問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
竜胆くんや、きみはどうしてそんなに可愛いイケメンなんだい?
A, そんなの俺が聞きたいくらいだ。
現状、十六夜が金髪の幼子の投げたジャベリンを殴って散弾銃の如く鉄塊が飛んだ。
「……おいおい、こいつはどうなってるんだ?
十六夜、お前吸血鬼の投げる槍も殴るって、なんでもアリか?」
俺は態とらしくやれやれ、とでも言わんばかりのポーズを作った。
「お、竜胆か」
「ああ、俺だ」
因みにその吸血鬼は十六夜の散弾銃もびっくりなそれを受ける瞬間に黒ウサギが救い出していた。
「さて……そこの吸血鬼。お前、神格ないだろ?」
吸血鬼にそう問うと、そいつは「何故それを……」と返した。
「勘だ」
「……勘で神格をかつて保持していたことまでバレてしまってはカッコがつかないのだが?」
「冗談じゃないぞ。
神格の有無もなんとなくわかる」
「……なんだ。どうりで弱いわけだ。他人に隷従させられたらギフトまで奪われるのかよ?」
「……ふーん、こいつ、他のコミュニティに隷属されてんのか。
だが、そいつは違うな逆廻。
箱庭の原則上、隷属させた奴でも
合意がなければギフトの受け渡しは不可能。
つまり、この吸血鬼は自分からギフトを差し出したってわけだ。
今の実力は当時の十分の1ってとこか?理由は知らん。むしろどうでもいい」
「レティシア様……どうしてそんなことを……」
俺がそう言うと、黒ウサギはそんな風に言っていた。ていうか、あいつの名前レティシアっていうのか。まあ、人の所有物を覚えるのはどうでもいいからいいか。
「……それは、」
レティシアは何度か言おうとして、それを喉の奥にその度押し込める。逆廻は鬱陶しそうに頭を掻く。
「まあ、あれだ。話があるならとりあえず屋敷に戻ろうぜ」
「人の所有物を勝手に匿ったようなものだ。そっちの方が賢明だな」
「……そう、ですね」
二人は沈鬱そうに頷いた。
◆◇◆
そして屋敷に戻ろうとした時、異変は起こった。
遥か遠方から褐色の光が差し込む。あれはゴーゴンの光か?
「あの光……ゴーゴンの威光!?
まずい、見つかった!」
レティシアは咄嗟に俺達を守るように立ち塞がり、その光を全身に浴び、その身体を瞬く間に石へと変えた。
「いたぞ!吸血鬼は石化させた!すぐに捕獲しろ!」
「例の"ノーネーム"もいるが、どうする!?」
「邪魔するようなら構わん、斬り捨てろ!」
逆廻はキョトンとしたと思ったらまた獰猛に笑い出す。
「参ったな。初めてオマケとして扱われた。
この場合は手を叩いて喜ぶか、怒りに任せて叩きのめすか、どっちがいい?竜胆、黒ウサギ」
「自分の感情に任せて暴れ回るのがいいんじゃないか?」
「あ、あの旗印はサウザンドアイズの幹部の"ペルセウス"のものです!
レティシア様はあそこの所有物……迂闊にてを出せません!」
ちっ……いい感じに煽って全員嬲り殺しにでもしてくれればよかったんだがな……
「これでよし……危うく取り逃がすところだったな」
「相手は箱庭の外側とはいえ、交渉相手は一国規模のコミュニティだからな。奪われでもしたら───」
「箱庭の外ですって!?」
黒ウサギはその言葉に反応し、飛び上がった。
箱庭の外ってことは……
「どういうつもりです!?彼らヴァンパイアは箱庭の中でしか太陽の光を浴びられないのですよ!?
そのヴァンパイアを外に連れ出すなんて……!」
「我らが頭領の決めた事だ。部外者は黙っていろ」
騎士もどきは翼の生えた靴で空を飛び、そう言った。
これは多分、箱庭におけるコミュニティの侮辱ととれるだろう。
本拠への不当な侵入、更に内部でもあの行為。明らかに俺たちを名無しと罵っているのだろう。
「こ、この……!これだけ無遠慮に無礼を働いておきながら、非礼を詫びる一言もないのですか!?
