵はふうっ、と一息つき仮面を消して素顔を晒す。無論アリーナのディスプレイにも映し出される。

 あちこちで驚愕の声が上がった。

 

「織斑先生、終わりました」

『仕事が早いな。お前はピットへ行け。回収は此方で行う』

「了解」

 

 

---------------------------------------

 

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 ピットに向かおうとした矢先、オープンチャンネルで鳳から通信が入る。遥か下を見ると鳳が苛立っている様だ。

 

「ん、何?」

「アンタ、いったい何なのよ。いきなりやってきて、乱入者倒して」

「俺は呼ばれたから来たんだが?」

 

 多少、混乱しているらしい。

 

「なぁ、男なのか?」

 

 今度の通信は一夏だ。こちらも困惑している。

 

「女に見える?」

「どう見ても男だ。でも女の声もしたよな」

「私ですね」

 

 肩の装甲上にIS学園の制服を着た青衣が出現する。ストレートに伸ばした青い髪が風にそよいでいる。重量があるから宙に浮いているのではなく乗っているな。俺は刀を仕舞い、青衣の足を落ちないように固定する。

 突然現れた青衣に一夏と鳳は驚きで目を見開いた。

 アリーナのモニターには上空にいる俺たちが映っている。多分アリーナにいる生徒も似たような反応だろう。

 なるほどなるほど。簡単に自己紹介といくか。

 

「俺は七海緑兵。所属はIS学園、クラスは1年1組で生徒会の書記をやっている」

「私は青衣、彼の専用機です。暇なときは私も生徒会を手伝っています。その時は七海青衣と署名しています」

 

 ちゃっかり俺の苗字を名乗っているよ。こいつ。

 

「専用機だって?」

「ええそうですよ。ISが意志を持つのはご存じでしょう? この機体が私であり、この体も私です」

 

 うっすらと笑い、口元を青い扇子で隠す。

 おお、この仕草はなかなか決まっているぞ。そういやこそこそ練習していたな。

 

「どういうことよ!!」

「何がです?」

「ISが未登録じゃない。学園から呼ばれたのにおかしいでしょう?」

 

 ハイパーセンサーで解析したのだろう。正しい行動だ。

 

「いいえ、それで問題ありません。

 更に言うなら私は白騎士以前に製造されたISコアですから、コア自体も登録されていませんよ。

 わざわざ女しか乗れないように命令され、ナンバリングしたものとは違います」

 

 アリーナに戦慄が走った。続いてどよめきも起きる。

 そりゃ衝撃だよな。向こうからすれば、これが本当ならISの前提条件が覆るもん。それに青衣の発言は少し考えればわかること。ISコアに誰が命令した、いや命令できるのか。

 

「今、乱入した奴の仲間なのか?」

 

 今度は一夏だ。

 

「そんなわけないでしょう。私たちは学園側の指示で何かあった時の為に待機していたのです」

「というわけでピットに行きたいんだが」

 

 何を言っても無駄なことを承知で言う。

 

「そうはさせないわよ。怪しすぎる」

「ああ、俺も1年1組だが会ったことがないぞ」

 

 二人が俺を睨む。

 

「いろいろやることがあってね。今回ここに来たのは織斑先生の指示だ」

『七海の言う通りだ。IS学園として何か起きた時の為に呼んでおいた。お前たちは下がれ』

 

 ここまで言われているのだ。普通に考えて怪しいも何もないような気がするが。

 ため息交じりの織斑先生の声が混じる。ああ、疲れているな

 

「千冬姉、こっちは試合の邪魔されたんだ」

 

 何故か俺に雪片弐型を向ける。邪魔したのは無人機だ。俺じゃねー。

 

「何で私たちが邪魔者なんですか」

「全く」

 

 抗議する青衣と俺。

 

「とにかく、こっちは不完全燃焼なのよ。あんたたちが居なくても私と一夏で倒せたわよ」

「要は時間切れだろ?」

「仕事増やされたんですよ、こっちは」

「絶対倒す」

 

 俺達は呆れ、つい出てしまった呟きに鳳が逆上し双天牙月という青竜刀を構えた。一夏も頷くと零落白夜を発動させる。

 おい、何で零落白夜?

 二人そろって冷静さを失っているのか? 鳳も注意しろよ。数百メートル上空にいる俺とは距離がありすぎる。零落白夜を展開し続けるせいで、白式のシールドエネルギーががりがり減っているぞ。

 そもそも喧嘩売るなら、もう少し俺が近づいてからの方が良かったのでは?

