問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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第四章

ついに目醒めた"孤独の狐"の"人類の罪"。

その力は、破壊と虚無……




ぼくは、いきてていいのかな?
一話 孤独


"アンダーウッド"の収穫祭本陣。そこは"魔王"となったレティシアが"主催者"を務める異例のギフトゲームを攻略するため、黒ウサギが発動した"審判権限"でギフトゲームを一時中断し、会議を行おうとしていた。

 

多くの者達は突然の事態についてこれず混乱し、負傷者として医務室に送られた。

 

「さて……何から話すべきか……」

 

今回の作戦会議の進行を担うサラ=ドルトレイクは頭を抱えていた。ギフトゲームについてのこともあるが───他にももうひとつ。いや、二つ。

 

一つは、春日部耀が上空に浮かんでいる"主催者"側の本陣となっている浮遊城に言って連絡も途絶えていること。これに関してはサラというより、"ノーネーム"が心配している。

 

そしてもう一つ。恐らく今回のギフトゲームで巨龍並みの攻略難度を誇るのであろう……高町竜胆のことである。

 

事情を知らない彼女らは突然彼がおよそヒトとは言えない姿になって暴れ回っているという情報を手にした時からどういうことなのかと頭を捻らせている。

 

「───!サラ様!ペストと、竜胆さんの使い魔のタマモさんが!」

 

「彼の使い魔だと?」

 

黒ウサギが声を張り上げてサラにそのことを告げ、本陣に戻って来た二人を迎え入れる。

 

「おいタマモ、どういうことだ?竜胆の奴が無差別に暴れ回ってるってのは」

 

二人が本陣に来た途端、十六夜がタマモに詰め寄って来た。状態がわからねば状況も確認できない、ということなのだろう。

 

「タマモ……貴女、リンドウに言われたんでしょう?全てを話せ……って」

 

ペストはタマモに向かってそう言う。タマモは周りの空気を感じ、やはり言うしかないことを悟り席に座る。

 

「……確かに、全てを話せと言われました。ご主人様がそれを望んでいるのならば、私はそれを拒みません。

……話しましょう。一人の少年が望むべくもなく植え付けられた"罪"と、今を蝕んでいく"罰"を……」

 

いつものおちゃらけた彼女からは想像もできないくらいに真剣な表情。それはいくら問題児と言われている飛鳥と十六夜だろうと、余計な口を挟んではいけない気がした。

 

「ご主人様……高町竜胆様は、元々異世界に通じる技術を持っていたことは、恐らく"ノーネーム"の方は気づいているのではないでしょうか?」

 

「まあな」

 

「ええ。時々異世界の自分がどうの……なんて独り言を喋っていたわ」

 

「私も……初めて東側に訪れた時にヤケに異世界というものに精通していたので、もしやとは思っていたのですが……」

 

「そうなんです。竜胆様のお母様は昔とある事情で異世界を自由に転移する手段を手にして、家族ぐるみで同じように異世界を移動できる方々と交流を深めていました」

 

タマモは竜胆の魂に補完されている過去の記憶の蓋を開け、語り出す。

 

「様々な出来事があって、それを笑って終わらせて……竜胆様はそんな家の拾われ子の長男と長女、双子の姉に双子の弟と妹という家族の次男……竜胆様のお母様達の生活はそんなものだったんです」

 

でも、タマモは語るように言う。まるで本を読み聞かせるようで、彼という物語が一冊の、完成しきっていない本を読んでいるようだ。

 

「そんな日々もそう長く続きませんでした」

 

「……どういうことだ?」

 

「竜胆様は、三歳の誕生日の夜、音沙汰もなく消えたのです」

 

「消えた……?それって、竜胆くんがいなくなったって……?」

 

「当然、お母様達は必死に探し回りました。丸一日探して、幾億という世界。探して、探した末にお母様の友人が竜胆様を見つけました」

 

「……どこで、見つかったのです?」

 

タマモはそれを言うのを一瞬だけ躊躇し、それも一瞬で振り払って告げる。

 

「人造合成生物兵器製造実験所……お母様の友人が元々追っていたとある組織の一部でした」

 

「じ、じんぞう……?」

 

「……おい。合成生物兵器って、まさか竜胆の奴は───」

 

十六夜が恐るべき答えに辿り着き、驚愕の色を隠せないまま詰め寄って来た。

 

「……はい。十六夜様のご想像の通りです。ご主人様は後天的にあらゆる世界、あらゆる時代の生き物達の血液、細胞を植え付けられ、如何なる生き物の力をも行使できる存在、"アーティフィシャルキマイラ"と言うべき存在なのです」

 

その場にいた全員が息を呑んだ。

 

人造のキマイラ。三歳にして人間として生きることを第三者の介入によって放棄させられてしまった存在……それが、高町竜胆なのだ。

 

「以降、元々暗殺者の家系に密接な関係のあったお母様は人が変わったようにその組織の名が出る度に潰し、潰し、潰し尽くしていました。

そんな中でも精神そのものが崩壊しなかったのはやはり、竜胆様が自身の境遇を気にすることもなくいたことなんです……ですが」

 

ですが、その一言がこれ以上ないほど、彼らに竜胆の絶望感を感じさせていた。

 

「家族は皆々、竜胆様が十三歳の時に原因不明の突然死を遂げました。……ただ一人、竜胆様を除いて」

 

原因不明、果たしてそれで終わらせていいのだろうか。明らかに第三者の介入であるとわかるものだった。

 

「竜胆様は哀しみに暮れながらも、その死に方の不自然さに気づき、引き取ると言ってくださったお母様の友人達の言葉を全て断って、振り切って、たった一人であてのない旅に出ました。

