問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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一応今回で落陽、そして墜月分は終わりです。僕の大好きな閣下は暴虐の三頭龍に持ち越し……デス。




三話 闇の中に産声ひとつ。

 

「……よぉ、竜胆。随分とアレなカッコになってんじゃねぇか」

 

「……だれだよ、おまえ」

 

「呵々!どーやらほんっとうにやっちまったみたいだな。ま、俺としては……そうなった後の方が気がかりなんだが?」

 

「しつもん、こたえろよ」

 

会話のキャッチボールが成り立っていないことに苛立ちを露わにしながら"罪"はその双眸でエト睨む。お前のことなんて眼中にない、とでも言うように。

 

「答えても意味なんてないだろ?どーせお姫様がお前を止めるんだからな。あ!でも、後でいいこと教えてやるよ」

 

「おまえのいうことなんてきかない。さっさときえろ」

 

「冗談。お姫様に逃げるだけの時間稼ぐって言っちまったんだ。約束は守らなきゃオトコノコじゃねぇって」

 

"罪"の……竜胆の容姿を皮肉っているような言葉は確実に怒りを蓄積させている。

 

眼中にないのなら、否が応でも眼の中に突っ込めばいい。煽り、実力……今のエトの持ち得る力を使って"罪"をこの場に繋ぎ止める。

 

「おまえ、きらいだ」

 

「そうか?俺は()()()()()()大好きだぜ?綺麗事しか並べられねぇ偽善者よりはそういう本能の赴くままに動くヤツの方が好感を持てる」

 

そう……世の中割り切ったモンが勝てんのよ。エトは息を吐くように告げる。その達観したような物言いは何故か"罪"を苛立たせる。なんでおまえはそうもかんたんにあきらめられないものをあきらめられるようなことを。ふざけるな。

 

"罪"の抱くその憎しみの出処を"罪"自身が捉えられないままより一層鋭さを増した瞳がエトを刺す。エトはおー怖い、とおちゃらけた台詞を吐くだけだ。

 

「───!!」

 

「正面衝突かよ。上等!」

 

"罪"はただ怒りのままに兵器と化した己の身体を振るう。対してエトはグローブ型の籠手を纏ってそれに対抗する。

 

「まだコイツは30%程度か……ま、時間稼ぎにゃ丁度いいさね!」

 

拳と拳の殴り合い。雲の上で戦う二人を見守るのは、ただケタケタと笑うように存在する三日月だけだった。

 

◆◇◆

 

「ぐっ……ふぅ……」

 

同刻、星海の神殿付近。"罪"による攻撃の影響で腹部を抑えながら耀はできるだけ早いペースで陣営に戻ってきた。一刻も早く自分が見てきて、起こってしまった現実を伝えるために。エトが彼を止めている間に。

 

『……ぐっ、無理をするな。我がいなければ確実に死んでいたレベルの負傷だ』

 

耀の痛みを同調しているククルカンが腹から声を絞り出すかのように苦痛の混ざった声で耀を諭す。だが耀はそれでは止まらない。伝えるために、救うために。

 

「……無理。それに、ここにいるより本陣に戻った方が安全……だからさ」

 

『……倒れるなよ。そうなっては本末転倒だ』

 

「勿論……」

 

ククルカンの心配する声を軽く流して耀は本陣に向けて歩を進める。今すぐにでも吐いてしまいたいような不快感があるが、何故か喉元でそれが押し戻される。まさかさっき強引に食道を止められて吐くものを呑み込んでしまったのが原因で呑み込んでしまうのが癖になってしまったのじゃないか、と地味に嫌な考えを巡らせながらじっと本陣を見据える。丁度そこにいたのは───

 

「……十六夜と、黒ウサギ?じゃあアレは、魔王連盟側の……え!?な、なに!?」

 

耀が困惑の声を挙げるのも無理はない。なぜならば、戦闘をしていた"煌焰の都"は急に大地震を起こし、地にあるものを薙ぎはらうように大きく揺れたのだから。

 

◆◇◆

 

時は少し遡り。

 

「らぁ!」

 

「っ」

 

"罪"に向かって音速を超える速度のラッシュを繰り出すエト。しかしその表情は想像よりも上手くいっていないと感じたのか、あまりよくはないものだ。

 

対して"罪"は先ほどとなんら変わりはない。竜胆が元々持っていた神格"太陽神の表情"が消えたことで同時に内包されていた呪術は使えない。純粋な格闘センスと肉体の部位を不規則に変化させて強襲、不意打ちを狙う戦法だ。

 

「完成にはまだ一年くらいはかかるシロモノだが……ここまで渡り合えただけ上等なのか?いや、まだまだだろどう考えても……」

 

チッ、と軽くエトは舌打ちをする。その言葉が指す意味はわからないが、これでは"罪"に向かって自分が万全ではないと言っているようにしか思えない。

 

っし、と気合いを入れ直したエトは"罪"に向けてその眼差を飛ばす。

 

「さあ来やがれ……お前にゃ俺のギフトの実験台になってもらうぜ……」

 

「よゆー、むかつく!」

 

