問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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巨人族来訪。きっとリア充に嫉妬した人類の恨みで登場したわけじゃないと思いたい。




五話 仮面トココロ

あれから、色々あった。

 

対象を80本の触手で淫靡に改造するという謎の植物、"ブラック★ラビットイーター"なる、完全に特定の個人を狙われているものを黒ウサギが消し炭にしたり、似たような植物、"ふぉっくす★クリーパー"なるものもあったので、それは俺が消し炭にした。

 

「……勿体無い」

 

「あんな植物あってたまるか。自然の摂理に反するものはなにがあろうと認めん」

 

その後、複数人行動を義務づけられ……一人の方が気楽だったのだが、義務づけられるとなれば"人類の罪"の秘密を共有している、タマモと白夜叉以外で唯一の耀を選ぶ以外に選択肢がなかったのだが、正直どうも気まずい。

 

ペストとの決戦前夜以降なんだかんだとヤケに俺に世話を焼いてくるし……いや、世話を焼くだけならそれ以前からもちょっと焼かれてたのだが、最近はそれが更に悪化している。

 

まるで子供扱いされてるようだ。俺の方が年上なのに。

 

ただ……なんというか、14歳の女性に身長がギリギリ、本当にギリギリ勝ってる程度の身長だと説得力がないのが現実なのだが。

 

それよりも、だ。

 

「……おい耀」

 

「ふぁひ?」

 

「お前どれだけ食えば気が済むんだ?」

 

「全部食べるまで」

 

「お前は阿呆か!?財布すっからかんにする気なのか!?」

 

「……うん。まあそうなるかな」

 

「そうなるじゃないよ!」

 

コイツの頭の中食欲しかないのかと疑いたくなる。

 

実際、店に金出してるのは俺なのだ。金遣いの荒い……というか荒い通り越した姉がいたからそれなりに資金の管理はしているのだが、消える分の大半は多分これで消えてる。

 

「こんなんで行儀のいい食べ方だから怒れないんだよ……」

 

実際、耀は出店で何度か口にすればなくなる食べ物でない限りは椅子に座って丁寧に食べる。が、異常なのはその速度と量。いつの間に食べたと言わんばかりの速度と、初めはホントに食べきれるのかと疑った量を食べる。

 

「………っ」

 

不意に、背中の辺りから鈍い痛みが走る。

 

"侵食"の時の痛みだ。やはりそうとうキている。

 

「……"侵食"?」

 

「……ああ。そうみたいだ。どうも最近は小規模だが頻発しててな……」

 

「……ねえ。今更だけど、"侵食"が進んでいくと、最終的にどうなるの?」

 

「わからないな……少し暴れまわって鎮静することもあるし、影響は完全に消えるかもしれないし、あるいは……目に映った生物を見境なくコロス化け物にでもなるか……そうならないことを祈りたいよ」

 

「……そっか」

 

「ただまぁ、正直なところ"侵食"がある程度の段階まで進むと俺の記憶を吹っ切ってなにをしたのかなんて憶えてないんだが……黒ウサギ達に聞いた影響の及ぼし方から察するに、多分化け物になる」

 

自分の心が死んだなんて知覚できないまま、身体が生きて心が死んでいく、周りに一番迷惑をかけるパターンだと付け加えると、不意に耀に両手を取られる。

 

「心が死んでも、身体が生きてるのならきっと心も戻ってくるよ。

身体は器……心は命。竜胆は多分、そんな感じ」

 

「……確かめようのないことだらけな上に、不確定論の運任せか……幸薄な俺にはあんまり期待できない話だよ」

 

「幸がないのなら、私と幸を分け与えよう」

 

「……面白いヤツだよ、お前は。人を不幸にする幸薄の死神に幸を与えてどうするっていうんだ」

 

「生きる今が不幸でも、生きていれば幸もきっとあるよ。

……いつか、竜胆が言ったよね。生きるのを諦めるなって」

 

……あれ?それって、ガルドから耀見捨てて逃げた時にジンに言った言葉だよな……?

 

「竜胆が持ってるって言ってる自殺願望なんて、ホントはないんじゃないのかな……?そんな言葉を言えるなら、尚更そう思えるんだ」

 

「……バカ言え。俺は───」

 

───なにを言っているんだ。お前は死ぬことが望みじゃ、なかったのか?

 

───死ななきゃいけない……だけど、俺は……

 

「……わかんなくなって来たよ。死んで不幸を演じた悲劇の悪になりたかったのか。生きて死ぬことに怯える、ただの子供になりたかったのか……」

 

「迷うっていうことは、そう思ってなんかないんじゃない?答えが出ないだけで」

 

「それこそわからないだろ……」

 

「ふふっ、確かにそうだね」

 

自分の言ったことがオモシロオカシかったのか、耀は屈託のない笑顔を浮かべて来た。

 

ヤバい。すっごいなんかキタ。

 

でも、そんな顔を見せてくれたのがどうしてか、すごく嬉しくて、つい思ったことを口走ってしまう。

 

「……まあでも、本当にヤバくない限りは生きることにするよ。

そんな笑顔が消えるのは寂しい」

 

俺はなにを言っているんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?

 

バカヤロー!こ、これじゃなんか、こ、こここここここ、こく、告白してるみたいじゃないか!?

 

顔を真っ赤にしながら、チラッと耀の方を見る。

 

「………?何か言った?」

 

よかった!本当によかった!食べるのに夢中で聞いてなかったみたいだ!今回ばかりはこの大量出費にも意味があった!

