問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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孤独の狐は自分にとっての太陽達を知った。

それでも、彼は自分自身が太陽の一つであることを自覚してはいなかった……




六話 フォーティーンデイブレイク

「……んっ、……頭、揺れる……」

 

「起きて竜胆。起きて」

 

「んぅっ……?」

 

つい先日味わった地獄のような微睡みとは違う、優しく穏やかな微睡みの中、竜胆は脳を震わせる声に反応して目を覚ました。

 

「……起きた?」

 

「………!!?……!…………!?」

 

目の前に耀がいて、竜胆はなにも言えなかった。

 

なにせ、ツンデレの竜胆が当人含み誰も見てないし聞いてないとはいえ、つい先ほど好きだなんて言った相手が目と鼻の先にいるのだ。困惑しないわけがない。

 

「耀、ちか、ちか、近い……!?」

 

「さっきはもっと近かったと思うけど……?」

 

「いや、でも近い!近いから!?」

 

「……そう?でも、今はそんな話してる場合じゃないよ」

 

「そんな……って。俺は死活問題なんだけど……」

 

そう呟きながら竜胆は耀の言葉に疑問を持ち、周りを見る。

 

そこには老猫一匹、十六夜とレティシアがいた。

 

「……どういう状況なんだ?これ」

 

「丁度いい!竜胆もなにか言ってくれ!」

 

竜胆が起きたことに気づいたレティシアは唐突にそんなことを切り出してきた。

 

「なにか……?なにかって、なに?」

 

「二人を止めてくれ。でないと……二人とも死ぬ」

 

「…………………死ぬ?」

 

「バカ言えレティシア。ここで動かなかったら死ぬのはお前なんだぞ?」

 

「……おい。俺は状況の説明を求めたのにややこしくしないでくれ」

 

目覚めたばかりの頭をフル回転させて今の問答について考えるが、まるで意味がわからないのでやっぱり聞くことにした。

 

レティシアは答えるのを少し渋り、十六夜は躊躇いなく言う。

 

「ついさっき、このギフトゲームをクリアさせた」

 

「……それで?それだけじゃここまでのことにはならないはずだけど」

 

「そして、今から12分後に箱庭の天幕が開く。今ここにいるレティシアは精神体みたいなもので、本体は別にいる」

 

「………………巨龍の中か?」

 

「ご明察だよ。よくわかったな……つまり、箱庭の天幕が上がっても巨龍を倒せなければ吸血鬼のレティシアは……死ぬ」

 

「まぁ、そうじゃないと突然巨龍が出てきた理由にならないだろう?それに、レティシアは吸血鬼の中で唯一"竜騎士"に上り詰めたと聞く。なら納得だ」

 

竜胆はうん、と首を縦に振る。

 

「わかってるなら尚更だ。私が皆を殺さないように、キミもなんとか言ってくれ」

 

「……ああ確かに。巨龍の力は強いし、危ないかもな」

 

「ああそうだ。だから彼らを止めてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、ふざけてる場合じゃないんだぞ!?」

 

竜胆が茶化すように言った一言にレティシアは憤慨する。しかし、竜胆はその直後に大真面目な顔をする。

 

「……だったらお前を見捨てろというのか」

 

「そうだと言っているんだ」

 

「それこそふざけてるなよ吸血鬼。お前は自分の作り上げた"罪"に目を背けてここで死ぬつもりか?」

 

「……そうだ……」

 

レティシアの言葉を聞いた竜胆は精神体のレティシアの胸ぐらを掴む。

 

「このっ……バカヤロウ!修正してやるっ!!」

 

竜胆は躊躇なくレティシアの顔面を思いっきりブン殴った。

 

レティシアは実に5メートルほど吹っ飛ばされ、精神体なのに血反吐を吐く。

 

「仲間を死なせたくない……だと?笑わせるな。俺は生きる"罪"なんだ。その"罪"相手に"罪"でロンパする気か?できるわきゃねぇだろ!!」

 

竜胆の威圧に圧され、レティシアはつい黙り込む。

 

「誰も死なせたくないからだぁ?違うね。お前はそうやって悲劇のヒロイン演じてるにすぎないんだ。

救われる方法があるのに仲間のためにそれを放棄して死ぬ?そんなことして死んだら……タマモはなんなんだ!?俺はまた救える命を救えないのか!?」

 

竜胆はギフトゲーム攻略の鍵となっていた十三の天球の帯を叩き壊す。

 

「お前が死んで迎えるバッドエンドもトゥルーエンドも真っ平御免だ!俺が望むのは全員生還のハッピーエンドだけだ!

