問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
今回から数話、疾風の隼さんの小説とコラボします!先日決定したのでもう揺るがないね!例えこの他サイトではカオスに定評のある甲殻類がどんなカオスを引き起こしても責任は一切……いえ、とります。とりますって!だからすみません……出してくださいよ……ねえ。彗星とか見えるんですけど?いや、違うか……彗星はもっとバァーッて動くもんな。
いや、それよりも個人的に気になるのは……キスシーンって感想でも呼び起こすんですか?いつもより感想きててビックリなんですけど。
狐と鴉と時々博愛主義者
「……死ぬ」
高町竜胆は見たこともない場所を彷徨っていた。
見たことのない森、林、木。そして密林……ありていに言えば森を彷徨っていたわけである。
「どうしてこんなことになってるんだよ……」
様々な生き物の力を使える竜胆でも生物的な空腹は存在する。その様々な力のおかげで今日この瞬間……彷徨い始めて実に一週間を生き続けている。
だがまあ……流石に限界である。流石どころか一週間もなにも食べずに動いていること自体がおかしいのだが。
「神が空腹で死ぬとか、どんな非常識な展開だよ……」
空腹で意識も朦朧としているのにそんな冗談まで言えるのはある意味才能である。多分今までの自殺願望が自分の死というものを無意識のうちに忘れさせているのだろう。慣れや癖とは恐ろしいものだ。
そんな中暫く歩き続けていたが、流石に限界だったのか、ついに竜胆は倒れてしまった。
臨死体験なら何度もしているのだが、今回は周りに誰もいない。家族だって、消えた従者だっていない。
そんな孤独が、なぜか孤独の狐である彼の精神をセンチメンタルにさせた。
「俺……死ぬのかな……?」
ついこの間までなら甘んじてどころか、怯えながらも喜んで受け入れていたろうなぁ……なんて竜胆は思いながら飛んでも飛んでも空にたどり着けなかった木を見上げる。
「……誰にも知られずにひっそり孤独死か……今までなら、それが一番だったんだけどなぁ……」
不思議なものだ。人の感情というものはこうも簡単に変わってしまうのか。
竜胆はそのことに驚きながらも、瞳を開ける気力さえ失う。
「……耀。ギフトゲーム、永久中断かもな……ああでも、クリアしてほしかったな……そしたら……どんなに恥ずかしくても、好きって言えたろうし……」
竜胆は彼らしくない弱気な本音を吐露しながら意識を失う。彼の命は最早風前の灯である。
「……おや?先日から耀さんの名前をやたらめったら呼んでいる声がしていると思えば……耀さんは可愛いお嬢さんとお友達になられたのですね……」
そんな彼を見つけたのは、一羽の鴉だった。
問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?
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問題児たちが異世界から来るそうですよ?箱庭の家族物語
狐と鴉と時々博愛主義者。
「っ……知らない……いや、知ってる天井だ……」
竜胆が目を覚ますと、そこは本当に見覚えのある天井だった。まあ、わかりやすく言えば竜胆の部屋。"ノーネーム"のである。
「……あれ……?なんで俺、自分の部屋にいるんだ?……いや、違う。この部屋、誰かの匂いがしている……俺の部屋なら俺の匂いなんてわからないから無臭の筈なのに……?」
とりあえず立ち上がり、部屋の散策をする。少し色々探ると、そこに衝撃的のものがあって思わず竜胆はひっくり返った。
「んなっ!?───ったぁ!?頭打ったぁ……!」
ひっくり返った衝撃で後頭部を思い切り打つ。しかし、痛いで済むのはキマイラの身体が頑丈だからか。
「っつつ……なんだよ、これ……!?」
竜胆が見つけたのは写真だった。ただし、ただの写真ではない。
「なっ、なんて写真だよ……!?」
春日部耀が満面の笑みをしている写真だった。自分で撮った覚えはないので無闇に触るとなにがあるのかわからないので見るだけだが、すっごいビックリしている。
「あ、アイツこんな顔できるのかよ……俺の前だと無表情、微笑み、母性のいずれかだぞ……!母性なんて見せられても困るけど」
そう。その写真に写っている耀の顔は竜胆が見たことなどないくらい笑っていた。いつも竜胆に見せているのが弟や従弟に対するような表情だとして、いや正にそれなのだが……その彼女はまるで彼氏に見せているかのような笑みである。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………誰だ」
思わず声を漏らしていた。勿論、部屋には竜胆以外誰もいないのだが、竜胆は呟いていた。
「相手は誰だ……まずそいつから殺してやる……」
竜胆の身体からやたらと黒いオーラが出てくる。ぶっちゃけ怖い。
「次に耀を殺す……最後に俺を殺して、耀を抱いて死んでやる……」
目のハイライトが消えた上に完全に朱色になっている。最早彼は別の意味で"暴走"している。
「ああ……父さん。わかってるよ……よく母さんに言ってたよね。浮気したら殺すって。母さんちゃんと浮気しなかったけど、してたら父さんもきっとこんな感じになってたよねぇ……ねえ?」
