主人公である、佐藤敏夫(さとう としお)は、ひょんな事故がきっかけで、あえなく命を落としてしまう。あの世でであったのは、転生あるあるの神様ではなく悪魔だった。悪魔は、異世界でお金を稼いでくれば現世に帰してくれるという。最初は乗り気では無かった敏夫だが、悪魔と話をしているうちに転生しようという気持ちになる。
 異世界で無事にお金を稼ぎ主人公は現世に帰ることが出来るのか? 乞うご期待。

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こちらの小説はなろうで短編としても掲載しています。

『N9439EZ』

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第一話

「あ”~疲れた。死ぬ、もう死ぬ」

 

 

 

 暦上はもう秋なのだが、まだ残暑が残り夏特有の湿気が肌にこびりつくような暑さだった。そんな中で俺、『佐藤 敏夫さとう としお』は途半端な暑さに悶々としながら、今日は一日中レポート参考になる資料を大学の図書館で探していた。あまりにも沢山の本が置いてあったせいで異常に疲れた。もう飯に作る元気もないので早速ベットにインしようとして飛び込んだ。

 

 

 

「あっ」

 

 

 

 ゴキッという鈍い音が鼓膜を振動した。一瞬首元に痛みを感じたと思ったら、その痛みによって一瞬で意識を刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ」

 

 

 

 能天気な声で俺は目を覚ました。そこはすべてを白い絵の具で塗り固めたような色をしていた。上下左右、X軸Y軸Z軸、どこまでも続く白い空間に、一つ。目を見張るような黒い何かが俺を見下すように立っていた。

 

 

 

「いやぁ、ごめんね」

 

 

 

 突然黒い何かが口火を切った。慌ててそれに焦点を合わせると頭部に角が生え、背中には翼が生えたとても人とは思えない姿をした美少女がいた。

 

 

 

「なるほど分からん」

 

 

 

「(今どういう状況だ? 目を覚ましたら眼前に美少女がパンツ丸出しで、俺を見下してるとか。これなんてエロゲ?)」

 

 

 

 無防備に晒された美少女の水色の縞パンから目を逸らし、俺は立ち上がる。埃を払うように服をはたき、改めて問う。

 

 

 

「あ、あのすみません。ここってどこですか? そもそも貴女は?」

 

「あっ、説明するの忘れてた」

 

 

 

 ツノが生えた少女は人差し指を立て、淡々とした口調で喋り出す。

 

 

 

「まず、自己紹介からだね僕の名前はベリアル、悪魔さ」

 

 

 

 以外にも悪魔という単語に呆気を取られることは無かった。ツノや翼が生えていてその言葉が一番しっくりと来たからだろう。

 

 

 

「その……。俺は何で悪魔の前に立っているんだ?」

 

「簡単だよ、死んだから。正確には僕が殺したからだね」

 

 

 

 余りにも唐突過ぎる死の宣告に最初は理解に戸惑った。鼓動も脈動も何度も確認したが結果は変わらない。完全に止まってる。

 

 

 

「えっ、待ってくれ。俺は本当に死んだのか!?」

 

「いやぁ、ごめん。僕も殺したくは無かった。でも、こればっかりは仕様が無いんだよ」

 

 

 

 悪魔は口角を吊り上げて苦笑し、バツが悪そうに謝る。

 

 

 

「お前が俺を殺したって、どういうことだよ!」

 

「いやぁ、君には、僕を生かして貰いたいんだよね」

 

 

 

 人の話を聞かず、あまつさえ人を殺しておいて自分を生かして欲しいと言う虫のいい話をペラペラと喋る。その身勝手さが再び頭にきたのでもう一度怒鳴る。

 

 

 

「やだ! すぐ元の場所に戻せ!」

 

「いやぁ、君には、僕を生かせて貰いたいんだよね」

 

 

 

 こいつ、RPGの村人Aみたいに自分のお願いを聞いてくれないと、話を進めてくれないようだ。ここまで図々しいと一周まわって憧憬の念が湧いてくるわ。

 

 

 

「わかった。今回だけ話を聞いてやる。俺は今、単位が惜しいし、時間も惜しい。死んでる場合じゃないんだよ」

 

 

 

「いや死んでるんだから単位もクソもないでしょ」

 

「とっとと。本題話せ、悪魔め」

 

「協力的で何よりだ。君には異世界に行って金を稼いできて貰いたい」

 

 

 

 金ってマネーのことだよな。悪魔が金なんて使うのか。悪魔に金というイメージなんとなくつくが、それはどっちかっていうと魂と引き換えに、人間に与えるものじゃないか?

