問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
この辺から色々と原作と変わっていきます……具体的には、お風呂シーンまるごとカットとか。
それと、オリジナル章第二章への繋がり的な意味合いもあるので……もしかしたら孤独の狐はそのオリジナル章で完結かもしれません。
「エト……お前生きてたんだな!?あの時死んだんじゃないんだよな!?」
「ったりめーよ。あんな爆発一つで死ぬタマかよ……それに、お前も生きてるんなら俺も生きてるのは当たり前だろ?」
「ああ……ああ!確かにそうだよな、うん!」
「にしてもお前……ちょーっと見ねぇうちに随分可愛くなったもんだなぁオイ!ッハハハ!」
「て、テメェ!そーいうエトはあれから十年以上経ってるクセに結局チビじゃねぇか!」
「あ゛ぁ゛!?テメェ見ない間に随分大層な性格になりやがっなぁ!?」
「そういうエトも前は聞き分け良かった!」
ギャーギャーワーワー、竜胆はエトと名乗った少年と親しげに、かつ彼らしからぬ毒気を持って悪口をぶつけ合いまくる。
「あ、あの、竜胆さん……そちらの方は?」
「ん?あ、紹介してなかったか。コイツは『エト』。一言で言うなら、俺の同類」
「ってわけだ、よろしくな竜胆のコミュニティさん」
「あ、ジン=ラッセルです。それでこっちがペストです」
「……ペストよ」
「ムッツリかこのロリ娘は」
エトはニヤニヤと笑いながらペストを見る。ペストはちょっと君が悪そうな顔をする。
「それより……エト、さん?竜胆さんの同類ってどういうことなんですか……?いえ、なんとなく予想はつきますけど」
「そりゃあね、言葉のまんまの意味さ。俺も
やっぱりか……そんな表情でジンとペストはエトを見る。だが、エトは当初の竜胆のように絶望感に塗り潰されているような風には見えない。
というか、むしろその真逆。今の竜胆に近い、フランクでイケメンなのに飛鳥より身長があるかないかくらいの大きさで、さっきの竜胆との舌戦から三枚目というイメージの方が大きい。
「"被検体モデルE-10"。だから
まあよろしく頼むよ少年少女!エトはそう言って殿下とリンの方に目を向ける。
「あ、そうそう殿下、キミらを探していたのには他でもない理由があってだよ」
「お前が意味もなく俺達と接触するわけがないだろう。互いにコミュニティの名こそ知れども全貌は知らない仲だ。お前は互いに曝け出しあった相手にのみ等しく接すると聞いている……今の会話がいい例だ」
「ははぁ、流石は殿下、お見通しってわけね。オーケー。んじゃさっさと用件だけ……"造物主の決闘"に一戦、面白そうな試合がある」
エトは軽く笑った後怪しく微笑みながらそれを告げる。面白そうな試合、とだけ告げられた殿下は首を傾げる。
「面白い?どんなだ」
「殿下が北と南の魔王襲来辺りの時に見つけたっていうギフトの持ち主とその同胞……それと、"ウィル・オ・ウィスプ"のリーダーのバトルロワイアルさ」
「なに……!?」
「どうだい?席は取ってある。行く価値はあるんじゃないかな?」
エトの言葉に彼らしからぬ動揺をした殿下は一考し、即座に首を縦に下ろした。
「そうだな。行くとするか……まあ、こっちの野暮用が終わればだが……」
殿下はちらと竜胆達の方を見る。竜胆はジンにリーダーに任せるという風に目を配ると、ジンもそれに頷く。
「うん。殿下達にも予定があるのなら、竜胆さんの言う通りここまで乗りかかった僕らもいっそのこと手伝うよ。それで、追っている事件っていうのは?」
ジンがそう言うとサンドラは軽く頷く。
「"煌焰の都"では今、子供の失踪事件が相次いで起こってるの」
「失踪事件?それも、子供の?」
"階層支配者"であるサンドラが追うにはあまりにも小さな事件なので思わずおうむ返しに唱え直した。
「言いたいことはわかるよ。でもこれは十中八九悪魔か鬼種が起こしてる事件……一種の"神隠し"だと思うの」
「なら専門の機関に任せるべきだ。"サラマンドラ"にもあるはずだよね?」
「それでどうにかなるなら"階層支配者"が態々出向く筈もない……となれば、"神隠し"は"神隠し"でも、なにかその専門家でも解決できない要因があると?」
「その通りだよ竜胆さん。今回の事件はただの"神隠し"じゃない。コレの"ルール"を彼らは認知できていない」
「ルール?ってことはギフトゲームの一種としての"神隠し"ってことか?それで失踪する"事件"が起きているとなると……意図的に"子供だけを狙った魔王のゲーム"って言いたいのか?」
「確証は少ないけど。早くに対処するに越したことはないから」
なるほど、と竜胆は腰元を左手で掴みながら右手は左腕に乗せて顎元に持っていく。無駄な巨乳がちょっとそれを阻害している。
