問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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今回はひっさびさに春日部さんと絡むよ!

いつもより文字数多いから多分メインヒロインとの絡みに力入ってるなこれ。




八話 家族オモイ、子供化ケル

「お前帰れ」

 

会場にやって来た竜胆に浴びせられた第一声がこれだった。

 

「なぜだ十六夜、確かに俺は交渉術がないかもしれんが話し合いに立ち会う資格はあるはずだぞ」

 

「ちげーよ阿呆、問題なのはお前が"魔王"様といがみ合った様子も跡もなくこの部屋に一緒に入ってきてることなんだよ。

そんなお前をこっちサイドに置いとくと変に怪しまれるだろ。だから部屋に帰れ」

 

「しかし……」

 

「だったらなんだあの"魔王"サマの楽しみましたみたいな顔は。まるで気に入った男と一緒にいて満足してる女みてぇだぞ」

 

「気に入ったとは言われたがそこまでとは知らなかった」

 

「言い訳は終わったら聞くから出てけ。あ、お前この部屋な」

 

こうして有無を言わさず竜胆はギフトゲームの会談の場から追い出されていった。

 

途中タマモと合流して『女の匂いがしますネ』と言われて一悶着あったのは余談である。

 

◆◇◆

 

「……暇だ」

 

『暇潰しに使えそうなものが何一つありませんからねぇ……』

 

部屋に戻り、一通り部屋のチェックを終えた矢先、ベッドに転がり込んでこれだった。因みに隣には霊体化したタマモが寝転がっている。

 

因みになぜかサイズはダブルである。

 

「ベッドでトランポリン……なんてのはマナーが悪いしな……」

 

『そうでございますねぇ……例えるならば神前で寝転がるようなものですね……』

 

「お前という神前では寝転がってもなんら問題はなさそうだがな」

 

『なんですかそれ。私いらない神扱い!?っていうか神扱いされてないんですか!?』

 

タマモがガビーンとなっている。そんな彼女を見た竜胆は敢えて彼女が自分の視界から見えなくなるように寝返りをうちフォローの言葉を言った。

 

「俺はお前をそんな存在だなんて思ったことはないよ……いつだってお前は俺の前に出てきた時から俺の家族だ」

 

『………』

 

突然常にハイテンションな彼女らしからぬ沈黙なタマモになっていたので竜胆は疑問に思いながらタマモの方に振り向く。

 

「……?どうした」

 

『え!?あ、いや、突然そんな事言われると困ってしまうというか……家族という言われ方は良妻狐を心掛けるタマモ的には少しアレですが、いつでもオールタイムバッチこいな私にも不意打ちだったというか……』

 

突然そんな事を言われたので激しく動揺しているタマモだったが竜胆にはなぜ彼女がここまでアタフタしているのかがわからず、まあいいやと思い一言発してまた寝返りをうった。

 

「変な奴……」

 

竜胆がそう呟いた矢先、ドアが開くような音がした。

 

「……ん?」

 

竜胆がドア元を見ると、それはいた。

 

「………」

 

「……耀?」

 

春日部耀だった。竜胆がコミュニティを一時的に離れたあの一件以降互いが恥ずかしくて互いに何か言えなかったのに……というか竜胆は気にしてなくて耀の覚悟ができるのを待っていたというのになぜこう彼女はここに来ているのだろう。

 

「なんで……ここにいるの」

 

「十六夜に渡された部屋の番号がここだったからだ」

 

「ここ……私の部屋なんだけど」

 

「……嵌めたな十六夜」

 

竜胆は一瞬で理解した。してしまった。いやむしろこの考えに至らない方がおかしいとすら思った。

 

恐らくはこれで仲直りしろという彼なりの気遣いなのだろうが、この二人にとってはお互いに気まずくて会いたくない状況……まあ、竜胆はそうでもないが、だったのだ。

 

『それでは私はこの辺でお暇させて頂きますね。お二人の雰囲気に圧迫されて死んじゃいそうですから』

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

タマモがそう言って去ったものの、二人とも基本が無口だから全く会話が始まらない。耀に至ってはドアの前で突っ立ってるままである。

 

「……その、な、耀」

 

竜胆はそんな沈黙……誰かと一緒にいる中の沈黙に耐えきれなくなったのか、あるいは予想外の事態に焦っていたのか、彼から耀に話しかけた。

 

「……何?」

 

一方耀はそのまま。ポーカーフェイスにも程があると思うが……内心彼女もどうしようどうしようとかなり焦っていた。

 

「ええっと……その、なんだ……この前のこと、で、だな……」

 

「うん」

 

「わ……わる、かった……ょ。俺の事、隠しててさ」

 

「私も、事情を知らないままあんな事言ってごめん。『それ』……隠してたかったくらい嫌なんだよね……?」

 

耀の言葉……嫌という言葉に彼は多少の語弊を感じるが、今言っても特に変わりないと思いそういうことにしておいた。

 

「そう……だな。正直、知られたくなかった。

でも、誰かと一緒にいた以上はいつかバレることも覚悟していたから……」

 

肩幅から多少飛び出る程度にまで縮小された翼を見ながらそう言う。しかし、そう言う彼の顔元にはどういうことか、涙が滲んでいた。

 

「でも……できれば、誰にも知られることなくいたかった……今までのギフトゲームとかだったら感情の昂ぶりでこうなるって思わせれてたから……」

 

雫はゆっくりと頬を伝っていく。

 

「泣くトコじゃないのに……なんで泣いてるんだよ、俺……これじゃまるで泣き虫みたいじゃないか……」

 

頬を伝って顎に行き、そこから彼が座っているベッドのシーツに零れるように涙が流れるが、竜胆はそれを拭おうとしない。

 

