問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
軍神様の進路相談です!読みました。
あれです。孤独の狐のクライマックスは完全に出来上がりました。
案として別れるのが
竜胆くんが不幸な目に遭ってる最中耀ちゃんさんが気丈に振る舞う。
竜胆くんが不幸な目から脱出してから耀ちゃんさんとイチャイチャするか。
この二つに別れました。
イヤー、ドッチニシヨウカマヨウナー。
ギフトゲームが始まった途端、それは唐突に襲って来た。
「開幕ぶっぱはジャスティィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッス!!!行くぜ突撃ラヴハァァァァァァァアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
「え!?」
「な、なによこのデタラメな熱量!?」
『なんとバカげた女子だ!いくらギフトゲームが死んだら死んだ方が悪いゲームとはいえ、こんな腕試しのようなゲームでいきなり殺しにかかるなど!?』
鈴蘭はいきなりどこからともなく機械仕掛けの杖を取り出すと、飛鳥と耀に向けて超、大質量の冥界の焔を放った。
しかもただの冥界の焔ではない。彼女のギフト
「ちょ、スズ姐タンマァァアアアア!!?」
実況席にいたアーシャ達は攻撃遮断のギフトによってその焔こそ届かなかったものの、その余波と熱だけはそれを貫通するように届いて観客達を遠慮無く吹き飛ばした。
このようにふざけたような記し方でもわかるくらいに、否、そうとしか形容できないほどに鈴蘭の力はムチャクチャだった。
その様子は観客席から見ればどう見ても『鈴蘭が飛鳥と耀を一方的に消し炭にした』としかとれない光景だ。
それを理解したから、それを認知してしまったから黒ウサギは声を荒げて鈴蘭に向けて激昂し、彼女を糾弾せんとする。
「よ、よくも……よくも黒ウサギの、貴女の弟様の同士を───!!!」
「いえ、落ち着いてください黒ウサギ殿。アレ程度で死んでしまうほど、お二人ともヤワではありませんヨ!」
へ?と黒ウサギは思わず間抜けな声を挙げてしまった。
果たしてそれが合図だったのか、それとも偶然なのか。轟々と燃え盛る獄炎は、紗蘭という雅な鈴の音によって打ち砕かれた。
◆◇◆
あれから少ししてから結局殿下達と別れて闘技場まで足を運んでいたペストは目の前の事象に呆然となっていた。
最早、この現象は比喩でもなんでもない。
鋼鉄を燃やし尽くし、凍てつく氷を燃やし、炎すら燃やし尽くす焔は一瞬にして巨大な氷柱となり粉々になった。
「炎を……無機物ですら燃やし尽くす焔を凍らせた……!?まさか飛鳥が、」
そして視線を闘技場に落とし、再び驚いた。
闘技場に飛鳥の姿はなく、鈴蘭と耀の二人とは別に鋼の球体が聳え立っていた。
そのサイズはディーンと匹敵するサイズで何者も寄せ付けない堅牢で壮大な存在感を放っている。
「もういいわ。防護を解いて、アルマ」
『了解しました、マイマスター』
その球体の中から飛鳥の声が響き、同時にその球体も喋り出す。その瞬時、球体はその姿を力強く躍動し、威風堂々と稲光を漂わせる。
(山羊の……神獣!?それも稲妻を担っているなんて、並大抵の神獣じゃあない……!)
古来より雷は神霊の格の高さを現す象徴である。
"神鳴り"、読んで字の如くそれらの自然現象は太古から現代まで人類が支配することのできない唯一の事象である。
そんなものを従えるのはそれだけの力を持つという証明である。
(おかしい……あの山羊の神獣は明らかに飛鳥の実力を上回っている
飛鳥はどうやってあんな怪物を調伏したの……?)
「ペスト!どうしたのそんなところで!」
彼女の名を呼んだのは展示回廊で別れたジン達だった。
三人はペストに駆け寄るが、リン、エト、竜胆の三人がいないことに小首を傾げる。
「………?リンドウ達はどこに?」
「リンは事情があるって別れたけど、それは殿下の方が詳しいんじゃないかな?」
「大丈夫だ、把握している。リンのことだ、今頃神隠しの正体でも突き止めているところなんじゃないか?」
「ホントに!?」
「ああ、手掛かりを見つけたと言っていたからな」
「竜胆さんとエトさんは残念ながら……気づいたらいなくなってたんです」
「それに関してもあのエトのことだ。十数年ぶりに友と再会したのが嬉しくてその辺をほっつき歩いてるだろ……それより見てみろ。なかなか面白いことになってるぜ」
殿下は楽しそうに眼下の試合を観る。その先にある光景は───
◆◇◆
(もうっ……凍らせる宝珠は燃やす宝珠よりも値段がバカにならないくらいぼったくりだっていうのに、いきなり使わせてくれたわね……!)
