問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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ドーモドクシャサン。

とある事情につきメンタルブレイクしてた昆虫です。

なんとか立ち直ったのでここからまた更新しますよ。

あ、あとこの手の番外編にありがちな時系列無視と竜胆くんの崩壊もありますので。



バレンタイン番外編! 狐のお料理教室

2/14。

 

別名、バレンタインデー。もしくはセントバレンタインズデー。

 

その起源はローマ帝国期にまで遡る、由緒正しき聖なる一夜である。

 

しかし、それがバレンタインの日となったのはあまりにも悲しい出来事からである。

 

それは、古代ローマの皇帝、クラウディウス二世は故郷に待つ人がいれば、それだけで戦力の士気が下がると思い兵士は結婚不可を定めたことから始まる。

 

そんな兵士を哀れと思った司祭ウァレンティヌス……バレンタインは兵士の結婚を隠れて行った。

 

しかし、そんなウァレンティヌスはやがてクラウディウス皇帝に見つかり、処刑されてしまう。その日が2/14……女神ユノの祭日と同日であり、ウァレンティヌスはルペルカリア祭の時に捧げる生贄となった……

 

以来、その日はウァレンティヌスの行ったことのように恋人を祝う日となった……

 

「……バレンタインのあらすじはこんなもんかな。日本に伝わったのが五十年代とはいえ、流行したのは七十年代だから、飛鳥は知らないだろうが……」

 

「ごめんなさい、私は知らなかったわ」

 

「私もそこまでは知らなかった」

 

「竜胆さんはいちいち知らなくてもいい知識を持っているのデスね……」

 

現在地、俺の部屋。

 

バレンタインだからコミュニティの皆に菓子でも、と思っていた時、耀、飛鳥、黒ウサギが殴り込んで来て「飛鳥にバレンタインを教えてあげて」なんて言うものだから……現在に至った。

 

「こんなもんでいいだろ?じゃあ俺はこれから用事あるから」

 

「カカオの匂いがする」

 

……犬かよこいつ。

 

「アールグレイの紅茶、ココア、生クリーム……これは生チョコ。

卵白にグラニュー糖、アマレット……これはチョコムース

それでこれは───」

 

「教えればいいんだろ……わかったからその料理当てはやめてくれ……作ってもないのにネタバレは職人として傷つく」

 

最近耀がヒドイ。なんか知らないけど俺が嫌がることをピンポイントで突いてくる。

 

「ま……教えるからには全力全開で教えるけど、根、上げるなよ?」

 

その時のおれは、きっと最上級の笑顔をしていただろう。

 

◆◇◆

 

「包丁さばきがなってない!」

 

「そんなこと言わないでよ。私今までこんなことなにもしてこなかったし」

 

「うるさい俺が監督をしている限りは俺の指示に従え!いいかお前らは俺を満足させるためにやっているんじゃないぞ送る相手を幸せにするためにやってるんだ妥協なんてするんじゃないッ!!」

 

キャラが変わってた。

 

「……なんで私がこんなこと」

 

「こらそこペストォ!私語は慎め!お前らは耀とリリ、その他料理を作る年長組を除いて全員クズ以下の料理スキルしか持たない!ならば数をこなせ!数で無理な分は集中して質を上げろ!」

 

完全に昭和の鬼教師である。もしくはラムダドライバでも起動したのだろうか。

 

「竜胆様!この場合はどの果物を選んだ方がいいでしょう?」

 

「ん?これか?……そうだな、俺は果物は入れずにビターの方が好きだが……果物を入れるならやはりチョコレートには苺だな」

 

「ありがとうございます!」

 

「頑張れよ。俺はド下手共に教えなきゃいけないからあんまり教えれないが、耀とリリならできる限り答えてくれる」

 

そしてこの温度差である。小さな子供に甘々……

 

「っ!白雪ィッ!俺は微塵切りにしろと言ったのに何故短冊切りになる!」

 

「それはこの包丁が」

 

「俺がぶっちぎりでド下手クソなお前でも使えるように態々他のコミュニティまで行って恩恵付加してもらった上にそもそも俺が西以外の地域から厳選した包丁を使っとるのに包丁のせいにするなぁッ!間違いなくお前の責任だ!!」

 

「黒ウサギは四人の中ではまだ及第点だ!だが足りん!もっと精進しろ!」

 

因みに竜胆はこれらの叱咤激励?を自分の分もチョコレートを作りながら言ってる。右手には見事な孔雀のカタチを。左手にはキリストが十字架に磔にされているものである。

 