エトの挑発的な態度に"罪"は激昂する。怒りとはパワーアップというのがファンタジーの常識だが、ここは箱庭。宗教的観念や神話を基に作られたこの世界はけっしてファンタジーなどではない。

 

エトは自分のギフトで攻撃を難なくいなして膝を容赦なく"罪"の腹部に叩き込む。丁度先ほど"罪"が耀に対して行ったようにだ。

 

「よく引っ掛かってくれるよ。素体に頭が在っても人格にゃ脳味噌詰まってねぇみたいだな!」

 

「うる、さい!」

 

「ま、でもお陰様でお姫様がもらった一発返せたんだ。スッキリしたよ」

 

あくまで挑発に。"罪"の怒りを煽るように招くその手はとんでもなく"罪"を苛立たせる。

 

エトのゲームメイクは十六夜や竜胆のように素直にゲームを解かない。正解と煽りを交えての作為的なミスの誘発。ミスが出れば儲けモノだが、別にミスの誘発が勝つために必須だとは考えていない。むしろ出ても出なくても関係ない。

 

だがそれでもその挑発的な態度をとる本当の理由は―――――敵対者に対する絶対的な自信。負けるつもりも毛頭なく、完膚なきまで叩きのめすという力。

 

それだけの力と自信が彼にはあるのだ。そして、自分の目的のためならば何を犠牲にしてもいいというある種の独善的な理想。それがあるからこそ彼は今こうして"罪"と対峙できている。"罪"に対して時間稼ぎができる。

 

「さぁ来やがれ!どんどんとな!」

 

「言われる必要性なんてない!」

 

身体を小さく畳んだ"罪"は超高速でエトに接近してその豪爪を振るう。速く単純になった分エトは一歩横に動くことで"罪"の一撃を回避、標的を見失って綺麗に外れたそれに容赦なく膝を腹部にぶつけ、アームハンマーを後頭部に振りおろし、アームハンマーの勢いでそのまま宙返りしながら踵落とし。

 

「グギャァッ!?」

 

「弱ぇんだよ!動きが単調すぎてつまんねぇ!オラオラオラオラ!!ヒハハハハ!!」

 

一切の油断をみせず、かといって滲み出る余裕を隠すでもなく高笑いしながら"罪"をその空にあるはずのない地面に縫い付け、幾度も幾度も背中を足蹴にする。

 

「ハハ!クヒャッハハハッー!そらそらそら!クソ弱ぇ!そういうのに頼るだけだからテメェはそうなんだよ!!」

 

「ァッ!ギッ!ゲガ!!」

 

「ケヒャハハ!!……あ、そーだ。いい事教えてやるっていってたっけ」

 

「ッグ、ゴ……かっ、ふ……ぅ!?」

 

エトが"罪"の髪を掴んで引っ張る。強引に同じ目線に合わせるその行為は端から見れば『エトが竜胆に救われた最初の友』だと言われて信じる者なんていないだろう。

 

「さーて、どうしようかなぁ。言ってやってもいいが、さっき断られたし。なによりオマエムカつくし」

 

「ぐっ……ううう!!」

 

「ケヒャヒャ!怒ってんのか!?俺に一撃でも入れてから吠えやがれってんだよ!!」

 

「だまれ!ぜったいやりかえしてやる!なこうがわめこうがやめるもんかっ……!」

 

「ヒハ!そういうのは現状何とかしてから言えってんだよ三下ァ!」

 

エトの笑い声と"罪"に対する情けのない羞恥を味あわせるようなその行為は終わることを知らない。ククルカンの力を得ていた耀を打ち倒した"罪"をその辺のゴミクズのようにあしらっている。

 

「こ、ろしてやる!!おまえ、ころしてやる!!ころ、こ、ころころころコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!!!!!!!!」

 

「アッハハハハ!!どーやら母体にギリギリ残った理性が完全に溶けるまで一歩ってみてぇだな!ハハ!そこまでになってんなら教えてやるか!ァア!?」

 

「コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラクラギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ」

 

最早声ですらない。"罪"の口から聞こえるのはこう形容するしかない音だけだ。

 

それを満足そうに見ていたエトは"罪"の口をどういう方法かは全くわからないが黙らせ、唇を耳元まで持っていく。

 

「竜胆……お前にとって五年前か。俺にとっちゃそんなのどうでもいいが……よく聞けよ」

 

「…………!━━━!」

 

リンドウの顔をじっくりと眺め、勿体ぶるような顔を作り、また狂喜の笑みを作って、エトは紡ぐ。

 

「竜胆。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五年前にお前の家族を殺したのは俺だ━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」

 

言葉すら失ったリンドウがつぶやいた一言。その言葉と共に、彼の理性は完全に消え失せた。

 





ジャンジャジャ~ン!今明かされる衝撃の真実ゥ~!楽しかったぜェ竜胆、お前との友情ゴッコォ~www

……エトが真ゲス。

ただまぁ、当初からこういう予定でしたし。エトが真犯人って予定でしたし。結構わかりやすかったんじゃないでしょうか?あからさまにラスボスの持ってる設定『親友だけどなにか裏と通じてる』とか。
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