対して竜胆と同じくサンドラに質問を投げかけたエトはふーん、と興味はなさそうな素振りを見せる。
「……ペスト。お前のゲームもハーメルンの笛吹きの子供の失踪に絡む一種の"神隠し"だったな。思い当たることかなにかはないか?」
ペストは少し膨れながら顔を顰め、少し考えた素振りを見せるとサンドラに問い直す。
「……"契約書類"は発見されていないの?」
「ない。代わりに文のようなものが現場に残されていた」
「文?」
その問いにサンドラは現場に残っていた三つの文字を炎で描く。
───
───
───
ペストはサッと読み直すが、意味がわからないことも含めて微妙な顔を浮かべる。
「……リンドウ、これどういう意味?」
もうエトに名前を看破された以上偽名の方で呼ぶ必要性を感じなくなったペストはいつものように竜胆の名を呼ぶ。
「ジン」
「え!?……え、えっと、総括すると"日々を怠惰に過ごし、何も成す事もない"……かな。三つとも。手掛かりは他には?」
「もう一つだけ。現場の壁にでっかく"混"の文字が書かれていた」
ジンの問いかけに答えたのはリンだ。
「この文字がネックなんだけどね、実は"階層支配者"の招集会に似たようなものが挑戦状として届いてるらしいの」
「挑戦状?」
「うん。すっごい口汚い内容だったから要約するけど……"階層支配者"を襲うといった文面だったらしいよ」
「なるほど……態々"階層支配者"に喧嘩を売るバカはどこぞの
「ええと、わかってることを纏めると
一つ、子供が失踪する事件が相次いでいる。
二つ、現場には"遊手好閑"、"虚度光陰"、"一事無成"の三つの文字が書かれていた文があった。
三つ、同じく現場には"混"の一文字。
四つ、"階層支配者"への襲撃予告にも"混"のメッセージ
これで全部?」
ジンの言葉に頷くサンドラ。そうしてサンドラの下にいるリンと殿下の姿にペストは無性に嫌な予感を抱いていた。
(……ホント、一体何を考えているのやら)
ただ成り行きを見守ることしかできないペストは現状黒ウサギか十六夜と運良く遭遇できればなんかあるなー、程度。竜胆はエトという存在もあって完全に殿下とリンに対して激甘モードで接している。
とどのつまり、匙を投げることが最良。
「というかそもそも、その襲撃予告者は本当に魔王なの?この前みたいな各個撃破狙いでならわかるけど、今回は"階層支配者"が集う招集会よ?本当は他になにかあるんじゃないの?」
「他に、か?ムッツリロリ娘にはなにか思い当たる節でもあるのかい?」
「ないわ。ただこの"煌焰の都"は貴重なギフトや工房を展示する"星海の石碑"がある。"階層支配者"への襲撃はブラフで、本当の目的はなにか他のものがあるんじゃないの?」
ペストの言葉にサンドラは一理あると思ったのか暫し黙り込む。
「襲撃予告というモノをブラフにしてまで果たすこと……?そこまでするほどの貴重品なんて北側に来る前に軽く下調べはしたがそんなものはなかったはずだが」
「あるよ。一つだけ」
リンがぽつりと呟き、殿下を除く五人は思わずリンを凝視する。
「"煌焰の都"には二百年前に封印された魔王が眠っている。それも超弩級のモノで、"箱庭の貴族"の都を僅か一刻で滅ぼした、護法十二天にさえ匹敵するのがね」
リンの可憐な笑顔とは百八十度真逆な言葉にジンとペスト、竜胆は思わず息を呑む。
「いやまて……そもそも"箱庭の貴族"の都を滅ぼしたってことは」
「まさか、黒ウサギの故郷を!?」
「それに護法十二天って最強の武神集でしょ?それに匹敵する魔王がここに眠っているなんて、にわかに信じがたいけど……
三人の戦慄を帯びた言葉にサンドラは気まずい表情で頷く。
「じ、実はそれ、私も"階層支配者"に就任した時に初めて聞いたんだ。でも父上様が最高機密だから誰にも話すなって言われてたのに……なんでリンはそれを知ってるの?」
「業界の噂話。それにこれは飽くまで噂話。こんな大都市にそんな護法十二天に匹敵する魔王が封印されてるなんて普通は誰も信じないでしょ?」
リンは飽くまで噂話だと主張する。
確かに、そんなバケモノみたいなヤツがこんな大都市に封印されるなんて普通に、いや、どれだけ愚かしく考えてもあり得ない。あり得るとすればそれはもう信じられない夢の領域だ。
そう思案した竜胆は話を総括すべく強引に話に決着をつけた。
「……そうか。まぁ、一度俺達だけで"神隠し"の調査はしよう。勿論エトもだ。それで何もなければ大人しく"サラマンドラ"に協力を仰ぐ。それでいいか?」
「捜索って、当てはあるの?」
「絶対的に正しいとは言えない。ジンも答えには至っているだろうがな」
竜胆が不敵に口を閉ざす。さっきまでのエトへの噛み砕いたような態度ややたら驚いていた彼とは一転していつもの大胆不敵な笑みを浮かべている。