飛鳥は山羊の神獣───アルマテイアを従えながら軽く毒づく。ただでさえ(竜胆というでかすぎる収入源があるとはいえ)ノーネームで資金稼ぎに難のあるコミュニティに属している彼女からすればできれば使いたくなかった一手。それをこうも容易く使わせるとは流石は竜胆に聞いていた通りネジがぶっ飛んだ姉、そして金銭感覚の無さ。
先程の圧倒的火力も相まって飛鳥は人一倍彼女を敵に回さなくてよかったと色んな意味で思った。
(それより春日部さんは!?)
飛鳥はそこでハッとなって耀のいた場所に目をやる。
「………」
どうやら飛鳥の心配は杞憂だったようだ。だが飛鳥はその杞憂が一瞬にして驚愕に変わった。
「春日部さん……!?」
「……ふぅ、」
飛鳥の驚愕は尤もだ。なぜなら耀は今、
にも関わらず、彼女の身体には傷一つついていない。
「か、春日部さん……どういうことなの、それ!?」
「それは……秘密。ちょっと飛鳥にも言えない事情がある」
耀はそう言いながらも内心この事には自分が一番驚いていた。
(ク、ククルカン……聞いてないよ、貴方の力がこんな凄いものだなんて)
『くくく、言うわけなかろう。我は汝のそういう阿呆のように呆然としておる顔が見たかったのだ。どうだ、これで汝も少しは我の偉大さを理解したであろう?』
ククルカンは悪戯っぽく笑う。そんな彼の声に耀は少しだけ辟易しつつもそんな感情がバレないように必死にポーカーフェイスを作っていた。
『特に我の力は炎。炎を扱うモノとして冥界神程度の副産物としての焔なぞに燃やされてたまるものか』
ククルカンは自慢半分にまるでバカにされたようにケッ、と吐き捨てる。
『まぁ、ほぼ強制的とはいえ我が力を貸しておるのだ、勝って魅せよ、ヨウ!』
「……わかった」
最後の一言は小さく口に出しながら頷く。
「……さて、鈴蘭さん。もうこの際貴女の悪癖に関しては気にしないことにするけど……答えてもらうわ。なぜこんな燃やせないモノすら燃やす危険極まりない焔をなんの躊躇もなく放ったのかを」
耀もこれにはコクッ、と頷く。ククルカンという不確定要素の塊がいたからなんとかなったものの、もしそれがなかったらあっさりと灰の
カタマリへと変貌していたことは想像に難くない。
「んにゃ?……危険?」
鈴蘭はそんな問いに対して『まるで意味がわからんぞ!』とでも言うような顔を見せる。
「にゃはは!ジョーダンでしょ飛鳥殿!なーんでこの程度の炎が危険極まりないのだい?」
あっけからんと、そんな事を言い出す。これには思わず二人共返しの言葉に詰まってしまった。
「……そ、そうね。あの程度の焔ならなんともなかったわ」
「と、当然。あの程度の焔なら、なんともなかったし」
『内心超ビビっていながら何を言うか。汝が過剰にビビってたせいで精神が繋がっている我もビビらなくていいのにビビってたのだぞ』
(うるさい)
煽ってくるククルカンに内心一言。本当に鬱陶しそうなのでさすがにククルカンは押し黙る。
そんな耀の心情はいざ知らず、鈴蘭は煽っているかと思われた台詞から一転、ふざけた口調だけ残して真面目な表情を作る。
「……まーさ、私初めて会って"ヒッポカンプの騎手"で耀ちゃんさんと手を合わせた時から思ってたんだけどぉ……なんつーか、過小評価し過ぎじゃね?」
「え……?」
「別に私が二人を過大評価してるわけでもないし、可愛い可愛い弟の私とは別の家族だからちょ〜っと贔屓してる、とかそんなのは全然ないんだよ?でもね、二人共やっぱり自分に自信がないように見えるんだよ。世の中楽〜に生きなきゃ辛いよ?イザちーみたいに楽しみたいこと楽しみ尽くしてさぁ、リンみたいに硬いこと考える必要なんかないんだって」
