問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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魔王戦ケッチャコ……

ってかちょっと終わるの早くない?




十一話 コロス罪、片鱗ヲ

貫かれた腹部。血に濡れた手。

 

幼いサンドラはその惨状に目を当てられず、思わず目を背けていた。

 

「ぐっ……ぅ、ぁ……」

 

竜胆はペストの腕を掴み、悶えた声を挙げる。

 

しかし、掴んだペストの腕は決して離さなかった。

 

「っ……ぅうあぁ!」

 

風を纏った右ストレートがペストの顔面に炸裂する。

 

「こ、の……つぅ!?」

 

「どうした……?殺せよ……その黒死の風で……俺を殺せよ……!

殺してみせろ……殺してくれよ……コロシテよ……!」

 

「っ……!!?」

 

竜胆の纏う謎の威圧感にペストは思わず戦闘中であることを忘れるほどの戦慄を覚える。

 

そして、同時に彼女は彼へ、哀れみの感情も向けていた。

 

殺せ、殺してみよ、コロシテ、と呟く彼の姿は言葉通りの自殺願望者にも見える。その証拠に傷の増える身体を見て不自然に微笑んでいる。

 

そんなに生きることが絶望なのか、と寂しい死を迎えたペストという"個人"は竜胆の姿に死を迎える前に恨みの慟哭を叫んだ自分を重ねていた。

 

もう自分に残された選択肢は死ぬことだけだった生前の"カノジョ"は彼が生きる権利を持っているのに死を望んでいることに、憤りも覚えた。

 

「───!!そんなに死にたいのなら、望み通りコロシテやるわよ!」

 

ただし、ペストは黒死の風を一切纏わず、神霊としての格によって強くなった拳だけで竜胆を、引き抜けない左手で内臓を掻き回し、自由に動く右腕で竜胆をメチャクチャに殴る。

 

「俺はこれで死ねるんならそれでいい……!ここが俺の墓場でもいい……!

子供に夢を見せて消失させたこのヴェーザー河が俺の死に場所なら俺も本望だ!」

 

内臓を掻き回してくる左手を右手で握り潰れるほどの握力で握り、空いた左腕は狂ったようにペストを殴り続ける。

 

二人は互いに互いの攻撃を避けることなく、殴り、殴られ、内臓をメチャクチャにされ、腕を握りつぶす。

 

それは、とてつもない光景だった。

 

「………っ」

 

黒ウサギは自分がなんのためにここに彼の援護をしに来たのかも忘れ、醜悪な戦いに目を背ける。

 

サンドラは、言うまでもないだろう。

 

ペストの左腕は関節なんてなかったように不自然に曲がり、衣服もほぼ原形を留めずに、辛うじて素肌を隠す布としての役割を果たしている程度の状態であった。

 

一方の竜胆は更に酷い。メチャクチャにされた内臓は多くの部分が体外に出ており、心臓、杯など、なければすぐに死んでしまう器官を残してほぼ全滅状態だった。ペストの左腕を握る右腕は生物の限界を超えたパワーを引き出したせいで力が籠らない……というか、腕として機能していない。衣服もペストと同じく、辛うじて布として生きている程度である。

 

「そうやって死のうとしてる貴方にわかるわけない!私の願いも、私達の苦しみも!」

 

「そうさ!人は所詮一人……孤独なんだ!だけどな、死んでも生きたいと願うお前達と生きるくらいなら死んだ方がいい俺達はそもそも理解なんてできないんだよ!」

 

「あなたをそんな目で見ていた私がバカだったわ!そんなに死にたいなら私がコロシテ私達の一人にして、否が応でも生きさせてやる!」

 

「ならば俺もお前を殺す!生を渇望するお前達と死を渇望する俺達は、戦うことでしか分かり合えないッ!」

 

ペストの身体から黒死の力が、竜胆の身体から歪な力が漏れる。竜胆はその力に呑み込まれ、収まったはずの"侵食"が再び活動を始め、竜胆の身体に変化を促す。

 

黒く塗られた翼が再び現れ、鮮やかな金の尾と桃色の髪は瞬く間に漆黒にそまる。

 

そしてアメジストの瞳は血走った赤となり、ハイライトを失う。

 

「ぅ、ぁぁぁああああああああぁぁあああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!」

 

その叫びはその場に暫く音を消し去り、東に、西に、そして南に……いや、箱庭というものがある世界そのものを震わせた。

 

同時に、死んでいた右腕が再び動き出す。鋭利な刃物となった手はペストの左腕を掴む力を強め

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引きちぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

ペストは左腕を失った痛みに、否。紙切れ同然のように自信の身体から落ちていった左腕に恐怖し、叫んだ。

 

「ぁぁぁぁぁ!?

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

しかも、この怯えようは尋常じゃない。彼女は他にも、竜胆という存在に恐怖した。

 

しかし竜胆はそんなペストを気にするそぶりもなく、躊躇なく彼女の首を跳ねようとする。

 

『おやめください……!ご主人、様ぁ……!それ以上は、ただ倒すだけという行為以上になってしまいま、す……!』

 

竜胆の中のタマモも竜胆の力に押しつぶされないように耐え、必死に呼びかける。

 

「………!

…………………………!!」

 

しかし、そんな彼も彼の感情を失い、タマモの静止に動きを止めたのは一瞬だけで再び動き出す。

『……!やむを得ません……こうなれば!』

 

タマモは竜胆の支配を乗り切り、顕現する。

 

「こうなれば私の全ての力、とまでいかずとも……四、五尾ほど展開して、強制的に!」

 

タマモは竜胆の腕を掴みながら、自らの手と手を合わせる。

 

「五尾……始動!」

 

タマモは瞬時に五つの尾を展開し、両の手を叩く。

 

「……!」

 

すると竜胆はいつかの白夜叉のように、静かに倒れた。

 

「……あ、あぁ……!」

 

ペストは状況の変化を呑み込めず、今だ竜胆が与えた恐怖に呑み込まれている。

 

「……なにも知らずに逝けるのは、ご主人様の力の片鱗を目の当たりにすれば当然でございます……

せめてその痛みを知らないまま、逝ってくださいまし」

 

タマモは再び、両の手を開く

 

「両の手を叩き合わせた先のモノ。右手と左手。神霊とヒト。男と女。隠と陽……そのハザマは、なにがある?」

 

ペストの身体が暗闇に包まれ、その姿を視認することも、そこから声を出すこともできない。

 

「答えは───答えだけが知っている」

 

パン、と乾いた音が響き、ペストごと闇は消えた。






ちょっとグダッたかな?

まあ、取り敢えず竜胆くんのヤバさが理解できたら十分すぎます。

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