それでよく双女神の旗を掲げていられるものですね、貴方達は!!!」
そう言う黒ウサギを、あろうことかそいつらは笑った。
「ふん、こんな下層のコミュニティに礼を尽くしては、それこそ我々の旗に傷がつく。
身の程をしれ、"名無し"が」
「な、なんですって……!」
……ほう、随分と矮小な侮辱をしてくれる。
「フン。戦うというのか?」
「愚かな。自軍の旗も守れなかった"名無し"など我らの敵ではない」
「恥知らず共め。我らが御旗の下に成敗してくれるわ!」
……あ?恥知らず?
「……言いたい事はそれだけか?正義を語る愚図共」
不思議と、声が自然に出ていた。
「愚図?それは自軍すら守れなかったお前達の方ではないのか?」
「そんなお前達が随分大きくでたものだな」
「……ろ」
「んぅ?なんと言った?」
「黙っていろ。肉片の一つも残さずに食い潰されたくなかったらな」
◆◇◆
「り、竜胆さ───」
黒ウサギは知っていた。先程もこんな感じになっていた竜胆を見た覚えがある。
「食い潰されるのは、貴様らの方だろうが!!」
騎士もどきが槍を構えて竜胆に突進する。
「……不味いな」
気づけば、その男の槍はきれいさっぱり消えていた。
「なっ……!?」
「サヨナラ、だな」
竜胆はその紅の瞳を爛々と輝かせ、次の瞬間には一対の翼が生えていた。
「つ、翼!?奴は人間と幻獣の混血種だとでも言うのか!?」
変化はそれに収まらなかった。
次の瞬間、男の翼の靴が消えていた。正確には、切り刻まれていた。
「さあ、次はどこを喰われたい……?」
右手から獣さながらの爪を伸ばし、現れた狐耳と九尾も黒く染まっていた。
「ひ、ひぃ……!」
「あはは、さいっこォ……!その絶望に歪んだ顔……!でも、見てて映えるものでもないから、殺してやるよ」
竜胆は右手を男に突き立てようとした時、
「フンッ!」
「ッ!?」
十六夜が真後ろからアームハンマーで竜胆を思いっきり殴った。
だけにとどまらず、元にもどった彼のよく伸びる頬を引っ張り続ける。
「ちょちょちょちょ、十六夜さん!竜胆さんに悪戯してる暇があるなら彼らを追いましょうよ!?」
「あいつらなら逃げたぞ」
「え?って逃げ速すぎでしょう!?」
びっくりしながら空を見ると、百人単位はいた空を飛ぶ騎士は始めからいなかったようになっていた。
「いえ、違う……あらは不可視のギフト!?」
「ペルセウスってコミュニティが神話通りなら、間違いなくそうだろうな。
……しかし、箱庭は広いな。空飛ぶ靴や透明化する兜が実在するんだからな」
感慨深く言う十六夜を黒ウサギはキッと睨む。
「気持ちはわかるが、やめとけ。ここでサウザンドアイズの関係者と揉めたらマズイだろ」
「それは……そうですけど」
「詳しい話を聞きたいなら順序を踏むもんだ。
レティシアがペルセウスの所有物なら、白夜叉ならなんか知ってるだろ?」
確かにそうだ。仮にレティシアを白夜叉が連れてきたのなら、詳しい事情を知っている筈だ。
「他の連中も呼んでこい」
「え?で、でも昼間の件もありますし」
「なら御チビとお嬢様だけでも連れてけ。どうもキナ臭い。
最悪そのばでゲームにだってなり得る」
───ま、そうなっても俺一人かこいつ一人で十分だろうけど
とは思っても口にしない。なぜなら十六夜は自称空気が読める男なのだ。
……未だ竜胆の頬を伸ばしていなければもっと説得力はあっただろうと、黒ウサギは思った。
暴走主人公!なんかいい!
巨龍召喚辺りで色々やらかしてくれそうでいい!