問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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タイトルからして不穏な空気……




十話 イキル罰

「耀の所には行った。黒ウサギにも朝の挨拶はして……十六夜ともしたし……うん、準備はできてる」

 

「もしかして、だぁ~れか忘れていらっしゃいませんか?」

 

「……うん。あとは戦うだけだ」

 

「ガン無視しないでくださいまし!私今回何もしてないですよねぇ!?」

 

「ははは、横から幻聴が聞こえるや」

 

「むきゃー!暫く出番なかったからってその扱いはあんまりでございます!タマモ放置プレイなんて慣れてないです!」

 

「なら慣れるまで放置しとこ」

 

「それだけはご勘弁を!ご勘弁をおぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!」

 

とは言いつつも、結局は最終的に従者を助けているツンデレなご主人様であった。

 

だが、そんな内心で竜胆は思考の海の中にいた。

 

(ヴェーザーは十六夜がどうにかするだろう……ラッテンは数の差をネズミを操る力でタイまで持ってくるから、早めに潰した方がいい……)

 

でも、と思考を次に至らせる。

 

(向こうにはもう既に俺と対面して、俺の速度と戦い方を知ったペストがいる。そこから考えると、ラッテンは確実に俺との対面を控えさせてくる……とすれば)

 

◆◇◆

 

ゲーム開始直前、"魔王"側は挑戦者側を見下ろす。

 

「マスターマスター、どうやらあいつら、ゲームの謎を解いちゃったみたいですよ?」

 

ラッテンの言葉にヴェーザーは舌を鳴らしながら毒づく。

 

「チッ。ギリギリまで最後の謎は解けないと踏んでたんだがな」

 

「───仮に」

 

ペストがぽうっ、と呟く。

 

「仮に、謎を解かれたとしても……全員倒せば問題ないわ」

 

ポツリと呟いた一言は二人をその気にさせる。そして、彼女自身も自分の言葉に……竜胆を撃つ覚悟を持たせた。

 

(初めて会った時のステンドグラスに描かれていた私達の絵を見ただけで物語を理解していた……それに、あの金髪の子も白夜叉確保のためとはいえ、黒死病の本格発生が起こる前にまでゲームを早めてきた。

だとしたら、少なく見積もっても敵方の頭脳はあの二人……金髪の子はヴェーザーに任せるとして、リンドウはラッテンに任せていい相手じゃない……かと言って、ヴェーザーにそんな負担を課す訳にもいかない……)

 

そこまで考え、ペストはとある結論に至る。

 

(だったら……)

 

そして、二人の考えは一つの答えを見出す。

 

((ペスト/リンドウは俺/私が討つ))

 

二人の答えは交差し、全く同じ結論に至る。

 

しかし、ルール変更による竜胆側の不利や、ペストは知らない"玉藻の前"という存在など、互いに有利不利もあった。

 

◆◇◆

 

ゲーム開始と共に、地面が震えた。

 

既に集団から離れていた十六夜はこの震え、変化した町がハーメルンの町だと悟り、町を駆け回る。

 

「なるほどな……竜胆の言ってた通りだ。この手の敵は場所を自分達のフィールドに持ってくる、か」

 

十六夜は暫く動き回ると、唐突に止まり地面に拳を打ち付けた。

 

すると、街道が破壊され、探していた敵の姿が見える。

 

「ようヴェーザー」

 

「会いたくなかったぜ、小僧」

 

短く相槌を打つ。快楽主義の十六夜は勿論のこと、会いたくなかったと言っていたヴェーザーもこれから自分達がすることに心を踊らせ、拳と笛を構える。

 

そして、それらは重なり、轟音を響かせた。

 

◆◇◆

 

場所は移り、ヴェーザー河付近。

 

十六夜と同じく単独行動をとっていた竜胆はその河に足を付けていた。

 

「水もしっかりと再現されているか……こんないい場所、ゲーム盤にしておくには勿体無いな」

 

岩肌に腰掛け、足を伸ばす。

 

「そうは思わないか?───ペスト」

 

竜胆が誰もいない場所で語りかけると、その問いに対する答えは上から帰って来た。

 

「そうね───リンドウ」

 

上にいたペストはフワ、と飛び降り、河に足を"乗せた"。

 

ペストを取り囲むように、黒い風が舞う。

 

竜胆の髪が従者の色───赤みがかかった桃色になり、狐の耳と九つの尾が出てくる。

 

"黒死病"の風と"呪術師"のエーテルが河の水を吹き飛ばした。

 

◆◇◆

 

「竜胆さん!"黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)"との戦闘、お手伝いに参りました!」

 

黒ウサギとサンドラが現れ、ペストに飛びかかる。しかし、ペストはそれを軽くいなす。

 

「いらん」

 

「そうは問屋が下ろしません!竜胆さんは体調の不良が原因で"ノーネーム"から離れていたのでしょう!?

