問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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バイバイ。

その言葉は、誰に向けて……




四話 バイバイ

「………ッ、クソが……っ、今のは痛かったぞ……!」

 

十六夜がグリーとタマモを庇うように腕を交差させて、"罪"の攻撃を防ぐ。

 

「……いがい。キミのよくぼー、つよい」

 

「そうかねェ……だが、今のお前の方は、逆に欲望がなんにもねぇように見えるぜ!」

 

「……そうだろうね。ぼくは、きょむだから……」

 

「ケッ、つまんねぇなァ……俺の知ってる高町竜胆は常に死欲があったよ……望みもしてないくせにな……!」

 

「それ、かこ……いまはいま。ぎゃくにいまは、いきてこうやって……キミをコロしているのに、よろこびがあるよ……?」

 

「……言ってろ!」

 

十六夜は腕を"罪"に向けて振り抜き、その拳圧が"罪"に直撃する。

 

「いたい、なぁ。でも、キモチ、いいよ……いじめるのも、いじめられるのも、すき」

 

「変態だな、てめー」

 

バズーカの砲弾を拳圧で相殺する。それは改めての挨拶がわりという意味だったのか、"罪"は再びメダルをメダガブリューの中に収める。

 

『GOKKUN!』

 

今度はそのまま恐竜の顎を元の位置へ戻さず、メダガブリューをバズーカモードにし、引き金を引く。

 

『PU・TO・TYRA・NNO HISSATHU!』

 

「……バーン」

 

バズーカから放たれた砲撃は、先ほどの斬撃に匹敵する威力のものだった。

 

「グリー!避けろ!」

 

「承知した!例えこの身が砕け散ろうと、十六夜と竜胆の従者は私が死なせん!」

 

先ほどのは斬撃だったが、これは砲撃。どれだけの威力かあろうと懐に潜り込んだ攻撃よりは幾分か躱しやすい。グリーはその砲弾を全力で避ける。

 

しかし───

 

「ぬっ、ぐぅ、あァ!?」

 

グリーの片翼が砲弾に抉られ、翼を失った。

 

「グリーさん!?」

 

「気にするな……!元より我々グリフォンは翼がなくとも飛べる!」

 

「しかし、有翼動物にとって翼は───」

 

「翼一枚に甘えて命を救えなかったらどうする!?彼の心の痛みは、私の誇りを失った程度よりも確実に、遥かに痛い!

もしそれに甘えて命を救えなければ、それは私にとって誇りの翼を失う以上の恥だッ!」

 

グリーは吠える。命を粗末にするなと。種族の誇り程度と命を天秤にかけるならば、その答えは決まり切っているのだろう。

 

「……グリーさん……!」

 

「オーケー……!いい根性だグリー。それを聞いて俺も覚悟ができたぜ!」

 

十六夜は再び腕を振り抜き、今度は幾束をも光を集めた虹色の光を放つ。

 

「───!?」

 

"罪"は、突然現れた光に驚愕し、ほぼギリギリのタイミングで光線を躱す。

 

そして、その隙の大きな避けは"罪"に決定的な隙を作り出した。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

十六夜は"罪"に向けて跳ぶ。その腕に如何なる恩恵をも無効化にする力を込め、飛びつく。

 

無効化の力は、"罪"の力を消し去ろうとせんとする。

 

「ぅゥウ、グゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」

 

十六夜の"正体不明"の力が"罪"に響き、一瞬"罪"の身体から抵抗が消えた。

 

「───今だ!タマモォ!!」

 

「承知しました!グリーさん!」

 

「心得た!」

 

グリーが旋風を巻き上げ、タマモに"罪"に繋がる風の道を作る。

 

「参ります!」

 

タマモはその道を駆け抜け、"罪"の身体に触る。

 

「は、な……せ……!」

 

「放すわけねえだろぉが……!」

 

「太陽神の権限、完全解放……!今、竜胆様に存在するヒトの部分を、ヒトではなく神に変換します!」

 

───神。つまり、太陽神と豊穣神の表情を併せ持つタマモが、竜胆を人に戻すのではなく、神にする。

 

確かにそれならば、暴走する力を神の力で強引に抑えることもできるだろう。なにせ神と獣では格が違いすぎる。

 

だが。

 

「───おい、タマモ。お前、太陽神としての神格を竜胆に受け渡すって、まさか───」

 