 

「青衣、戻れ」

 

 俺の指示に青衣は大げさなため息一つ残すと姿を消す。俺は改めて仮面を被り、両手に二本の無名を出現させ二人に向ける。四つのオプションは周囲を不規則にくるくる回る。

 

「織斑先生、アリーナの被害はなるべく減らしますよ」

『仕方ない、直ぐに終わらせろ』

 

 次いでため息が一つ、諦めたか。

 

「了解。

 さて、やりますか」

 

 仮面の下で俺の口角が吊り上る。直ぐに終わらせろ、ね。

 かくして、一夏・鳳との戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 そして幕はあっさりと下りた。

 互いに戦いを見ているが、向こうは二人ともシールドエネルギーもスラスターエネルギーも大幅に減った状態だ。

 二人の得意とする距離は近距離から中距離だろうが俺と距離が離れている。特に揃って頭に血が上り冷静さを失っているのは致命的で、ほとんど俺の狙い通りに進んだと言っていい。

 俺は中距離から遠距離を保ちつつ弾幕は鳳中心に狙って一夏の方は少なくする。すると俺の読み通りに一夏は俺を目掛けてイグニッション・ブーストによる突撃をかけた。白式のスピードがあれば直ぐに接近できると思ったのだろう。

 だがイグニッション・ブーストは直線的で、タイミングと軌道が読めていれば的になるのだ。俺は今まで出していなかったオプションのレーザーと本体のニードルレーザーを一夏に集中させ、早々に落ちてもらった。

 イグニッション・ブーストもエネルギーを食うが、零落白夜をずっと発動させたままだったのが彼最大のミスだ。はっきり言って自滅に近い。

 卑怯だ剣が何だとか言い落ちて行ったが上空で無人機相手にしている俺の攻撃を見なかったのか? 遠距離攻撃があるだろ。

 白式の方が基本スペックは上なのだ。文句言えるか。

 ところで何故オープンチャンネルなのか。まあいい、恥をかくのは向こうだ。

 一夏は零落白夜を止めて弾幕の範囲外に抜けることが先決だったのだ。鳳が下にいる以上弾を撒く範囲が広がり薄くなる。理想なら俺を挟んで反対側へ行く。これだけで二人を狙う弾幕は薄くなり、大分楽になったはずだ。無論簡単にさせないし、対策も用意しているが。

 さて鳳は自分に集中する弾幕と誘導弾をぎりぎりで避け、避けられないものはガードしながら、自分と一夏で挟み込むような軌道を取っていた。

 流石は代表候補生、操縦技術が見事だ。しかも突撃を掛けた一夏に攻撃が集中し、俺の意識が一夏に向いた瞬間を狙って龍砲を数発打ってきた。

 砲身が無く空間を圧縮し見えない砲弾として放つ龍砲は優秀だが、弾幕には干渉するので射線の予想ができる。つまり青衣と相性が悪すぎ利点が活かせない。簡単に回避できる。

 一夏撃墜後は適度な距離を保ちながら弾幕の範囲を狭め、無人機相手と同様に面制圧攻撃とレーザーで削っていった。

 残るは動かなくなった二人と無人機の残骸、沈黙する観客。

 

「終わりました」

 

 風の音が空しい。

 無人機には攻撃を当てないようにしておいた。後で解析するだろう。この辺が気配りだ。

 

『七海はピットへ行け。オルコット、その辺にいるだろう? 二人を回収しておけ』

 

 さて、これからどうなることやら。

 

 




生徒の前で無人機確定(切っても血が出ない)、女しか乗れない理由の暴露。
原作乖離が一部始まりました。

緑兵と青衣は何だかんだで訓練と調整・改造を繰り返しています。勉強以外にもやることをやっています。

チートっぽく見えるかもしれませんが、IS同士の戦いなら打開策はあります。
防御力が低い(ラファール・リヴァイヴ程度はある)のも欠点です。これは回避が上手いだけに、あまり気にかけていなかった為。
空白期間で行った緑兵と更識会長との模擬選はそのうちに。

戦闘時に刀を出しっぱなしなのは、手で持つ装備は他にないから(スペルカード関連は例外)。
銃は弾幕やオプションがあるので、持つ意味があまりない。
青衣は機体は着々と改造しつつ、各種専用機のデータから基本スペック向上に励んでいます。
二人は弱点を減らしつつ、基礎向上に努めているのです。

-追加-
全体見直し
全体の改行修正 一部修正 「ビット」⇒「ピット」
全体の誤字脱字修正
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