問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
少年は羽ばたく。
空へ、そこに待つ、変わり果てた家族の元へ。
翌日、様々な議論を繰り返され、今回のギフトゲームの配置はこんな感じになった。
天空城突入、並びに現在空中で動きを止めている竜胆との交戦救出は十六夜、タマモ、グリーの三人に任せることとなった。
理由は単純明快。現時点で竜胆とマトモに戦えるとしたら、第三宇宙速度を越えるetcなどのぶっ飛んだ力を持つ十六夜がいいのだが、それ以前に竜胆の下と天空城に向かうには空を飛ぶ必要があるので、"ノーネーム"でも信用してくれるグリーに乗ることになった。
そして、タマモは竜胆救出の秘策があるらしいので同行。しかしそれは己の持つ殆どの呪力を使うらしいので、戦闘はほぼ十六夜に一任される。
そして、"アンダーウッド"の上空1000メートル地点。
十六夜は空で身体を丸めるようにしていたそれを発見すると、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。
「……いたぜ。グリー、タマモ、死なないように気をつけろ」
「うむ。私とて彼と同じ混合種。言わば同士だ。
その同士をむざむざ見捨てるわけにはいかない……!」
「はい。私も覚悟はできております。
ご主人様を救う覚悟を……!」
「ヘッ、オーケーだ。
タマモは特に気をつけてろ。魂が繋がってるってんなら、お前が死んだら折角アイツを助けに来たのが無駄になっちまう」
それは、近づいてくる十六夜達の生命の鼓動に気がつくと、丸めた身体を元に戻し、気力のない直立不動をとる。
「前々から……一度お前とヤリ会ってみたかったんだよ、竜胆!」
十六夜はグリーの背中から跳び、一瞬で"罪"の下に接近する。
しかし、"罪"もまたそれ以上の速度で動き、十六夜の腕を切り飛ばさんばかりに剣の如き爪を振るう。
十六夜はそれをあえて腕で受け止め、逆の腕で"罪"の腕をとる。
「こいつでも喰らえ!」
十六夜は凄まじい速度のパンチを"罪"に食らわせる。そのパンチは華奢な身体つきをしている"罪"には多少オーバーキルのような感じもしたのだが……
「………♪」
"罪"はその痛みをものともせず……否、痛みを感じるからこそ笑みを浮かべていた。
「───なっ、」
十六夜はその異常性に思わず感じたことのない違和感を感じる。
「いただき、ます」
"罪"は、十六夜の頸動脈を噛みちぎる勢いで、彼の首筋に噛み付いて来た。
「ガッ!?この、ヤロウ……!」
十六夜も"罪"の首をへし折る勢いで殴る、殴る、殴りまくる。
幸いというか、"罪"は十六夜に組みついているので十六夜が地に落ちることはない。
「………!!」
「ガッ、グゥ……!ヤハハハ……楽しいなぁ、楽しいぜぇ……!やっぱりこういう命を掛けた戦いっていうヤツは燃える!」
"罪"は殴り続ける十六夜に耐えかねたのか、あるいは噛み付くという行為に飽きを覚えたのか、口を離し十六夜を殴り飛ばす。
グリーはその先にいち早くたどり着き、十六夜を背に乗せる。
「こいつは一筋縄じゃいかねえやぁ……!」
「……十六夜様。恐らく今のはほんのお遊びです。
今のご主人様は"人類の罪"に振り回されて呪術を使うことも、私を取り込むこともできませんが、"罪"しか使わないということは裏を返せばなにをしてくるのか全くわからないということ……ですが、あれは」
タマモの言葉が続く前に"罪"は行動に出ていた。
遥か下の地面の一部を一瞬にして持ち上げ、竜胆の周りには足場ができる。
竜胆はそこに手を突っ込んで、引っこ抜く。
するとそこから、先ほどまで影も形もなかった大口を開けた恐竜の口に紫の刃先が伸びた斧のようなものが出てきた。
「あれは……!メダガブリュー!」
「メダ……なんだそれ?」
「ご主人様の記憶の中にあった、異世界の知り合い様が持っていた武器です。
確かあれは、斧とバズーカ、二つの力が使え───」
る、と言おうとしたら斧の持ち手を銃の持ち手のようにカタチを変え、躊躇なくバズーカを撃ってきた。
「んなろっ!」
十六夜はそれを拳で押し返そうとする。しかし、着弾した瞬間、それは爆発し、十六夜に少なからずのダメージを与える。
「結構、やるじゃねえか……」
「………!」
十六夜が傷を確認し、"罪"はその瞬間にメダガブリューをアックスモードに戻し、十六夜に肉薄する。
十六夜が咄嗟に左腕を差し出し、斧を受け止める。その衝撃は十六夜の足場となっているグリーにかなりの負担がかかり、苦悶の声を上げる。
「グッ……!」
「無事か、グリー!」
「私は問題ない……っ!お前は早く、竜胆を……!」
グリーがそう言うと十六夜は"罪"の腹部に蹴りを決め、"罪"は吹っ飛ばされる。
「っ……!腕が抉れやがった……!」
メダガブリューに斬られた腕はわかりやすく抉れていた。しかも十六夜が見た限りでは、抉れた左腕から銀色のメダルのようなものが四枚零れ落ちていた。
咄嗟に十六夜は"罪"の方を見ると、"罪"はそのメダルを右手に持っていた。
「せんとうよく……?これがキミの、よくぼー……?くだらない……」
"罪"はおぼつかない言葉遣いで十六夜を見下すように笑う。
「そのよくぼー……けしたげる」
"罪"は銀のメダルを一枚ずつメダガブリューの紫色の刃先、エナジーエンハンサーの中に入れ、恐竜の顔にまるでメダルを喰わせるようにスライドする。
『GOKKUN!』
メダガブリューの顔を元の位置に戻すと、メダガブリューから恐竜のような形をしたエネルギーが現れる。
『PU・TO・TYRA・NNO HISSATHU!』
「グランド・オブ・レイジ……」
呟きと共に振るわれる斬撃は、十六夜の身体を容赦無く斬り裂いた。
結局メダガブリューじゃねえか。
きっとそうツッコまれても仕方ないと思った。