問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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ライダーキックが炸裂したな……




八話 パラドキシカルZOO

「ま、まさかあそこに竜胆さんがいるとは思ってもいなかったのデスよ……」

 

「考えればあり得ることだったのだけどね……」

 

「……でも、一回もこっち向かなかったから、変な所で律儀」

 

風呂上がり、女子三人は竜胆よりも先に上がっていた。

 

本人曰く「俺は超久々に風呂入ってるからもっと満喫したい」らしい。

 

「それにしても、このドレス随分動きやすいわね」

 

「はい!それは昔白夜叉様がくださった黒ウサギの服なのですよ!

動きやすさは抜群です!」

 

飛鳥はためしに二回、三回、と回ってみる。

 

「……驚いたわ。こんなに動きやすいスカートは初めて」

 

「ふふ、当然でございます!なんといってもこの衣装には特別な御加護が、」

 

「ふむ、胸辺りが余っているな」

 

え?と三人。

 

「黒ウサギ、お前のボディラインと二人の身体を一緒にするなよ。

久遠はともかくとして、流石に耀にこんな胸余りする服を着せるのは───」

 

ガゴンッという危ない音が響いた。

 

「いっつつ……どうした、そんなに胸が小さいのが嫌か?」

 

考えるまでもなく、竜胆がいた。

 

「乙女の心を理解していないわ、貴方」

 

「ふん、そういう自分のためにならないことを学ぶのはどうでもいい。

久遠、さっさと脱げ」

 

は?と再び三人。

 

「いいから脱げ。それじゃあある意味恥ずかしくてたまらんだろ?」

 

そこまで言うと、三人はようやくああ、と納得した。

 

「貴方が直してくれるの?どれくらいかかる?」

 

「15秒あれば一着はつくれる」

 

「……超人?」

 

その後、本当に15秒で竜胆は飛鳥の服を見繕ったのはどうでもいい話である。

 

◆◇◆

 

翌日、一行はギフトゲームの舞台としてガルドが用意してきた、フォレス・ガロの居住区に来たのだが……

 

「ほう、正にジャングルだな」

 

やけに露出の高い肩出しの和服……というより巫女服っぽいのを着込んだ竜胆はそう言う。

 

いや、それだけなら元々その辺の女子より女子っぽい容姿をしている竜胆なら別段気にすることはない。問題はというと……

 

「……どうして、胸があるのかしら?」

 

「知るか。偶にある胸のある男って奴だ。女性ホルモンが身体に混じってるらしい。

一回それが嫌で男性ホルモン打ち込んだらその瞬間打ち込んだ分が全部死滅した」

 

竜胆は思い出したくないような風に明後日の方向を見る。

 

「そ、そう。ところで、このジャングルは何事なの?」

 

「虎の住むコミュニティなんだからおかしくないだろ」

 

飛鳥の言葉に十六夜はそう返す。

 

「いや、おかしいです。フォレス・ガロのコミュニティの本拠は普通の居住区だった筈……それに、この木はまさか」

 

ジンが木々に手を伸ばす。その樹皮は生き物のように脈打っていた。

 

「やっぱり、"鬼化"してる?いや、まさか」

 

「……複数の種族を纏った混血……嫌になる」

 

竜胆もそれに触れて心底嫌そうな顔をする。

 

「ジンくん。ここに"契約書類(ギアスロール)"が貼ってあるわ」

 

飛鳥がそう言う。門柱に貼ってあった羊皮紙にはゲームの内容が記されていた。

 

『ギフトゲーム "ハンティング"

 

・プレイヤー一覧

久遠 飛鳥

春日部 耀

高町 竜胆

ジン=ラッセル

 

・クリア条件

ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐

 

・クリア方法

ホストが指定した特定の武器でのみ討伐可能。指定武具以外は"契約(ギアス)"によりガルド=ガスパーを傷つけることは不可能。

 

・敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を果たせなくなった場合。

 

・指定武具

ゲームテリトリーにて配置。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ノーネーム"はギフトゲームに参加します。

"フォレス・ガロ"印』

 

「……やられたな」

 

竜胆がそう言うと、黒ウサギとジンも同様に声を挙げる。それを飛鳥は心配そうに問う。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いや、ゲームそのものは単純だな。だが問題はルールだ。

このルールは直訳すれば向こうが指定した武具でしか奴を倒せない。

即ち、久遠のギフトで奴を操ることができなければ、耀のギフトであいつを傷つけることもできず、俺の呪術で奴を凍らせたり燃やしたりすらできなくなる」

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに勝負を挑んだ時にルールをその場で決めておけば……」

 

実際のところ、ルールを決めるのに当たって、全てをホスト側に決めさせるのは殆ど自殺行為に近い。ジンはギフトゲーム参加ぎ初めてのため、それを理解していなかった。

 

「まあ、問題はないさ。奴を殺すには指定された武具のみ。しかし、奴の注意を引き寄せるにはなにをしてもいいのだろう?」

 

「い、YES」

 

「ならば、囮は俺に任せておけ」

 

◆◇◆

 

ギフトゲーム開始から数分、一行はとある屋敷を見つけた。

 

「あそこ。そこらへんに匂いがないってことは、建物の中にいる」

 

耀はその屋敷を指してそう言った。

 

「あいも変わらず便利な力だな」

 

竜胆はその屋敷に向かってなんの躊躇いもなく進む。

 

「ああ、そうだ。ジンはここにいろ」

 

竜胆が屋敷の二階に入る前にそう言った。

 