その旅先には厚意にしてくれる方も沢山いて、竜胆様も束の間の安らぎに浸っていたかった……でも、そんな人達も皆死んで、また遠くに行って、同じことの繰り返し……」

 

「だから死神、か。自称するのにもやっぱりそれなりの理由はあったんだな」

 

「はい。そして竜胆様はやがて世界のどこともしれない場所に辿り着いて、誰もその場所にいないことと、誰も来ないような場所であるということを認識して、三日三晩、涙を枯らし尽くしました」

 

三日三晩泣く、そんなものは比喩的な表現なのだろうと思っていたが、彼は本当に三日三晩泣き続けていた。自分は関わった人を殺してしまう。もう人と関わることなんてなく死んでいくんだ、と。

 

「そうして竜胆様の人生そのものを棒に振るうような、全てに絶望した生活が始まり、やがて竜胆様は泣くことも笑うこともなくなりました」

 

死のうと思って頸動脈を斬り裂いたこともあったが、異常な再生力は彼に死を許さず、一ヶ月間気道を完全に塞いでも息が切れることもなく、およそ自分で死ねる手段はほぼ全て試して、そんな一年が過ぎて竜胆が14歳になった時だ。

 

「竜胆様は失った家族の愛を僅かに思い出し、私は竜胆様が丸一年失って、不意に渇望した愛と、竜胆様の身体に存在している野干と白面九尾の細胞と血液を媒介として、現代に現れました。

細胞と血液、即ちご主人様の構成する魂そのものを媒介とした私とご主人様はそれから約一年を過ごし、箱庭の招待状を受け取りました」

 

それから先は皆の知る通り。出会ったばかりの頃は死神が人を殺さないように突き放したような態度を取り、やがて人との付き合い方を忘れたせいで素直になれない小さな少女のような少年となった……

 

「あの竪琴の音が聞こえた後に巨人族達は群れを成して襲ってきました。竪琴に巨人族を操る力があるとすれば、恐らくご主人様の中にある巨人の細胞と血液が過剰に暴走した結果……私はそう見ています」

 

話を終えた時には、全員がなんとも言えない表情になっていた。

 

「それが彼、竜胆くんの"人類の罪"の正体……」

 

「確かにそれは人の業が生み出したと言っても過言じゃねえな……」

 

「……そもそも、ご主人様の人格が元の人格であることが奇跡に近いんです。

ご主人様のお母様が調べた結果によるとご主人様の人の細胞と血液の割合はどちらも0,1パーセント以下……身体の部位によっては3パーセントほども一つの生物の細胞、血液をつぎ込まれた部位もありますから……それが、ご主人様の"人類の罪"がご主人様を"侵食"して暴走させる原因なのです」

 

一時的に人間としての人格が主導権を失っているのだ。恐らく、今もそうなのだろう。

 

「ハッ、やれやれ……迷惑のかかる問題児の末っ子だな」

 

「まったくね。春日部さんより年上なのにあんなに子供なのは、その人の部分がそこで成長を止めているせいなのね……」

 

十六夜と飛鳥は本陣の暗い雰囲気を紛らわすように冗談を言ってみるが、あまり効果はなかった。

 

「……皆様、折り入って、お願いがあります」

 

そう言うと、タマモは綺麗に身体を折り、頭を下げた。

 

「ご主人様は自分を殺せ、と仰いました。ですがっ……!」

 

そのまま地に足をつけて土下座をするのではないか、それほど真剣だった。

 

「私には、ご主人様が失った幸せを、この世界で取り戻してもらいたいんです……!ご主人様を、助けてください……!」

 

その姿は、かつて中国で悪名を馳せた大妖狐、蘇妲己が見せるはずのない……そして、人に興味を持って、一人の少女、藻女(みずくめ)として記憶を失って生き、自らの正体を知って、それでもなお人とわかりあおうとした悲劇の妖狐、玉藻の前が行ったその時の頼みよりも真摯なものだった。

 

それほどに、彼女は高町 竜胆のことを主従関係を越えて、一個人としての幸せを望んでいるのだ。

 

そして、そんな彼女をみた彼らも───

 

「……ハッ、こんなデキた女がここまで頼み込んでるんだ。断らないわけねえだろ」

 

十六夜が。

 

「当然よ。そもそも彼は私達の家族だもの」

 

飛鳥が。

 

「YES!私も竜胆さんには人並みの幸せを知ってもらいたいのデス!」

 

黒ウサギが。

 

「そもそも断る理由なんてないわ」

 

ペストが。

 

「はい。僕も立場が同じだったらこうしてます……いえ、それでもここまでできるか……」

 

ジンが。

 

"ノーネーム"一同は満場一致で頷き、それを見たサラはここぞとばかりに声を張る。

 

「それでは改めて、ギフトゲーム"SUN SUNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"攻略会議及び、"狐巫女"高町竜胆の救出会議を始める!

このギフトゲームは今までの中でも最上位に入るほどの熾烈な戦いとなるだろう!これ以降の進行は黒ウサギ殿に一任する!各自、ギフトゲームの参加者として、多くの命を預かる者として、責任のある発言を望む!」






ぶっちゃけ魔王のギフトゲームっていうよりは竜胆くんと十六夜くんのチート対チートと魔王戦がほんのちょっとってだけだったり……

因みにこのキマイラ設定はぶっちゃけなんでもアリのチートギフトです。だから暴走してるんだけど。

オーズ風に言うとプトティラコンボ的存在で、竜胆くんの異世界の知り合いという名前を出せないキャラクター達の版権技を使えたりします。

メダガブリューとかメダガブリューとかメダガブリューとか。
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