問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
今回はいつもの半分程度しかないです。
区切りが悪いですからね。
後ろから迫る炎。それを消し去る旋風。
そして少しずつ離れていく距離。
現在竜胆は耀を右腕一本で背負って迷宮を爆走していた。
「出口の空気は?」
「北西の方角」
「了解!」
口数の少ない二人は短いやりとりをすませる。竜胆も嗅覚や触覚は強いが、耀には劣るので確実性を求める手を打った。
竜胆が北西の方角に向かって左手を突き立てる。すると木の壁はボロボロと崩れ、一直線に道ができる。
「くっそ!あんなメチャクチャな進み方しやがって!
追うぞジャック!」
「YAッFUuuuuuuuuuu!!」
アーシャとランタンは二人を追うが、本気を出せばあの十六夜ですら実現不可能な速度で動くことが可能な竜胆だ。本気で走っていないとはいえ、アーシャ達と比べれば速度差はある。
「二手に別れる。道は作れるな?」
「うん。熊とも象とも友達だから、このくらいの木なら大丈夫」
「そうか……じゃあ、散開!」
すると、耀は竜胆から離れてそれぞれ上下に向かった。
「ジャックは背負ってた方を追え!いざとなったら……!」
「YaHo!!」
そう言い、アーシャとランタンも別れる。
「よし……偽カボチャが来たな……!」
竜胆は走りながらそう呟く。
暫く竜胆とランタンは走り合い、途中とピタッと止まる。
「さて……ようやっとご対面だな、偽カボチャ」
「YaFu?」
竜胆の言葉にランタンはかくりと首を傾げる。
「いい加減その偽物ごっこはやめたらどうだ?
ホンモノのジャック=オー=ランタン」
そんなランタンに苛立ったのか、竜胆は左手の爪をランタンの喉元まで延ばす。
「……なるほど、貴方は気づいていたのですね?ジャック=オー=ランタンに幻滅した、と仰っておきながら、私の正体を見破っていたと?」
「なんとなく……ではあったがな。お前と対面した時に僅かだが……俺がかつて出会ったジャック=オー=ランタンに酷似した力を感じた」
「ほほう。そんな若さでありながら多くのことを経験したのですね。
貴方の中から様々な歪を感じ取れます」
ランタンの様子が変わった。変わった、というのは様子というよりギフトの"本質"が、だが。
「そこまでわかるのか。俺は化けの皮を覆ったカボチャってことしかわからなかったぞ」
「ヤホホホ!それだけ理解していれば充分すぎますヨ!何と言っても私はあなたのパートナーの彼女のような幼子や貴方のような心の幼い方にも親切なカボチャですから!」
「的を射ている。いくら表面上を取り繕おうと人と関わることはあまりなかったからな。
それなりに長い付き合いをしてる奴らにはボロが出る」
竜胆とジャックはふふん、と笑い合う。
「で……どうなさいますか?私と戦います?」
「遠慮しておく……不死のギフトを壊す力なんてない。それに俺のギフトは使えば使うほどヤバいシロモノだからな……」
「……して、ならばなぜ突然参加を決意したので?」
ジャックが問うと、竜胆は唐突に視線を逸らす。
「……見てられなかったんだよ。あいつが」
「あいつ、と言いますとあのお嬢さんですか?」
「……ああ。あいつは俺とは違うから、俺みたいに人との関わりを拒絶するような奴になってほしくないんだ」
ふう、と苦笑いを浮かべる竜胆。しかしジャックは表情こそカボチャ頭でわからないものの、彼に否定的な言葉を発した。
「その自虐的な言い方、感心できませんね」
「事実だ。俺にはもうどうでもいいことだしな」
「……そうですね。私のようなカボチャにもわかります。
貴方はもう既に後戻りできない程に自らの"ギフト"に身体を侵されている」
「最早"ギフト"よりも"カース"の方がしっくり来るな。こんなの死んだ姉さんに知られたらなんて言われるか……」
「……ヤホ?お姉様ですか?」
「ああ。家族思いのとんだ阿呆さ」
竜胆が話を切り上げようとした時、丁度『勝者、アーシャ=イグニファトゥス』というアナウンスが聞こえてきた。
「負けちまったか」
「ヤホホ、そのようですね。
失礼ですが、お名前を聞いても?先程はアーシャの戯れに付き合っていたせいで聞きそびれてしまいましたので」
「名乗るに値しないと思うが……まあ、言おう」
竜胆は消えゆくステージの中でその言葉、自らの言霊を紡いだ。
───高町、竜胆───
「なっ───」
ジャックがそんな声を漏らしたことを、彼は気づかなかった。
ジャックさんが竜胆くんの名前に驚いたその理由とは?
それに関しては竜胆くんの大事な人とジャックさんのコミュニティが関係しています!