自分もそうだったから、と内心一言付け加える。死んで幽霊になって、ウィラと出会って箱庭を知って……忙しさを彼女なりに感じてはいた。生活に慣れてその忙しさがなくなったその瞬間、彼女はとてつもない後悔に苛まれた。
もしあの時生きていられれば、弟にあんな涙を流させる必要なんかなかったのではないか。あの時、なにがなんだかわからないうちに全てを失った日で、原因を知ることができていればこんなことにはならなかったのではないか。
そんなできるはずもないことを彼女はただ弟が心配だから、弟が世界で一番大好きだからという理由だけでできていたのかもしれないと自分の首を絞めていた。
日に日に焦りが出て来てコミュニティに迷惑をかけていると感じ、サボりと嘘を言って火龍誕生祭で生き甲斐だった弟がいないのならいっそのことこのままコミュニティを抜けてまた死んでしまおうかとナーバスになっていた頃、偶然ステンドグラスを眺めていた
それは正に天命だった。今すぐその場に出て行って抱き締めてあげたいとも思った。だが、その時に彼女は知ってしまったのだ。
高町鈴蘭の知る高町竜胆はあの日からまるで時間が止まってしまったかのように死んだ瞳をしていたことを。
それから葛藤して、自分の魔法で"アンダーウッド"でまた会えると知って……そこに行くのが怖かった。
果たして再会した弟は自分のことを姉と呼んでくれるのか、そもそも死んでから物理的な時間が止まった自分は姉と呼べるのか。そんな悩みを抱えたままジャックに竜胆のことで呼ばれて"アンダーウッド"に向かっている際の魔王の襲来。否が応でも彼女は"アンダーウッド"へと全速前進しなければならなくなり、ギフトゲームを終えてからジャックに『どうやら彼の肩の荷は降りて昔通りの彼に戻ったようですヨ!ヤホホ!』という一言を聞いた時は心底安心して、自分も昔の自分に戻れた気がした。
「……そう。貴女達のおかげなんだよ。弟を……リンと私を助けてくれたキミ達にはね。だからこれは私からの御礼!私は手加減できない性格だし、ギフトも火力調整なんてことできないから遠慮無くかかってこんかいッ!」
「当然よ……私達がなんで貴女を助けたのかは知らないけど、相手からの誠意は全身で受け止めるわ!」
「勿論、私も全力全開。だからスズも最高の力で私達と戦って」
「おうおうおk!私はそーいうの大好きだかんね!さースイッチ入れ直して頑張るよ!」
そしてその瞬間、事態は一変した。
◆◇◆
「お前……どこかで僕と会ったことないか?」
時は少し遡り、黒ウサギ達と合流したペストは改めて三人の試合を見ていた。そしてその試合がいい感じに白熱してきた頃、飛鳥の負けっぷりを見るためと言ってジャックについて来ていたルイオスは殿下に向けてこう言った。
「そうかもしれないな。会ったことがあるとすれば俺のコミュニティは商業コミュニティだから、なにかの商談の途中で顔を見た程度じゃないか?」
「ああ、うん。そんな感じの記憶。思い出しそうで思い出せない……どこか大きな商談の時に会った覚えがあるような」
ルイオスはどこだったかなー、と呑気に考える。その姿を見たジンはなにかの確証に至ったようにルイオスに話しかける。
「あの、ルイオスさん」
「あん?どうしたんだよ」
「いえ、それってもしかして───
その瞬間、その場にいた人物、殿下を含めた全員に戦慄が走る。殿下とペスト以外の人間からすればレティシアを"ペルセウス"に売ったコミュニティなどとあるコミュニティを除いてあるはずもなく、殿下とペストからすればどうやってその答えに行き着いたのか、という意味での戦慄だ。
(ジン……一体いつから……!?)