 

と、まあこんな感じで初日は過ぎて行った……

 

◆◇◆

 

「……なんであんな事言っちまったんだろうなぁ……俺は」

 

初日のお祭りを終えて、寮に戻って来た竜胆は、部屋につくなりベッドに背をつけて考え事に耽っていた。

 

「そんなもの、決まっていましょう?ご主人様」

 

ちら、と横を見るといつの間にかタマモが顕現していた。

 

「いたのか……タマモ。最近見てなかったから不安だったぞ」

 

「まったくもって大丈夫じゃないです。最近のご主人様は心の中より外の方でもお喋りを始めたから、私とお話しする時間が減っているのです」

 

「まあ……言われればそうだな。人と話すのも、最初は久しぶりで慣れなかったけど、今はそうでもない」

 

竜胆は自らの身体を隅々まで確認し、"侵食"の影響は少しなくなったことを理解すると、今度こそスゥッとリラックスする。

 

「……サラ、か」

 

「気になりますか?」

 

「……まあ。名前以外にも色々似てたしな」

 

「……グラマラスで」

 

グサッ、と竜胆の心にその一言が突き刺さった。

 

「優雅で、凛々しくて、髪が長くて、瞳がカッコよくて、歳上なところ……とかですか?」

 

「……そうとも言うな。まああくまで似てるだけだし、そういう感情で見るわけでも予定もない」

 

ポーカーフェイスっぽい焦った顔で頷く。ポーカーな顔と焦った時の顔の変化はわかりやすいなー、なんてタマモが思ったのは別のおはなしだが。

 

「耀には悪いが……"ヒッポカンプの騎手"は手伝えそうにもないしな……祭りを楽しむ以外の選択肢がない───」

 

ズゴンッ!そんな音が響くと、竜胆の頭上から、二体の巨大な人影が現れた。

 

「巨人……?」

 

竜胆がぼそ、と呟いたその姿は全身30尺はくだらない巨躯をもち、巨大な薙刀を握った巨人はギョロリ、と竜胆を見つめ、戦闘態勢に入った。

 

「ギフトゲーム開始の知らせも特にない……典型的な無法者だな」

 

竜胆がはぁっ、と呆れるとアメジストの両目を血走った朱色に変える。

 

「悪いが……これがお前達の勝手な進撃とあっては力を出し惜しむ必要性は感じられない……どうなっても知らんぞ」

 

竜胆は全身から呪力を込め、身体から火柱を発生させる。

 

「わるいが……周りに構ってると俺が死にかねない」

 

竜胆は炎を風と共に弾丸として放つ。周りの家屋ごと巨人達は焼け死んでいく。

 

「死ね……」

 

火柱が炎を纏う竜巻になり、灼炎と共に竜胆ごと巨人を巻き上げ、地表に上がる。

 

「死ね……死ね……消えろ……失せろ……消失しろ……焼滅せよ……」

 

ふと、不意に周囲を濃霧が包み、それから感じられるよくわからない感覚が竜胆を襲う。

 

「………ッ!!」

 

急に竜胆の呪術の威力が衰え、朱色の瞳は更に異常性を増したように深くなり、タマモとの融合の影響で桃色になっていた髪が漆黒になり、逆立ち始める。

 

「……グッ、ぁ……!」

 

それを好機と見たのか、巨人達が一斉に竜胆に迫ってきた。

 

───ヤバい

 

そう竜胆が思った瞬間、巨人達は全て、斬り割かれた。

 

「っ……!」

 

その巨人達を殺したのは、一人の女性。銀色の髪をポニーテールに纏め、狐を模したような上半分のみを隠す仮面を着けている。

 

竜胆が、否、"罪"がその女性を本能的に敵と認識しかけた時、いつの間にか上空にいて、そこで戦闘をしていた耀の旋風によって霧を払われ、竜胆としての意識が戻る。

 

「無事ですか?お身体が優れないように見えましたので……」

 

「……気遣い感謝する。助けてくれなかったら、多分コイツらを全部喰ってた」

 

「喰う……ですか。なるほど。貴方は自分ですら把握しきれていない異常な力にその身を飲まれようとしている」

 

白銀のドレススカートと鎧は全身が巨人の血に塗れ、恐らくただの人間ならば吐き気すら催すだろう。

 

「……名前、教えてもらっても?」

 

「フェイス・レス……そうよばれています。遺伝子の接ぎ木……貴方の名も、いざという時に貴方の同志に知らせるために知っておきたいですね」

 

「遺伝子の接ぎ木……なるほど、俺を指すには的確だ……ってか、俺が死ぬ前提か……俺は竜胆……改めて礼を言う、フェイス」

 

「いえ、お礼には及びません。では私はこれで」

 

フェイス・レスが去ったと思うと、急に倦怠感が湧いてきた。

 

「ふぅっ……」

 

「無事でしょうか?肩をお貸ししますが……」

 

魂レベルの繋がりを持つタマモならばその倦怠感の異常性を感知しているはずだが、竜胆は強がりなので敢えて知らないふりをする。

 

「ちょっとヤバい……」

 

「竜胆、肩を貸すよ」

 

フェイス・レスとの会話を終わらせた竜胆にタイミングよく耀が竜胆の身体を両手で抱く。

 

所謂、お姫様抱っこである。

 

「……いや、だからなんでこうなる」

 

「竜胆、軽いから」

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

「耀様!それは私のジョブでございますのになにゆえ横取りを!?」

 

「いや、お前の理屈もおかしい」

 

まあ、耀に悪いがこの倦怠感にはもうそろそろ抗えなくなってきたので、身を任せるとしよう……なんて思った竜胆は眠りの世界に行ったのだった。






こうして竜胆くんは丁寧に暴走フラグをおっ立てていくんですね。なにをやってるんだねキミは。

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