問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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お久しぶりです。

っていうか、タイトルがまんますぎた……


十三話 ignited

「……見たところ、そこにいる女が"アルゴルの魔王"か。だとすると、そこの見ない顔がルイオス=ペルセウス」

 

竜胆は紅に光る瞳をルイオスに向けながらそう言った。

 

「なっ……お前、アルゴールの石化が効いていない!?」

 

「ふん、あの程度で魔王を名乗るか。片腹痛いわ」

 

竜胆はそう言いながら黒ウサギの下に石化した同士二人とルイオスの部下を置く。

 

「下にいると、万が一のことがあるからな。連れてきた」

 

「ジ、ジャッジマスター!奴は僕への挑戦権があるのか!?」

 

「あります。審議の結果、彼───『狐巫女』は貴方への挑戦権を正式に持っているとの報告が」

 

ルイオスは思わず黒ウサギに問いかけ、彼女はそれに即答する。

 

───どうやら、彼の仮の呼称は『狐巫女』で決定らしい。

 

「ルイオス=ペルセウス」

 

竜胆が冷ややかに、まるで見る価値すらないとでも言うように彼を見下ろす。

 

「お前は俺の逆鱗に触れた……覚悟、できてるか?」

 

「ちっ……アルゴールの石化から逃れた程度で、調子に乗りすぎだよ!」

 

ルイオスは本能的な恐怖を隠すように炎の矢を放つ。

 

その矢は蛇のように蛇行し、不規則な軌跡を描いて竜胆に向かっていく。

 

竜胆は、手を前に構えた。

 

「『風手双掌』、風をも捕らえる双手の掌。

万槍をも防ぐ鉄の真理」

 

その不規則な矢の動きに、竜胆の手は完全についていった。

 

「八百万を映す理の鏡」

 

『八咫の鏡』

 

着弾する直前、竜胆の手前に八咫の鏡が現れた。

 

「返せ」

 

『承りました』

 

たった一言、それだけで竜胆に宿るタマモは八咫の鏡に妖力を込めて弾き返した。

 

「ちっ、うちの海魔を倒すだけの実力はあるってところか!」

 

ルイオスは舌打ちをすると、炎の弓を仕舞い、"星霊殺しの鎌"、ハルパーを呼び出す。

 

「押さえつけろ、アルゴール!」

 

「RaAAaaa!!LaAAAA!!!」

 

およそ人には聞き取れない声で、アルゴールは竜胆に向かう。

 

「掛かったな」

 

竜胆は小さく、そう呟いた。

 

竜胆が軽く指を弾くと、宮殿の柱が爆発した。

 

その爆発によって、アルゴールは宮殿の下に落ちた。

 

「十六夜」

 

「オーライ!」

 

十六夜はその一言で竜胆の言いたいことを理解したらしく、アルゴールを追うように下へと飛び込む。

 

「な、何をした!?」

 

「"魔道士(キャスター)"の基本的技能。"工房作製"。

自身の周囲に存在する空間に様々な細工を施し、自分にとって有利な戦闘域を開発する特技。

下で飛鳥と耀が暴れ回ってる間に、合図で爆発する爆弾を仕込ませてもらった」

 

そう、アルゴールの石化を破ったのも、この"工房作製"で自身が石化しない空間を作ったというわけだ。

 

「……まぁ、まさか無差別にやってくるとは思わなかったからな。あいつらに使ってやる暇はなかった」

 

あいつら、とは飛鳥と耀、そしてペルセウスの騎士達を指している。

 

「くっ……!図に乗るなよ!」

 

「貴様がな」

 

ハルパーで接近するルイオスを八咫の鏡で対応する。

 

「受けとれ。お前のための、蹴りだよ!」

 

竜胆は八咫の鏡に苦戦していたルイオスに接近して蹴り飛ばす。

 

ルイオスは辛うじてそれをハルパーの柄で受け止めたが、追撃するように八咫の鏡がハルパーを弾き、竜胆は空中を『踏みしめて』ルイオスに再接近した。

 

「そらよ!」

 

ルイオスよりも僅かに上に跳んだ竜胆はルイオスに踵落としを食らわせた。

 

「ガッ!」

 

「ほらよ!」

 

「Gya……!」

 

ルイオスが地面に叩きつけられるのとほぼ同タイミングで階下から十六夜が現れ、彼に吹き飛ばされたアルゴールが地面に伏した。

 