「竜胆。その態度は周囲の疑惑を増長させるからあまり関心はできない」
そんな竜胆に対して殿下が一言糾弾の声を浴びせる。それに対して竜胆はバツの悪そうな表情を浮かべる。
「すまないな。一時期はこうして虚勢を張ってないとやってらんない時期があったせいでかなりクセになってるんだ。……まぁ、現場を確認して回れば予想は多分確信に変わる。それと明日、あのニート蛇……もとい、蛟劉に会いに行く」
「蛟劉……蛟魔王に?」
ペストが不思議そうに問うと、今度はジンが口を開く。一瞬言うのをやめようかと思ったが、先程の殿下の言葉がまるで自分にも「不可解な態度は周囲に困惑を及ぼす」と言っているようにも感じたため、やはり言い切ることにした。
「敵の狙いは多分"階層支配者"じゃなくて……白夜叉様がいなくなったことで階層支配者代行に就いた蛟劉さんだと思う」
「……根拠は?」
「遊手好閑、虚度光陰、一事無成。これらの意味はさっき言った通り中華で"日々を怠惰に過ごす"意味がある……これがもし犯人からのメッセージであるとすればそれは枯れ木の流木とさえ揶揄された蛟劉さんが階層支配者代行に就いたことに不満を持っている者からのモノなんじゃないかな」
「確かに……それなら辻褄が合うかも!」
「おおー!凄い凄い!ジンくんと、そこに気付いた竜胆さんはゲームメイカーの素質あるね!」
「そんなガラじゃないからやめてくれ」
「蛟劉さんが"煌焰の都"を訪れるのは早くて明日の早朝……それまでに他の現場は見回っておこう。最初の現場は?」
ジンがサンドラに問うと、サンドラが答える前にエトがその口を開いた。
「それに関しては殿下達にとっても好都合な場所さ。さっき事件の捜査してるヤツがいたからなにやってんのか聞いてきたよ。最初の現場は"星海の石碑"……偶然も行き過ぎてる気がするが、場所は"造物主の決闘"が開かれる地区だ」
エトは偶然自分と同じ屋根の上を移動していたバカみたいな動きをする金髪の少年の姿を思い浮かべながら、そう言うのであった。
◆◇◆
『ギフトゲーム名"造物主の決闘"
・参加コミュニティ
✳︎全二十四名 ※別紙参照。
・ゲーム概要
一、予選は一試合で三人が一斉にぶつかり合う。
二、最後まで失格しなかった一人が予選通過。
・勝利条件
一、対戦者がリングから落ちた場合。
二、対戦者のギフトを破壊した場合。
三、対戦者が勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)。
・敗北条件
一、参加者がリングから落ちた場合。
二、参加者のギフトが破壊された場合。
三、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗の下、コミュニティはギフトゲームを開催します。
"サラマンドラ"印』
沈み始めた夕陽とペンダントランプの篝火が闘技場に差し込む。支配者の招集会という一大イベントもあってか、今回の"造物主の決闘"は今までにない盛り上がりを見せていた。
三人の参加者はそれぞれ闘技場の隅に立ち、開幕の銅鑼が鳴るのを待ち続ける。
飛鳥は北側に立ち、苦虫を噛みしめるような顔で対戦者を睨む。
(まさか最後の同盟相手があの"ペルセウス"だなんて……しかも、"造物主の決闘"で優勝しなければディーンと新しいギフトを含む私の三つのギフトをあのボンボンに献上するなんて……いえ、それよりも)
飛鳥は別方向に立つ二人の人物を見つめる。
(まさか春日部さんとギフトゲームで競い合う日が来るなんて……それに、もう一人は"ヒッポカンプの騎手"でその春日部さんと馬鹿騒ぎの対戦をした鈴蘭さん……どちらも一筋縄では行かない相手ね)
耀は右手を開いたり閉じたり、不可解な行動を繰り返しており、鈴蘭に至っては観客席にいる観客一人一人で手を振ってテンションがハイになったのか、投げキッスまで仕出す始末。
「───んにゃ?あーはー!私飛鳥殿に睨まれてる!きゃーこわ!でも、ギフトゲームは本来楽しんでやるものなんだからそういう顔は良くないゾ☆」
イラっと来た。なんか凄いイラっと来た。無自覚に鈴蘭は飛鳥を煽り、ドンドンと飛鳥の沸点は怒り新党である。
「………」
そしてそんな飛鳥の表情からアーシャは察して思わず飛鳥に声を掛ける。
「ちょ、ちょっと待った!飛鳥、アレはスズ姐の素なんだよ!そっちにはスズ姐の弟もいるから話は聞いてるかもしれないけど、あーやって無自覚に他人を煽っちまうんだよ!」
「っ……!厳重注意しておいて!竜胆くんにお仕置きしておくよう私からも頼むから!」
「お、おう!わかった!」
正直、それだけでは飛鳥の個人的な怒りは収まらなかったが、そこはあえて我慢。
(上等よ……!ここは舞台の上。この借りは例え北側最高のプレイヤーだろうと必ず返してあげるわ……!)