 

 

 

「僕はこのままだと、消えてなくなってしまうんだ」

 

「それは、よかったな早く消えてくれ。そして俺を生き返らせてくれ」

 

「でも、僕はまだ生きていたい! もっと人を騙したい! そして地獄に落としたい! だからこんなとこで死ぬわけにはいかないんだ!」

 

 

 

 悪びれる素振りをひとつも見せずに堂々と公言しやがった。清々しい程のクズだぁ、本気でキレそう。

 

 

 

「だから君には金を稼いで貰いたい! 君にはできる! 多分!」

 

「その依頼は引き受けるけど、お前が生きる事と金を回収する事は、どう繋がるんだ? 金が食い物とか?」

 

 

 

 金が食い物ならこいつこのとはベリアルではなくカネ○ンと呼んでやろう

 

 

 

「金は人の欲望を物質化したもの、といっても過言では無い。金を貢ぐことで僕は欲望を取り込み、生き残ることができるのさ」

 

 

 

と意気揚々と語るベリアル

 

 

 

「欲望は悪魔の生きるために必要なものなんだ。普段自分で回収するんだが、今の僕には回収する力さえない」

 

 

 

「(なるほど、なるほど)」

 

 

 

「そこでたまたま目に付いた君に助けて貰いたいんだ」

 

 

 

 「(うん……うん。それってつまり)」

 

 

 

「とばっちりじゃねぇか! おのれ、ベリアルゥゥゥゥ!」

 

 

 

 

 

 悪魔はビックリしたからか、「ひゃんっ」という凶悪な性格とは相反する可愛らしい声をあげて驚く。

 

 

 

「自分が生きるためには、君を殺して欲望を回収してきてもらう仕方なかったんだよぉ……」

 

「仕方ないじゃねぇ! だからって人を殺すか普通!」

 

 

 

 駄目だ。こいつ悪魔だから人間の常識が通じる訳が無い。現に今も何が悪いか分かって無い様子だし。

 

 

 

「で、でも欲望を回収したら、僕の力ももとに戻るから、現世へ帰してあげられると思うよ」

 

 

 

 ただただ悪魔はシュンとした表情で語る、その提案に俺はすかさず食いつき、改めて聞き直す。

 

 

 

「……それは本当か?」

 

 

 

「もちろん! 悪魔は契約を破らない!」

 

 

 

 どこか胡散臭くて信用できない。

 

 

 

「あっそうだ転生するときはその姿では転生できないんだ」

 

「WHY? 何故に?」

 

「人間には魂と器が必要なんだけど、その器が在庫切れでね。君の身体首の骨が折れてるし、使い物にならないんだ

 

 そこで! 君には僕が殺した聖女の身体をあげよう!」

 

「は?」

 

 

 

 俺の身体は骨が折れてて使い物にならないのはわかったが、普通こういうのって身体はそのままで、チート能力とか手に入れちゃって転生できるものじゃないのか?

 

 

 

「いつもの僕なら元の身体を再生させ、魂を元に戻すことはできるけど、今の僕には別の器に精神をぶち込むのが精一杯なんだ」

 

 

 

 本当にこの悪魔使えないな。どうしようもないくらいにぽんこつだ。

 

 

 

「つまり俺は女になるってことか?」

 

「いぐざくとりー! でも、素晴らしい肉体だよ。魂を抜いただけだから外見的な損傷もないし、ワンチャン魔法が使えたりするかもよ?」

 

「待て、女になるつもりなんてない。せめて男にしてくれ――」

 

「無理だ。諦めろ」

 

 

 

 キッパリと断られた。融通が聞かないな、この悪魔は。

 

 

 

「……わかった金もとい欲望を回収すればいいんだろ?」

 

 

 

 もうこの際、四の五の言っても意味が無い。俺は溜息をつき転生をすることに決めた。

 

 

 

「そうそう、最初からそう言っときゃ良かったんだよ」

 

 

 

 無駄に上から目線なのが腹立つが、付き合えば疲れるのは目に見えているので軽く流す。パパッと金を稼いで、一発ベリアル殴って現世を戻ろう。

 

 

 

「では目をつぶって」

 

 

 

 俺は指示に従い、ゆっくりと目を閉じる。

 

 

 

「あっ、言い忘れてたけど君が行く世界は王道ファンタジーじゃない。

 

 犯罪が飛び交う無法地帯。弱肉強食の世界だからね」

 

「は?」

 

「後、現地のお金で、10億くらい稼いできてねー! じゃ!」

 

 

 

 これを、聞いてたら断ったであろう条件を最後の最後で何個も提示してきやがった。やっぱり……。

 

 やっぱりこいつ悪魔だ。マジで――。

 

 

 

「ふざけんなァァァァァァァァァァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

 

 

 俺はゆっくりと目を開けると、そこは――。

 

 

 

「マジ……か」

 

 

 

 確かに王道ファンタジーの雰囲気は微塵も感じられない。俺が転生したのは、犯罪臭漂う、薄暗い世界だった。


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