「き……貴様ら、本当に人間か!?一体どんなギフトを持っている!?」

 

そう問うのも無理はない。片方は天翔るヘルメスの靴よりも速く動き、空を踏みしめて跳ぶ。もう片方は"星霊"を力でねじ伏せているのだから。

 

二人は見せつけるように、疑問に応えるようにギフトカードを取り出す。

 

「ギフトネーム・"正体不明(コード・アンノウン)"───ん、悪いな。これじゃわからないか」

 

「ギフトネーム・"人類の罪(ア・ヒューマン・オブ・ギルティ)"───読んで字の如く、人の生み出した罪の権化だ」

 

二人は飄々と笑う。余裕を見せる彼らの背中を見て、ジンは慌てて叫んだ。

 

「い、今のうちにトドメを!石化のギフトを使わせてはダメです!」

 

それこそが星霊アルゴールの真の力。世界を石化させるほどの力こそ、アルゴールの本領だ。

 

だが、竜胆にはそれが効かなく、力でねじ伏せたいルイオスは更に正面対決を臨んだ。

 

「アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!

奴らを殺せ!」

 

「RaAAaaa!!LaAAAA!!!」

 

謳うような不協和音が響き、宮殿が丸ごと生き物のように呻き出した。

 

「なるほど、ゴーゴンにはこんなのもあったな」

 

ゴーゴンは様々な魔獣を生み出したという伝説もある。それは、星霊が与える種であるから、ある意味では当然だった。

 

「もう生きて帰さない!この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ!

貴様らには、最早足場一つ許されない!貴様らの相手は魔王と宮殿そのもの!このギフトゲームの舞台に、最早逃げ場はないと知れッ!!!」

 

ルイオスの狂った笑い声と不協和音が重なる中、二人は小さく呟いた。

 

「───……そうかい。つまり、この宮殿ごと壊せばいいんだな?」

 

「───阿呆か、貴様は。何のために俺が『大量の魔力、妖力を使ってまであいつらを上に引き上げた』と思っている」

 

「「え?」」

 

ジンと黒ウサギは、激しく嫌な予感がした。

 

竜胆が指を再び鳴らす。

 

十六夜が無造作に挙げた拳を宮殿に向かって振り下ろす。

 

直後、宮殿の二、三、四階は跡形もなく崩れ、広大な一階と屋上のみとなった。

 

これはあり得ない。仮にもここはギフトゲームの舞台なのだ。ギフトゲームの戦いの舞台となると、当然舞台はかなりの硬さがある。

 

それこそ、山河を砕く程の一撃が必要である。

 

「……馬鹿な……どういうことらなんだ!?奴の拳は、奴の不可解な行動は、山河を打ち砕く力があるというのか!?」

 

怒りと恐怖が入り混じった叫びを挙げるルイオス。

 

十六夜はやや不機嫌に声をかけた。

 

「おい、ゲームマスター。これでネタ切れか?」

 

ルイオスは暫し固まったまま動かず、暫くしてハッとし、最大限に凶悪な顔をした。

 

「アルゴール。終わらせろ」

 

石化のギフトを解放した。

 

こんなデタラメな現実を彼は受け入れたくなかった。

 

 

「カッ、ゲームマスターが、今更狡いことしてんじゃねえ!」

 

十六夜は、アルゴールの放った褐色の光を踏み潰した。

 

そして竜胆は工房の力により、アルゴールの『石化』の恩恵を付与することを拒んだ。

 

それらに防がれた光は、跡形もなく、ガラス細工のように砕け散った。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

ルイオスが叫ぶ。叫びたくもなる。階下にいたジンと黒ウサギですら叫びたくなったのだから。

 

「せ、"星霊"のギフトを無効化、いえ、破壊した!?」

 

「あり得ません!あれだけの身体能力を有しながら、ギフトを破壊するなんて!?」

 

白夜叉が十六夜の"正体不明"をありえない、と結論づけた理由。それは、圧倒的な破壊の恩恵と全てを無に帰す恩恵は、この箱庭の世界において存在しない筈。

 

しかし、十六夜は"正体不明"のギフトしかない。それはつまり、その"正体不明"に圧倒的な破壊の力と、全てを無に帰す力の二つが両立している、ということになる。

 

そして、驚いたのはもう一人、タマモだった。

 

(石化を防いだ……?そんな、私の恩恵による神格付加にも、ご主人様が有している"呪術師"としての恩恵は私の力が加わっているとはいえ、ご主人様本人には何百という人を運び上げる大量の魔力を行使して、かつ石化を防ぐ魔力なんてないはず!

