如月が見た桜の旗の下で   作:weryu

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時系列は『聖域』侵攻作戦発動前くらいです。


幕間 陰の翼 

「閣下、私はこの作戦に反対だ! 単艦で偵察任務など無謀だ」

「……は? なんだそれは? そんなもの、もはや作戦とは……。いや、やはり反対だ、閣下。あの子はそれを伝えてもきっと無茶をする。あの子の目は……死に場所を探しているんだ。老練の戦士がするのならいい。戦場に慣れ過ぎて達観した兵士がするのならいい。だが、……あんな小さな子が、あんな目をするべきではないんだ……」

「……な!? そう言うと思っただと? 私をからかっているのか、閣下!?」

「配置変更? …………く。ははははは! 閣下、あなたは本当に訳の分からない人だ。そんなマヌケな編成をする指揮官など、今まで見たことがないぞ。……だが、願ってもないことだ。アーク・ロイヤル、その任を全身全霊を以て遂行することを約束する!」

 

   ⚓    ⚓

 

「話は済んだかな、ロイヤルの空母殿」

 執務室から出たアーク・ロイヤルは、既視感を覚えながら返答する。

「エンタープライズか。近頃はよく出会うな」

「全くだ。そして、これからもっと顔を合わせる機会が増えそうだ。私の予想が間違っていなければな」

「どういうことかな?」

 怪訝な顏で尋ねるアーク・ロイヤルに、エンタープライズが返答する。

「私も指揮官に抗議に行ったのだ。恐らく、指摘したのはあなたと同じ箇所だ。その後、すぐに配置転換を通達されたよ。いや、初めて聞いた時には耳を疑った。流石のあなたもそうだろう?」

 フフッ、と微笑した後、エンタープライズは続けた。

「駆逐艦“が”護衛するのではなく、我々空母が駆逐艦“の”護衛に当たれ。あなたが与えられた任務もそれで相違ないか?」

 先刻言い渡された任務の内容を言い当てられ、アーク・ロイヤルがたじろぐ。理由はそれだけではなかった。

「私ならともかく、聡明な貴艦が承諾したのか、その任務を?」

「ああ」

 逡巡なく、エンタープライズが断言する。

「前衛が主力を護衛し、決戦まで温存するのはセオリーだ。主力が前衛を護衛するなど、愚策も良いところだ。指揮官も理屈では分かっているだろう。私はあの人を、指揮官としては愚かだと思う。しかし、あの人の人間的な所は嫌いではないんだ。『この作戦に反対したものを護衛任務に付けるつもりだった』と、最初から決めていたらしい」

「クク……本当に面白い人だな、閣下は! ハハハハハ!」

 アーク・ロイヤルはひとしきり哄笑した後、肩を竦めながら続ける。

「しかし、残念だな。貴艦からそのことを伝えられる形になるとは」

「私と同道することに、あなたは不服か?」

「いや、そんなことはない。むしろ心強いくらいだ、ラッキーE。ただ……」

 アーク・ロイヤルは極めて勿体つけ、彼女が出来得る限りの凛とした表情で(別の言い方をすれば渾身のキメ顔で)言った。

「駆逐艦の妹たちに関する案件を、貴艦に先を越されてしまった。そんな私の至らなさが慚愧に耐えなくてな」

「……全く、あなたらしい」

 エンタープライズは額に手を当てながら、深いため息をついた。

 

 




Q:なんでアーク・ロイヤルとエンタープライズなんですか?

A:なんでだろう……趣味?
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