しかし、逆にその煽りは飛鳥の竦んだ心に喝を入れる結果に至ったのだ。
「貴方達を信じてるわよ……ディーン、そして"アルマテイア"」
『お任せください、マイマスター』
◆◇◆
『……どうだ、ヨウ?』
(……問題ないよククルカン。貴方が私の中に入ってきたせいで強制的に付加された力の余波……なんとか理解できた)
『ならば問題はない。我が汝の中にいたせいで負けたなどという結果になれば目覚めが悪い』
耀は右手を開き、閉じを繰り返し自分の中に強制的に流れ込んでくるククルカンの力の一部を制御していた。
どうして飛鳥がゲームに参加したのかは知らない。
だが、耀にもゲームに参加し、勝ち抜くだけの理由はある。
耀は横目で相変わらずのハイテンションで周りにアピールしている鈴蘭の姿を見て、先程の青い髪の少女の言葉を思い出す。
"これで、コウメイとの約束が───"
あの後遭遇したアーシャにその少女が"ウィル・オ・ウィスプ"のリーダーのウィラ=ザ=イグニファトゥスであることは聞いた。
そのウィラが何を知っているのかは定かではないが、あの口ぶりは間違いなく父に関する何かを知っている。ならばその側近である鈴蘭からもなにかを聞きだせる可能性は決して低くない。
それに何より、久遠飛鳥の友人として彼女の前で、高町竜胆の"友人"として彼の姉である鈴蘭の前で恥ずかしい戦いは許されない。
『……あいも変わらず不憫な男よ』
(………?まぁ、観客席には黒ウサギとジャックがいた。なら飛鳥は新しいギフトを手に入れているはず。それを使われる前に勝負をつける)
ククルカンの呟きは理解できなかったので無視することにし、闘志と気迫、同士への期待感を胸に秘めて微笑む。もし初撃を凌がれればさほれは飛鳥が弱点を克服した証明。
それは友として嬉しくもあり、頼もしくもあり、驚異でもあり、愉しみでもある。
(それにスズのギフトはわかってる……スズの性格からしてこんな試合で
絶対の自信と策をその手に握りしめ、集中力を極限まで高める。
そしてその集中力が一瞬、彼女の周囲にあり得ない熱量を生み出すと共に闘技場の銅鑼と審判を任されたアーシャの喝采が鳴り響いた。
『それでは第一試合!
"ノーネーム"所属 久遠飛鳥!
"ノーネーム"所属 春日部耀!
そして我らの爆走ヘッド!優勝候補筆頭の一角!道を塞ぐ壁は天元突破のクレイジーガール!
"ウィル・オ・ウィスプ"所属 鈴蘭=T=イグニファトゥス───!!!』
雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!と鈴蘭の紹介と共に立ち昇る大歓声。だがまあアーシャはその大歓声の理由を自身ではなく鈴蘭に向けて言っているのだと誤解しつつも、その盛り上がりに満足そうに頷き、右手を掲げて宣誓する。
『それでは此処に───"造物主の決闘"の開催を宣言します!!!』
次回予告
戦いはいつだって始まる。なにをきっかけにしようとも、なにを理由にしようとも。どんな戦いであろうとも、理由のない戦なんてありはしない。
好奇心だって理由となりうる。悪戯心も理由となる。ならばこの戦いはなんなのか。
■■■■■■。
炎の中、それは叫ぶ。必ず果たすと叫ぶ。全てはただ、■■のためだけに。
次回、悠久《うつろい》