問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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そして、人類の罪は目醒める……たった一人の少年を揺さぶりながら……




三章 最終話 罪、目醒メノ刻

憂鬱とした倦怠感から、意識を強引に引っ張られていく……そんな感覚を感じ、それに抵抗する気力すら湧かず、竜胆は意識を眠りの底から浮上させる。

 

───なあ、俺は……オレタチは、これでよかったのか……?

 

───生きることを願うのなら、それでいいんじゃないのか?

 

───願っても……傷つけるだけの力だとしても、なのか?

 

───キミは傷つけるヒトじゃないだろう?それは、私達がよく知っている

 

───……わからないよ。世界が。俺がいる意味が……俺に、生きろと言う意味が……

 

◆◇◆

 

巨人達の襲撃もひとまず収まり、そこで怪我をした人達が収容されているキャンプの端……竜胆は、瞳を重たそうに開けた。

 

「……世界の真理はなんなんだろうなぁ……どうして世界は、生きろと俺に囁くんだ……?」

 

いっそそのまま終わらぬ夢を見たい……そんな風に思っていた竜胆は目の前に置かれた支給レーションを見つけ、静かにそれを食べだす。

 

「自ら死ぬことは……生きることを拒まれて死んだ者への冒涜……だからな……」

 

竜胆はレーションを食べ続けていると、次第に……無意識のうちに、食べるペースが上がり、感情に"喰べる"以外のものがなくなっていた。

 

野犬のような、本来の彼が見たら説教でもしそうなくらい粗野な食べ方で食料を喰らい、携帯食糧で量も少なかったとはいえ、それをあっという間に喰らい尽くした。

 

「……くそっ、なんなんだよこれは……」

 

食べ終わり、食以外の感情も湧き上がると、つい先ほどまでの自分自身を思い出す。

 

「これも"侵食"のせいだっていうのかよ……だとしたら、もう俺は───」

 

完全に、人間というセルを失おうとしているのか……?

 

そう意識をすると、急に胸の中を圧迫感がこみ上げる。

 

不意に、自分がこの世界で敵対した者達を思い出す。

 

ガルド=ガスパー。竜胆は彼に対してはただの人殺しだと思っていた。

 

だが……もし自分が箱庭にいなければ?言ってはなんだが、あの時の拳が耀の頭蓋を割って、飛鳥にも"威光"で動けなくなろうが、きっとそのうち威光を攻略して、彼女を叩き潰す。

 

そしてジンと、あの猫の店員……加えて周囲の者を証拠隠滅に殺していたろう。

 

そうすれば、いずれ白夜叉にバレて箱庭追放程度にはなろうが、彼は生きていただろう。

 

ルイオス=ペルセウス。竜胆は彼をただの口だけは達者なトーシロと思っていた。いや、実際そうだった。

 

そのままガルドのIFが続いていれば、これも"ノーネーム"の仲間には悪いが、レティシアを売り捌いてそのまま万事解決だ。彼はコミュニティ解散なんてことにはならなかったろう。

 

ペスト。竜胆は彼女を放っておけない真逆の存在と思っている。

 

上のIFが続けば、誕生祭に招かれた多くの人を殺し、彼女の言う悲願を達成させられただろうか……いや、十六夜がいる時点で負けるのはほぼ確定的に明らかだが、タマモ達に聞いたような悲惨な終わり方にはならなかっただろう。

 

全て、竜胆と敵対した者は必要以上にオカシナ目に会っている。

 

「これも……"罪"っていうのか、俺は……」

 

自身はヒトでなくなる。そんな感覚に大した感情は湧かないが……もし、それがペストの時以上の暴走を引き起こし、二度と竜胆という意識が呼び起こされることがなかったら?

 

それはきっと、彼の肉体はただの破壊の塊になる。

 

それだけが、竜胆の気になること。

 

「あら、起きてたの?」

 

突然、聞いたことのある、もう聞けないと思った声が聞こえてきた。

 

声の主はすぐにわかった。自分がその者のことを思い出していたからだ。

 

「……ペストか……?」

 

「……また、会えたわね」

 

竜胆が声の方向を振り向くと、そこにはいつかの斑のワンピースとは違う、レティシアが着ているようなメイド服を纏ったペストの姿があった。

 

「……なによ」

 

ペストを見つめ、なにもしなかった竜胆に対してペストは少しキツめに言葉を出す。

 

「なんで、生きてるんだ……?」

 

「ジンに隷属されたのよ。私のギフトゲームのクリア条件、全部満たされちゃったからね」

 

「……ああ……」

 

「ほら、皆のところに向かうわよ。また巨人族が襲ってきた時のために……貴方の体調が悪いのは知ってるから、手を貸してあげる」

 

「……ああ、悪い」

 

ペストが差し出した手に、竜胆は自身の手を重ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、重ならずに彼女の少し横を通った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜胆はペストの手を握ったと思ったのか、そのままベッドから地に足をつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は、そのままバランスもとれずに倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リ、リンドウ!?」

 

ペストは倒れた竜胆の身体を持ち上げ、どうにか立たせようとする。

 

竜胆は少しふらつきながらも立ち上がる。

 

「だ、大丈夫なの?今、頭から当たったけど……」

 

「……ああ。不思議と痛くない……」

 

ペストの差し出した手を、彼は今度も触らず、地面に当たると違和感に気づいたのか、何度か手を振るが、ペストの手に触れることはなかった。

 

ペストは竜胆の手を握り、握った手ごと両手で竜胆の顔をペストの正面で固定させる。

 

「リンドウ。今私がなに着てるかわかる?」

 

「……斑のワンピースじゃ、ないのか?」

 

その一言で、ペストは確信した。

 

