問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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今回は魔王戦の序章……竜胆くんのツンデレっぷりが起こす出会いたくもなかった二人の出逢いです。




六話 出逢イタクモナイノニ

ゲームが終了した直後、竜胆は既にステージから去って元の場所に戻っていた。

 

「どうだったよ、竜胆。ジャック=オー=ランタンはよ?」

 

「そうだな……なるほど確かに、世界中でかなり有名なだけはある。かなり愉快で腹が立つことのないカボチャだったさ」

 

隣にいる十六夜に軽く口を叩き合い、なにかの話をしている耀とジャックを見る。

 

「じゃあ、やりたいこともやったんだから俺はもう行く」

 

椅子に腰掛けずにいた竜胆はそのまま振り向いて会場から出ようとする。

 

「なんだ?女でも待ち合わせてるのか?」

 

十六夜はニヤニヤと意地汚い笑みを浮かべてくる。

 

「そんなところさ。一人淋しくいる女を放っておけるほどできた生き物じゃないんでね」

 

正直に答える竜胆に十六夜はつまらなさそうな顔をする。

 

しかし、竜胆が会場の出口を潜ろうとした時、その怒号は突然響いた。

 

「待てッ!竜胆!"あれ"見ろ!」

 

「───"あれ"だと?」

 

突然十六夜に呼び止められたのでなにがあったのかと振り返る。

 

そこには、黒く輝く"契約書類"が雨のように降り注いでいた。

 

『ギフトゲーム名"The PIED PIPER of HAMELIN"

 

プレイヤー一覧

・現時点で三九九九九九九外門、四○○○○○○外門、境界壁の舞台区画に存在する参加者、主催者の全コミュニティ。

 

プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

 

ホストマスター側 勝利条件

・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

 

プレイヤー側 勝利条件

一、ゲームマスターを打倒。

二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

"グリムグリモワール・ハーメルン"印』

 

静まり返った会場の中、観客席で一人の男が膨張するように叫ぶ。

 

「魔王が……魔王が現れたぞオオオオオォォォォォォォ───────!!!」

 

それとほぼ同じタイミングで竜胆は美術館に向かって走っていた。

 

◆◇◆

 

境界壁・2000m地点。

 

遥か上空にある境界壁の突起に四つの人影があった。

 

一人は露出が少ない白装束を待とう女。白髪の二十代半ばに見える女は二の腕ほどの長さのフルートを弄びながら舞台会場を見下ろす。

 

「プレイヤー側で相手になりそうなのは……"サラマンドラ"のお嬢ちゃんを含めて四人ってとこかしら。あの狐の坊やは走ってただけでそんなに強くなさそうだしね、ヴェーザー」

 

「いや……あのカボチャには参加資格がねえ」

 

「じゃあ四人目ってのは?」

 

斑模様のフリルのついたドレスを着た少女が軍服のような服装に明らかに目立つ巨大な笛を持つ男性に問い掛ける。

 

「あの狐の小僧だよ。あいつ、なんのつもりだか知らねえが"ギフト"を顕現させていても"ギフト"の力を使ってねえ」

 

「それどういうこと?"ギフト"っていうのは普通顕現させれば力は自然に発動するものでしょ?」

 

「んなもん俺が知るかよ。知ってたら今みたいな遠回しな発言はしねえよ」

 

男がはあ、と溜息を吐くと少し戦慄したように呟く。

 

「つまり、あの狐小僧はギフトの力もなにも使わずにあれだけの速度を出して"白夜王"が創り出した舞台の壁を破壊してたんだよ」

 

「……なにそれ」

 

「兎に角、マスターもラッテンも死にたくなけりゃ覚えとけ。

あいつとまともにやり合うなよ」

 

「……肝に銘じとくわ」

 

「関係ないわ」

 

二人がそれぞれ異なる答えを残し、三人はそれぞれ別の場所に行った。

 

◇◆◇

 

「ハッ……ハッ……」

 

竜胆は混乱する観客達を押し退けて走っていた。

 

とある場所に向かって。そこがギフトゲームの舞台となっているから。

 

「間に会え……割れてるなよ……名前のない黒死病のステンドグラス……!」

 

彼は道を駆けながらぼそりと呟く。

 

あのステンドグラスの正体はわからないが、一度でも関わりを持ってしまったらどうも彼はその人を見捨てることができないようだ。

 

たとえ、自分が自分で死神を自称するほどの呪われた存在だと自ら理解していたとしても……

 

暫く竜胆が走っているとステンドグラスが置いてあった展示館を見つけ、扉を乱暴に蹴破る。

 

「おい、無事かステンドグラス!」

 

竜胆は展示館に入るとなんの迷いもなく一気にステンドグラスが置いてあった場所に向かって走る。

 

「おいっ……!いるなら返事しろ……!」

 

その場所につき、昨日置いてあった場所にその姿はなかったので周りを見渡す。

 

「いない……?くそっ、展示場所を移されたのか?」

 

「───あら。"魔王"が現れて大騒ぎになってるっていうのに物探しなんて、とんだ物好きなのか……あるいは余裕の現れなのか」

 

静かに、しかしはっきりと響き渡る声が竜胆の耳に届きスッと振り返る。

 

「……"魔王"か」

 

「ご明察。私は今回の"ギフトゲーム"の魔王側ホストマスターのペスト……!」

 

ペストと名乗った"魔王"が竜胆の顔を見た途端に強張った顔になったので竜胆はそれを訝しむ。

 

「……どうした?俺の顔になにかついてるのか?」

 

竜胆が魔王の顔色を伺うように下から覗くとペストは確信したように質問してくる。

 

「り……リンドウ……?」

 

突然名乗ってもいない自分の名を問われるので彼も自身の記憶に潜る。

 

暫く考え……唯一、彼女の声音と一致する声を見つけた。

 

「お前……まさか……ステンドグラスか!?」

 

こうして二人は平穏に出会うはずだった場所で、互いに殺し合う者同士として出会ってしまった。






姉御肌(甲殻類の中では)のペストとツンデレ弟系の竜胆くんが下手したらメインヒロインたる春日部さんよりもお似合いになりかねない……だと……くそう、ショタとロリだなんて色々すごいじゃないか。

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