そのハッピーエンドのためなら1パーセントに満たない可能性だって掛けてやる!俺だって1パーセント未満の塊なんだ!」

 

理論なんてどうでもいいと言わんばかりの感情をレティシアに吐き、言いたいことを言い切る竜胆。

 

その姿は、恐らく"罪"から切り離されて、改めて"罪"を否定して受け入れたから見られるのだろう。

 

「"罪"から逃げるな!"罰"と向き合え!レティシア=ドラクレア!!

お前の本心を……見せてみろ!」

 

支離滅裂な物言いの中にたった一言だけ、彼の言いたい言葉があった。逃げるな、向き合え。

 

「……私は……」

 

レティシアは、

 

「私は……!」

 

本心を、さらけ出す。

 

「私は!助かりたい!頼む!私を助けてくれ!」

 

レティシアの本心に対して、竜胆は───

 

「完全無欠、完膚無きまでに救ってやるさ。"人類の希望"をなめるなよ?」

 

竜胆はギフトカードに刻まれたギフトを見せつけながら、ニヤリと笑った。

 

◆◇◆

 

「さって……行くか」

 

「竜胆……お前、なんであんな無茶苦茶な物言いで納得させられるんだ?」

 

飄々と城に穴を開けて飛び降りる準備をする竜胆に十六夜が少し呆れて問う。

 

「理屈で壁作ってるヤツに理屈で返しても無駄だろ?

だからああいうのは言いたいことを最後まで残して、適当に言葉言っとけばなんとかなる」

 

「メチャクチャじゃねーか……」

 

「まっ、あとは……"人類の希望"をなめるなよってことだ」

 

竜胆が新月の翼を展開させると、丁度いいタイミングで耀もやって来た。

 

「行くぜ……!"太陽神の表情"、発動!」

 

竜胆の背中、新月の翼の更に後ろから炎の輪ができ、九つの狐尾と狐耳が現れる。

 

「アァァァァァァァァァアアアアイ、キャァァァァァァァアアアアン、フラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアイ!!!!」

 

竜胆は翼で、耀は"生命の目録"で誕生した光翼馬(ペガサス)の力を宿したブーツで十六夜を運びながら飛び立った。

 

駆ける、駆ける、駆ける。

 

太陽神とペガサスはその翼を最大の力で加速して駆け抜ける。

 

竜胆は耀よりも速く駆け抜け、巨龍の元に辿り着く。

 

巨龍は目覚めた飛鳥の操るディーンによってその動きを封じられていた。

 

「ナイスタイミング……!これ以上ないチャンスだ!

心臓……掻っ捌いてやる!!メダガブリュー!!」

 

竜胆の意思により、メダガブリューは地面から直接竜胆の元へ飛んできた。それも二本。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!セイッハァァァァァァァァァァアァァァアアァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

ガブッ!!という音と共に竜胆の体内のメダルの多くをメダガブリューは喰らい、一発の大きさが必殺技で消費しない分大きく増して行く。

 

ベキバキゴキッ!!

 

そんな音と共に、巨龍の心臓を守る皮膚は砕き、喰われた。

 

思わず竜胆はその血を全身に浴び、獣のような笑みを浮かべた。

 

「やれえええええええええええええええええええええ!!!

十六夜ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

竜胆の叫び声と共に、ペガサスの速さを誇る耀に連れられた十六夜がニッコリと笑う。

 

「見つけたぞッ……!!!十三番目の太陽おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

巨龍の心臓は、少年の一振りで消し飛び、心臓からこぼれ落ちたレティシアを耀が抱きとめる。

 

竜胆は素早くレティシアの元へ行き、自分の陣羽織を被せる。

 

そして飛鳥、耀、十六夜、竜胆。四人の問題児達はいつの間にか、並んで立って、一斉に右腕を上げた。

 

「「「「完全勝利!!」」」」

 

四人の顔はそれぞれやることをやり遂げた、気持ちのいいものだった。






とまぁ、急ぎ足ですが四巻の戦闘も終了ですね。竜胆くんがレティシアに使った謎の説教は他人の死をよく思わず、自分自身を投げ捨てれる覚悟を持っていた竜胆くんだからできたという説教です。

ここでちょつと今回のサブタイトルについて。フォーティーンデイブレイク……つまり十四の夜明けですね。

これは四巻のタイトルにもなっている"十三番目の太陽を撃った"後の十四番目の夜明けという意味で、レティシアと竜胆くんの新たな日々の始まりを意味しています。

次回、セリフを一部抜粋
「うー!放すんだ!ヤメルンダッ!」

……うん。やっぱりシリアスだろうがコメディだろうが版権作品のオマージュを忘れないな、この甲殻類は。

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