「な、何故ですか?僕もギフトは持っています。足手まといには」

 

「なる。ほぼ確実に」

 

「なっ……」

 

ジンは竜胆のその一言に思わずカチンと来た。

 

「いいか、お前はまだ十五にも満たない子供だ。ギフトだってどんなの持ってるか知らないが、お前自身の身体能力等を考えると、自身が戦闘をするようなギフトじゃない。

それにな、俺達全員が入っていったら、その時点でヤバい可能性だってある。ジンには退路を守ってほしい」

 

やはり、冷たい言葉などからは想像できない程のお人好しだと二人は思う。

 

ジンはそれらが理にかなっていた回答だったので、不満だったが渋々と屋敷の階下で待つことにした。

 

耀と飛鳥は慎重に、竜胆は至ってなにも気にせずギシギシと階段を進む。

 

階段を登った先の扉を竜胆は何の躊躇いもなく開くと、

 

「───………ギ、GEEEEEEYAAAAaaaaa!!!」

 

言葉を失った虎の怪物が、白銀の十字剣を背に守って立ちふさがっていた。

 

◆◇◆

 

目にも止まらぬ突進。それを受け止めたのは、飛鳥を庇った耀だった。

 

「逃げて!」

 

珍しく声を張り上げた耀に、竜胆は短く「了解」と告げると飛鳥を連れて逃げ出す。

 

ジンはその虎を見ると、彼の変化を素早く理解する。

 

「鬼!しかも吸血種!やはり彼女が」

 

「つべこべ言うな!舌を噛んでも知らんぞ!

タマモ、お前はジンを運べ!」

 

「了解!って、これ普通違いません?

普通お殿様がお姫様を運ぶんじゃありません?」

 

「気にするな。お前の方がジンより力強いし、何より重い」

 

「んなぁんと!?

乙女に重いと言いましたねご主人様ぁ!?」

 

「GEEEYAAAAaaaaa!!!」

 

「ま、待ってください!まだ耀さんが上に!」

 

「俺達を逃がすためにやってんだ!

命を無駄にするな!生きるのを諦めようとするな!」

 

竜胆は飛鳥を、タマモはジンを腰から抱きかかえ、俗に言うお姫様抱っこをすると、その辺の壁を二人してどこか見たことのある特撮ヒーローキックをかまして破壊した。

 

そして暫く二人は走り、丁度いいところで飛鳥とジンを降ろす。

 

「ふう……白銀の剣、吸血鬼。

間違いないな。あれが指定された武具だ」

 

「吸血鬼?」

 

「はい。元々ガルドは人・虎・悪魔の霊格から得たワータイガーだったのですが……吸血鬼によって人から鬼に変えられたのでしょう」

 

だからガルドは虎の姿だったのだ。人の霊格を失ったため、もう人の姿にはなれない。

 

「ふむ、だとすると、黒幕はその吸血鬼の可能性が高いと」

 

「わかりません。吸血鬼は箱庭では希少種ですから。

しかし、理性を失ったガルドがこれほどの舞台をつくるのは不可能なので、そう考えるのが妥当です」

 

「そう……誰か知らないけど、生意気なことをしてくれたわね」

 

飛鳥が不機嫌そうにしていると、茂みからガサッという音がした。

 

「誰だ」

 

「……私」

 

茂みから出てきたのは血だらけの耀だった。

 

「春日部さん!大丈夫なの!?」

 

「大丈夫じゃ……ない。凄く痛い。

ちょっと、本気で泣きそうかも」

 

その場で崩れ落ちた耀の右手には、白銀の剣が握られていた。

 

「まさか、たった一人で剣を?」

 

「本当は倒すつもりだった。……ごめん」

 

なにに対しての謝罪なのか、それを告げることなく意識を失った。

 

「……久遠。行ってこい。耀は俺達が見ておく」

 

「そう、助かるわ」

 

「あ、飛鳥さん!?ダメですよ、一人じゃ無理です!

悔しいですけど、ここは降参しましょう!」

 

「馬鹿、どうせ逆廻のことだ。負けたらコミュニティ抜けるとか言ってんだろ?」

 

「なっ……」

 

なんでそれを、とは言えなかった。

 

どういうことか、竜胆はジンと十六夜との会話、「名を取り戻す代わりに、このギフトゲーム負けたら抜ける」という契約を交わしていたのだ。

 

「大丈夫よ。どんなに強くても知性のない獣に負けるつもりはないわ。

それに、悔しいじゃない?春日部さんは、私とジンくんじゃ勝てないし、万一逃げられない時にって、竜胆くんも一緒に逃がしたのよ?」

 

飛鳥は「十分で決着つけてくるわ」といい、屋敷に戻っていった。

 

「……さて。耀、我慢しろよ」

 

竜胆は耀の出血箇所、右腕に手を当て、発火させた。

 

「ちょ!?なにやってるんですか!?」

 

「火傷させて傷口を塞いでるんだ。痛いが、死ぬよりはマシだろ?」

 

竜胆はそう言うと、黙々と作業に移る。

 

「すみません、私が本来の力で顕現できていたのなら、治療すっ飛ばして死者蘇生とかもできるんですけど……」

 

タマモは申し訳なさそうに耀を見る。

 

そうしていると、飛鳥がガルドを倒したのだろう。ギフトゲームの終了宣言が為された。

 

「……やっぱり、俺に人助けとか合ってねえや。

囮になるって言ってたのに、全部女に任せっきりだったしな……」

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