竜胆は幼い頃からおよそ普通とはいえない暮らしをしていたが、それでも、いや、だからこそ家族の温もりは人一倍知っている。

 

だから彼は家族を失った時、ひとしきり泣いて知人達がどれだけ探しても見つからない場所へと逃げて行った。

 

きっと彼は温もりを人一倍知っている分、失った時の哀しみも人一倍知っているのだろう。

 

だから彼は泣いているのだ。この"力"に"暴走"と"侵食"というものがあり、それを知られた以上、仲間の下にはいられない……失う哀しみを味わいたくなくて。

 

これが彼の……クールというキャラクターで人を惹きつけず、無愛想に人を突き放す彼の本当の姿。

 

失いたくないから得るのを恐れ、喧嘩別れしたくないから友達を作ろうとしない……なのに、一人を極度に嫌うという、ただの見栄っ張りで素直になれない、我儘で泣き虫な子供そのものである。

 

……だけど、その竜胆は今見栄を張らず、嘘をつかず……涙を流す理由を見つけることもできずに泣いている。

 

「おれ、は……ぼく、は……どうすればいいの……?ひとりは、イヤだ……」

 

竜胆はいつもの偉そうな態度もかったるそうな態度もなかったかのような……今にも儚く消えそうなほど小さな声で、軽くつついてやれば倒れてしまいそうな状態で耀に問い掛けた。

 

そんな彼を見て、耀は思わず彼の下に近づく。竜胆の身体は耀が一歩ずつ近づく度に、ビクッ、ビクッ、と震えていた。

 

そして耀は竜胆のいるベッドまでくると、ゆっくりと、竜胆に不安を与えないように、ゆっくりと彼の身体を抱き締めた。

 

彼の肌は、布越しでもわかるくらい冷たかった。きっとこれも"侵食"の影響なのだろう。

 

「大丈夫。私はそんなの気にしない。竜胆は一人じゃないよ」

 

「でも……」

 

「それに、きっと飛鳥も十六夜もそんなこと気にしない。二人とも『それがどうした』なんて言うよ」

 

「………」

 

「私たちはまだ皆子供なんだから……誰かに甘えることは知らなきゃダメだと思う……私も、父さんが帰って来てた時は父さんにベッタリだったから。

だから、それが同じぐらいの人に変わっただけだよ……」

 

耀は"侵食"の影響が少なくなってきて小さくなった翼を軽く握る。

 

「だから……竜胆がその"侵食"で私達の知らない竜胆になっても、竜胆は竜胆だから、そんなの気にしないよ」

 

「ほんと……に?」

 

「ホントだよ。約束する」

 

「あり、がとう……"おねえさん"……」

 

竜胆が抑揚のない声でそう言うと、今度は彼自身が耀に身を預けるようにした。

 

耀はそんな彼を見て『前から思ってたけど、本当に小さな幼児みたいだ』なんて思っていたのだが……先程の言葉に引っかかった。

 

「……お姉さん?」

 

それはおかしい。年齢的に考えても竜胆は15、耀は13だ。

 

なのに、彼は自分を"おねえさん"と呼んだ。

 

「………ッ!?」

 

それについて考えていたら急に握っていた翼が熱くなった。いや、翼だけではない。服越しから伝わっていた凍えるほどの冷たさだった彼の肌も、今度は砂漠のように熱くなり、彼の肌という肌が真っ赤になっていた。

 

シュビバッ、と耀の動体視力でも見えないくらいの速さで竜胆が耀から離れた。

 

「ち、……ち、違う!!今のは……今のは……今のは……!?」

 

真っ赤な顔で何か取り繕うようにしている竜胆。耀としてはなにが違うのか、何故今のはからなにも言わないのか、謎だらけである。

 

「今のは……そ、そう!姉さん!幻覚で俺の姉さんが見えたんだ!

それと姉みたいに接してくれた人達も!」

 

竜胆はあたふたとし、右手の人差し指を虚空に向けてブンブンと振る。

 

「だ、だから決して耀になにかしたかったとかそういうわけじゃ───」

 

ない、そう言おうとした時、ベッドからボフッ、となにかが倒れる音がした。

 

今この場には竜胆と耀以外誰もいない。竜胆は謎の言い訳をしていた。

 

つまり───────

 

「よ……う……?」

 

竜胆の身体の火照りが一気に冷める。しかし、入れ替わるように耀の顔が先程の竜胆に負けないくらい赤くなっていた。

 

「おい……耀?」

 

叩いても揺すっても反応はない。そして耀の身体はやはり、先程の竜胆に負けないくらい熱い。

 

そして、彼女の肌には薄く、黒い斑点が浮かび上がっていた。

 

「これ、どういう───」

 

ことだ、と言いかけた時、急に火龍誕生祭の出来事がフラッシュバックした。

 

───班模様のステンドグラス……近くにあるステンドグラスを見る限り、ハーメルンの笛吹きの黒死病か。

 

───貴方、面白いわね。少し私の話し相手をしてほしいわ。

 

───此度の火龍誕生祭、どうやら私の部下の"ギフト"によると、"魔王"の襲撃があり得るのじゃ。

 

───冗談はよせ、ステンドグラス。

 

───本当よ。それと、私には"ペスト"って名前があるの。

 

黒死病、魔王、ハーメルンの笛吹き、ペスト。

 

これら全てのフラッシュバックが彼に確信を齎した。

 

「まさか……黒死病なのか……?」

 

竜胆の言葉は、彼の中の二人の少女と共に揺れ動いていた。






久々の幼児化主人公。そして即座にツンデレになる。

しかし竜胆さんや。ことはそうほのぼのとしてませんのよ?
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