「お下がりくださいサンドラ様!この方が本当にジン坊ちゃんの言う通りの人物ならば、彼は間違いなく'"魔王連盟"の人間です!早く憲兵団を呼んでください!」
黒ウサギが殿下からサンドラを守るように立ちはだかる。サンドラは一瞬惚けたように殿下を見ていたが、すぐに自分が友情程度に流されてはいけない"階層支配者"という立場にいることを思い出す。
「……"箱庭の貴族"様!彼を捕らえておいてください!すぐに"サラマンドラ"の憲兵団を呼んでくるから!」
サンドラはまるでそこにいたくないかのように闘技場の外へと飛び出した。殿下はその一部始終を見守ると少しだけ笑みを浮かべる。
「コイツは驚いた……まさか感づかれていたとはな。参考までにいいかジン?お前はどうして俺とリンが魔王連盟の人間だと気付いたんだ?」
「……その口ぶりからするとエトさんは無関係みたいだね」
「それに関してなら俺達とは違うコミュニティの人間と言ったはずだぜ?」
殿下の言葉を聞いたジンは暫く声を貯め、ゆっくりと吐き出す。
「……怪しいと思ってたのは最初からだよ。リンは最初僕らと会った時にペストに対して『久し振り』って言ったよね。ペストは隷属してからほぼ毎日僕と一緒にいたからね。その彼女がその期間の間に僕の知らない交友を広げることなんてできない……だとすれば、彼女とキミ達が知り合ったのは彼女が魔王だった頃しかないんだ」
「……なるほど。まさか最初の時点でそこに至っていたとは。俺のケアレスミス……いや、そっちのファインプレーか。マーベラスだジン。大正解」
殿下はジンの言葉に関して全てを肯定し、そしてすぐに思い出したようにジンに次の話題を振る。
「そうだ、もう一つ教えてくれ」
「……何?」
「ジンは一体何処まで気が付いている?俺にはお前が今回の"神隠し"の解釈を間違っているようには思えない。……本当は見えてるんじゃないのか?"神隠し"の真実が」
純粋に好奇心のままにジンを見つめる殿下の瞳。その眼を見つめ返したまま静かにジンは語った。
「……いいや。違うよ。あれはあれで一つの推理、一つの解釈。今回の"神隠し"を起こしているのは恐らく西遊記の"混世魔王"。
混世魔王の通説は孫悟空の故郷から子猿ばかりを攫い続ける人攫いの猿鬼……が、実のところはその霊格は"放蕩心"……思いのままに生き続ける心の化身である。西遊記という混沌極まる混世で人の心の隙間に漬け込み"一事無成"、一事も為すことのない魂へと変質させる。
これは大人を緩やかな堕落へと誘い混世を築き、子供の放蕩心を増長させることで親から孤立させる力を持つ。
これが、"未熟な子供の神隠し"の真実である。
一通り話したジンは改めて殿下にその視線を送る。
「……殿下。僕達は今日、これにとてもよく似た境遇の女の子と共にいたよね?」
「ああ。そうだな」
最早隠す素振りも無い。それはもうジンがその女の子の正体を答える必要もないことを如実に示していた。
「殿下……キミ達の狙いは"混世魔王"とコンタクトを取ること、そしてその力でサンドラを"神隠し"に遭わせることだ……!!」
「ブラボー、百点満点だジン。まさかそこまで見抜いていたなんておもいにもよらなかった。本当に見直したぞ」
高らかに嗤いを挙げながら面白かったという感情を有りっ丈の全てを使う殿下。
その二人のやりとりを隣で聞いていたペストは蒼白になりながらもそもそもの顛末を顧みていた。
(それじゃあサンドラは宮殿から抜け出したんじゃなくて……"神隠し"の被害者として仕立て上げさせるために宮殿を抜け出させられていたってこと……!?)
もしあの宮殿で出会っていなければ今頃サンドラは"神隠し"の被害者として姿を消していた。招集会の主催者たる彼女がいなくなれば"サラマンドラ"の空中分解は明白。主催者達の連携も取りづらくなる。
あの時サンドラに出会えたのは正に奇跡のような巡り合わせだ。
(リンドウが二人を甘やかしていた以上話しかけるタイミングなんてなかった。ジン……まさか、一人でここまで考えていたなんて……!)
「……殿下。今すぐ投降してほしい。この状況がどうにかなると思うほどキミは愚かじゃないハズだ」
「ふぅん。投降、ねぇ」
殿下は嗤いを噛み殺しながら周囲を取り囲む人物達を一瞥する。
"ペルセウス"の頭首、ルイオス。
"ウィル・オ・ウィスプ"の参謀、ジャック。
"箱庭の貴族"である黒ウサギ。
"ノーネーム"に下った元魔王ペスト。
一通り確認するとふっと、悪戯を思いついたように笑った。
「そうだ。取引しようぜジン」
「……取引?」
鸚鵡返しな返したジンに対して妙案を思いついたというような笑顔で───
「全員、生かして帰してやる。だからジンとペスト、それとこの場にいない竜胆は俺の軍門に下れ」
前書きの案は結局どの案も竜胆くんがスーパー不幸な目に遭ってその不幸の内容は全く変わらないというファンサービス込みですがね!
というわけでラストエンブリオ編を書くとしたらの予告編っぽいのどうぞ。
瞳を開いた。
場所はわからない。自分が何者かなんて曖昧すぎる。
それでもきっと、きっと記憶の奥底にいる顔も見えない"あの人"ならきっとこうする。僕は"あの人"になりたい。名前も知らない"あの人"に。
だから僕は名前がない。"あの人"を追い求めて、自分でも"あの人"でもなくなった僕は何者でもない。
だけど、それでも僕を名前で呼びたいのなら。
それなら僕のことは、ブルームと呼んで欲しい。
待ってて"あの人"。僕はアナタになる。アナタに僕は、なりたいんだ。