ならば、何故ご主人様は石化を防いだ……?そんなの、一つしかない筈です。しかし、あれは今のご主人様の手に余る代物……先程、あの瞳が紅に輝いた時から?)

 

 

もしも、"人類の罪"がタマモや竜胆が思っていた以上のものだとしたら。

 

それはいずれ、『あの時』のように全てを竜胆の心のままに喰らいつくす。

 

あの恩恵は、例え神であろうと手に余るものだ。それが更にこのような厄介な力を手にしたのなら、それこそ比喩ではなく『世界が彼によって喰われる』。

 

「さあ、続けようぜゲームマスター。"星霊"の力はまだこんなもんじゃないだろ?」

 

「魔王を隷属させてるんだろう?ならばまだできるはずだ」

 

軽薄そうに挑発する十六夜と、表情を変えずに見下ろす竜胆。だが、ルイオスの戦意は既にほぼ枯れていた。

 

かたや、"箱庭の貴族"はおろか、"白き夜の魔王"ですら出所、効果、名称不明という、正真正銘の"正体不明"。

 

かたや、比喩ではなく、世界を喰らわんとする、石化を止めるだけではなく、謎に包まれた、これもまた正体不明の"人類の罪"。

 

圧倒的な奇跡と、奇跡を破壊する力。

 

黒ウサギは十六夜はともかく、竜胆がこんな意欲的に戦闘を望む性格だったかと溜息を吐き、彼らに近づく。

 

「残念ですが、これ以上はでてこないと思いますよ?」

 

そう言うと、竜胆はアルゴールを縛っている鎖を見る。

 

「……ちっ、通りで縛られてると思ったよ。奴は星霊を扱うには未熟すぎるな」

 

「っ!?」

 

ルイオスは突然瞳に感情が宿った。彼の性格からして、反論の一つもするだろうが、それがない辺り、その言葉は真実なのだろう。

 

「所詮は七光りと元・魔王だな」

 

「長所が破られれば打つ手なしってか」

 

二人は失望したと言わんばかりに落胆する。勝敗は決したようなもの。黒ウサギが宣言しようとした時、二人───特に紅の瞳になった竜胆は先程のルイオス以上に凶悪な笑みを見せた。

 

「ああ、そうだ。もしこのまま負けたら……お前達の旗印。どうなるかわかってるんだろうな?」

 

「な、何?」

 

十六夜の言葉に不意をつかれたように声を上げた。それもそうだ。

 

彼らはレティシアを取り戻すために旗印を手に入れるのではなかったのか?

 

「そんなことは所有権さえあればいつでもできる。そんなことより、旗印を盾に、即座にもう一度ゲームを申し込む。

───そうさな、次はお前達の名前を貰う。そうすればお前達も"名無し"だ」

 

ルイオスの顔から、一気に血の気が引いた。

 

そして、初めて砕けた宮殿と、竜胆がゲームに不利になってまで助けた、石化した自分の部下に目が行った。

 

二人は少しの慈悲も見せず、凶悪な笑顔のまま告げる。

 

「そして、その二つを手に入れたら、名前も、旗印も、"ペルセウス"が箱庭で永遠に活動できないように、徹底して貶めてやる。

貴様らが泣こうが、喚こうが、怒ろうが。コミュニティの存続が出来ないくらいに、徹底的に。徹底的にだ。

……それでも必死に縋るのがコミュニティなんだろ?だからこそ、貶め甲斐がある」

 

「や、やめろ……」

 

ここで負ければ旗が奪われる。そうなれば決闘を断ることができない。まして、こんな壊滅状態で戦うなど不可能。

 

つまり、ペルセウスは今、崩壊の危機に晒されているのだ。たった二人の、少年によって。

 

「嫌なら、打開策はひとつしかあるまい?」

 

「来いよ、ペルセウス。命懸けで、俺達を楽しませてみせろ」

 

「負けない……負けられない、負けてたまるか!

奴らを倒すぞ、アルゴオォォォル!!!」

 

敗北を覚悟し、コミュニティ存続のために、ペルセウスとゴーゴンは地を駆けた。




竜胆くんはドンドンチートになりますよ?
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