今……竜胆は視覚を失い、何も見れなくなっているし、触覚もなくなっていて、痛みも平衡感覚も失っている。

 

恐らく、レーションを食い漁っていた時には味覚もなくなっていただろう。なかなか苦いものだった筈で、彼はコーヒーが苦手なはずなのに、ほぼコーヒーに近い味のそれを平然と食べていたのだ。

 

また、その食べ物の匂いもコーヒーのものだった……つまり、嗅覚もなくなっている。

 

今の問いに返した辺り、まだ聴覚は残っているようだが、恐らくそれも時間の問題だろう。

 

「リ、リンドウ……とにかく、ジン達に連絡しないと……聞こえる?」

 

竜胆はペストの声に反応しなくなった。もう、聴覚も消えているのだろう。

 

「タマモ!リンドウの従者ならいるんでしょう!出てきなさい!」

 

「は、はい!」

 

ペストに呼ばれると、ついぞ今まで竜胆につられて眠っていたタマモが起きて顕現される。彼女も事態に気づき、焦った声を出している。

 

「こうなったことはあるの!?」

 

「いえ、今まで一度も……しかし、これはもう……!」

 

「なに!?どういうことなの!?」

 

「今は話している場合ではありません……!ご主人様を完全に動けないように隔離できる場所に連れて行きます!」

 

竜胆を抱き上げたタマモはそのまま猛スピードで"龍角を持つ鷲獅子"連合の本拠に向かう。

 

だが、その道の途中、"アンダーウッド"全体に響き渡る音が聞こえた。

 

───目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きよ───

 

その声と共に、黄金の琴線を弾く音が聞こえた。

 

◆◇◆

 

待っていられない。そんな発言をして早々"アンダーウッド"に向かって、やって来た十六夜とレティシア。レティシアは街につくなり十六夜と分かれていたのだが……

 

───目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きよ───

 

えっ、と呟いたレティシアの体から力が抜ける。

 

同時に、琴線を弾く音が三度響き、彼女の意識を混濁させる。

 

なにが起こっているのかわからない、飛びそうな意識の中でかろうじて背後を見たレティシアはクスクスと笑うローブの女性を見た。

 

「───トロイア作戦大成功。お久しぶりですね、"魔王ドラキュラ"。

巨人族の神格を持つ音色はいかがですか?」

 

「き……貴様……何者……」

 

「あらあら、ほんの数ヶ月前の出会いも忘れちゃうなんて、少し酷いのではなくて?

……しかしそれも、すぐ気にならなくなるわ。だって貴方は───」

 

───もう一度、魔王として君臨するのだから。

 

◆◇◆

 

巨人族から奪った"黄金の竪琴"が消えたのに、サラが気づいたのはそれからさほど時間がかからなかった。

 

だが、それも遅かった。

 

十六夜と黒ウサギは目の前に捉えられたレティシアを見た。混濁する意識の中、レティシアはかろうじてそれを口にした。

 

「十三番目だ……十三番目の太陽を撃て……!それが、私のギフトゲームをクリアする唯一の鍵だ───!!!」

 

断末魔のような叫びと共に、レティシアは現れた巨龍に呑まれて光になり、その光はやがて、黒い封書となり、魔王の"契約書類"として"アンダーウッド"に降り注いだ。

 

『ギフトゲーム名 "SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"

 

・プレイヤー一覧

獣の帯に巻かれた全ての生命体。

※ただし獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断とする。

 

・プレイヤー側敗北条件

なし(死亡も敗北と認めず)

 

・プレイヤー側禁則事項

なし

 

・プレイヤー側ペナルティ項目

ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

時間制限は十日ごとにリセットされ繰り返され続ける。

ペナルティは"串刺し形"、"磔刑"、"焚形"からランダムに選出。

解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。

※プレイヤーの死亡は解除条件に含まれず、永続的にペナルティが課される。

 

・ホストマスター側勝利条件

なし

 

・プレイヤー側勝利条件

一、ゲームマスター・"魔王ドラキュラ"の殺害。

二、ゲームマスター・"レティシア・ドラクレア"の殺害。

三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に掲げよ。

四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

印』

 

◆◇◆

 

琴線の音と共に変わったのは、レティシアだけではなかった。

 

「ガッ、ァッ、ゥグァァァァァァァァァァァァ……!!!」

 

竜胆である。彼は琴線の音が鳴ると共に、突然苦しみ出した。

 

「立て続けに……一体なんなの……!?」

 

ペストは怪訝そうに竜胆を見つめるが、タマモはこれ以上ないほど驚愕した顔となる。

 

「ご主人様……!?なりません!今しばらくお耐えください!」

 

「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 

竜胆の叫びは、この世の全てを震わせる。

 

叫び終えたかと思うと、竜胆の身体が勝手にタマモから離れていく。

 

漆黒の髪は更に黒く染まり、まるで虚無を思わせるようになる。

 

瞳は鋭く、紅くなり、輝きのない鈍ったものとなる。

 

牙は獅子を思わせるような鋭く硬いものとなり、あらゆるものを"神砕く"。

 

爪は万物を切り裂くものとなり、服は一糸纏わず消え去り、身体の要所のみを漆黒の体毛が覆う。

 

そして、背後に現れた漆黒の翼は総ての天を司る道となる。

 

見開かれた瞳は一瞬、タマモを見つめ、ただ一言だけを残す。

 

「ぼくのひみつ……あることないことぜんぶいって……それで、ころして」

 

それだけ残して、竜胆は虚空の中へと消えていった。

 

第三章、完





巨龍召喚は早めに終わらせました。

そして十三番目の太陽を撃て、は正直ギフトゲームよりも竜胆くん戦がメインになってくると思われます。

まあ、主人公がどうにかなって大嫌いになっても、問題児SSのことだけは嫌いにならないでください!

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