いつ、またそれが起こるかわかりません!」

 

「……ちっ。あんまり俺に近づくと死ぬぞ」

 

いつも通りの通告をし、ペストに向き直る。

 

「三対一……か。イジメみたいで嫌なんだがな……」

 

「なら、戦わないという選択肢でも選んで高みの見物でもしていたら?」

 

「結構……神格を解放した以上、決意を鈍らせるわけにはいかない」

 

そう言うと、竜胆は姿を一瞬で消し、ペストの後ろに回り込む。

 

「くっ……!」

 

最早瞬間移動と呼べるその動きにペストは黒い風を後部に集中させて纏う、が。

 

「速さが足りない!」

 

ハイキックを頭部に浴びせる。吹き飛ばされたペストを追うように空気を踏み込み、一瞬で距離を詰める。

 

「セイ、波ッ!」

 

掌底を腹部に決め込み、そのまま後退する。

 

「どう、でしょう?」

 

一部始終を見ることしかできなかった黒ウサギとサンドラは驚愕の表情をとる。サンドラは彼の圧倒的な速さに、黒ウサギは体調が良くない状況でありながらあれほどのポテンシャルを引き出したことに、だ。

 

「……いや、こんなんじゃ死なない」

 

竜胆が瓦礫に目を向けると、そこには少し傷のついたペストがいた。

 

「くっ……!?なぜ、今の攻撃にダメージを……」

 

ペストは傷の癒えない身体を見て驚愕する。

 

「やはり……か。どうやら、お前にとって俺との……いや、俺達相性はすこぶる悪いみたいだな」

 

竜胆はそれを見てなにかを理解したような風になる。

 

「どういう……ことなの……?」

 

ペストが癒やすことのできない傷を諦め、戦闘に戻ろうとして、竜胆の神格に感じていた違和感の正体に気がつく。

 

「まさかその神格……!?天照大御神のもの!?」

 

「ご明察。俺の世界ではタマモはただの狐じゃなく天照大御神の表情の一つとされている」

 

「あ、天照大御神……」

 

ペストと共にサンドラも驚愕する。が、そんなサンドラを黒ウサギが悟ったように諌める。

 

「サンドラ様。竜胆さんとタマモさんの規格外っぷりに驚いてたらやってけれませんよ……あの人、自分でもまだよくわかってない危険な"ギフト"をお持ちの上にその天照大御神ことタマモさんを完全に手懐けてますから……」

 

付近でそんな会話をされて竜胆は正直やめてほしいと思ったが、まあいいや、とペストに向き直る。

 

「太陽の、神……!」

 

「やる気が増えたようで何よりだ。流石は八千万の怨念の集合体……!その死の功績たる神霊様だ」

 

流れるように竜胆がとんでもないことを言い出す。サンドラはまた驚き、ペストと黒ウサギはもう驚かない。

 

「流石ね……やっぱり貴方ね。ゲームの謎を最初に解き明かしたのは」

 

「なっ……八千万の死の功績……!?」

 

サンドラの声がそのとてつもなさに震え、一歩、足を後ろに置く。

 

「だが、功績だけじゃ足りない。最強種、ドラゴン以外で神たるには"一定の信仰"が必要……タマモが神霊としているのも倉稲魂の神(うかのみたまのかみ)の豊穣神としての側面あって……どうやってその信仰を集めた?」

 

「貴方に答える義理はないわ」

 

「そう言うだろうと思ったさ……!」

 

竜胆は拳に風の呪術を織り交ぜペストにぶつける。しかしペストはこれを躱し、逆に死の風を吹きかける。

 

「凍れ……!」

 

その風は竜胆の指揮で一瞬で凍りつく。今度は足に風を集め、氷を思い切り蹴り飛ばす。

 

蹴れば殴り、殴れば蹴るという攻撃は黒ウサギから見れば竜胆らしからぬものだった。

 

竜胆は基本的に周りの仲間を巻き込まない戦い方をする。ペルセウスの時もわざわざ石化した者を残らず持ち上げてきていたのだ。

 

なのに、今の竜胆はどう見ても周りを一切気にしない戦いをしている。

 

黒ウサギはそんな彼に"人類の罪"の"侵食"を知らずとも違和感を覚えた。

 

「っ……く、あ、ぁあ」

 

そして、竜胆も自らを蝕む"侵食"とタマモの神格化による負担に顔をしかめ、誰にも聞こえない苦悶の声を挙げる。

 

彼は、自分自身との精神的な戦いに気をとられて周りを気にかける暇を失っていた。

 

そして、それが原因で───ヴェーザー河の最も深い位置に足を踏み入れてしまった。

 

「───!?」

 

「これを、くらいなさいっ!!」

 

ペストの渾身の一発が竜胆の身体を貫いた瞬間だった。






竜胆くんが……死ぬ?気になる真相は次回に!

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