問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
別に擬音にゴゴゴやらドドドやらバァァーーン、みたいなのはないですよ?
互いの警戒……というか、先ほどまでのギスギスとした雰囲気はまるでなくなっていた。
「……ステンドグラス」
「な、なに?私には一応ペストっていう名前があるんだけど」
「こんな時にそんな冗談はやめとけ。今の話聞いてる奴がいたら間違ってでもお前を殺しに来るぞ?」
「……一日話してわかったけど、貴方って本当に変な人ね……」
竜胆が真顔で発言したのに対してペストははあ、と肩を下ろす。
「……でも、冗談なんかじゃないのよね」
「……そう、か」
「そうよ。私は叶えなきゃいけない悲願があるの。
その悲願の邪魔になるというのなら……リンドウ、貴方でも殺すわ」
ペストが語気を少し荒げてそう言うと彼女の周囲に黒く濁った風が漂った。
「上等だ。ここにはお前以外にも守ってやりたい奴がいるんだ。
お前がその邪魔をするってんなら……ステンドグラス、いやペスト。お前を倒す」
そう言うと竜胆はペストに向かって走り出した。
「……!速い……!行きなさい!」
駆け出してから遅れて足音が聞こえる。ペストはそれに対抗するように黒い風を前方で壁になるように動かした。
「……遅いッ!」
しかし、竜胆は壁が完成しきる前にペストの背部に回り込み、蹴りを食らわす。
ペストは展示館の壁に衝突するが、すぐさま体勢を立て直し、竜胆に向かって行く。
「嫌な風だ……全身の生存本能がお前の風を嫌っている……」
「それはそうよ。私の風は死を司る風……生き物はこの風の前ではひれ伏すことしかできない……!」
風が不規則な軌道を描きながら竜胆に向かっていく。当然竜胆はそれを躱すが、規則のない動きに徐々に集中力を切らしていく。
「かなり厄介だ、こいつは……」
空気の振動で風を切ってもペストが意のままに操っている以上一瞬の時間稼ぎにもならない。
加えて、タマモが付近にいない以上彼女が彼の中にいる証である『玉藻の前』も意味を成さなくなるし、『呪術』も元々はタマモのスキルなので恐らく能力の優先順位はタマモの方に行くだろう。
つまり、彼は自分でも全ての詳細を理解していない『人類の罪』に頼ることしかできない。しかも『侵食』が進み、いつ『暴走』に至るかもわからない状況でだ。
「……ねえリンドウ」
そんな考えに没頭していると、突然ペストが話しかけてきた。
「なんだ、ステ……ペスト」
「……なんで、さっき蹴ってきた時本気で蹴らなかったの?」
「本気で蹴ったつもりだったんだが……まあいい」
竜胆は自分の足を確認し、今後の戦闘続行に支障がないことを確認し、ぶっきらぼうに告げる。
「多分……お前だからだろうな。関わりを持った人間を"俺の意思"で殺したくないんだろう」
「なにソレ。ホント変な人ね」
「それを言うならお前もだ。さっきの"死の風"とやら、全く殺意を感じられなかった」
「……らよ」
急にペストの声のボリュームと頭が下がり、竜胆の聴覚でも聞き取れないほど微妙な声が発せられた。
「すまない、なんと言った?」
竜胆が首を傾げながら聞くと、ペストはバッと頭を上げる。
「聞こえなかった……そう、ならいいわ」
それだけ言うとやけに上機嫌になる。竜胆は尚も首を傾げる。
「どういうことだ……まるで意味がわからんぞ……」
「いいのよ、気にしないで」
「いや、気になってしょうがないんだが……」
「私が気にしないでと言っているのだから気にしないで」
「だから……いや、もういい。続きやるぞ。
条件はあくまで打倒だからな。殺さないように加減するように努力する」
「そうね。私も少なからず関わりのある貴方を殺すのは少し気が引けるけど───時間切れのようね」
ペストが意味深な含み笑いをするので竜胆は疑問に思う。
「時間切れ……だと?」
そう呟いた時、聞き慣れたうるさい声が響いてきた。
「───全員速やかにギフトゲームを中止してください!
これより"ギフトゲーム"『THE PIDE PIPER of HAMELIN』の不備に関する議論を行います!
繰り返します───」
「時間切れ……てのはこういうことか」
竜胆が振り返るとペストは小さく笑んでいるのがわかった。
「ええ、そうよ。このゲームを皮切りに貴方達は私達の配下となり、貴方は私の───に、なるのよ」
竜胆はんっ?と眉をひそめた。彼の聴覚を持ってしても、先程のように言葉の最後辺りが全く聞こえないほどに小さな声だったのだ。
「……まあいい。行くぞペスト」
「あら、敵である私と一緒に会議の場所に行くなんてどういう風の吹き回し?」
「……だからだよ」
今度は竜胆が蚊の鳴くような声で何か呟いた。
「……ごめんなさい、聞き取れなかったわ」
「……だよ」
「聞こえないわ、もっと大きな声で言いなさい」
「ッ!ひ、一人は寂しくて怖いんだよッ!!」
素直に大きな声で返すと、今度は真っ赤になって黙り込んだ。
「……ぷっ」
「……ナ、なんだョ……」
「いや、おかしいじゃない。一人が寂しいのに最初にここにやって来た時も今も一人だなんて」
「……寂しかったし、トモダチと喧嘩したから、会うと恥ずかしいからここに来てた」
まるで男女のイメージが逆転していた。寂しくて恥ずかしいから一人になっている少年と、一人でじっとしていて、いざ少年と対面するとそんな一面を笑う少女。
「ふふふっ……竜胆、貴方ホントに変な人ね。ますます気に入ったわ」
「気にならないでいいのに……」
二人はそのまま終始そんな感じの会話を交えながら会話に向かっていった。
その後ろ姿は、"箱庭"の"天災"たる"魔王"と周りに存在するだけで死を撒き散らしているような"歪で孤独な狐"……敵対しているモノ同士にはとても見えなかった。
そのうち作者はショタコン呼ばわりされそうですがそんなことないですよ!?ただ色んな人に支持してもらえる私の作品の男主人公が軒並みショタ、男の娘要素があるだけで!