問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
俺、高町竜胆の目覚めは最悪の一言に尽きた。最悪、というよりは驚愕だったが。
まず、目が覚めたら目の前に耀がいた。反射的に跳び退こうとしたが、何故か耀にがっちりホールドされてた。
しかもそんな状態で「竜胆は一人じゃない」なんて言われたから、正直当事者の俺が一番サッパリだ。
で、現状。そのままガッチリとホールド中。
「よ、ょぅ……」
思わず尻窄みにそんな声を出してしまう。
「は、はずか……しい……」
多分俺の顔は真っ赤を通り越し灼熱なんだろうなぁー、なんて思いながらそんな風に言う。
「あっ……ごめん」
その言葉を聞くと、耀は突然バッと離れる。
「その……だ。なんで、こうなってた?」
「……竜胆が、どこか遠くの誰かみたいだったから」
「どこか遠くの、誰か?」
思わずオウム返しに返してしまう。
「この前から気になってたんだけど……竜胆が変になった時に、竜胆が竜胆一人の意思で動いてるみたいじゃなかったから。
なんというか……集団の意思を竜胆が行動に移してる、みたいな」
……集団の意思が、俺の行動に?
「……気のせいじゃないのか。確かに俺はスイッチ入ると記憶が吹っ飛ぶくらいにおかしくなるらしいが、俺は俺だ。
誰かに運命を左右されるほど弱くはないつもりだ」
「なら、いい」
それだけ言うと耀は部屋から出て行った。外で日が完全に登っているところを見ると、恐らく歓迎会でうっかり眠ってから今現在まで寝ていたんだろう。
なにもやることがないと思っていた矢先、
「………ッ!」
身体全体から激痛が走った。
「ぐぅっ……ぁ……ぁああああ!!」
メギッ、という音が背中から響いた。
背中を見てみると、そこには一対の黒い翼があった。
「ぐっ……くそっ……"進行"がここまで……あッ!があ!!」
再び激痛が、今度は身体中に迸る。
「ご主人様!?」
俺の様子に気づいたのか、タマモが現界し、俺の身体を支える。
「やめ……ろ……来るな……来ないでくれ……やめて……こないで……たす……け───」
俺の意識は、再び暗い闇に落とされた。
◆◇◆
「……っ……ぅ」
竜胆が目を覚ますと、そこは昔一度見たことのある景色が広がっていた。
「この部屋は……白夜叉か……」
「うむ、その通りじゃ」
竜胆が身体を起こすと感じた違和感。背中を見てみると、そこには『彼の異変』を示す黒い翼があった。
「そうか……"進行"、進んで……」
「"進行"って、どういうこと?」
その声に思わずビクッとする。暫く彼は固まり、恐る恐る振り向く。
「……よ、う……」
無表情な顔とは裏腹に、あからさまに『怒ってます』的オーラがバリバリ出ていた。
◆◇◆
「それで、"進行"って何?」
「言う義務は……ない」
「ある」
「だから……」
「竜胆は私達の仲間だから、教えて」
「……言う必要はない。俺はお前達を仲間と思ったことはない」
竜胆はそっぽを向き、自分の翼を撫でる。
「"ノーネーム"にいるのも成り行きだ。元々ガルドを殺すために一時的にいたにすぎないし、"ペルセウス"の時も奴らが気に食わなかっただけだ」
「嘘だよ」
「嘘なんかじゃない」
竜胆はそれきり何も言わなくなったが、これ以上なにも言う気はないし、言わせる気もないと言っていることがはっきりとわかった。
まるで、彼が彼であることを拒んで、彼となっているかのように。
それは竜胆が『無』であり、竜胆が『全』であることを示す───
「───悪い、白夜叉。暫くこの部屋借りることになる。
それと、"名無し"」
次の瞬間、竜胆は何時もの彼に戻り、"名無し"と他人行儀に呼ぶ。
「短い間だったな。それなりには楽しかった。
所詮、世界は俺に幸せを許してくれない……俺は死神なんだよ」
「───ッ!待って!りん───」
次の瞬間、耀の目の前は"ノーネーム"の屋敷になっていた。
「……ごめん、"ノーネーム"。こんな勝手な奴で……でも、駄目なんだ。
"人類の罪"は、近づく者を皆食べ尽くす……それが親しい人なら……尚更」
孤独の狐は静かに告げる。自らの存在を───
───人類の罪の、罪深さを。
やはり幕間のようなハイテンションにはならない。これが私クオリティ!