凄まじいまでにいらない方向に特化した能力である。

 

付け加えると、彼は料理が上手、などというギフトは一切有していない。純粋に、実力と努力だけで箱庭トップクラ

スの料理人になっていた。

 

まあ、そんなこんなで約半日が過ぎて……

 

「……まあこんなもんでいいだろう」

 

目の前のチョコレートは少しカタチが歪だったり、分量を間違えたような匂いもするが、それでもまだマシなものだ。

 

「……もう俺に教えることはないな。渡したい奴に渡して来い」

 

はーい、なんてかなり体力的に限界な皆様方がザワザワと散らばって行く。

 

「……さて、俺もチョコレート作らなきゃな……」

 

戦場はこれから二時間後へ……

 

◆◇◆

 

「……できた」

 

竜胆が作ったのは簡素な生チョコ。それが複数入った袋が沢山ある。

 

「さて……この二つは郵便でサンドラとサラ殿に届けるとして……まずいそうなところは……厨房か」

 

菓子製作用の部屋を出て隣の厨房に入る。

 

「やっぱりここか、リリ」

 

「あ、竜胆様」

 

そこにはリリがいた。彼女は別段料理を作っているわけでもなかったが、そのかわりに椅子に座っていた。

 

「リリ、プレゼントだ」

 

「ふぇ?はわわ!」

 

竜胆がリリの頭目掛けてそれを投げる。リリはそれをなんとかキャッチした。

 

「これ……」

 

「生チョコだ。本当は全員に作りたかったんだが……時間がなかった上にあいつらが押しかけてきたからな。

代表って言ったらアレだが……お前に作っておいた」

 

「ありがとうございます!私からもチョコレートです!」

 

竜胆が受け取ったそれは可愛らしく作られたチョコレートだった。テンプレのようにハートマークになにやら文字が書かれてた。

 

「ありがとうリリ。ホワイトデーは三倍返しだな」

 

「ほわいとでー?」

 

「ああ、リリは知らないか。俺の時代以降の日本だけの風習だからな。

バレンタインに女の子に渡されたチョコレートを男が一ヶ月後に三倍返しするっていう日のことだ」

 

「そんなんですか……期待してていいんですよね?」

 

「もちろん」

 

暫く話をした後竜胆は部屋を出て行った。

 

◆◇◆

 

続いては麦畑。

 

「本当にお前らってわかりやすいところにいるな」

 

「それでもわかりにくいところにいるよりはありがたいでしょ?」

 

「まぁな……ほれ、プレゼントだ」

 

続いて竜胆が訪れた場所にいたのは斑の少女……ペスト。

 

「それにしても……ペストは農耕が好きだな」

 

「好きって程じゃないわ。生前がそういう仕事をしていただけ」

 

「そうか……」

 

暫く畑を見ていると、突然ペストの手元からなにかが飛んで来る。

 

「チョコ……?おい、これは」

 

「渡したい奴に渡せって言ったのは貴方よ」

 

「……俺なんぞに渡しても三文の得もなかろうに……」

 

「それをどうするかは私の勝手よ」

 

「それもそうか……」

 

暫く無言でいたら、竜胆は突然パッと姿を消した。

 

◆◇◆

 

「……ん?耀は……寝てるな」

 

例の寝心地のいい場所に行くと、耀が寝ていた。

 

「……まあ、いつものことだしな。腹の上にでも置いとけばわかるだろ」

 

竜胆は耀に作っておいた生チョコを耀のお腹の上に置く。

 

「朝っぱらからなんか疲れたな……タマモは朝イチで渡せなんて言うし」

 

竜胆が耀の隣に腰掛け、木にもたれかかる。するとすぐに睡魔が襲ってきた。

 

「ぁふ……寝るか……」

 

そう言うと竜胆はすぐに静かな寝息を立てて眠り始めた。

 

「……寝るの早い」

 

その直後、その瞬間を待っていたといわんばかりに耀が目を開いた。

 

すやすやと眠る竜胆を暫く堪能し、改めて彼の顔をよーく見る。

 

あどけない顔だ。今日は陣羽織も着ていないからより子供っぽさと可愛らしさが目立つ。

 

「いつもお疲れ様。ハッピーバレンタイン。竜胆」

 

それだけ言うと耀もまた眠りについた。

 

竜胆のお腹の上に一つのチョコレートを置いて。

 






悶え死ぬ。

自分の傷を抉る私はドMだと思います!
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