「───はい。どうやら私はここまでになるようです。これからは、ご主人様が私の後継者……次代の太陽神であり、豊穣神となるのです」

 

つまり、神格を失うことになる彼女は、ただの霊になって、天に逝くということになる。

 

白夜叉が蛇神、白雪姫に神格を渡したような時の問題ではないのだ。

 

タマモは、自分の存在を確立させている神格そのものを竜胆に受け渡すと言ったのだ。

 

「私は白夜叉様のように多くの神格を持ってるわけではありませんから……十六夜様。共にいられた時は刹那のようでしたが、楽しかったですよ」

 

「……バカ野郎……!お前だって、家族だろうがっ……!」

 

十六夜がそんな言葉を漏らす。まるで別れが近づいているかのように、タマモの身体は光の粒子に包まれていく。

 

「……太陽神が気まぐれで生まれ変わったただの悪霊狐がここまで来られたのです。

こんなどうしようもないちゃらんぽらんな狐を大事な家族と受け入れてくれた貴方達や、ご主人様の為に、再び得た命を散らせることができるのなら、本望でございます」

 

「───この、主従揃って大バカ野郎共が……!」

 

十六夜が惜しむように毒づくと、身体が光の粒子に包まれたタマモは微笑んだ。

 

「ふふっ、大バカ野郎……ですか。

それもいいです。だって、ご主人様も私も、貴方達大切な方々の為にしか、大バカ野郎になんてなれませんから……」

 

さようなら、そして、また会えるのならば、黄泉の国で。

 

タマモはどんどんと光となる。自らの存在が消えゆくのを実感しながら、タマモは最後に竜胆を抱き締める。

 

「これから貴方には、沢山の苦難と悲しみが待っているでしょう……それでも、貴方はもう望まない死を望む必要も、それを恐れる必要もないんです……貴方の生きたいように生きて、貴方の愛を育んでください」

 

タマモは竜胆の額に、自らの唇を重ねた。

 

「さようなら、私の愛しい、ご主人様……高町、竜胆……」

 

その言葉と共に、タマモの身体は完全に消え去り、光は竜胆の身体へと入って行った。

 

そして竜胆は、グリーの背中に収まった。

 

◆◇◆

 

「……っ、……」

 

「……起きたか。竜胆」

 

「……十六夜……」

 

大空の中、高町竜胆は瞳を開けた。

 

「……すまない。迷惑かけた」

 

「……ああ」

 

竜胆は暴走していた時のことを把握しているようで、自分の身体を腕で掴み、肌が千切れんばかりの力を籠める。

 

「……わかってるなら、やることもわかってるよな」

 

「……うん。グリーもごめん。その翼……」

 

「……いや、私はいい。それよりもキミの方が心配だ」

 

「……大丈夫。俺、行くよ」

 

竜胆がいつもよりもあどけなさを残した口調……否、堅苦しさがなくなった口調でそう言う。

 

「……行くって、どこにだ?」

 

「わかってるんでしょ?耀のところだよ。

俺は、俺のやりたいようにするよ」

 

「……フッ、まあそう言うだろうと思ったよ。

行ってこい。お前の生きたいように生きろ。今の俺にはこれしか言えねえよ」

 

「……ありがとう」

 

竜胆は朱色から、元のアメジストに戻った瞳で黒い翼を展開し、十六夜の目にすら留まらない速度で飛んで行った。

 

「俺は、行くよ……タマモ。それがどんな道でも、後悔したくないから、進むよ……!もう、母さん達やお前の時みたいな後悔はしないためにも……アイツは、耀は絶対に……!」






ちょっと急展開気味でしたね。

だから説明力のない作者はここでタマモが消えた理由を本編よりほんのちょびっとわかりやすく説明。

1、竜胆の暴走する身体を止めるため、竜胆が持つ人間の側面を全て神にすることで神の権限で獣の暴走を諌める。

ニ、しかし、それは竜胆に自分の神格を受け渡すことと同義であり、竜胆に神格を渡したタマモは元々神だったため、霊格も一気に失って消滅。

三、竜胆は過去の出来事やタマモが消えたことで、死神である自分が原因で誰かぎ死ぬことがもうないように耀の下へコントロール可能になった"罪"を使って向かう。

こんなところです。あと、"人類の罪"に関してはまだ完全にわかり切ってはいないので、竜胆自身解放できないパーソナリティがあります。
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