病んだ。病んでしまった。このただでさえフラグを建てていくツンデレ狐が更にめんどくさい属性を手にしてしまった。
「おーい、竜胆起きたかー……ってぬわーーーーーっっ!!」
銀髪の少年、五十嵐五月雨が部屋に入って来た瞬間に突然飛んできたイチゴっぽいクナイに襲われた。
「い、いきなりなにするんだ!?」
「……お前か……お前か……」
「な、なにが!?怖いんだけど!?」
「お前が耀を横から掻っ攫って行ったのか……誰か知らんが、殺させてもらうぞ…………ッッ!」
「なにが言いたいんだあんた……!?ああもう、話が始まらねえから嵐に呑まれて反省しやがれ!!」
◆◇◆
「……すまなかった、五月雨」
「すまんで済んだらポリはいらないって習わなかったか?まったく……僕じゃなかったら死んでたぞ?」
「ああ……多分お前じゃなかったら殺しにいかなかったと思ってる」
「なんだそりゃ!?」
「そうさな……お前の言葉を借りるなら、家族想いの博愛主義者だからさ。キヒヒ」
「なあ……流石に言いたいんだが、さっきまでのあんたのどこに博愛主義の文字があった?」
「……ないな」
竜胆がはは、と掠れた笑い声を上げる。
「こちとら笑い話じゃないんだがなぁ……というか、あんた変わったな」
五月雨がよかったよかった、と表情を一転させる。
「アホな従者と変な女のおかげだよ。あいつらのおかげで俺の"罪"は"希望"なんだって知ったさ」
「ふぅん。で、その変な女とやらに惚れたってわけ?」
ははははは、と笑っていた竜胆の身体からバギョッ、という人体構造的に鳴るはずのない音が鳴る。
「だ、誰が耀のことが好きだと言った!?そんな気はこれっぽっちも、ない!」
「ほほー。僕は耀のことなんて一言も言ってないのにね〜」
「っ……!なんという失態……!」
竜胆が嘆いていると、丁度ドアが開いて、また違う人物が出てきた。
「五月雨くん。さっきから少し騒がしいですけど、もしかすると……おや、そのもしかするとでしたか」
黒い髪の青年……それもかなりのイケメンが部屋に入って来た。
「お、八汰鴉か」
「……八汰鴉?八咫烏じゃなくてか?」
竜胆が名前の微妙な違いに反応する。すると八汰鴉と呼ばれた青年は竜胆にまるで営業スマイルの如き完璧な笑みを見せる。
「ええ。僕は中国の鴆と八咫烏のハイブリッドでして。八咫烏そのものではないんです。
……それにしても、幼いとはいえ女の子がそんなにガサツな言葉使ってはいけませんよ?もっと丁寧にしましょう?」
「へえ……って、俺は男だ!ついでに言うと16!五月雨よりも一つ上だ!」
「じゅ、16で、男の方……!?す、すみません……その、失礼を承知で言いますが、あまりにも幼い女性に見えてしまいまして……特に寝顔なんかも」
「……まあいい。初対面でそう言われるのは慣れてる」
多分慣れてはいけないことに慣れている。というか竜胆は普通慣れないことばかり慣れてしまっている。
「……で、ここは五月雨の部屋なのか?」
「ああ。そうだ。苦労したんだぜ?寝てるあんたにあーんして、起きない程度に顔触って顎動かして……」
「いや、そういうのは聞いてない……問題は誰が俺をここまで運んだかだよ。ここが俺からすると異世界なのはお前がいる時点で十中八九間違いないけど、俺はなにもされた覚えなんてない」
「一応、倒れていた貴方を運んだのは僕ですけど、見た感じ一週間はなにも食べていなかったでしょう?」
「否定はしない……知らない場所である以上は見知った外見の植物も迂闊に手を出せないからな」
竜胆ははぁ、と溜息を漏らしてゆっくりと立つ。
「だ、大丈夫なんですか?丸一日ほど寝てましたけど……」
「問題ないだろ……理由もわからずこの世界に来てしまった以上、一分一秒でも早く向こうに戻るための手がかりがほしい。
世界が動く時間なんてバラバラだからな……俺が戻ってきたら五年後になってた、なんてパターンだってありえる」
竜胆はドアを開き、五月雨の部屋を後にする。そして廊下の床に足をつけた瞬間───
「あっ、竜胆。ついさっき大掃除があってワックス掛けしてたから気をつけ───」
ツルン、と小気味のいい音を鳴らして竜胆が滑った。そのままそばに置いてあったバケツに頭から直撃する。
そして竜胆がこけた衝撃で少しだけ腐って脆さの残っていた屋敷の天井が破れ、彼の頭に当たる。
更に、屋敷の天井側にあった高価そうな大きな石が竜胆の腹部に落ち、鳩尾に綺麗に当たった。
「「「………」」」
竜胆を遭われそうに見下ろす五月雨と八汰鴉。そして思いっきり水を被って顔を真っ赤にする竜胆。
「……いや、竜胆」
「……なんだ?」
「可愛かったぞ」
「……そんなフォローするくらいならもっと早くその注意を言ってくれないか?」
というわけでコラボの一話目でした!
ここに来て竜胆くんの計測値マイナス方向に計測不可能になっている圧倒的幸運の低さの片鱗が現れました。
疾風の隼さんには八汰鴉さんメインと頼まれていたのですが……話をわかりやすくするために今回は竜胆くんの面識のある五月雨くんに少し多めに出てもらいました!
いや、それにしても不運の結果でここまで可愛く映るって、一種の才能だよこれ……